皆さんこんにちは。
久々に先週末日本で開催されたプロツアー『破滅の刻』は楽しんでいただけましたか?
日本勢からは佐々部 悠介選手と藏田 真太郎選手がプレイオフ進出を果たしました。共にプロツアー初出場で、日本でも若いプレイヤーが育ってきているということが証明されました。プロシーンでは無名だった彼らですが、GPでも結果を残している強豪プレイヤーで、彼らの今後の活躍にも期待できそうです。
今回の連載ではプロツアー『破滅の刻』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
プロツアー『破滅の刻』
~Ramunap Red が京都の地を焼き尽くす~
2017年07月28日
- 1位 Ramunap Red
- 2位 Black-Green Constrictor
- 3位 Ramunap Red
- 4位 Ramunap Red
- 5位 Black-Red Aggro
- 6位 Ramunap Red
- 7位 Ramunap Red
- 8位 Mono Black Zombies
Paulo Vitor Damo da Rosa
トップ8のデッキリストはこちら
事前のSCGやMOの結果から赤単が復権の兆しを見せており、プロツアー本選でも人気がでるアーキタイプと予想されていました。
プレイオフには5名のRamunap Red、と真っ赤でこのデッキが環境のベストデッキということが証明されたプロツアー『破滅の刻』。
Ramunap Redはスイスラウンドのスタンダード部門でも、8-1-1以上の優秀な成績を残していたリストもあり、間違いなく今大会の勝ち組デッキでした。また、Ramunap Redに強いとされているZombiesもスタンダード部門で結果を残しており、今大会の裏番組であったMOのPTQでも優勝していることからも要注目です。
プロツアー『破滅の刻』
「Ramunap Red」「Black-Green Constrictor」「Black-Red Aggro」「Mono Black Zombies」
Ramunap Red
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 2 《屍肉あさりの地》 -土地 (24)- 4 《ボーマットの急使》 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《村の伝書士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (26)- |
4 《ショック》 4 《削剥》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (10)- |
2 《ピア・ナラー》 2 《砂かけ獣》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 2 《粗暴な協力》 2 《霊気圏の収集艇》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《チャンドラの誓い》 -サイドボード (15)- |
プロアクティブで、クロックの速さとアドバンテージを提供する《反逆の先導者、チャンドラ》と《熱烈の神ハゾレト》の恩恵により、ロングゲームにも強いRamunap Red は今大会で最もポピュラーであると同時に、最も成功を収めたアーキタイプでした。
メイン戦は典型的な赤単アグロで《ファルケンラスの過食者》、《村の伝書士》、《地揺すりのケンラ》といった軽いクリーチャーでプレッシャーをかけていき、《反逆の先導者、チャンドラ》や《熱烈の神ハゾレト》といったパワーカードでゲームを決めに行きます。サイド後は《栄光をもたらすもの》など追加のフィニッシャーも加わり、ミッドレンジ寄りにシフトしていきます。
赤単が強いのはメインまでで、サイドでメタれば多くの場合は有利が付くと思われていましたが、サイド後はミッドレンジ寄りにシフトしていく変形サイドボード戦略を取っていることもあり、対策されにくかったのも勝因です。
☆注目ポイント
デッキ名にもなっている《ラムナプの遺跡》は、最後の一押しになる本体火力を兼ねた土地で、アンタップインであることもこの土地が使いやすい点です。無色マナもでるので、赤マナが必要な状況以外ではライフを減らす必要がなく、このデッキの方向性にフィットした性能の土地です。
《地揺すりのケンラ》は2マナパワー2速攻と赤単アグロに必要なスペックを満たし、序盤のブロッカーを無力化できます。墓地に落ちても中盤以降は4/4速攻となり、ブロッカー妨害能力はゲームを決定付けるだけのインパクトがあります。
《削剥》はインスタントスピードの除去として機能すると同時に、各種機体対策になります。コントロールデッキに対しても《奔流の機械巨人》に対するアンサーになり、完全に無駄カードにはならない優秀なスペルです。
《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》は伝説のクリーチャーなため、2体以上展開できないのがネックとなりますが、威迫と攻撃に参加する度にでる「ラガバン」2/1トークンと合わせて実質3点ダメージとなります。タフネスが3なので《ショック》、《マグマのしぶき》といったこのデッキに対してよく使われる軽い除去にも耐性があります。
《熱烈の神ハゾレト》はこのデッキを使う理由の1つです。《闇の掌握》と《闇の救済》を使ったZombies以外のマッチアップでは対策されにくく、余分な土地など中盤以降あまり役に立たないカードをダメージ源に変換しつつ、《熱烈の神ハゾレト》自身も5/4速攻のアタッカーとなるこのデッキの最高のカードです。
《反逆の先導者、チャンドラ》は相性の悪いZombiesや《熱烈の神ハゾレト》に対するアンサーを持ち合わせた緑黒、コントロールとのマッチアップで特に強さを発揮し、カードアドバンテージ獲得手段になります。またZombiesなど黒いデッキが採用している《ゲトの裏切り者、カリタス》を処理する手段になることも重要です。
サイドの《砂かけ獣》は砂漠を多数採用しているこのデッキでは、あの《火炎舌のカヴー》と同様に戦場にでた時点でアドバンテージが取れるクリーチャーです。タフネスが3なのも《ショック》や《マグマのしぶき》といった除去に耐性があり、特にミラーマッチで活躍します。他にも単体除去に耐性がありアドバンテージが取れるクリーチャーに《ピア・ナラー》が挙げられます。
《チャンドラの敗北》はミラーマッチ用の1マナ確定除去で、ミラーマッチでは《ショック》など火力除去の耐性を向上させるため《砂かけ獣》や《栄光をもたらすもの》など、タフネスが高めのクリーチャーが多数サイドインされるのでそれらをインスタントスピードで処理できるのは大きく、《反逆の先導者、チャンドラ》も除去できます。
《霊気圏の収集艇》は《削剥》が当たり前のように採用されていますが、除去さえされなければミラーマッチにおいて最高のカードの1枚です。3/5というサイズは《闇の掌握》で落ちないのため、Zombiesとのマッチアップでも強さを発揮します。
Black-Green Constrictor
6 《沼》 5 《森》 3 《進化する未開地》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 1 《ハシェプのオアシス》 -土地 (23)- 4 《歩行バリスタ》 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《巻きつき蛇》 3 《不屈の追跡者》 1 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (20)- |
4 《致命的な一押し》 4 《ウルヴェンワルド横断》 2 《造反者の解放》 2 《闇の掌握》 2 《最後の望み、リリアナ》 3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -呪文 (17)- |
3 《精神背信》 3 《没収》 2 《豪華の王、ゴンティ》 2 《不帰+回帰》 1 《不屈の追跡者》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《闇の掌握》 1 《大災厄》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
環境を問わずコンスタントに結果を残し続けているデッキが存在します。《巻きつき蛇》を中心とした緑黒アグロであるBG Constrictorは、『霊気紛争』リリース以来環境の絶対的なベストデッキではないものの、毎シーズン大きな大会の上位では必ずと言っても良いほど見かけるデッキです。強豪プレイヤーが愛用しているだけあり、今大会でも高い勝率をだしていました。
Samuel Pardeeは緑黒を使い続けているプレイヤーの1人で、今大会で使用したリストは 《残忍な剥ぎ取り》や《ウルヴェンワルド横断》など「昂揚」要素も含まれており、《ゲトの裏切り者、カリタス》と《新緑の機械巨人》いったクリーチャーをサーチすることが可能です。
メインから採用されている2種類のプレインズウォーカーと共にミッドレンジデッキとしても振舞うことが可能です。
☆注目ポイント
《巻きつき蛇》はRamunap Red に対してはサイズで勝り、平均以上のスペックを持つプロアクティブなクリーチャーで、このデッキが環境を問わず結果を残している理由の1つです。
《ゲトの裏切り者、カリタス》は高いカードパワーを持ちながら、メタの関係でしばらくメインではあまり見られなくなったクリーチャーですが、赤いデッキがトップメタの現環境では価値が上がります。
その《ゲトの裏切り者、カリタス》やRamunap Red の主力である《熱烈の神ハゾレト》を処理できる《闇の掌握》がメインでは2枚と少な目なので、コントロールが少なくRamunap Red やZombiesなどが中心となりそうな今後はメインから4枚採用で良さそうです。
《大災厄》は追放除去とハンデスの2つのモードを選べるソーサリースペルで、追放は破壊不能のクリーチャーや墓地から復活するクリーチャーが多い現在では重要視されます。
Black-Red Aggro
7 《山》 2 《沼》 4 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 4 《ラムナプの遺跡》 2 《イフニルの死界》 -土地 (23)- 4 《ボーマットの急使》 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《地揺すりのケンラ》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 2 《損魂魔道士》 2 《エルドラージの寸借者》 4 《アムムトの永遠衆》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (25)- |
4 《ショック》 3 《集団的蛮行》 3 《木端+微塵》 2 《焼夷流》 -呪文 (12)- |
3 《削剥》 2 《屍肉あさりの地》 2 《アクームの火の鳥》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《猛火の斉射》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《エルドラージの寸借者》 1 《熱烈の神ハゾレト》 -サイドボード (15)- |
プロツアー初出場にして、プレイオフ進出を決めた日本人プレイヤーの一人である藏田 真太郎選手は、今大会最大勢力であったRamunap Redに黒をタッチしたデッキを使用していました。
黒を足したことでタップインランドが増え、マナベースの安定性は少し下がったものの、3マナ5/5とペナルティーを考慮しても強力なクリーチャーである《アムムトの永遠衆》やハンデス、除去の選択肢が広がっています。
今大会のプレイオフ進出デッキの中では個性的な構成ですが、《アムムトの永遠衆》や《集団的蛮行》といった赤単に強いカードが入っており、スイスラウンドのスタンダード部門も8-1-1という優秀な成績を残しています。
☆注目ポイント
《アムムトの永遠衆》はRamunap Red とのマッチアップでは攻守に渡って活躍するクリーチャーです。火力で弱体化させられて戦闘で打ち取られる可能性はあるものの、《集団的蛮行》で予め相手のインスタントスペルを落としておくことで、ある程度まで対策可能です。
《集団的蛮行》はハンデスや除去、ドレイン以外にも「増呪」を利用することで、《熱烈の神ハゾレト》を攻撃に参加させるために手札の枚数を調節する手段としても使えます。
《木端+微塵》は黒いデッキが赤単をメタってメインから採用している《ゲトの裏切り者、カリタス》 をわずか2マナで処理することが可能で、中盤以降は「余波」で最後の一押しをすることも可能です。
Mono Black Zombies
19 《沼》 3 《イフニルの死界》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (24)- 4 《墓所破り》 4 《戦慄の放浪者》 4 《戦墓の巨人》 4 《呪われた者の王》 4 《無情な死者》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー (23)- |
3 《致命的な一押し》 4 《闇の掌握》 4 《闇の救済》 2 《リリアナの支配》 -呪文 (13)- |
4 《没収》 3 《屑鉄場のたかり屋》 3 《精神背信》 2 《不帰+回帰》 2 《最後の望み、リリアナ》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード (15)- |
今大会でプレイオフに進出を果たした、もう一人の日本人プレイヤーである佐々部 悠介選手は多くのプレイヤーが赤単を持ち込む中、黒単Zombiesを選択していました。
Mono Black Zombiesは《墓所破り》や《無情な死者》といった軽く優秀なクリーチャーや、《熱烈の神ハゾレト》に対するアンサーとなる《闇の掌握》と《闇の救済》にアクセス可能なこともあり、Ramunap Red に強いデッキとなります。
今大会で赤単がトップメタであると想定し、Mono Black Zombiesを選択したChristian Calcanoや原根 健太選手もスタンダード部門で優秀な成績を残しており、有力なチョイスの1つであったことは明白です。
☆注目ポイント
Ramunap Redの隆盛から《ゲトの裏切り者、カリタス》 がメインから採用されています。Ramunap Redが《集団的抵抗》や《反逆の先導者、チャンドラ》といったタフネス4のクリーチャーを処理できるスペルを、メインから採用している理由の一つで、除去されずにアンタップステップを迎えることができれば有利にゲームが進みます。
『破滅の刻』からの新カードである《イフニルの死界》は、中盤以降は除去としても使える土地で余ったマナを有効活用できます。
Marvelコンボの退場によりサイドボードのスロットにも余裕ができました。《没収》は《王神の贈り物》のような特定のキーカードに依存するデッキに対して有効なのはもちろん、《奔流の機械巨人》を追放することで墓地から復活する《戦慄の放浪者》や 《無情な死者》によるビートダウンを継続することを可能にします。
総括
本選直前から、MOの結果により赤単が人気がでることが予想されていましたが、初日の使用者の数が115人、2日目に進出した数も84人と他を大きく引き離しており、プレイオフの半分以上が赤単という結果になりました。
しかし、今大会の裏番組であったMOPTQの結果を見る限りでは、すでに赤単が数を減らしており、Zombiesが隆盛していました。今週末に開催されるGP Minneapolis は今大会と異なる結果になることが予想されます。
今大会でもプレイオフに1名、スタンダード部門でも優秀な成績を残していたMono Zombiesは赤単に有利なデッキで、プロツアー『破滅の刻』後のメタでは有力な選択肢となりそうです。
以上USA Standard Express vol.102でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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