週刊デッキウォッチング vol.154 -もっと究極生命体魂剥ぎ-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 恐竜

殺戮の暴君先手+必勝不撓のアジャニ

 スタンダードの「恐竜」デッキについて、これまでvol.137では「先手必勝ダイナソー」を、vol.150では「激昂ダイナソー」を紹介してきたが、本日紹介するのはその2つのデッキのコンセプトをミックスした、ナヤカラーの《殺戮の暴君》《先手+必勝》デッキとなっている。

 《致命的な一押し》《削剥》に勝るとも劣らない除去範囲を持つ《無謀な怒り》は、「激昂」持ちのクリーチャーと組み合わせることでさらにアドバンテージまでも獲得できる除去となる。《チャンドラの螺旋炎》はあまり採用されているのを見かけないが、赤単対策になりつつ効率の良い「激昂」達成も狙えるいぶし銀のカードだ。

 さらに《不撓のアジャニ》はドローソースと万能除去を兼ねており、《切り裂き顎の猛竜》と合わせて尽きないリソースで対戦相手に対処を迫る。カードを引いていれば、そのうち《殺戮の暴君》《先手+必勝》のセットが揃うことだろう。

 ビートダウン、ミッドレンジ、コントロールと様々なポジションのデッキが入り乱れて混沌としているスタンダード環境を勝ち抜くためには、序盤・中盤・終盤とタフに戦い抜くだけの安定性と継戦能力、そして何よりインタラクションに屈しない強烈な決定力が必要となる。恐竜デッキ活躍のためのカギは、やはり《先手+必勝》にこそあるのかもしれない。

「恐竜」でデッキを検索

■ モダン: ローグ

魂剥ぎドラグスコルの肉裂き原初の夜明け、ゼタルパ

 グランプリ・リヨン2018では《魂剥ぎ》デッキが2日目に進出し、最終的に9勝6敗の成績を残したことで話題となった。この連載ではvol.4以来の登場となる《魂剥ぎ》だが、本日紹介するこちらのデッキはそのレシピを原型としつつも、2スロット以上の独自の調整を加えたものだ。

 「探査」で追放するクリーチャーの定番だった《ドラグスコルの肉裂き》に加え、単体で「飛行、二段攻撃、警戒、トランプル、破壊不能」と5つの能力を持つ《原初の夜明け、ゼタルパ》が『イクサランの相克』で登場したことで、以前よりもデッキが飛躍的に強化されている。

 また、《ドラグスコルの肉裂き》《原初の夜明け、ゼタルパ》ではカバーできない「呪禁」と「速攻」の付与が課題となるところ、「サイクリング」でキーカードを探しにいきつつ墓地に落とせる《縞カワヘビ》と、《極楽鳥》などのマナクリーチャーに対処できる《狂信的扇動者》を採用している点が特徴的だ。

 《バザールの大魔術師》は生き残れば爆発的な勢いで「探査」の材料を墓地に送り込める。話題の《精神を刻む者、ジェイス》など無視して、「呪禁、飛行、速攻、二段攻撃、警戒、トランプル、絆魂、破壊不能」の力で相手を殴り倒してしまおう。

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■ レガシー: ペインター

絵描きの召使い意志の力発明品の唸り

 vol.146で紹介したデッキもそうだったように、「ペインター」はそれ自体無色のカードの2枚コンボではあるものの、一般的には赤単で組まれることが多い。それはアーティファクトを多用するために《ゴブリンの溶接工》との相性が良いことや、《絵描きの召使い》の色指定によりメイン採用の《紅蓮破》を最強のカウンター呪文にすることが可能だからだ。だが、もしそうした点を上回るメリットが他の色によって供給可能だとしたらどうだろうか?「ペインター」デッキは、その別の色によって組まれてしかるべきと言えるだろう。

 青単の「ペインター」となっているこちらのデッキは、モダンのランタンコントロールでも活躍している《発明品の唸り》によってインスタントタイミングでコンボパーツをサーチできる点に特徴がある。また、《粗石の魔道士》《Transmute Artifact》によって状況に合わせたアーティファクトを探し出せるのも魅力的だ。《虚空の杯》があるので《渦まく知識》は使えないが、手札補充は《知識の渇望》に任せておけば安心だし、《発明品の唸り》経由なら自分の《虚空の杯》「X=1」の上からコンボを決められる。

 だが、青単であることの何よりのメリットはやはり《意志の力》が使えるという点が最も大きいだろう。さらに元から《古えの墳墓》デッキであるということで、《モックス・ダイアモンド》と合わせて2ターン目に着地する《精神を刻む者、ジェイス》も勝ち手段のオプションとして強力極まりない。

 特殊地形を多用するデッキに対する《血染めの月》《基本に帰れ》で代替できる。アーティファクトとの相性の良さを考えれば、青い「ペインター」にも確かにかなりの合理性があると言えそうだ。

「ペインター」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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