週刊デッキウォッチング vol.158 -気前のいい悪魔王ベルゼンロック様-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだそうです。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「黒赤コントロール」

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悪魔王ベルゼンロック木端+微塵意趣返し

 『ドミナリア』にてついに登場した《悪魔王ベルゼンロック》。リリアナが契約を交わした4体の悪魔のうち最後の1体であり、広大なドミナリア次元を我が物にせんと企む『ドミナリア』のストーリーの黒幕です。もちろんその名に恥じぬ強力な能力を持っていて、6マナ6/6飛行・トランプルというタフなボディに加えて戦場に出た時点で最低でも1枚、もしかしたらそれ以上にたくさんのカードを手札に加えさせてくれます。悪魔の王を名乗るだけあって気前がいいですね。

 このデッキは、そんな《悪魔王ベルゼンロック》を中心としたデッキ構成になっています。「余波」呪文でデッキ内のカードの点数で見たマナ・コストが水増しされているので《悪魔王ベルゼンロック》で2枚、3枚と手札を増やすこともできそうですし、大量に除去呪文が搭載されているのでビートダウンデッキ相手でも高い水準でライフを維持できそうです。

 さすがに採用枚数は絞られていますが、《最古再誕》《意趣返し》といった渋いカードが採用されていることにも注目です。前者はプレインズウォーカーも除去できるのでコントロールデッキを相手にしたときも腐りにくく、後者は追放除去なので神や《屑鉄場のたかり屋》のような除去耐性・盤面復帰能力を持ったカードに対しても機能しますし、《反逆の先導者、チャンドラ》が戦場にいるときにプレイできればほとんどゲームに勝利したも同然でしょう。

 メインボードでビートダウンをメタっている分、サイドボードではコントロールデッキを強く意識していることが伺えます。メインボードの《悪魔王ベルゼンロック》に目を奪われがちですが、こういったフレキシブルさもこのデッキの魅力と言えそうです。

「黒赤コントロール」でデッキを検索

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モダン: 「ウーズコンボ」

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壊死のウーズ献身のドルイド獣相のシャーマン

 ルール文章にとんでもないことが書いてあるカードランキングがあるとしたら、1位は獲れないまでも《壊死のウーズ》はそこそこいい線行ってる気がします。レガシーで《適者生存》を禁止に追いやった前科(《復讐蔦》と共犯)を持ち、統率者戦でも戦場に出てしまえば「はいはい、ウーズね」とプレイヤーたちに速やかにカードを片づけさせるスーパーコンボプレイヤーです。

 もちろんモダンでも《壊死のウーズ》を使ったコンボは研究されています。おそらく最も有名なものは《献身のドルイド》《つまみ食い貯め》による召喚酔いすらも無視した無限マナコンボで、こちらのリストもそのコンボをメインの勝ち筋としてデッキが構築されています。《忌まわしい回収》《獣相のシャーマン》《ジャラドの命令》といったカードは《壊死のウーズ》を探すついでにコンボパーツを墓地に落とすこともでき、コンボの仕込みに無駄が生じにくいのもこのデッキの魅力の一つです。

 さらにこちらのリストでは《療治の侍臣》も採用されており、墓地対策をされてしまったり《真髄の針》《壊死のウーズ》を指定された場合でも無限マナコンボを決めることができるようになっているようです。先に述べたようにこのデッキではクリーチャーを探す手段は多数あるので、意外と《壊死のウーズ》に頼らないルートの発生率も高そうです。

 また、晴れる屋のデッキ検索によるとデッキ製作者のMinobe Yoshihiro氏は4年前からウーズコンボを使い続けているようです。好きなデッキを使い続けられる、というモダンの魅力を最も体現している人物かもしれません。

「ウーズコンボ」でデッキを検索

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レガシー: 「ローグ・コントロール」

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復讐の亜神集団的蛮行アズカンタの探索

 ニッチなファンが多いカード、と言われるといくつかの候補が思い浮かびますが、《復讐の亜神》はその一つと言えそうです。モダンやレガシーなどで稀に見かける1枚ですが、今回は札幌で《復讐の亜神》入りのコントロールが活躍していたようです。

 《直観》を通したあと《死儀礼のシャーマン》《Lake of the Dead》を駆使して5マナを捻出し、《復讐の亜神》を叩きつけるのが理想的なゲーム展開。他にも《思考掃き》《アズカンタの探索》などで《復讐の亜神》を探しつつ墓地を肥やすことができるカードも多数採用されており、5マナが出せない状況でも《黄金牙、タシグル》《墓忍び》によるビートダウンが可能になっています。

 また、墓地が肥えやすいというデッキの性質から《未練ある魂》も採用されています。サイドボード後は《盲信的迫害》《梅澤の十手》などのカードを入れることでスピリット・トークンによるビートダウン戦略も可能と、見かけ以上に様々な相手と渡り合うことができそうです。墓地対策をされてしまった場合でも、《復讐の亜神》は5マナ5/4飛行・速攻と戦闘力十分なのでサイドボード後も活躍できるかもしれません。

 ところで本当に記事の内容とは全然関係ないんですけど、《復讐蔦》にせよ《復讐の亜神》にせよ、「復讐」って言うわりにほとんどの場合自分で墓地に落として自分で釣り上げてるんだから対戦相手は何も悪くないですよね。《マッチポンプの亜神》が正しい気がします。

「ローグ・コントロール」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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