週刊デッキウォッチング vol.169 -まひるみコントロール-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「ローグ」

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エルフの部族呼び苦悩火総将軍ラーダ

 「マナを伸ばしてX火力でシバく!」実にまっすぐで気持ちのいいコンセプト、それをスタンダードで体現したものがこちらのリストになります。マナを伸ばすのにエルフを用いるのもオールディーな感じがしてとてもいいですね。

 つい《苦悩火》に目を奪われましたが、『基本セット2019』で追加されたエルフロード《エルフの部族呼び》《金属ミミック》も採用されており、《鉄葉のチャンピオン》《茨の副官》のような素のスペックが高いエルフもいるので、部族ビートダウンとして振る舞うのが基本戦略になりそうです。

 また、《総将軍ラーダ》の採用も目から鱗です。自身が4マナ3/4速攻と攻撃的な性能で、しかも攻撃時にマナを伸ばす働きもしてくれます。あまり構築では見られないカードでしたが、彼女自身もエルフですし、マナランプ戦略を取るこのデッキの方向性には合っていますね。

 スタンダードのエルフは(《養育者、マーウィン》のような専用カードもあるわりに)微妙にカードが足りず、アーキタイプとしてはなかなか成立しませんでしたが、単体で優秀なクリーチャーも多く、『基本セット2019』では待望のロードも獲得しました。もしかすると、今後はエルフがメタゲームの舞台に顔を見せることがあるかもしれませんね。

「ローグ」でデッキを検索

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モダン: 「ローグ」

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アカデミーの廃墟虚空の杯罠の橋

 今回ご紹介するのはこちらのロックデッキ。リストを見たとき謎の既視感があったのですが、たぶんランタンコントロールを初めて見たときのやつですね。

 デッキの基本戦略はランタンコントロールに通ずるものがあります。《罠の橋》で戦闘を遮断し、《魔術遠眼鏡》《虚空の杯》でコンボデッキの勝ち筋もシャットアウト。対戦相手をロックした後は《世界のるつぼ》《イプヌの細流》によるライブラリーアウトか《アカデミーの廃墟》《黄鉄の呪文爆弾》《道化の帽子》などでライフとライブラリーを攻めるデッキのようです。

 ランタンコントロールのようなドローロックはできませんが、代わりにランタンコントロールのように《写本裁断機》《洞察のランタン》といったパーツが必要ないのでそのぶん妨害カードを多く採用しているのがポイントです。勝ち手段である《黄鉄の呪文爆弾》《道化の帽子》、あるいは《世界のるつぼ》も単純にユーティリティカードとして活躍してくれます。

 《精神を刻む者、ジェイス》の解禁やトロンの隆盛もあってすっかり姿を見なくなったランタンコントロールですが、こちらのデッキはライブラリートップは完全に無視し、代わりに何を引かれても対応可能な状態を作り出すというアプローチで弱点を克服しています。もしかするとランタンコントロールのように今後流行し、いずれはプロツアー優勝! なんてこともあるかもしれませんね。

「ローグ」でデッキを検索

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レガシー: 「バント」

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至高の幻影呪文捕らえ石鍛冶の神秘家

 『基本セット2019』で2マナのスピリットロードである《至高の幻影》が追加され、モダン環境ではスピリットデッキが人気ですが、ついにレガシーにもスピリットが現れたようです。

 さすがに4マナは重いのかモダンのように《集合した中隊》は採用されていませんが、代わりに《石鍛冶の神秘家》が使えるのはレガシーならでは。飛行ビートダウンと装備品の相性が悪いわけはなく、フェアリーさながらにインスタントタイミングでクリーチャーを展開して装備品を担がせて殴る、というのが基本戦略のようです。

 メインボードの緑の要素は《貴族の教主》のみですが、サイドボードには流行りのグリクシスコントロールを意識したであろう緑の色対策カードが見られます。特に《たい肥》などは昔懐かしの”やりすぎ”な色対策カードで、黒いデッキ絶対殺すマンの強い意志を感じます。《ヴェールのリリアナ》《精神を刻む者、ジェイス》を除去できて《突然の衰微》も躱せる《威圧の誇示》まで採用していますし、もしかするとこのデッキの作者はグリクシスコントロールに故郷を焼かれたのかもしれません。

 冗談はさておき、スピリットの中には《霊廟の放浪者》《呪文捕らえ》、あるいはこのデッキには採用されていませんが《聖トラフトの霊》といった単体でも優秀なクリーチャーも多いですし、待望の2マナのロードを獲得したスピリットは今後レガシーでも勢力を築くことになるかもしれません。

「バント」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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