週刊デッキウォッチング vol.167 -冷やしモダンはじめました-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「霊気貯蔵器」

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練達飛行機械職人、サイ霊気貯蔵器逆説的な結果

 今回ご紹介するのは、神挑戦者決定戦の実況などでお馴染みの細川 侑也さん謹製・青単ストームデッキ。0マナアーティファクトを連打して《霊気貯蔵器》でフィニッシュするこのデッキは、『基本セット2019』で《練達飛行機械職人、サイ》を得たことで強化されています。

 この《練達飛行機械職人、サイ》がどれだけデッキに影響を及ぼしたのか? それは、これまでメインの勝ち手段だった《霊気貯蔵器》が2枚まで枚数が減っていることからも明らかです。「アーティファクト呪文を唱えるたびに飛行機械・トークンを生み出す」という誘発型能力は何度もアーティファクトを出し入れするこのデッキにとって非常に条件が緩く、あっという間に大量のトークンが並ぶことになるので追加の勝ち手段として申し分ありません。

 また、《練達飛行機械職人、サイ》のタフネスが4であることも非常に重要です。この手のデッキの天敵だった《削剥》《練達飛行機械職人、サイ》のことは除去できませんし、その周りにあるアーティファクトを1~2枚割ったところで《練達飛行機械職人、サイ》自体を処理できなければあっと言う間にトークンの軍勢に押し潰されてしまうことでしょう。

 細川さん自身のブログにはデッキ作成の経緯や詳細な回し方、カード選択の理由などが載っています。今回ご紹介した青単ストームにご興味のある方はぜひ「ゆうやん 青単ストーム」などでGoogle検索してみましょう。

「霊気貯蔵器」でデッキを検索

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モダン: 「赤単氷雪」

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冠雪の山火の血脈、サルカン栄光をもたらすもの

 各地で酷暑が続いていますね。埼玉県の熊谷では国内の観測史上最高気温の41.1℃を記録しただとか、都内でも青梅で40℃を超えただとか。ちょっとした災害レベルの暑さですが、こんな日々がまだまだ2~3週間は続く見込みだそうです。みなさんも熱中症にはくれぐれも気を付けていきましょう。

 さて、マジックでは現実の地獄のような暑さに反して涼し気……というより極寒の氷雪をテーマにしたデッキ「赤単氷雪」が勝っていました。グランプリ・ダラス2016で優勝して大きな話題を呼びましたが、今回『基本セット2019』で新たな相棒、《火の血脈、サルカン》を得たことでリストが大幅に変化しています。

 これまで《ゴブリンの熟練扇動者》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》《熱烈の神ハゾレト》といったクリーチャーがフィニッシャーを務めていましたが、本デッキでは10枚のドラゴンがその枠に収まっています。《火の血脈、サルカン》はこれらのドラゴンをマナの面でサポートしてくれるのはもちろん、ゲーム後半には(《雪崩し》《占術の岩床》を安定運用するために採用されている)24枚とやや多めの土地をルーティングしてマナフラッドを防いでくれます。

 しかし、一見役割の狭そうな《火の血脈、サルカン》が早速モダンで活躍するようになるとは正直意外でした。やはり3マナのプレインズウォーカーが秘めている可能性は無限大ですね。

「赤単氷雪」でデッキを検索

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レガシー: 「親和」

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アンティキティー戦争刻まれた勇者アーティファクトの魂込め

 「レガシーで親和? へぇ~(無関心)」なんて声が聞こえてきそうですが、ちょっとよくリストを見てみてください。《頭蓋囲い》《電結の荒廃者》もいませんよ! 今回ご紹介するのは、パッと見親和のようでいて実は全然親和と異なる《アンティキティー戦争》ストンピィ」です。

 《古えの墳墓》《水蓮の花びら》《実物提示教育》デッキでもよく見かける組み合わせですが、このデッキはそれらに加えて《オパールのモックス》もナチュラルに採用できるのが強み。相手に先んじてマナを伸ばし、《虚空の杯》で対戦相手を縛ったり、素早く《アンティキティー戦争》にアクセスしてⅢ章に備えてアーティファクトの軍勢を用意します。

 《アーティファクトの魂込め》まで採用されているのが興味深いポイント。単に打点を稼ぐだけなら《刻まれた勇者》にも装備できる《頭蓋囲い》の方が良さそうですが、《アーティファクトの魂込め》には《アーティファクトの魂込め》にしかできない仕事――すなわち《意志の力》の餌にすることもできます。これによってブルーカウントも23枚と《意志の力》を安定して運用できる数字になっており、自分より速いコンボデッキに対する耐性を得ているわけですね。

 また、従来の親和と異なり《無のロッド》《石のような静寂》を置かれても(多少は苦しいけど)即負けになるほどの影響はありません。これも「《アンティキティー戦争》ストンピィ」型の利点の一つと言えるかもしれませんね。

「親和」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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