週刊デッキウォッチング vol.162 -職人のこだわりデッキ2018-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「ローグ」

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艦の魔道士、ラフ・キャパシェン模範となる者、ダニサ・キャパシェン再鍛の黒き剣

 伝説のクリーチャーといえば、複数枚並べることができないという弱点はあるものの、その分個々のスペックが通常のクリーチャーよりも高めに設定されていることが多いです。今回ご紹介するこちらのデッキはそんな伝説のクリーチャーを贅沢に詰め込んだデッキで、《艦の魔道士、ラフ・キャパシェン》のように「歴史的」シナジーを狙えるクリーチャーも採用されています。

 メインボード・サイドボード合わせても非伝説のクリーチャーは4枚のみで、他は全て伝説のクリーチャーでまとめられています。重ね引きをケアしてか1枚挿しのカードが多いですが、それも相まってハイランダーデッキのように毎ゲーム違った展開のゲームがプレイできそうですし、派手なカードが多いのでデッキを回すのがめちゃくちゃ楽しそうです。

 キーカードと思われる《再鍛の黒き剣》のテキストを覚えている人はそれほど多くないかもしれません。これはいわゆる「私をクリーチャーにしてカード」の亜種で、モデルとなっているのはおそらく《再鍛の黒き剣》の正統な持ち主の1人であった《黒き剣のダッコン》なのでしょう。パワーとタフネスに修整を与えるだけのシンプルな装備品ですが、何しろその修整値が大きく、装備コストも伝説のクリーチャーだらけのこのデッキなら(3)のみとお手軽に10/10超えのフィニッシャーを生み出せそうです。

 いろいろと書きましたが、何といってもこのデッキの最大の魅力はリストを見ているだけでニヤけてしまうくらい豪華なクリーチャー陣でしょう。工夫一つで好きなカードや使ってみたいカードを詰め込んでデッキを組むことができるのもマジックの魅力の一つ。プロツアーも終わって環境が煮詰まってきた今だからこそ、逆にこういったデッキを組んで思いっきり楽しむのも楽しそうです。

「ローグ」でデッキを検索

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モダン: 「黒単」

※2018年6月22日 : デッキリストの誤りを訂正いたしました

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戦慄の影アスフォデルの灰色商人ファイレクシアの闘技場

 『ドミナリア』のトリプルシンボルカードといえばどうしても《ゴブリンの鎖回し》《鉄葉のチャンピオン》のイメージが強いですが、スタンダードという枠を飛び出せば他のカードにも活躍の可能性は残されています。中でも往年の強カードとして知られる《ナントゥーコの影》のマイナーチェンジ版、《疑念の影》がモダンの黒単デッキの新戦力として迎えられたと言われても不思議はないでしょう。

 このデッキはいわゆる「黒単信心」と呼ばれるアーキタイプで、黒の色高速が強いパーマネントを大量に並べて《アスフォデルの灰色商人》で一気にライフをドレインするデッキです。従来3マナ域には《ゲラルフの伝書使》《吸血鬼の夜鷲》などが採用されていましたが、ここでは《アスフォデルの灰色商人》を引けなかった場合でも単体でフィニッシャーになれる《戦慄の影》が採用されているようです。

 他にも『イクサランの相克』の《帆凧の掠め盗り》が入っていたり、黒単も日々グレードアップしていることが伺えます。単色デッキながら自分好みに調整できる余地も多く、フェッチランドやギルドランドなどが必要ない分他のデッキよりも安価に組むことができるので、モダン入門者にもオススメのデッキと言えるかもしれません。

 ところで単色デッキファンは各色にいますが、中でも黒単は一番コアなファンが多いイメージです(次点は赤単かな?)。単純に黒単信心というアーキタイプ自体の強さもさることながら、《戦慄の影》のプレビュー記事でも書いた通り、黒単には何か不思議な引力がありますよね。

「黒単」でデッキを検索

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レガシー: 「デッドガイ・エイル」

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未練ある魂ファルケンラスの後継者屍肉喰らい

 「デッドガイ・エイル」と呼ばれるアーキタイプがあります。レガシーの歴史の中でもかなり歴史が古いデッキの一つで、ものすごくざっくり言うと“白黒のミッドレンジ”という感じでしょうか。古くは「ピキュラ黒」、続いて「WB Confidant(白黒《闇の腹心》)」、さらに後の世で「WB Mystic(白黒《石鍛冶の神秘家》)」などなど、呼ばれる名前がコロコロ変わってきたデッキです。そのためか、このアーキタイプを使用している人はデッキ名にこだわりを持っている人が多いイメージ。まぁ何が言いたいかっていうと、「デッドガイ・エイル」ってデッキ名かっこいいですよね。

 さて、このデッキでは俗にデッドガイ・エイルと呼ばれるデッキで多く採用されている《石鍛冶の神秘家》《トーラックへの賛歌》《ヴェールのリリアナ》は採用されていません。パワーカードでゴリ押すというよりも、《未練ある魂》を中心に《陰謀団式療法》《盲信的迫害》などあくまで横並び戦略と相性のいいカードで戦いたいという意志が感じられます。

 他にも《ファルケンラスの後継者》のような少し変わったカード選択が目立ちます。2種7枚の「フラッシュバック」呪文が採用されているこのデッキではアドバンテージを失うことなく変身することが可能で、スピリットトークンたちとともに空から攻めることができます。《名誉回復》《墓忍び》《屍肉喰らい》《墓所這い》といったチョイスもオールドスクール感があっていいですね。

 禁止カードが出ない限り好きなカードを使い続けられるのはレガシーの最大の魅力の一つ。みなさんもぜひ、こだわりのデッキやこだわりのカードを使って遊んでみてはいかがでしょうか?

「デッドガイ・エイル」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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