週刊デッキウォッチング vol.152 -白青メンター-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: ローグ

首謀者の収得約束の刻途方もない夢

 当時人気を博した、プロツアー『イニストラードを覆う影』Jon Finkelが使用した《過ぎ去った季節》コントロールの強さの秘訣は、《闇の誓願》から状況に合わせた除去やプレインズウォーカーを実質2マナでサーチできると同時に、《過ぎ去った季節》という最強のアドバンテージエンジンをも探してこれる点にあった。さすがに現在のスタンダードでこれ自体を再現することは不可能だが、似たようなコンセプトで作られているのがこちらの黒緑コントロールだ。

 《致命的な一押し》《渇望の時》という赤単憎しの単体除去セットに加え、手札破壊との2択でマッチアップに左右されない上に追放なので《再燃するフェニックス》も怖くない《大災厄》まで搭載されているという徹底ぶり。ここにお馴染みの《ヴラスカの侮辱》《ヤヘンニの巧技》《バントゥ最後の算段》といった横並びへの解答を加えれば対戦相手のクリーチャーは根絶やしにできることだろう。

 さらにそれだけでは手札が尽きてしまうところ、《闇の誓願》《過ぎ去った季節》エンジンの魂を継ぐアドバンテージ源として、《約束の刻》からの《オラーズカの拱門》と、《首謀者の収得》からのサイドボードの《途方もない夢》がある。10枚以上も土地が並んだ状態ならば《橋上の戦い》がこれ以上なく頼もしくなることはもちろん、《過ぎ去った季節》に優るとも劣らない手札補充を実現できそうだ。

 赤単とミッドレンジが活躍し、コントロールが押され気味なスタンダードにおいては、ライフを回復できるボードコントロールというポジションは確かに悪くないように思える。チーム混合構築フォーマットのグランプリ・京都2018まで1カ月半、スタンダードのメタゲームはまだまだ研究しがいがありそうだ。

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■ モダン: 白青クロックパーミッション

僧院の導師広がりゆく海謎めいた命令

 プロツアー『イクサランの相克』では青赤パイロマンサーが話題となった。既にマルドゥパイロマンサーでも頭角を現している《若き紅蓮術士》の強みは、たった2マナと軽い割にゲーム決着までのターンの間における単体除去の後引きに対して実質的な効果の減衰をもたらす (除去するのが遅れるとトークンを出し終えてしまっている) という点にあるが、こうした性質をモダン環境攻略のカギと認めるなら、1マナ重いものの《僧院の導師》によっても似たようなコンセプトの実現が可能かもしれない。

 白青メンターとも呼ぶべきこちらのデッキは《氷の中の存在》《若き紅蓮術士》の代わりに《僧院の導師》《聖トラフトの霊》を採用し、動き出しは一回り遅いものの《致命的な一押し》をある程度咎められるので、より豪快かつタフな攻め手となっている。

 また従来の白青コントロールと同様《広がりゆく海》《廃墟の地》でマナベースを攻める動きも併用しており、クロックが早くなっているので土地コンボへの耐性もさらに向上しているものと思われる。

 既に黒緑系のデッキが環境の主役ではないことを見越してか、この手のデッキには通常搭載されている《天界の列柱》が入っておらず、テンポを重視している点も特徴的だ。プロツアーを経て環境が整理されてきたことで、何を重視すべきかとまたそうでないかが明らかになってきた。来週には再び禁止改定もあり、これからグランプリ・京都2018まで、次々と新たなアーキタイプが花開いていくモダンの春が訪れそうな予感だ。

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■ レガシー: ローグ・コンボ

Dance of the Dead世界喰らいのドラゴン歩行バリスタ

 レガシーの「リアニメイト」と言えば《グリセルブランド》を釣り上げるのが通常だが、カードは引けてもその場では勝てないので、逆転のチャンスを許してしまうことにもつながる。ならばどうするか?釣った瞬間に勝てればいいのだ。それを実現するのがこの《世界喰らいのドラゴン》コンボである。

 戦場に出たとき他のすべてのパーマネントを追放し、戦場を離れるとそれらを戦場に戻す《世界喰らいのドラゴン》は、《動く死体》などのエンチャントのリアニ呪文と組み合わせると、パーマネント追放→復帰→追放……という無限ループを発生させる。この際、そもそも《陽焼けした砂漠》が置いてあれば無限ダメージだが、なかったとしても復帰ごとに土地はアンタップ状態で戻ってくるので、マナを浮かせておけば無限マナが生成できる。途中でリアニ呪文の対象を変えてループを止め、生成した無限マナを《歩行バリスタ》《妖精の女王、ウーナ》《木端+微塵》などに注ぎ込んで勝利となる。

 このコンボはループが止められないとゲームが引き分けになるリスクも孕んでいるが、《世界喰らいのドラゴン》《歩行バリスタ》の両方が墓地に落ちていれば、《Dance of the Dead》は+1/+1修正を与えるので《歩行バリスタ》も釣り上げることができ、ループの途中で勝利することができる。またループ状態なら《アゾールの門口》は無限ルーターになるので、途中で《納墓》を引き込めば解決できる。

 《ネクロマンシー》でインスタントタイミングでコンボを仕掛けることもできる。通常のリアニメイトよりコンボパーツが多く、また《再活性》《死体発掘》といった通常のリアニメイトスペルが使えないのが難点だが、派手でかつ確実な勝利を狙えるので、《世界喰らいのドラゴン》を使ってみたい方にオススメのデッキだ。

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 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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