USA Legacy Express vol.93 -SCG Premier IQ Denver etc.-

Kenta Hiroki


 みなさんこんにちは。

 いよいよ【The Last Sun 2015】本戦が今週末に開催されますね。完全招待制のイベントなためレベルの高いゲームが期待できます。

 さて、今回の記事では【SCG Premier IQ Denver】【SCG Classic Las Vegas】の結果を見ていきたいと思います。



SCG Premier IQ Denver トップ8
~Shardless多数、モダンでお馴染みのあのコンボデッキも~


2015年12月6日

Jake Kempfer
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。


1位 Temur Delver
2位 Shardless Sultai
3位 Esper Stoneblade
4位 UR Twin
5位 Burn
6位 Painter
7位 Shardless Sultai
8位 Shardless Sultai


トップ8のデッキリストは【こちら】


 最近のレガシーの大会としては珍しくMiraclesが不在のトップ8となったSCG Premier IQ Denver。Shardless Sultaiが多数勝ち残り、ANTやLandsなどは今大会では振るわなかったようです。

 しかし、ANTのエキスパートであるCaleb Scherer、Miracles使いのJoe Losset、InfectマスターのTom Rossといった強豪プレイヤーはこぞってスタンダードオープンの2日目に参戦しています。Landsで最近結果を残し続けているChris AndersonもモダンIQをプレイしていたこともあり、やはりレガシーオープンと比べるとプレイヤー層の違いもありメタは違ってくるようです。



SCG Premier IQ Denver デッキ紹介

「Shardless Sultai」「UR Twin」「Painter」



Dylan Nollen「Shardless Sultai」
SCG Premier IQ Denver (2位)

1 《沼》
3 《Underground Sea》
2 《Bayou》
2 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《霧深い雨林》
2 《忍び寄るタール坑》
2 《不毛の大地》

-土地(22)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《タルモゴイフ》
2 《悪意の大梟》
4 《断片無き工作員》

-クリーチャー(14)-
4 《祖先の幻視》
4 《渦まく知識》
2 《思考囲い》
1 《見栄え損ない》
4 《突然の衰微》
2 《Hymn to Tourach》
1 《毒の濁流》
3 《Force of Will》
1 《ヴェールのリリアナ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(24)-
1 《墓掘りの檻》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《真髄の針》
1 《サーボの網》
2 《虚空の力線》
1 《見栄え損ない》
1 《Force of Will》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《誤った指図》
1 《梅澤の十手》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《魂の裏切りの夜》
1 《Hymn to Tourach》
1 《虐殺》

-サイドボード(15)-
hareruya






Michael Lefkof「Shardless Sultai」
SCG Premier IQ Denver (7位)

1 《沼》
3 《Underground Sea》
2 《Bayou》
2 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
2 《霧深い雨林》
1 《忍び寄るタール坑》
3 《不毛の大地》

-土地(22)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《タルモゴイフ》
2 《悪意の大梟》
4 《断片無き工作員》

-クリーチャー(14)-
4 《祖先の幻視》
4 《渦まく知識》
4 《突然の衰微》
2 《毒の濁流》
4 《Force of Will》
1 《森の知恵》
3 《ヴェールのリリアナ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(24)-
3 《思考囲い》
2 《ゴルガリの魔除け》
2 《Hymn to Tourach》
2 《寒け》
1 《見栄え損ない》
1 《外科的摘出》
1 《墓掘りの檻》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《真髄の針》
1 《無のロッド》

-サイドボード(15)-
hareruya



 今大会で最も多くの入賞者を出したShardless Sultai。マナカーブが高めなことと、《突然の衰微》のおかげでフェアデッキの中でも人気のMiraclesに対して強いデッキです。

 妨害手段としてハンデスと《Force of Will》があるものの、「続唱」との相性の問題で《呪文貫き》など軽いカウンターの採用が難しいのと、全体的に遅いデッキなのでコンボに対してはあまり強くないデッキです。


☆Dylan Nollenの注目ポイント

 メインは比較的オーソドックスですが、《見栄え損ない》《毒の濁流》といった除去が多めに採用されているなどコンボよりもフェアなデッキを意識しているようです。

 サイドには多種多用のカードが見られます。《サーボの網》《虚空の力線》は主にLands対策になります。《虚空の力線》は墓地対策なのでReanimateやDredgeに対しても使え、黒マナの出るこのデッキなら普通にキャストすることも可能です。

 《魂の裏切りの夜》はこのデッキにとって厄介なトークンを生み出す《若き紅蓮術士》や単体除去の効かない《真の名の宿敵》対策でElves、Death and Taxes、Infectなどにも効きます。《誤った指図》は主に同系との対戦のためにカードでメインの《Force of Will》1枚と入れ替わります。


断片無き工作員見栄え損ないサーボの網




☆Michael Lefkofの注目ポイント

 Michael Lefkofのリストはメインにハンデスは不採用と思い切った構成です。コンボに対しては半端に対策してもメインでは勝率が低いことからサイドからの勝負のようです。サイドにはメインで不採用のハンデスが多めに積まれています。

 《寒け》もおもしろいチョイスです。バーンはこのデッキが苦手とするマッチで、特にカジュアル寄りのIQのような大会ではカード資産の都合でバーンに遭遇する確率が高いため、それを見越した選択のようです。

 両者のリストに共通している点はメインではコンボよりもフェアデッキとのマッチアップを強く意識していることサイドの墓地対策(主にLands対策)を多く採っていることです。Shardless Sultaiは構成上Delverと異なり小回りが利かず、半端に対策してもメインでの相性はそこまで改善されないことからコンボとの対戦をメインからはそれほど意識しないようです。


思考囲いHymn to Tourach寒け





Scott Davis「UR Twin」
SCG Premier IQ Denver (4位)

2 《島》
2 《山》
3 《Volcanic Island》
1 《Taiga》
1 《Tropical Island》
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
4 《古えの墳墓》

-土地(21)-

4 《詐欺師の総督》
3 《やっかい児》
1 《鏡割りのキキジキ》

-クリーチャー(8)-
1 《否定の契約》
4 《渦まく知識》
2 《目くらまし》
3 《衝動》
4 《Force of Will》
2 《誤った指図》
4 《血染めの月》
4 《欠片の双子》
4 《虚空の杯》
3 《モックス・ダイアモンド》

-呪文(31)-
3 《外科的摘出》
3 《古えの遺恨》
2 《月の大魔術師》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《トーモッドの墓所》
1 《神々の憤怒》
1 《大祖始の遺産》
1 《漸増爆弾》

-サイドボード(15)-
hareruya



 モダンではお馴染みの《欠片の双子》《詐欺師の総督》《やっかい児》を使ったコンボデッキ。Scott Davisのリストはモダンでも良く見かける《瞬唱の魔道士》《ヴェンディリオン三人衆》など追加の勝ち手段は見られず《鏡割りのキキジキ》も搭載したコンボ偏重型です。

 モダンよりも妨害スペルの強力なレガシーで4マナのソーサリースピードのコンボを決めるのは困難を極めますが、決まればほぼ確実にゲームに勝つことができるのが魅力です。


☆注目ポイント

 モダン以上にカウンターを初めとした妨害スペルが強力なレガシーにおいて《欠片の双子》を決めるのは困難な印象がありますが、デッキには《Force of Will》《誤った指図》《否定の契約》《目くらまし》といったコンボを無理やり通す手段が多数搭載されています。カウンターされない除去の《突然の衰微》《誤った指図》で対策可能です。変更する対象も最悪自分の《モックス・ダイアモンド》に向けられます。

 このデッキの勝ち手段はコンボだけではありません。メインに4積みされている《血染めの月》は特殊地形に依存したデッキが多く存在するレガシーでは、これを出すだけで勝利がほぼ確定するマッチが多く存在します。《モックス・ダイアモンド》《古えの墳墓》によって1ターン目に出すことも可能です。


欠片の双子詐欺師の総督誤った指図


 サイドには追加の《血染めの月》として《月の大魔術師》も見られます。クリーチャーなので除去されやすく見えますが、相手の方も《クローサの掌握》《摩耗+損耗》などエンチャントを割るカードをサイドインしてくることが予想されるので、場合によってはクリーチャーである《月の大魔術師》の方が対処されにくかったりする可能性もあります。

 また、このデッキには多くのデッキがメインから採用している《虚空の杯》もフル搭載されています。「X=1」で出したとき、こちらの被害を最小限にするために2種類目のドロースペルには《思案》の採用は見送られ《衝動》が選択されています。プリズン要素に双子コンボをハイブリットしたカードプールが広大なレガシーらしいデッキなので、他と少し違ったデッキを試してみたいという方にもお勧めです。


月の大魔術師虚空の杯衝動





Benjamin Wissing「Painter」
SCG Premier IQ Denver (6位)

5 《山》
3 《沸騰する小湖》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《大焼炉》
4 《裏切り者の都》
3 《古えの墳墓》

-土地(19)-

3 《ゴブリンの溶接工》
1 《渋面の溶岩使い》
4 《絵描きの召使い》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《呪文滑り》
3 《帝国の徴募兵》
3 《猿人の指導霊》
1 《月の大魔術師》
1 《特務魔道士ヤヤ・バラード》

-クリーチャー(18)-
4 《紅蓮破》
3 《赤霊破》
1 《ギャンブル》
1 《稲妻》
4 《血染めの月》
1 《ライオンの瞳のダイアモンド》
4 《丸砥石》
3 《師範の占い独楽》
2 《罠の橋》

-呪文(23)-
3 《虚空の力線》
3 《アメジストのとげ》
2 《トーモッドの墓所》
1 《沸血のドワーフ》
1 《大歓楽の幻霊》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《躁の蛮人》
1 《罠の橋》
1 《三なる宝球》
1 《槌のコス》

-サイドボード(15)-
hareruya



 《絵描きの召使い》《丸砥石》のコンボによって相手のライブラリーを一瞬で空にしてライブラリーアウトによる勝利を狙うPainter。

 このデッキもマナ加速から1ターン目に 《血染めの月》を出して特殊地形に頼ったSultaiやLandsといったデッキをロックするというコンボとは別の勝ち手段を採用しています。

 《帝国の徴募兵》によってコンボパーツの《絵描きの召使い》や相手をロックする手段である《月の大魔術師》をサーチすることが可能で《師範の占い独楽》もあるので《渦まく知識》のようなドロースペルがなくてもデッキがある程度安定して回るような仕組みになっています。


☆注目ポイント

 《絵描きの召使い》の能力によって《紅蓮破》《赤霊破》1マナの《対抗呪文》または《名誉回復》となります。青いデッキの多いレガシーでは無理なく《紅蓮破》《赤霊破》をメインから積めるのは大きなアドバンテージでしょう。

 コンボを決めずとも相手のデッキやマナの状況によっては《血染めの月》を通すだけでほぼ勝ちが確定します。《罠の橋》は相手の攻撃を制限しコンボを決めるための時間を稼いでくれるカードです。


絵描きの召使い紅蓮破血染めの月


 相手の行動を制限するプリズン要素はサイド後に《アメジストのとげ》《三なる宝球》などによってさらに強化されます。

 《槌のコス》はMiraclesのような《血染めの月》の効果が薄いデッキに対する追加の勝ち手段となります。4マナなので《相殺》を潜り抜けやすいのも強みです。Sultaiなどに対しても《突然の衰微》が効かない勝ち手段として使えます。


アメジストのとげ三なる宝球槌のコス




SCG Classics Las Vegas トップ8
~Sneak and ShowやANTなどコンボがトップ8の半数を占拠~


2015年12月13日

1位 Grixis Delver
2位 ANT
3位 Shardless Sultai
4位 Sneak and Show
5位 Omni-tell
6位 Abzan Maverick
7位 Grixis Delver
8位 ANT

トップ8のデッキリストは【こちら】

 Sneak and Show、Omni-tell、ANTとコンボが上位に多く見られた【SCG Classic Las Vegas】。優勝は【GP Seattle-Tacoma】でも準優勝する活躍を見せたGrixis Delverでした。



SCG Classics Las Vegas デッキ紹介

「Grixis Delver」



Wes Kalbus「Grixis Delver」
SCG Classics Las Vegas (1位)

3 《Volcanic Island》
2 《Underground Sea》
1 《Tropical Island》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》

-土地(18)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《秘密を掘り下げる者》
2 《グルマグのアンコウ》
4 《若き紅蓮術士》

-クリーチャー(14)-
4 《渦まく知識》
4 《目くらまし》
4 《Force of Will》
4 《稲妻》
4 《もみ消し》
4 《ギタクシア派の調査》
4 《思案》

-呪文(28)-
4 《陰謀団式療法》
2 《紅蓮破》
2 《外科的摘出》
2 《水没》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《暗黒破》
1 《硫黄の渦》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》

-サイドボード(15)-
hareruya



 《時を越えた探索》の禁止によりGrixis系のデッキは衰退するかと予想されましたが、禁止改定後に開催された【GP Seattle-Tacoma】でアメリカのプロのChristian Calcanoが使用し準優勝を収めました。《不毛の大地》《もみ消し》といったマナ否定戦略と《目くらまし》をフル搭載することでテンポ寄りの構成になっており、GrixisカラーのDelverは禁止改定後の環境でも通用するデッキだということが証明されました。

 サイドには《陰謀団式療法》《ヴェンディリオン三人衆》《外科的摘出》といったカードが積まれているため、今大会のようにコンボの多いメタに強い選択です。


☆注目ポイント

 《若き紅蓮術士》《タルモゴイフ》のような単体としてのパワーはないものの、墓地対策に引っかからず、トークンを生み出す能力によって単体除去が中心のSultaiなどに対して強いクリーチャーです。《もみ消し》《目くらまし》といった受動的なスペルが増え、「探査」ドローのように手札にスペルを補充するスペルを失ったことで以前よりは爆発力は下がりましたが、限定的な効果を持つスペルも最低限エレメンタルトークンを製造する手段として使えます。

 《死儀礼のシャーマン》によるマナ加速もこのタイプのデッキにとっては重要で、展開の遅れを気にせず《もみ消し》を構えたり《目くらまし》の代用コストを支払うことを可能にします。《死儀礼のシャーマン》の墓地対策能力はReanimatorやDredge、Temur Delver、Loam系など幅広いマッチアップで役に立ち、ライフロス能力は長期戦に持ち込まれても最後の数点のライフを削ることができます。


もみ消し目くらまし死儀礼のシャーマン


 《グルマグのアンコウ》は軽いスペルを多数採用したこのデッキではほぼ1マナ5/5として扱うことが可能で、Sultaiなどが《若き紅蓮術士》対策にサイドに忍ばせてあることが多い《ゴルガリの魔除け》など「-1/-1」系に強く、《突然の衰微》で落ちないのも強みです。

 サイドの《真髄の針》は主に《師範の占い独楽》《騙し討ち》対策に使われるカードで、《ギタクシア派の調査》と相性の良いカードの1枚です。《硫黄の渦》Miraclesのような遅いデッキ相手にサイドインされます。3マナなので《相殺》を掻い潜りやすく、Miraclesはクリーチャー以外のパーマネントを除去できるカードが少ないため対処されにくいでしょう。

 《暗黒破》は小型クリーチャーの除去に使われるカードで、「発掘」は《死儀礼のシャーマン》や「探査」のために墓地を肥やす役割も果たします。


グルマグのアンコウ真髄の針暗黒破




総括

 Shardless SultaiやLandsといった特殊地形を多用するデッキが多く存在するため、マナ加速から《血染めの月》をキャストするデッキが増加傾向にあるようです。同様にキャントリップを初めとした主に1マナのスペルを完封する《虚空の杯》も多くのデッキ採用されています。


血染めの月虚空の杯


 Shardless SultaiやLandsといった妨害スペルが少なめでクロックが遅いデッキが流行れば、【SCG Classic Las Vegas】のようにANTなどのコンボデッキが勝ちやすくなってきます。その【SCG Classic Las Vegas】で優勝を収めたGrixis Delverはコンボに強く、Landsなど一部のデッキ以外と互角以上に戦えるデッキで今後も結果を残し続けることが予想されます。

 果たして【The Last Sun 2015】と、2015年を締めくくる大規模なレガシーのイベントである【The Last Sun 2015】【Eternal Festival Tokyo 2015】【Eternal Party’2015】ではどのようなデッキが勝つのか?

 以上USA Legacy Express Vol.93でした。

 それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!



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