週刊デッキウォッチング vol.168 -ムンダと愉快な仲間たち-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「白単ビートダウン」

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輝かしい天使黎明をもたらす者ライラベナリアの軍司令

 マジックで最も人気のあるクリーチャータイプの一つ、天使。美麗なイラストはもちろんのこと、古来より《セラの天使》はじめ《賛美されし天使》《怒りの天使アクローマ》《悪斬の天使》、最近だと《大天使アヴァシン》などなど一時代を築いたフィニッシャー級の強力なクリーチャーが多数存在するのも天使の魅力の一つです。そしてこの14枚もの天使が搭載されたデッキでは、そんな天使たちの競演が見られるかもしれません。

 『基本セット2019』から注目のレアである《輝かしい天使》が採用されています。多くの場合3マナ3/3飛行として運用されることになるでしょうが、《黎明をもたらす者ライラ》の持つインクの染みのようなロード能力があれば4/4飛行・絆魂という驚異的なスペックへと変貌し、自身の誘発型能力の誘発条件を満たしやすくなります。もちろん、《黎明をもたらす者ライラ》が単体で《輝かしい天使》の誘発条件を満たしてくれることも見逃せません。

 主戦力を担う4~5マナ域の天使にアクセスするまでの間は《善意の騎士》《ベナリアの軍司令》といったクリーチャーが戦線を支えます。《ゴブリンの鎖回し》《鉄葉のチャンピオン》に押され気味ですが、同サイクルの一翼を担う《ベナリアの軍司令》の能力もなかなかのもの。彼がいればクリーチャー戦闘のほとんどを優位に進めることができるようになります。

 また、白という色がサイドボードカードに恵まれた色であることもポイントです。除去や置物破壊、あるいは特定の戦略を完全に否定する《領事の権限》のようなカードがあれば、単色デッキとは思えないほど様々な相手に対して優位に立ち回れるでしょう。天使ファン垂涎のデッキリストですね。

「白単ビートダウン」でデッキを検索

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モダン: 「同盟者」

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ハーダの自由刃カザンドゥの刃の達人待ち伏せ隊長、ムンダ

 今回ご紹介するのは「同盟者」デッキ! モダン広しと言えども同盟者デッキはかなり珍しいデッキです。とはいえ基本的には《ハーダの自由刃》《カザンドゥの刃の達人》《オラン=リーフの生き残り》のような優秀なウィニークリーチャーを多数の同盟者でバックアップしていくリストになりますし、このリストもそれらが4枚挿しされていることからパッと見た瞬間は「ま、そうなるよねぇ」と思ったのですが……待って、何かおかしい奴がいる。《待ち伏せ隊長、ムンダ》

 テキストを覚えていらっしゃらない方も多いと思うので、よーくテキストを読んでみてください。ざっと見ると「はいはい、同盟者が出るたびにライブラリートップ4枚めくって同盟者を手札に加えるとかそういう系ね。まあまあやるじゃん」と早合点してしまいそうになりますが……なんと《待ち伏せ隊長、ムンダ》同盟者の順番を並べ替えるだけで手札には加えません。世の中には《集合した中隊》のようなイカれた4マナのインスタントもあるというのに、どこで差がついたのか。

 と思わずぼやきたくもなりますが、何度でも誘発させることができるライブラリー操作と考えれば案外悪くないかもしれません。4マナをマナカーブの頂点としたこのデッキでは《待ち伏せ隊長、ムンダ》が出せる状況であれば追加の土地や《霊気の薬瓶》は不要牌なのでボトムに送ってしまっても問題はなく、毎ターン必ず同盟者を引き込み「結集」を誘発させることができます。これはある意味モダン界で唯一許された《師範の占い独楽》と言えるでしょう。

 横並び系のデッキは現在「人間」のようなデッキが主流ですが、「人間」デッキの切り札である《教区の勇者》《サリアの副官》に似た能力を持ったクリーチャーをより多く使用できる「同盟者」も、もしかすると今後活躍する可能性があるかもしれません。差別化できる要素として《師範の占い独楽》もとい《待ち伏せ隊長、ムンダ》もいることですし、意外と開拓の余地が残されているのかもしれませんね。

「同盟者」でデッキを検索

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レガシー: 「青黒緑コントロール」

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トレストの使者、レオヴォルド隆盛+下落暗黒の深部

 黒のクリーチャー除去と手札破壊に、青のドローと打ち消し、それに緑の置物破壊。一通りのことを器用にこなすBUGのコンビネーションは古来より人気のある色だったと言います。また、この色の組み合わせは今でこそスゥルタイと呼ばれますが、人によってはヴォラシュカラーだったり、あるいはアナカラーと呼ぶ人もいます。興味があれば調べてみてください。

 ということで今回ご紹介するデッキはスゥルタイカラーのコントロールです。この色のレガシーのデッキといったら《死儀礼のシャーマン》の印象が強いですが、こちらは過去のそれらとは一線を画す新機軸のデッキです。《壌土からの生命》《輪作》《暗黒の深部》パッケージが入っており、《隆盛+下落》のようなオリジナリティのあるカード選択が目立ちます。しかもこのデッキでは《下落》モードしかプレイできません。《瞬唱の魔道士》などを使いまわすのでしょうね。

 また、《悪夢の織り手、アショク》の採用も目を惹きます。相手依存の能力ではありますが、効果的ではない相手に対しては《意志の力》のコストに充てることができますし、運が良ければ《真の名の宿敵》のようなレガシーならではの強力クリーチャーを奪える可能性もあるのはなかなかおもしろそう。

 なんだかごった煮感のあるデッキリストですが、BUGカラーの強力なカードの数々がそれらの個性的なカードを接着しています。好きなカードを使うことができるレガシーならではのデッキリストと言えるかもしれませんね。

「青黒緑コントロール」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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