週刊デッキウォッチング vol.149 -門口エルドラージポスト-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 恐竜

原初の飢え、ガルタレギサウルスの頭目雷群れの渡り

 禁止改定、そして『イクサランの相克』が発売したことで、スタンダードは大規模な環境変化の到来が予測される。ティムールや赤単に押さえつけられていた様々なビートやコントロール・コンボが息を吹き返すのと同時に、『イクサランの相克』の新カードたちが新たなアーキタイプを生み出そうとしているのだ。

 『イクサラン』だけではいまいちパーツ不足感が否めなかった「恐竜」もそんなニューフェイスの一つで、特に12マナ12/12というあまりにも雑なパワー/タフネスを持つ《原初の飢え、ガルタ》は、《レギサウルスの頭目》からつなげることができれば一気に7マナ分を軽減した上で速攻を持たせることができるという、《ヤヴィマヤの火》《ブラストダーム》もびっくりなほどの驚異のシナジーを有している。

 2マナ域のマナ加速要員である《大物群れの操り手》《オテペクの猟匠》が除去されやすいという問題も、「恐竜」のみに許された新たなる《不屈の自然》である《雷群れの渡り》なら心配はない。

 メタゲームの進展によっては《殺戮の暴君》が環境のソリューションとなる可能性もある。スタンダードを恐竜が席巻する日もそう遠くはないかもしれない。

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■ モダン: ローグ

歪んだ世界不屈の追跡者溶鉄の尖峰、ヴァラクート

 人には「すべてをひっくり返したい」と思ってしまう瞬間がある。退屈な仕事。無意味な会議。行きたくもない飲み会……すべてを無に帰す力が欲しい。力が欲しいか?欲しいのならくれてやる。そう、ならば《歪んだ世界》を打てばいいのだ。

 パーマネントが多ければ多いほど強力な効果を発揮する《歪んだ世界》は、トークンを生成する効果と相性が良い。そしてモダン環境でトークンを手軽に生み出せるカードといえば、単体でも強力な《不屈の追跡者》の名が真っ先に上がることだろう。

 《歪んだ世界》を打った際にハズレが少なくなるよう、《歪んだ世界》以外のすべてのカードがパーマネントで構成されている点が特徴的であり、通常なら《明日への探索》《遥か見》が入っているスロットも《旅人のガラクタ》《ウッド・エルフ》になっている。

 こんな構成だと《歪んだ世界》を打った瞬間にパーマネント数の差に絶望して対戦相手が投了してしまうかもしれないが、それでいいのだ。その対戦相手も負けたストレスで《歪んだ世界》を握るかもしれない。そうしてこの社会は回っていくのだ。

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■ レガシー: 12ポスト

アゾールの門口忘却蒔き虚空の杯

 『イクサランの相克』でレガシーで活躍しそうなカードについては、神が選ぶ記事でレガシー神が《血染めの太陽》《凶兆艦隊の向こう見ず》《沈黙の墓石》の3枚をあげていたが、最後にちらりと《アゾールの門口》についても触れていた。そこではドロー操作に乏しい赤単スニークやドラゴンストンピィでの使用可能性にのみ言及されていたが、ドロー操作が欲しいのは何もその2つだけではなく、無色単である「エルドラージ」にとっても待望の1枚となる可能性がある。

 相手によって腐りがちな《虚空の杯》や2枚目以降の《ウギンの目》など、理想的な動きを追求するからこその不要牌の重なりは避けられない。そこで《アゾールの門口》は手札事故を回避しつつ、変身条件を満たすことができれば《太陽の聖域》が大量のマナを生み出せるので、《ウギンの目》とセットであらゆる盤面を一瞬でひっくり返せる可能性があるのが強みだ。

 メインから《魔術遠眼鏡》を標準搭載しているので、《不毛の大地》耐性を付けつつも相手によって柔軟な対応が可能となる。

 vol.128でも紹介し、最近ますます活躍が見られるようになっていた《雲上の座》型のエルドラージだが、《アゾールの門口》を手に入れたことでこれからさらに勢力を増していきそうだ。

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■ フロンティア: ローグ

イトリモクの成長儀式ズーラポートの殺し屋変位エルドラージ

 スタンダード当時も実現可能だった《ズーラポートの殺し屋》《変位エルドラージ》《血統の観察者》の3枚コンボの弱点は、コンボを決めるために《血統の観察者》をたくさんデッキに入れなければならない点にあった。そこで《召喚の調べ》があるフロンティアなら採用枚数を抑えることが可能となるとはいえ、「召集」付きとはいえ9マナはなかなかに重い。何か大量マナを生み出す方法はないか?そう、《イトリモクの成長儀式》を変身させればいいのだ。

 このデッキは《イトリモクの成長儀式》の変身条件と《集合した中隊》とのシナジーに着目した秀逸なデッキとなっている。《イトリモクの成長儀式》が変身しているということは4体以上のクリーチャーがいる状態で自分のターンの終了ステップを迎えていることに他ならないわけで、ということは《太陽の揺籃の地、イトリモク》から(緑)4つが生成できるのであり、すなわちそのまま《集合した中隊》を相手のエンド前にプレイできるということになるのだ。

 もちろんそのための軽量クリーチャーたちは十分に確保されている。《エルフの神秘家》に加えて《壌土のドライアド》はこのデッキでは5~8枚目の疑似的な1マナマナクリーチャーとして働くし、《地下墓地の選別者》はクリーチャーの頭数を確保しつつ無色マナの供給源となったりキーパーツを占術で探しにいける頼もしい存在だ。

 《イトリモクの成長儀式》の大量マナからの巨大な《歩行バリスタ》でストレートに決着を狙ってもいい。フロンティアならではのアイデアをふんだんに盛り込んだ素晴らしいデッキだ。

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 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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