皆さんこんにちは。
先週末にはBMOやBM Invitationalといったスタンダードのビッグイベントが充実していましたね。今週末にはプロツアー『アモンケット』が開催されます。《守護フェリダー》が突然禁止カードに指定されるというハプニングからスタートでしたが、Marduと4C Saheeliコンボの2強の環境から大きな変化を遂げました。新環境のスタンダードを世界のトッププレイヤーがどのように環境を解いていくのかに注目が集まります。
今回の連載では『アモンケット』リリース直後に開催されたSCGO AtlantaとBMO Vol.9、BM Invitational Vol.3の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG Open Atlanta
Copy Cat亡き後の環境を支配するMardu
4月30日
※画像はStarCityGames.comより引用させていただきました。 |
1位Mardu Vehicles
2位Mardu Vehicles
3位Mardu Vehicles
4位 WR Humans
5位BG Delirium
6位 Mono Black Aggro
7位Mardu Vehicles
8位 Mardu Vehicles
トップ8のデッキリストは【こちら】
プレイオフの半数以上がMardu Vehiclesという結果となったSCGO Atlanta。Marduの隆盛の背景にはトップメタのSaheeliコンボのパーツであった《守護フェリダー》が直前に急遽禁止カードに指定されたため、今大会のため調整にかける時間が限られていたこともあり、旧環境でSaheeliコンボと並んでTier1として活躍していたMardu Vehiclesを選択したプレイヤーが多かったことがあります。
《奔流の機械巨人》をフィニッシャーとしたUR Controlはプレイオフにこそ残らなかったもののMarduと緑黒に次ぐ二日目3大勢力で、他にも黒単やBW Zombies、赤白などウイーク1の結果らしくアグロデッキが中心です。
SCG Open Atlanta デッキ紹介「Mardu Vehicles」「Mono Black Aggro」
4 《平地》 2 《沼》 1 《山》 4 《産業の塔》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 2 《霊気拠点》 2 《泥濘の峡谷》 2 《乱脈な気孔》 -土地 (25)- 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《歩行バリスタ》 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 2 《大天使アヴァシン》 2 《異端聖戦士、サリア》 -クリーチャー (18)- |
4 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 1 《木端+微塵》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (17)- |
2 《グレムリン解放》 2 《精神背信》 2 《リリアナの誓い》 2 《先駆ける者、ナヒリ》 2 《死の宿敵、ソリン》 1 《マグマのしぶき》 1 《木端+微塵》 1 《苦い真理》 1 《苦渋の破棄》 1 《燻蒸》 -サイドボード (15)- |
サイクリングランドなど一部を除いて『アモンケット』からのカードは採用されておらず、ほとんど旧環境と同様の構成です。調整の時間による都合と新環境突入直後の大会ということで、多くのプレイヤーが旧環境で成功を収めていたデッキを選択しており、結果Marduは二日目最大勢力となりプレイオフでも優勝も含めて半数以上を占める結果となりました。
☆注目ポイント
このデッキにとって『アモンケット』から数少ない収穫である《木端+微塵》は序盤はクリーチャー除去として、ゲーム後半では最後の一押しとして使うことが可能で、このデッキの方向性にもマッチしています。サイクリングランドの《泥濘の峡谷》はフラッド防止にもなり土地を25枚にすることでミッドレンジにシフトするという戦略を取りやすくします。
7位入賞のLawrence Vess以外は『アモンケット』から加入した《試練に臨むギデオン》よりも《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を優先しており、現在のところミッドレンジ寄りのMardu Vehiclesでは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の方が評価されているようです。
今大会を制したAndrew Jessupのリストは、前環境でもポピュラーだった《致命的な一押し》や《無許可の分解》といった黒い効率的な除去にプレインズウォーカーを多数採用したミッドレンジバージョンです。
白赤タッチ黒のMardu Vehiclesと異なりミシュラランドの選択も《鋭い突端》よりも《乱脈な気孔》が優先され、サイドの追加のフィニッシャーとして《反逆の先導者、チャンドラ》ではなく《死の宿敵、ソリン》が採用されているなど、黒が濃く白黒タッチ赤という構成になっています。サイド後は《グレムリン解放》の的になるアーテイファクトを減らしてプレインズウォーカーが投入されミッドレンジデッキに変形します。
4 《平地》 3 《山》 1 《沼》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 4 《産業の塔》 1 《鋭い突端》 1 《乱脈な気孔》 1 《燻る湿地》 1 《霊気拠点》 -土地 (24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《経験豊富な操縦者》 2 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー (18)- |
4 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 2 《耕作者の荷馬車》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (18)- |
2 《グレムリン解放》 2 《燻蒸》 2 《リリアナの誓い》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《先駆ける者、ナヒリ》 1 《大天使アヴァシン》 1 《マグマのしぶき》 1 《苦渋の破棄》 1 《苦い真理》 1 《チャンドラの誓い》 -サイドボード (15)- |
ファイナリストのRyan Mcdonoughのリストは《経験豊富な操縦者》や《耕作者の荷馬車》など軽いクリーチャーや機体が多めの伝統的な赤白タッチ黒のMardu Vehiclesで、Andrew Jessupのリストよりも攻撃的な構成になっています。5マナ域が《大天使アヴァシン》よりも《栄光をもたらすもの》の方が優先されており、より攻めを意識した構成であることが分かりますね。
『アモンケット』の新カードである《栄光をもたらすもの》は5マナ4/4飛行、速攻と中々の性能で「督励」することでブロッカーも排除できるのでアグレッシブなデッキにフィットしたクリーチャーであり、相手のプレインズウォーカーに対してもプレッシャーとなります。
両プレイヤーがサイドに採用している《先駆ける者、ナヒリ》は《排斥》などのエンチャントが環境で多く存在するのでその価値を増しています。Marduミラーではロングゲームにおけるトップデッキの強さや《栄光をもたらすもの》や《キランの真意号》に強い《大天使アヴァシン》、《経験豊富な操縦者》を容易に除去する《歩行バリスタ》を採用しているためAndrew Jessupのミッドレンジ寄りのバージョンの方に有利が付きます。
18 《沼》 2 《霊気拠点》 -土地 (20)- 4 《歩行バリスタ》 4 《戦慄の放浪者》 4 《夜市の見張り》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《光袖会の収集者》 4 《ホネツツキ》 -クリーチャー (24)- |
4 《致命的な一押し》 4 《闇の掌握》 2 《集団的蛮行》 3 《不帰+回帰》 3 《最後の望み、リリアナ》 -呪文 (16)- |
4 《才気ある霊基体》 4 《スカラベの饗宴》 3 《過酷な精査》 3 《精神背信》 1 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード (15)- |
SCG Invitationalでも優勝経験のあるCaleb SchererはMarduや緑黒といった旧環境でも活躍していたデッキを、安定した選択として持ち込むプレイヤーが多数を占める中この短期間で、『アモンケット』のカードを多数採用したオリジナルの黒単色のアグロを持ち込み見事にトップ8入賞を果たしています。
☆注目ポイント
《ホネツツキ》はクリーチャーが死ぬことでコストが3マナ軽くなるという中々面白いクリーチャーで、相手のクリーチャーを除去しつつ1マナ3/2飛行、接死を展開する動きはテンポ面で優れ《歩行バリスタ》とのシナジーもあり、このデッキの主力のクリーチャーとして活躍します。
《夜市の見張り》は1マナ1/1とサイズは現代のクリーチャーのスペックとしては劣りますが相手のブロッカーが少ない序盤は実質2点ダメージで、ブロックされて墓地に落ちれば《屑鉄場のたかり屋》の餌となり《ホネツツキ》もキャストしやすくなります。
『アモンケット』から加入したスプリットカードである《不帰+回帰》はプレインズウォーカーも除去することができる便利な除去で、「余波」の《回帰》も地味ながら中盤以降の余ったマナの使い道となります。復活能力など除去に何らかの耐性を持つクリーチャーが多く、ロングゲームにもそこそこ強いデッキです。さらに単色で高額なカードも少なくデッキを組むコストもリーズナブルなのでお勧めですね。
BIG MAGIC Open Vol.9
緑黒がMarduの海を渡り切る
5月4日
※画像はBIG MAGICより引用させていただきました。 |
1位BG Aggro
2位Temur Tower
3位 Mardu Vehicles
4位 Mardu Vehicles
5位Temur Aetherworks Marvel
6位 Mardu Vehicles
7位 Mardu Vehicles
8位 BG Aggro
トップ8のデッキリストは【こちら】
SCGO Atlantaと同様にMardu Vehiclesが上位の多数を占めましたが決勝戦は緑黒とTemur Towerというマッチアップでした。BM Invitationalでも結果を残していたTemur Aetherworks Marvelも勝ち残っており新環境のスタンダードはMardu一強の環境ではなさそうです。
BIG MAGIC Open Vol.9 デッキ紹介「BG Aggro」
5 《森》 3 《沼》 4 《霊気拠点》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地 (20)- 4 《歩行バリスタ》 4 《緑地帯の暴れ者》 4 《光袖会の収集者》 4 《牙長獣の仔》 4 《巻きつき蛇》 3 《ピーマの改革派、リシュカー》 1 《不屈の神ロナス》 3 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (27)- |
4 《霊気との調和》 4 《致命的な一押し》 3 《闇の掌握》 1 《精神背信》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -呪文 (13)- |
4 《刻み角》 3 《精神背信》 2 《スカラベの饗宴》 2 《造命師の動物記》 1 《不屈の神ロナス》 1 《豪華の王、ゴンティ》 1 《闇の掌握》 1 《鞭打つ触手》 -サイドボード (15)- |
緑黒エネルギーは旧環境でも後半こそMardu VehiclesやSaheeliコンボのパワーに着いてこれずTier2落ちしたものの、Saheeliコンボの退場と『アモンケット』からの新戦力によって復権の兆しを見せており、プロツアーでも活躍が予想されます。
☆注目ポイント
緑の神である《不屈の神ロナス》は『アモンケット』のトップレアの一枚としてリリース前から話題になっており、クリーチャーとして機能させるために、このデッキでは自身の起動能力を含めてクリーチャーを強化させる手段が豊富なので容易です。2ターン目《巻きつき蛇》、3ターン目《ピーマの改革派、リシュカー》と展開していくことで《不屈の神ロナス》が攻撃に参加しやすくなります。
Saheeliコンボ不在の現在も《キランの真意号》、《電招の塔》 、《霊気池の驚異》など環境には強力なアーテイファクトが多数存在するので《刻み角》が活躍する場面は数多くあるでしょう。《霊気池の驚異》がタップ状態で出てくるだけでもコンボを一ターン遅らせることが可能で、その間に2体目を展開し起動される前に割ることも可能です。
緑黒の復権は『アモンケット』からの新戦力による影響もありますが、何よりも天敵であったSaheeliコンボがいなくなったことが大きく、サイドボードのスペースをMarduやUR Controlなど《奔流の機械巨人》を採用したデッキとのマッチアップ用に割けるようになったことにあります。
BIG MAGIC Invitational Vol.3
Marvel流行の兆し
5月4日
※画像はBIG MAGICより引用させていただきました。 |
1位Temur Midrange
2位 Temur Aetherworks Marvel
3位 Temur Aetherworks Marvel
4位 Temur Aetherworks Marvel
5位 Mardu Vehicles
6位 Temur Midrange
7位 Temur Aetherworks Marvel
8位 Mardu Vehicles
トップ8のデッキリストは【こちら】
SCG Invitationalと同様に招待制のイベントだけあり、プロも参戦しているなど非常にレベルの高い大会だったようです。前環境でもトップメタに位置していたMardu VehiclesやSaheeliコンボの退場にともない、復権してきた緑黒に強いMarvelコンボが復権しプレイオフの半数を占めます。
BIG MAGIC Invitational Vol.3 デッキ紹介「Temur Aetherworks Marvel」
4 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《伐採地の滝》 1 《燃えがらの林間地》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 4 《尖塔断の運河》 1 《獲物道》 -土地 (21)- 4 《ならず者の精製屋》 3 《つむじ風の巨匠》 1 《奔流の機械巨人》 3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー (11)- |
4 《霊気との調和》 2 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 4 《検閲》 2 《造反者の解放》 4 《天才の片鱗》 4 《織木師の組細工》 4 《霊気池の驚異》 -呪文 (28)- |
3 《不屈の追跡者》 3 《否認》 3 《霊気溶融》 2 《奔流の機械巨人》 2 《払拭》 1 《栄光をもたらすもの》 1 《人工物への興味》 -サイドボード (15)- |
禁止改定直後に開催されたMOPTQで優勝したことにより、MOではすでに人気のあるデッキでトップメタのMarduに迫る勢いです。《約束された終末、エムラクール》禁止前のスタンダードではベストデッキの一つとされていました。その《約束された終末、エムラクール》が禁止になりSaheeliコンボが流行ったことであまり見かけることはなくなりましたが、《守護フェリダー》が禁止になったことと、『アモンケット』からの新戦力が数種類追加され復権を果たしました。
☆注目ポイント
《霊気池の驚異》コンボパッケージ以外は赤の軽い火力除去、カウンター、ドロースペル、そして《奔流の機械巨人》といった青いコントロールデッキのカードでまとめられており、《霊気池の驚異》を引かなかったり対策されたゲームではTemur Controlのように振舞うことも可能でこういったフレキシブルさがこのデッキの強みです。
《検閲》はコンボ発動に必要な時間を稼ぎつつサイクリングすることでキーカードを引き当てる助けになります。《マグマのしぶき》は《屑鉄場のたかり屋》対策になりSaheeliコンボ対策する必要がない現在は《ショック》よりこちらを優先しない理由が見当たりません。
《天才の片鱗》はドローを進めつつ《霊気池の驚異》を起動するためのエネルギーを供給します。《奔流の機械巨人》はエネルギーコンボ以外の勝ち手段で現環境でもトップクラスのカードパワーです。《天才の片鱗》が入ったデッキには採用しておいて間違いありません。サイドのクリーチャーの《栄光をもたらすもの》と《不屈の追跡者》は《霊気池の驚異》対策としてサイドインしてくる《否認》などに引っかからない追加の勝ち手段となります。特にコントロールに対して有効です。
総括
SaheeliコンボとMarduの2強状態のまま停滞していたスタンダードの環境もようやく動き出しました。Saheeliコンボ不在の新環境のスタンダードはこのデッキと相性が悪かった緑黒や《霊気池の驚異》も復権してきています。メタがまだ固まり切っていないのでコントロールは少数ですが《霊気池の驚異》コンボに青赤コントロールの要素をハイブリットしたTemur Marvelが新環境のコントロールに近いポジションとなりそうです。
Marduは数は多いものの突然の禁止カードの追加により多くのプレイヤーが調整に時間が取れなかった結果、前環境から強かったMarduを選択していたという事実もあり他のデッキの調整が追い付いていないのもあるので評価が難しい所です。
以上USA Standard Express vol.96でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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