週刊デッキウォッチング vol.170 -ぼーらすふぁんくらぶ-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「青黒赤ジャンク」

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呼び覚ます者イザレス破滅の龍、ニコル・ボーラススカラベの神

 今月の第1週には事実上の「プロツアー『基本セット2019』」とでも呼ぶべきマジック25周年記念プロツアーが幕を閉じました。ここでは『基本セット2019』の新カードはあまり見られませんでしたが、だからといって『基本セット2019』の持つ可能性が潰えたわけではありません。注目カードの一つと目されていた《破滅の龍、ニコル・ボーラス》をはじめ、とあるカードを使ったデッキが晴れる屋の大会で結果を残していました。

 そのカードとは《呼び覚ます者イザレス》印象が薄くてテキストを覚えていない方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単に言うと「攻撃時に墓地からクリーチャーをリアニメイトする能力」を持っており、《才気ある霊基体》《光袖会の収集者》《戦慄の影》といった厄介な軽量クリーチャーを何度もしつこく戦場に呼び戻してくれます。

 もちろん優秀なETB能力を持っている《破滅の龍、ニコル・ボーラス》《貪欲なチュパカブラ》を繰り返し利用する動きも強力ですし、《スカラベの神》《死の権威、リリアナ》もいるので「墓地はリソース」を地で行く粘り強い戦略が採れそうです。

 惜しむらくは《スカラベの神》でリアニメイトした《破滅の龍、ニコル・ボーラス》は変身ができないことですが(※《呼び覚ます者イザレス》なら可)……とはいえ、1ゲームの間に2度も3度もリアニメイトする、というのはなかなかに嫌らしくて興味深いコンセプトですね。

「青黒赤ジャンク」でデッキを検索

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モダン: 「青黒赤コントロール」

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破滅の龍、ニコル・ボーラス王神、ニコル・ボーラスプレインズウォーカー、ニコル・ボーラス

 こちらは三種のボーラスが採用された脅威のボーラス・フリークデッキ。これらの(お世辞にも軽いとは言えない)7~8マナというわがままコストを唱えるためのマナサポートとして《睡蓮の花》が採用されているのは興味深いです。

 その他にも独特なカード選択が目を引きます。打ち消し呪文は《マナ漏出》《論理の結び目》よりも《卑下》が優先されており、打ち消しの確実性よりもドロー操作に注力しているようです。重いカードが多めに採用されているのでドローに噛み合いが必要な瞬間も多そうですもんね。ちなみに余談ですが、《卑下》を「X=0」で唱えることで占術2だけ行うといった使い方をすることもあります。カードアドバンテージは失ってしまいますが、やむをえず1ランドキープした場合などで有効なテクニックなので覚えておきましょう。

 基本構成はグリクシスコントロールとなっていますが、単にボーラスをプレイするまでゲームを引き延ばすだけでなく、3枚の《雷口のヘルカイト》によってアグレッシブにライフを攻めていくことも可能です。特に《雷口のヘルカイト》《コラガンの命令》で回収する先としても優秀ですし、コントロールプランとバーンプランの異なる2種類の戦略を採ることができるのはそれだけで強みと言えるでしょう。

 ついつい3種のボーラスに目を奪われますが、《漂う死、シルムガル》《殴打頭蓋》、サイドボードの《捕縛の言葉》といった細かいカード選択にもオリジナリティが光るこのデッキ。ボーラスファンならずとも、一度回してみたいリストです。

「青黒赤コントロール」でデッキを検索

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レガシー: 「テゼレッター」

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ボーラスの工作員、テゼレット飛行機械の鋳造所弱者の剣

 レガシーはニコル・ボーラス……の腹心の部下(パシリ?)《ボーラスの工作員、テゼレット》を中軸に据えた「テゼレッター」をご紹介します。今週はボーラス繋がりで書こうと思っていたので……うーん、ボーラス繋がりって言うにはちょっと厳しいですかね?

 テゼレッターは多くの場合《飛行機械の鋳造所》《弱者の剣》による大量ライフ&トークン獲得――通称“ソプターコンボ”を勝ち筋にしていることが多いですが、このデッキもその例に漏れず《Transmute Artifact》などを用いてコンボパーツを揃えることがメインの勝ち手段となっています。また、デッキ名にもなっている《ボーラスの工作員、テゼレット》はコンボパーツを探す役割と追加の勝ち手段(5/5のアーティファクトクリーチャーを量産する)を兼ねています。

 青いデッキではあるものの、デッキの大半を無色のアーティファクトが占めるため《意志の力》の枚数は2枚と控えめ。レガシーの代名詞である《渦まく知識》さえ不採用です。代わりの妨害カードとして《虚空の杯》が採用されているので、自分は「X=1」に引っかからないようにデッキが構築されているわけですね。

 サイドボードには『統率者2018』の新カードである《夜の具現》が見られます。「想起」でプレイした際にはさながら追加の《毒の濁流》のような働きをするカードで、《聖域の僧院長》に引っかからないところもナイス! メインボード・サイドボードともに自由枠が多く、構築しがいのあるこのデッキ。興味のある方はぜひ組んでみてはいかがでしょうか?

「テゼレッター」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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