週刊デッキウォッチング vol.166 -理論上最強のデッキであなたを論破します-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「ローグ」

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破滅の龍、ニコル・ボーラス火の血脈、サルカンヨーグモスの不義提案

 今回ご紹介するのは『基本セット2019』でフィーチャーされている「ドラゴン」を中心に組まれたデッキです。前々回、いつも興味深いデッキリストを提供してくれる晴れる屋札幌店の話をさせてもらいましたが、この連載を引き継いでからというもの晴れる屋札幌店には足を向けて眠れなくなりました。いったい北海道ではどういうメタゲームが形成されているのでしょうか? 避暑も兼ねて遊びに行きたいです。

 《モックス・アンバー》《起源の柱》、そして新プレインズウォーカーの《火の血脈、サルカン》を利用してマナ加速し、高速でドラゴンを叩きつけるこのデッキ。《スカークの探鉱者》は1回限りのマナ加速ということなのだと思いますが、2ターン目に《火の血脈、サルカン》にアクセスできると考えるとなかなか悪くなさそうです。スタンダードでもドラゴン・ストンピィって組めたんですね。

 そしてもちろん『基本セット2019』の目玉である《破滅の龍、ニコル・ボーラス》も採用されています。雑に叩きつけるだけでもETB能力によって最低限のアドバンテージを取ってくれますし、変身してしまえば勝利は目前です。《ヨーグモスの不義提案》のような強力な呪文も採用されているので、劣勢を跳ね返す力も高そう。

 「新カードを味わい尽くしたい!」「とにかくドラゴンを叩きつけたい!」そんな方にオススメしたい非常にパワフルなデッキリスト。まだ新環境で何を組んだらいいのか分からない方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか?

「ローグ」でデッキを検索

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モダン: 「バント撤退」

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集合した中隊民兵のラッパ手聖遺の騎士

 『基本セット2019』リリースの恩恵を最も受けているモダンデッキといえば、《集合した中隊》系のデッキでしょう。下馬評の高かった《民兵のラッパ手》を採用した中隊デッキは早速モダン環境で結果を残しているようです。

 《民兵のラッパ手》は雑に手札からプレイしても強く、《集合した中隊》から《民兵のラッパ手》を出せば都合ライブラリーの上の10枚のカードを見ることができます。さすがにそれだけデッキをめくれば概ね欲しいカードに辿り着けそうですね。このデッキであればフィニッシャーの《聖遺の騎士》にもアクセスできますし、サイドボード後には疑似シルバーバレット戦略が取れそうです。

 素のボディも2/3警戒と十分で、ビートダウンプランでも戦力に換算できます。というか、なんで警戒までついてるんですか? シングルシンボルなのが不思議なくらいの強さです。タッチカラーでも採用しやすいので、今後は様々なデッキリストで4枚採用されている姿を見ることになるかもしれませんね。

 今回ご紹介したのは「バント撤退」デッキでしたが、すでに「5色人間」や「ドルイドカンパニー」でも結果を残しているようです。今後は《民兵のラッパ手》の活躍から目が離せません。

「バント撤退」でデッキを検索

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レガシー: 「ローグ・コンボ」

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老練の探険者競技場の首長Eureka

 太古の昔の話になりますが、「レガシーを突き詰めたプレイヤーが最終的に行き着くデッキ」と呼ばれるものがあったそうな。コンボにせよビートダウンにせよ一級品のカードが揃ったレガシー環境では単純なカードアドバンテージよりもテンポよくプレイできるカードが重要視される傾向にありますが、だからこそ、そのデッキの目指す重くて強力なカードを一方的にプレイするという理念はいわゆる理論上最強の戦略だったわけです。

 今回はそんな理論上最強を求めたデッキ、「Nic-Fit」をご紹介します。キーカードの《老練の探険者》《陰謀団式療法》などで墓地に落とし、死亡誘発能力によって土地を伸ばすのが基本戦略。特殊地形が多数採用されるエターナル環境では自分だけが一方的に土地をサーチできるはずというア・ポステリオリな超理論によって自分だけがマナランプでき、重いカードを唱えられるようになるのです!

 胃もたれしそうなくらいハイカロリーなデッキリスト。これはマジック界の「ラーメン二郎」と呼んでも差し支えないでしょう。もちろん《老練の探険者》によるマナランプだけでこれらを全てプレイするのは難しいでしょうが、3枚採用されている《Eureka》によって無理やり戦場に叩きつけてしまえば最終的に自分の方が強い盤面を作れるので理論上勝てます。また、《老練の探険者》を生け贄に捧げるためのサクり台で《アカデミーの学長》《競技場の首長》を生け贄に捧げれば勝てるのでサブプランも完璧、つまり理論上無敵なんです。

 え? 《もみ消し》とかそういうのはどうするのかって? 何を懸念されているのかよく分かりませんが、そんな用途の狭そうなカードがレガシーでプレイされるわけがないのは理論上明らかなので考慮する必要はありませんね。そもそも重いカードをプレイするのは気持ちいいというのはマジック:ザ・ギャザリングの大原則から考えても明らかなんですよ(マナコストが重いカードはその分強力にデザインされる傾向にあるため)。識者の間では二郎も栄養学の観点から完全食であると言われていますし、Nic-Fitが完璧なデッキであることと根本的な理屈は同じです。はい論破。

「ローグ・コンボ」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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