週刊デッキウォッチング vol.155 -昇殿白ウィニー-

伊藤 敦

 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。

■ スタンダード: 白単

軍団の上陸霊気装置の展示征服者の誇り

 《マグマのしぶき》《致命的な一押し》《削剥》《ヴラスカの侮辱》etc……スタンダードには優秀な除去が溢れており、こうした除去の嵐を潜り抜けてクリーチャーをレッドゾーンに送り込むのはなかなかに困難だ。だが、こうした単体除去にも「除去耐性」「横並べ」といった弱点が存在する。その点このデッキは、それらの除去の弱点を的確に突くことを意識したデッキと言える。

 《軍団の上陸》含めて19枚の1マナ域クリーチャーたちは、《マグマのしぶき》《致命的な一押し》に対してもテンポ損しないことはもちろん、《軍団の上陸》の「変身」をも容易にする。特に白単から速攻で走ってくる《ボーマットの急使》は対戦相手にとって計算外の動きを引き起こしそうだ。

 さらに2マナ域は除去耐性のある《アダントの先兵》《屑鉄場のたかり屋》を併用しつつ、《霊気装置の展示》まで搭載して対戦相手に単体除去の利をとらせない。

 横に並べたクリーチャー陣を「昇殿」達成した《征服者の誇り》で全体強化してやれば一気にライフを押し込むことが可能となる。「1→1+1」の動きから始まるスタンダードらしからぬマナカーブで、急戦の備えがない対戦相手を屠ってしまおう。

「白単」でデッキを検索

■ モダン: テゼレッター

発明品の唸り罠の橋虚空の杯

 モダンの「ランタンコントロール」《罠の橋》による攻撃ロックと《洞察のランタン》《写本裁断機》によるドローロックを組み合わせ、それらのパーツを《発明品の唸り》で揃えるというものだが、アーティファクトを割る手段がないデッキに対しては《罠の橋》だけでもハーフロックが成立するし、仮に割る手段があっても複数枚設置したり《溶接の壺》を置いておくことでケアできる。ならば単体では機能しづらい《洞察のランタン》《写本裁断機》を抜き、単体で機能するコントロール的性質を持つアーティファクトで安定性を高めるというアプローチも一定の合理性を有すると言えるだろう。

 《洞察のランタン》《写本裁断機》という迂遠なアプローチを用いないことで、《虚空の杯》というより直接的なインタラクションを搭載できるようになっている。《トレイリア西部》でサーチできるオプションでもあり、《罠の橋》による攻撃ロックから抜け出すための方法それ自体を封じにいくことが可能だ。

 《罠の橋》で攻撃ロック状態にした後は、《世界のるつぼ》《幽霊街》で土地嵌めするもよし、《瓶詰めの回廊》でアドバンテージを取って《求道者テゼレット》《ギラプールの霊気格子》につなげるもよし。《魔女封じの宝珠》まで設置してしまえば飛び道具による頓死も防ぐことができる。

 「ランタンコントロール」のようにぶん回りのある能動的なロックというよりは状況解決手段に優れた受動的なロックで、特に《幽霊街》《廃墟の地》の採用でトロン耐性が高まっている点が魅力的と言える。私自身このデッキにリビングエンドとライブラリーアウトでそれぞれ当たって2回ともボコボコにされたということもあり、新世代のロックデッキとして、モダンの定番デッキに名を連ねる日もそう遠くないかもしれない。

「テゼレッター」でデッキを検索

■ モダン: エルドラージ

宝石の洞窟永遠の災い魔血清の粉末

 「エルドラージの冬」と呼ばれたプロツアー『ゲートウォッチの誓い』を経て《ウギンの目》が禁止カードに指定されて以降、モダンのエルドラージデッキは様々な進化を辿ってきた。バントエルドラージ、エルドラージトロン、赤緑エルドラージ……だがここにきて原点回帰の動きも見られている。そう、無色エルドラージの復権だ。

 無色でも加速の方法は《エルドラージの寺院》だけに限られない。昔ながらの《猿人の指導霊》はもちろん、《宝石の洞窟》まで使って3ターン目の《難題の予見者》と4ターン目の《現実を砕くもの》を実現する。

 それだけでは手札の引きムラがあまりに激しくなってしまうが、《血清の粉末》がマリガンハンドを軽減する。さらに《宝石の洞窟》《血清の粉末》追放した《永遠の災い魔》は追放領域からプレイできるので、追放することがむしろアドバンテージにつながる。普通に戦闘で墓地に落ちたとしても、《屍肉あさりの地》を使って墓地から追放することで復活できる。

 《難題の予見者》《現実を砕くもの》といった固定パーツは変わらないにせよ、脇を固めるパーツ次第でメタゲームに合わせてゲームレンジを調整できるのがエルドラージの強みだ。《血編み髪のエルフ》《精神を刻む者、ジェイス》の解禁でミッドレンジ帯のうまみがなくなりつつある今なら、こうしたアグロのアプローチは確かに有効かもしれない。

「エルドラージ」でデッキを検索

 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!

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