皆さんこんにちは。
先週末はGP Manila、Amsterdam、Omahaと世界中でスタンダードのGPが同時開催されました。プロツアーからスタンダードの環境はどのような変化を遂げたのか、今回の連載では三つのGPの入賞デッキを見ていきたいと思います。
グランプリ・オマハ2017
~アメリカのスタンダードはほぼAetherworks一強~
6月4日
※画像はMAGIC: THE GATHERINGより引用させていただきました。 |
1位 Temur Marvel
2位 Black-Green Constrictor
3位 Temur Marvel
4位 Temur Marvel
5位 Temur Marvel
6位 4C Marvel
7位 Temur Marvel
8位 Temur Energy
トップ8のデッキリストは【こちら】
4色のバージョンも含めるとMarvelがプレイオフに6名という極端な結果になったGP Omaha。トップ32まで見渡しても高い入賞率で、現環境最高のデッキと言っても過言ではありません。今大会で準優勝、GP Amsterdamでも優勝というパフォーマンスのBlack-Green ConstrictorもTemur Marvelの海を渡り切ったデッキとして注目に値します。
グランプリ・オマハ2017 デッキ紹介
「Temur Marvel」
5 《森》 1 《島》 1 《山》 2 《燃えがらの林間地》 4 《霊気拠点》 4 《尖塔断の運河》 3 《植物の聖域》 1 《伐採地の滝》 2 《見捨てられた神々の神殿》 -土地 (23)- 4 《ならず者の精製屋》 4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー (8)- |
4 《霊気との調和》 4 《蓄霊稲妻》 3 《検閲》 3 《造反者の解放》 1 《否認》 4 《天才の片鱗》 4 《織木師の組細工》 4 《霊気池の驚異》 2 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文 (29)- |
3 《不屈の追跡者》 3 《霊気溶融》 2 《ウルヴェンワルドのハイドラ》 2 《払拭》 2 《光輝の炎》 1 《否認》 1 《見捨てられた神々の神殿》 1 《慮外な押収》 -サイドボード (15)- |
モダンのSCGOを制した勢いのままに今大会でも優勝を飾ったアメリカのプロ、Brad NelsonはTemur Marvelを選択していました。モダンオープンであるSCGO Baltimoreで、環境のベストデッキとされているGrixis Deathshadowを選択していたことからも、彼が今大会で選択したTemur Marvelは、環境の最高のデッキとして扱って間違いなさそうです。
☆注目ポイント
Brad Nelsonのリスト最大の特徴はサイドの《ウルヴェンワルドのハイドラ》です。《見捨てられた神々の神殿》をサーチすることで、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をキャストするための加速として使えます。
追加の《見捨てられた神々の神殿》をサイドに採用していることからも、サイド後は《霊気池の驚異》に頼らずにゲームに勝てるように工夫されています。無色マナしかでず、マナベース的には少し難がありますが、《霊気池の驚異》に頼らずに《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をキャストする手段は、対策が進んでいる現在では重要です。
《検閲》 や《天才の片鱗》 を採用したスペル重視型ですが、プロツアーでBrad Nelsonを含めたTeam Genesisのリストのメインから採用され、活躍した《炎呼び、チャンドラ》も含まれています。スイーパーとしてもフィニッシャーとしても使えるプレインズウォーカーで、手札を入れ替える+0能力も中盤以降有効札を探すのに重宝します。
4ターン目の《天才の片鱗》は安定して《霊気池の驚異》を引き当て起動するのに一役買っているのでバージョンに寄らず採用をお勧め出来るドロースペルです。
《慮外な押収》は緑黒とのマッチアップでは、相手の+1+1カウンターで強化されたクリーチャーを奪い、ミラーマッチでもエネルギーカウンターが6つ以上あるときにキャストすることで、相手の《絶え間ない飢餓、ウラモグ》も奪うことが可能です。機体も奪うことも可能で、ミラーマッチが多くなることも考慮すると現在はメインから採用してもよさそうなカードです。
グランプリ・マニラ2017
~新型のUW FlashがアジアのGPを制する~
6月4日
※画像はMAGIC: THE GATHERINGより引用させていただきました。 |
1位 UW Flash
2位 Esper Vehicles
3位 Temur Marvel
4位 Red-Green Pummeler
5位 Mardu Blue
6位 Mono Black Zombies
7位 BG Aggro
8位 Mardu Vehicles
トップ8のデッキリストは【こちら】
アメリカではほぼMarvel一強状態だったのに対し、GP ManilaではEsper VehiclesやUW Flashといったテンポ、アグロデッキが結果を残していました。特に《反射魔道士》と《密輸人の回転翼機》が禁止になる前の環境のベストデッキだったアップデート版のUW Flashは、旧環境でもMarvelに強いデッキだったこともあり要注目です。
グランプリ・マニラ2017 デッキ紹介
「UW Flash」「Esper Vehicles」
10 《平地》 6 《島》 4 《大草原の川》 4 《港町》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《栄光半ばの修練者》 4 《無私の霊魂》 4 《呪文捕らえ》 2 《異端聖戦士、サリア》 4 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (22)- |
3 《否認》 4 《停滞の罠》 2 《排斥》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (13)- |
3 《払拭》 3 《黄昏+払暁》 2 《本質の散乱》 2 《霊気溶融》 2 《秘密の解明者、ジェイス》 1 《多面相の侍臣》 1 《否認》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード (15)- |
《呪文捕らえ》や《大天使アヴァシン》といった環境の優秀な瞬速クリーチャーを、カウンターや瞬速持ちのパーマネント対策カードの、《排斥》や《停滞の罠》でサポートしていくアグロデッキで、構成上Marvelに強く安定感もあり、メタによってカスタマイズしていけるのも魅力です。
☆注目ポイント
しばらく見られなかった《呪文捕らえ》ですが、《霊気池の驚異》を頻繁に見かける環境では、その強さを発揮しやすくなります。やはり《霊気池の驚異》を意識しているようで、《否認》がメインから採用されているのもポイントです。
《霊気池の驚異》以外にも環境には各種プレインズウォーカー、《キランの真意号》《リリアナの支配》《闇の救済》など打ち消したいクリーチャーでないスペルが多数存在するので、メイン採用も納得です。カウンターは瞬速付きの《排斥》や《停滞の罠》とも相性が良く動きに隙が少なくなります。
《栄光半ばの修練者》はアモンケットからの新戦力で、その強さはモダンでも通用することが証明されています。2マナ3/1というだけでも性能的には十分プレイアブルですが、Exertすることで4/4Lifelinkとなり、ダメージレースで優位に立てます。
《マグマのしぶき》の使用率が高めの環境では少し価値が下がるものの、《栄光をもたらすもの》などアモンケットから加入した速攻クリーチャーにも強く、Mardu Vehiclesなど特殊地形を多用するデッキも多いため《異端聖戦士、サリア》はまだまだ強い3マナ域です。
《黄昏+払暁》は緑黒とのマッチアップにおいて有力なサイドカードで、《燻蒸》と異なり巻き込むことが少なく、特に《呪文捕らえ》が流れないのはプラスです。
6 《平地》 2 《島》 1 《灌漑農地》 1 《異臭の池》 4 《産業の塔》 2 《霊気拠点》 4 《秘密の中庭》 4 《港町》 -土地 (24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 3 《栄光半ばの修練者》 4 《屑鉄場のたかり屋》 2 《無私の霊魂》 4 《呪文捕らえ》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (23)- |
3 《金属の叱責》 1 《停滞の罠》 1 《排斥》 3 《キランの真意号》 1 《霊気圏の収集艇》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (13)- |
2 《致命的な一押し》 2 《石の宣告》 2 《否認》 2 《燻蒸》 1 《乱脈な気孔》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《苦い真理》 1 《黄昏+払暁》 1 《停滞の罠》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《死の宿敵、ソリン》 -サイドボード (15)- |
《呪文捕らえ》を採用していたもう一つのデッキであるEsper Vehicles。UW FlashとVehiclesの要素をハイブリットさせたデッキで《排斥》や《停滞の罠》、《大天使アヴァシン》の枚数が減らされ、代わりに《キランの真意号》や《霊気圏の収集艇》といった機体や、《模範的な造り手》、《屑鉄場のたかり屋》といった軽いクリーチャーが採用され、よりアグレッシブな構成となっています。
☆注目ポイント
メインのカウンターが《否認》ではなく《金属の叱責》が採用されています。アーティファクトが多めのこのデッキでは、多くの場合《マナ漏出》となり、《否認》よりも対象の幅が広くなった代わりに不確定要素が増しましたが、全体的に使いやすいカウンターです。UW Flashにも採用されていた《栄光半ばの修練者》はこのデッキでは《キランの真意号》の「搭乗」要員としても使用可能な高性能なクリーチャーです。
サイドボード後は黒が更に濃くなります。《ゲトの裏切り者、カリタス》はZombiesに対して特に有効なクリーチャーで、Mardu Vehiclesなどアグロデッキとのマッチアップにも強いクリーチャーです。追加の土地として《乱脈な気孔》がサイドインされ、《苦い真理》や《死の宿敵、ソリン》などで、Mardu Vehiclesと同様にミッドレンジ寄りの構成に変形する選択肢もあります。
グランプリ・アムステルダム2017
~トップ8の半数が緑黒~
6月4日
※画像はMAGIC: THE GATHERINGより引用させていただきました。 |
1位 Black-Green Delirium
2位 UR Control
3位 Esper Vehicles
4位 Red-Green Pummeler
5位 Temur Marvel
6位 Black-Green Delirium
7位 Black-Green Energy
8位 Black-Green Energy
トップ8のデッキリストは【こちら】
アメリカの結果と比べると、Esper VehiclesやMarvelを徹底的にメタった緑黒が結果を残していました。特に今大会優勝を飾ったLukas Blohonは、メインから《造反者の解放》が4枚という徹底ぶりです。
グランプリ・アムステルダム2017 デッキ紹介
「Black-Green Delirium」「GR Energy」
6 《森》 5 《沼》 3 《進化する未開地》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地 (22)- 4 《歩行バリスタ》 4 《巻きつき蛇》 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《不屈の追跡者》 2 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (20)- |
4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《致命的な一押し》 4 《造反者の解放》 2 《不帰+回帰》 1 《最後の望み、リリアナ》 3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -呪文 (18)- |
4 《精神背信》 2 《豪華の王、ゴンティ》 2 《闇の掌握》 2 《没収》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《不帰+回帰》 1 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード (15)- |
B/G Delirium, G/B Energy, B/G Constrictor とバリエーションが豊富な緑黒ですが、今大会見事に優勝を収めたLukas BlohonのリストはDeliriumとConstrictorを混ぜたバージョンとなっています。GP Montrealで入賞していたカナダのプロであるShaun McLarenのイノベーションで、MarvelやVehiclesをメタって《造反者の解放》がメインから4枚採用されているのが特徴です。
☆注目ポイント
メインからフル搭載されている《造反者の解放》は《霊気池の驚異》や《キランの真意号》など対象に困ることは少なく、「サイクリング」することは少ないと思われますが、「サイクリング」はDeliriumの条件を満たすために墓地を肥やせるのも魅力です。
《不帰+回帰》はソーサリースピードではあるもののプレインズウォーカーにも触れるのが魅力で、「余波」では墓地に落ちた《屑鉄場のたかり屋》や 《戦慄の放浪者》を処理しつつ、2/2を生み出し特にセルフミル能力のある《残忍な剥ぎ取り》や 《最後の望み、リリアナ》によって墓地に落ちても使えるなど、アドバンテージが取りやすく中々の性能です。
サイド後は《墓後家蜘蛛、イシュカナ》や各種プレインズウォーカー、追加の除去、ハンデスが入りミッドレンジ寄りにシフトしていきます。《没収》は対象は狭いものの、《霊気池の驚異》や《奔流の機械巨人》といったキーカードを追放することが可能で、現環境ではアーテイファクトを指定出来ない《失われた遺産》よりも有効な選択肢です。
Temur MarvelやUR Control相手にサイドインできるカードですが、最近はTemur Marvel側も《見捨てられた神々の神殿》などを採用することで、《霊気池の驚異》に頼らずに《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をキャストする手段を取り入れているので、《没収》が通ることイコール勝ちにはなりませんが、デッキの動きを著しくスローダウンさせます。
7 《森》 2 《山》 4 《隠れた茂み》 4 《霊気拠点》 4 《獲物道》 -土地 (21)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《通電の喧嘩屋》 4 《静電気式打撃体》 2 《不屈の神ロナス》 4 《逆毛ハイドラ》 -クリーチャー (22)- |
4 《霊気との調和》 4 《顕在的防御》 3 《蓄霊稲妻》 4 《暴力の激励》 2 《気宇壮大》 -呪文 (17)- |
4 《マグマのしぶき》 4 《うろつく蛇豹》 3 《刻み角》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《不屈の神ロナス》 1 《蓄霊稲妻》 -サイドボード (15)- |
赤緑の2色のエネルギーカウンター持ちのクリーチャーでビートダウンしていくデッキ。《不屈の神ロナス》と《牙長獣の仔》以外の全てのメインデッキのクリーチャーはETB能力で、エネルギーカウンターを提供し強化能力持ちのクリーチャーや強化スペルが多いのため、《不屈の神ロナス》を活かしやすくなっているのが特徴です。
☆注目ポイント
《暴力の激励》や《気宇壮大》といった強化スペルが多めに積まれており、《不屈の神ロナス》を攻撃に参加させやすくなるため、除去耐性がある《逆毛ハイドラ》もより活かしやすくなります。
自身だけでなく、後続のクリーチャースペルもカウンターされなくなる《うろつく蛇豹》は、UR Controlなどカウンターを多用するデッキに対してサイドインされるクリーチャーですが、GP Manilaで優勝したことで復権してきた《呪文捕らえ》には追放されてしまうので注意が必要です。
総括
GP Omahaの結果は、現環境のトップメタのMarvelの強さが目立ちましたが、GP ManilaやGP AmsterdamではUW Flashなど、Marvelに強い構成のデッキや、対Marvel用に調整された緑黒が勝ち残るなど、トータル面ではTemur Marvel一強とは言い難い環境のようです。
しかし三つの大会すべてのトップ32入賞率が40パーセントを超え、Amsterdamではプレイオフではわずか一名だったものの、トップ32まで見渡してみると半数以上が《霊気池の驚異》を使ったデッキという事実もあり、間違いなく環境のベストデッキです。
一見するとUR Controlが《霊気池の驚異》と相性が良さそうに見えますが、UW Flashのようなテンポ寄りのデッキの方がアンチ《霊気池の驚異》としては有力で、GP ManilaとAmsterdamの両大会で結果を残していたEsper Vehiclesも《霊気池の驚異》とそこそこの相性で良い選択となり得ます。
以上USA Standard Express vol.98でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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