週刊デッキウォッチング vol.159 -世界を縮めてしまった不朽の理想-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「青黒緑コントロール」

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墓場波、ムルドローサヨーグモスの不義提案穢れた血、ラザケシュ

 伝説のソーサリーはそのマナコストに比して強力な能力を持っています。たとえば《ヤヤの焼身猛火》なら《溶岩噴火》3回分だし、《ヨーグモスの不義提案》《戦慄掘り》《ゾンビ化》(厳密にはプレインズウォーカーもリアニメイトできるので《ゾンビ化》よりもはるかに強い)なので、本来なら赤含む6マナ+α相当の動きを黒シングルシンボルの5マナソーサリー1枚で行えるというテンポとカードアドバンテージの鬼です。

 そんな強力な《ヨーグモスの不義提案》をフィーチャーしたのがこのデッキ。伝説のソーサリーを唱えるための条件を満たすべく、《遵法長、バラル》はじめ伝説のクリーチャーやプレインズウォーカーを13枚も搭載されており、最速で4ターン目にリアニメイトを開始できます。

 また、リアニメイトプランに完全に依存しているわけではなく、対戦相手の手を遅らせる除去や打ち消しが採用されています。釣り針を引けないときにも《墓場波、ムルドローサ》で墓地からクリーチャーやプレインズウォーカーを唱えたり、《殺戮の暴君》《原初の飢え、ガルタ》でビートダウンができるので、コンボ要素のあるミッドレンジ~コントロールといったデッキになっています。

 他にも《穢れた血、ラザケシュ》など趣味のいいクリーチャーが採用されています。仕事を終えた《貪欲なチュパカブラ》を生け贄に捧げて《ヨーグモスの不義提案》をサーチしたり、あるいはサイドボードカードを探したり、《穢れた血、ラザケシュ》は戦場に出てしまいさえすればやりたい放題です。その莫大なマナコストのせいで見向きもされなかったようなクリーチャーも存分に使い倒せる、というのもリアニメイトデッキの醍醐味の一つですね。

「青黒緑コントロール」でデッキを検索

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モダン: 「不朽の理想」

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不朽の理想圧倒的輝き精神の檻、迷心

 いつの時代にもマナ加速から最速でフィニッシャーを唱えるというデッキは見られるものです。そういったデッキのフィニッシャーは往々にして《解放された者、カーン》だったり《原始のタイタン》だったり《むかつき》だったりと様々ですが、しかしこれまで《不朽の理想》を最速で唱えようと思ったプレイヤーがいなかったのはなぜでしょう?(いたらごめんね)

 このリストでは《睡蓮の花》《五元のプリズム》といったお馴染みの面々に加えて《突沸の器》までもが採用されており、何が何でも4ターン目に《不朽の理想》を唱えよう!という意思が感じられます。《不朽の理想》は一度唱えてしまえばあとはオートパイロットモード。《鳩散らし》《圧倒的輝き》を状況に応じてサーチしロックした後、《ドラゴン変化》でゲームセットというお手軽マジックが開幕されるという寸法です。

 他にも面白いのが《精神の檻、迷心》の採用です。《亡霊の牢獄》の代わりに採用されている1枚で、《精神の檻、迷心》《圧倒的輝き》を並べれば対戦相手のクリーチャーを完全に無力化できます。《亡霊の牢獄》だとマナさえ払えば攻撃ができますが、この2枚なら完封が可能という発想には恐れ入りました。

 また、このデッキの1~3ターン目の主要なアクションであろう《睡蓮の花》《五元のプリズム》を並べて《手練》などで手札を整える姿はぱっと見「アドグレイス」っぽく見えるというのもポイントかもしれません。一応マナ基盤がヒントになり得るんですが、それにしたって普通これらのカードを見たうえで《翻弄する魔道士》などでカードを指定するなら、《不朽の理想》とは言わないでしょうし。この擬態能力もこのデッキの強みかもしれませんね。

「不朽の理想」でデッキを検索

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レガシー: 「ザ・スパイ」

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欄干のスパイ血の炎、ガルナ研究室の偏執狂

 デッキの性質上、デッキリストはほぼ不変と思われていた「ザ・スパイ」に『ドミナリア』の新カードが加入しています。その新戦力は《血の炎、ガルナ》《欄干のスパイ》《地底街の密告人》でライブラリーを全て墓地に送るところまでは一緒ですが、その後《ナルコメーバ》を生け贄に捧げて《戦慄の復活》《血の炎、ガルナ》を釣り上げることで、そのETB能力によって墓地にある全てのクリーチャーカードを手札に加えることが可能になっています。

 手札に大量のクリーチャーを戻したあとは《Elvish Spirit Guide》《猿人の指導霊》によってマナを伸ばして《野生の朗詠者》で青マナを捻出。《研究室の偏執狂》をプレイして《通りの悪霊》を「サイクリング」すれば1ターンでゲームに勝利することができます。

 「え? それだったら《栄光の目覚めの天使》でもキルターン変わってなくない?」という声が聞こえてきそうですが、従来のリストよりもコンボパーツが減っていることが最大のポイントです。墓地に落ちていなくてはいけないカードが減っている分安定性が増していたり、《陰謀団式療法》の枚数を減らすことができたのもポイント。このリストでは代わりに《ギタクシア派の調査》《通りの悪霊》《否定の契約》などが4枚ずつ採用されており、柔軟性が増しています。

 依然として墓地対策や《意志の力》に弱いという弱点は変わりませんが、スロットに余裕ができたことでデッキリストに多少の幅を持たせることができるようになったという点が大きいでしょう。今後の変化にも注目ですね。

「ザ・スパイ」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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