週刊デッキウォッチング vol.150 -激昂ダイナソー-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ

攻角のケラトプス帝国の先駆け万猛竜

 発動のためにはダメージを受ける必要があるというトリッキーさのためか、『イクサラン』のみではいまいち構築シーンでの活躍が見られなかったキーワード能力「激昂」だが、『イクサランの相克』で数多くの強力な「激昂」持ちが登場したことで、スタンダードでの活躍も現実味を帯びてきている。

 《攻角のケラトプス》は恐るべき速度で成長する恐竜で、《苛立ち》《両手撃ち》でひとたび4/4に育てればあとは《凶暴な踏みつけ》なり相手のブロックなりで手が付けられないサイズにまで育て上げることができる。

 《帝国の先駆け》は「激昂」持ちをサーチしつつ「激昂」を誘発させ、さらには対戦相手の小粒なクリーチャーを薙ぎ払える1枚。《万猛竜》とのコンボで一瞬にして5/5を8体生成することも可能だ。

 マナを伸ばしたければ《群棲する猛竜》を、クリーチャーを除去したいなら《罠顎の暴君》を、それ以外なら《切り裂き顎の猛竜》を、状況に合わせて「激昂」させれば良い。『イクサラン』『イクサランの相克』のカードばかりで構成されており、これからスタンダードを始めるという方にもおすすめのデッキだ。

「恐竜」でデッキを検索

■ モダン: 青リビングエンド

壌土からの生命予言により錬金術師の隠れ家

 《予言により》《死せる生》とのシナジーに着目した「青単リビングエンド」については、2色目を追加する方向の進化の可能性をPierre Dagenが予言しており、そこにおいて有力な2色目は《死せる生》を「待機」できる黒とされていたが、今回なんと緑を足したバージョンが登場した。

 青マナ源かつ《死せる生》を「変成」でサーチできるカードとして《トレイリア西部》が縦横無尽に活躍するこのデッキにおいて、《壌土からの生命》《死せる生》を何度もサーチできるカードとなるほか、《廃墟の地》《幽霊街》との組み合わせで土地コンボを虐めることもできる。

 さらに特筆すべきは《錬金術師の隠れ家》で、《予言により》を設置してあれば本家リビングエンドの《暴力的な突発》からの「続唱」よろしくインスタントタイミングで《死せる生》がプレイできるようになる。

 《内にいる獣》は通常の《死せる生》デッキにおけるそれと同様、万能のパーマネント対処手段となる。新興デッキでまだまだ進化の余地があるだけに、いよいよ来週末に迫ったプロツアー『イクサランの相克』でも注目のアーキタイプと言えそうだ。

「青リビングエンド」でデッキを検索

■ レガシー: ローグ・アグロ

偽りの治療カヴーの捕食者スカイシュラウドの切断獣

 「対戦相手のライフを回復させること」は通常、「対戦相手のライフを0以下にする」という勝利条件からの後退を意味することから、カード評価においてはデメリットとして扱われる。だが長いマジックの歴史の中では、「対戦相手のライフを回復させることがメリットとなるカード」もいくつか存在しているのだ。

 《焦熱の裁き》とのコンボが有名な《カヴーの捕食者》は、相手の回復したライフの分だけ成長するクリーチャー。そのターンはたとえ攻撃できても回復したライフと打点が相殺になるが、2回目以降のアタックなら純粋に成長分だけ上乗せしたダメージを与えることができるので、《スカイシュラウドの切断獣》《激励》《恭しき沈黙》といった「対戦相手のライフを回復させることでマナコストを支払わなくて済むようになるカード」と組み合わせれば、ほとんどマナを使わずに超巨大なクリーチャーを作り上げることができる。

 さらに《偽りの治療》を打てばそのターンは実質ライフゲインがライフ損失へと反転することになるので、20点分の《スカイシュラウドの切断獣》《激励》《恭しき沈黙》が手札に揃っていれば即勝利という意味不明な勝ち方が実現する。

 《死儀礼のシャーマン》からの《渦まく知識》の動きで普通のBUGミッドレンジと思って油断した相手を、華麗にコンボで介錯してあげよう。

「ローグ・アグロ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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