みなさんこんにちは。
【プロツアー『霊気紛争』】は終了しましたが、来月は日本国内でもスタンダードのグランプリが静岡で開催されます。日本国内のスタンダードのグランプリは、昨年開催された【グランプリ・東京2016】以来なので楽しみですね。
さて、今回の連載ではプロツアー『霊気紛争』と、その直後に開催された【グランプリ・ピッツバーグ2017】の入賞デッキを見ていきます。
プロツアー『霊気紛争』 トップ8
~Mardu 機体の隆盛 Saheeliコンボの没落~
2017年2月4日
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト】より引用させていただきました。 |
1位 Mardu Vehicles
2位 Mardu Vehicles
3位 Mardu Vehicles
4位 Mardu Vehicles
5位 Mardu Vehicles
6位 Mardu Vehicles
7位 B/G Delirium
8位 Jund Energy
トップ8のデッキリストは【こちら】
直前に開催された二つのSCGOでは緑黒とSaheeliコンボ(Copy Cat)が勝ち組でしたが、今大会ではCopy Catは直前の大会で勝っていたこともって強烈に意識されており、特に相性が悪いMardu Vehiclesの隆盛により今大会の上位にはほとんど見られませんでした。
Mardu Vehiclesは軽い機体であり、デッキの主力であった《密輸人の回転翼機》を失ったことにより弱体化を余儀なくされ第一線級のデッキとして活躍することは難しいと思われましたが、《キランの真意号》という新たな2マナの機体を手に入れ、今大会でトップ8に6名も輩出するという凄まじいパフォーマンスを見せます。
プロツアーAether Revoltデッキ紹介
「Mardu Vehicles」「BR Aggro」
3 《平地》 3 《山》 4 《感動的な眺望所》 4 《秘密の中庭》 4 《産業の塔》 2 《霊気拠点》 1 《鋭い突端》 1 《凶兆の廃墟》 1 《燻る湿地》 -土地 (23)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 3 《発明者の見習い》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《経験豊富な操縦者》 2 《ピア・ナラー》 1 《異端聖戦士、サリア》 -クリーチャー (22)- |
2 《ショック》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 2 《霊気圏の収集艇》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (15)- |
2 《無私の霊魂》 2 《グレムリン解放》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《鋭い突端》 1 《発明者の見習い》 1 《致命的な一押し》 1 《断片化》 1 《空鯨捕りの一撃》 1 《耕作者の荷馬車》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード (15)- |
事前の予想に反して今大会で最も成功を収めたデッキであるMardu Vehicles。今大会に参加した多くのプレイヤーがSCGOで結果を残していたJeskai Copycatや緑黒を意識していたため、それらのデッキと比べると警戒されていなかったこと、そして事前に開催された【SCGO Richmond】を制したJeskai Copycatに強かったことが主な勝因です。
速いクロックに加え、除去枠にはインスタントスピードの《ショック》と《無許可の分解》が採られているので、このデッキ相手にCopy Cat側が4ターン目に安全にコンボを決めることは困難を極めます。
《キランの真意号》は《密輸人の回転翼機》に代わる新たな主力の機体として使えることが証明され、《産業の塔》はデッキの弱点の一つであった不安定なマナベースの改善に貢献しています。
☆注目ポイント
デッキの新戦力である《キランの真意号》は搭乗コストが3なため、デッキ内のどのクリーチャーでも搭乗させることのできた《密輸人の回転翼機》と比べると流石に劣りますが、強力な機体であることは間違いありません。
《発明者の見習い》《模範的な造り手》《産業の塔》《無許可の分解》といったアーティファクトによって強化されるカードが多数採用されているため、《キランの真意号》の他にも《霊気圏の収集艇》《屑鉄場のたかり屋》、そして飛行機械アーティファクトクリーチャートークンをETB能力により生み出す《ピア・ナラー》といったカードも見られます。
《屑鉄場のたかり屋》はパワーが3あるため、《キランの真意号》と相性が良いのは勿論のこと、墓地からの復活する能力があるのでコントロールに強いクリーチャーです。
《霊気圏の収集艇》は、このデッキのマナ基盤を支える《霊気拠点》を使うためのエネルギーを補充し、「搭乗」コストは1と軽く、さらにエネルギーカウンターを支払うことでLifelinkも付くので、他のアグロデッキとのマッチアップで強さを発揮します。《発明者の見習い》 や《スレイベンの検査官》といった序盤を支える軽量クリーチャーを中盤以降も活用する手段にもなります。
アーティファクトをコントロールしていればクリーチャーを除去しつつ本体にもダメージが入る《無許可の分解》はCopy Catのコンボ対策として有用です。
追加の除去に《致命的な一押し》も採用されています。メインではCopy Catコンボ対策に《ショック》が優先されていますが、ミラーと緑黒の増えそうな今後は《致命的な一押し》の方が優先されそうです。
クリーチャーによるビートダウンだけでなく、今大会見事に優勝を収めたLucas Esper Berthoudも含めて多くのプレイヤーがメインに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、サイドに《反逆の先導者、チャンドラ》といったプレインズウォーカー、そして《領事の旗艦、スカイソブリン》を採用し、スイーパーの《光輝の炎》をサイドインしてきた相手に対する追加の勝ち手段が多数採られています。
プレインズウォーカーは《キランの真意号》との間に相互作用があるため、以前よりも多めに採用されているようです。
相手の機体を破壊しつつ2/2を展開できる《グレムリン解放》は、ミラーマッチにおいて切り札となるスペルです。
10 《山》 6 《沼》 3 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 -土地 (23)- 4 《ボーマットの急使》 4 《発明者の見習い》 4 《殺戮の先陣》 4 《屑鉄場のたかり屋》 3 《ピア・ナラー》 -クリーチャー (19)- |
3 《ショック》 1 《稲妻の斧》 4 《無許可の分解》 3 《焼夷流》 2 《発火器具》 2 《キランの真意号》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (18)- |
4 《致命的な一押し》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《精神背信》 2 《グレムリン解放》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《燻る湿地》 -サイドボード (15)- |
スタンダードとドラフトでスイスラウンドが競われたプロツアーでは、トップ8以外にもスタンダード部門で優秀な成績を収めていたデッキも注目に値します。前回も優勝デッキこそ八十岡選手のGrixis Controlでしたが、その後のメタを支配したのはスイスラウンドのスタンダード部門で9-1という成績を出していたUW Flashでした。
今大会のスタンダード部門で8-2という好成績を残したBR Aggroは、2色なのでMardu Vehiclesよりも動きが安定しており、デッキパワーでは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》にアクセスできなくなることこそ残念ですが、《反逆の先導者、チャンドラ》が使えるので《キランの真意号》を搭乗させる手段に困ることは少なそうです。
☆注目ポイント
色マナを必要とせず、2マナでパワー3の《屑鉄場のたかり屋》は、このデッキでは極めて重要なクリーチャーとなります。
《殺戮の先陣》もパワー3なので《キランの真意号》に搭乗させることが可能で、《キランの真意号》や《殺戮の先陣》《屑鉄場のたかり屋》など無色のクリーチャーに速攻を付与することで、奇襲性が高くなります。アグレッシブな赤黒らしいクリーチャーで、このデッキの主戦力です。
《無許可の分解》は現環境最高クラスの除去です。インスタントスピードで、多くの場合、相手本体にもダメージが入るので、プレインズウォーカー対策にもなり、テンポ面でも優れます。
他にも《焼夷流》《ショック》《稲妻の斧》といった効率的な除去にアクセス可能なのが赤黒の強みで、特に《焼夷流》はソーサリースピードではありますが、追放するので《屑鉄場のたかり屋》が幅を利かせている現在では優秀な除去スペルです。
サイドに採用されている《致命的な一押し》はクリーチャーのサイズに関係なく除去できるので、緑黒やMarduとのマッチアップにおいて有効なスペルとなります。今後はCopy CatよりもMarduや緑黒が増えることが予想されるので、メインの《ショック》と入れ替えても良さそうです。
器具サイクルの一つで、本体に1点のダメージを与えつつドローする《発火器具》はCopy Cat対策にもなるため、いくつかのMarduのリストにもメインから採用されており、Sebastian Pozzoもメインから採用していることから、今大会ではCopy Catが相当意識されていたことがうかがえます。
グランプリ・ピッツバーグ2017 トップ8
~明らかになってきた新環境。スタンダードの3強~
2017年2月12日
※画像は【MAGIC: THE GATHERING英語公式ウェブサイト】より引用させていただきました。 |
1位 BG Aggro
2位 Mardu Vehicles
3位 Mardu Vehicles
4位 BG Energy
5位 BG Aggro
6位 Jeskai Copy Cat
7位 BG Aggro
8位 BG Aggro
トップ8のデッキリストは【こちら】
Mardu Vehiclesが支配したプロツアー『霊気紛争』の翌週に開催された、グランプリ・ピッツバーグ2017では、緑黒が勝ち組でした。
プロツアーでは多数のプレイオフ進出者を出して優勝を飾ったのはMardu Vehiclesでしたが、緑黒はスタンダード部門で8-2以上の優秀な成績を収めていたデッキの一つでした。
【プロツアー『カラデシュ』】でスタンダード部門で高い勝率を出していたUW Flashがそうであったように、今大会でも上位を支配したのは事前に開催されたプロツアーで勝っていたデッキではありませんでした。Mardu Vehiclesはプロツアー後の環境でも間違いなくトップメタですが、まったく対処できないデッキではなく、クリーチャーのサイズで勝る緑黒にとっては有利なマッチアップです。
GP Pittsburgh トップ8デッキ紹介
「BG Aggro」「BG Energy」
9 《森》 7 《沼》 4 《風切る泥沼》 4 《花盛りの湿地》 -土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》 4 《巻きつき蛇》 4 《森の代言者》 3 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《地下墓地の選別者》 4 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (21)- |
4 《致命的な一押し》 3 《闇の掌握》 4 《ニッサの誓い》 1 《霊気圏の収集艇》 3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -呪文 (15)- |
3 《不屈の追跡者》 3 《精神背信》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《膨らんだ意識曲げ》 2 《鞭打つ触手》 1 《人工物への興味》 1 《破滅の道》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
今大会で多数の入賞者を輩出し優勝を飾った緑黒は、エネルギークリーチャーを多数採用したエネルギービートダウン型、前環境にも存在していたdelirium型など異なるバリエーションが見られますが、それらに共通しているのが《新緑の機械巨人》《歩行バリスタ》 《巻きつき蛇》といったクリーチャーを採用していることです。
《巻きつき蛇》は、デッキ内の多くのカードの効果を増強し、自身も2マナ2/3と悪くないスペックで、環境最高の2マナクリーチャーです。
今大会見事に優勝を収めたRyan Hareのリストは、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》《森の代言者》、そして《ニッサの誓い》とGW Tokensでも見られたカードが多数採用されており、Deliriumでもエネルギーでもない新しい形の緑黒です。
☆注目ポイント
《森の代言者》はプロツアーでは見られなかったクリーチャーで、ミシュラランド以外の他のカードとのシナジーは特にありませんが、2マナ2/3警戒持ちで、土地が並ぶ中盤以降は4/5と単体でも十分な強さを発揮し、+1/+1カウンターを載せる最適な対象の一体です。
無色マナを出す1/1エルドラージ・末裔・トークンを引き連れてくる《地下墓地の選別者》は、《ピーマの改革派、リシュカー》よりもカードパワーでは劣りますが、4ターン目に《新緑の機械巨人》を展開する助けになり、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》の「-2」能力とも相性が良いクリーチャーです。
《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》は後手の際に少し遅いことは気になりますが、《燻蒸》などのスイーパーを使うコントロールとのマッチアップで強さを発揮するプレインズウォーカーで、《歩行バリスタ》や 《巻きつき蛇》といったクリーチャーが戦場に並んでいる状態での「-2」能力は、速やかにゲームを終わらせる程のインパクトがあります。
《ニッサの誓い》は従来までの緑黒では見られなかったカードです。《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》や各種クリーチャー、それらをキャストするのに必要な土地をサーチしてくるスペルで、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》も3ターン目にキャストしやすくなります。
《霊気圏の収集艇》はLifelinkを得られるのでMarduなどのアグロデッキとのダメージレースを有利に進めることが可能で、機体はソーサリースピードの除去に耐性があるため、《燻蒸》を使うデッキとのマッチアップでも強いカードです。
サイド後は《膨らんだ意識曲げ》《不屈の追跡者》《ゲトの裏切り者、カリタス》《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》などが追加され、ミッドレンジ寄りにシフトしていきます。Mardu Vehicles、特に《屑鉄場のたかり屋》対策になる《鞭打つ触手》もサイドに採られています。
6 《森》 3 《沼》 4 《霊気拠点》 4 《花盛りの湿地》 3 《風切る泥沼》 -土地 (20)- 4 《歩行バリスタ》 4 《緑地帯の暴れ者》 4 《光袖会の収集者》 4 《巻きつき蛇》 3 《牙長獣の仔》 3 《ピーマの改革派、リシュカー》 3 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (25)- |
4 《霊気との調和》 4 《致命的な一押し》 3 《顕在的防御》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -呪文 (15)- |
3 《精神背信》 3 《闇の掌握》 2 《破滅の道》 2 《造命師の動物記》 2 《高速警備車》 1 《自然に帰れ》 1 《自然廃退》 1 《人工物への興味》 -サイドボード (15)- |
プロツアー『霊気紛争』で、日本人プロの行弘 賢選手は惜しくもプレイオフ進出は逃したものの、BG Energyを使用し、スタンダード部門で9-1という好成績を残していました。
BG Energyは緑黒から「昂揚」要素を切り、カードパワーの高い《巻きつき蛇》や《緑地帯の暴れ者》《光袖会の収集者》といったエネルギーカウンターを使うクリーチャーを多数搭載した緑黒のアグロです。
☆注目ポイント
《霊気との調和》は色マナを安定して提供すると同時にエネルギーを生み出すので後のターンに展開される《牙長獣の仔》を活かしやすくします。
《巻きつき蛇》は、その高いカードパワーにより緑黒の戦略に大きな影響を与えたクリーチャーで、このデッキではエネルギーカウンターも追加で得ることを可能にし、デッキの爆発力の向上に一役買います。
2/3というサイズは多くのデッキがCopy Catのコンボ対策にメインから採用している《ショック》にも耐性があります。《牙長獣の仔》などのエネルギーを生み出すクリーチャーとのシナジーもあり、《巻きつき蛇》の恩恵により《牙長獣の仔》は攻撃が通る度に追加のエネルギーを生み出し、即座に自身を強化することができます。
クロックをかけつつカードアドバンテージを提供し続ける《光袖会の収集者》は、あの《闇の腹心》を彷彿とさせるクリーチャーで、回避能力のおかげでエネルギーを得るのは容易です。
Robert Beattyのリストは《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》がフルに採用されています。他のカードと同様に《巻きつき蛇》との組み合わせが強力でトークンも生み出すのでデッキに爆発力を与えると同時に全体除去への耐性も高めます。
息切れ防止になると同時に、占術によってドローの質も高める《造命師の動物記》はJeskai Copycatなどのコントロール相手にサイドインされるカードで、《緑地帯の暴れ者》をバウンスさせることによってアドバンテージを稼ぐことが可能です。
《高速警備車》も《燻蒸》などのスイーパーに強く、このデッキにとってやや不利が付くJeskai Copycatといったコントロールとのマッチアップで活躍します。
クリーチャーのサイズで勝るためm流行りのMardu Vehiclesに有利が付き、全体除去を積んだコントロールは苦手ですが、サイドの構成次第では互角以上に戦えるため、今後もよく見かけるアーキタイプになりそうです。
総括
プロツアー『霊気紛争』ではまったくと言ってよいほど振るわなかったJeskai Copy Catは、緑黒に強いため、グランプリ・ピッツバーグ2017ではプレイオフにも進出しており、復権の兆しを見せています。
現環境のスタンダードは、「Mardu Vehicles、各種緑黒、Jeskai Copy Cat」の3強で、その中でも緑黒はMardu Vehiclesに対しては《致命的な一押し》や《霊気圏の収集艇》といったカードをメインから採用、Jeskai Copy Catに対しても《造命師の動物記》やスイーパースペルに耐性のあるプレインズウォーカーである《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》、コンボパーツやスイーパースペルを追放する《豪華の王、ゴンティ》といったカードを採用することで、ある程度まで対応することが可能なため、今後も人気が衰えることはなさそうです。
以上USA Standard Express vol.91でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!
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