週刊デッキウォッチング vol.171 -クマと破る封印-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「ドラゴン」

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カル・シスマの恐怖、殺し爪サルカンの封印破り転生するデアリガズ

 “書いてあることは強いけど使用条件が厳しいカード”ってありますよね。そういったカードを眺めては「ロマンはあるけど入るデッキがないな」と使用を断念したことが何度あることか分かりません。『基本セット2019』でリリースされた《サルカンの封印破り》もまさにそんな1枚ですが、今回はそんな《サルカンの封印破り》を使いこなせそう(?)なデッキがありましたのでご紹介します。

 パッと見で目を引くのはドラゴン(と《ペラッカのワーム》)の数々。そんなに重くて回るのか? と懸念したくもなりますが、そんなドラゴンをとなえるサポートをしてくれるのが《カル・シスマの恐怖、殺し爪》《ドラゴンの財宝》、そして《火の血脈、サルカン》! 他にも定番の《ラノワールのエルフ》《反逆の先導者、チャンドラ》もいるので、マナ加速は十分ですね。

 特に《カル・シスマの恐怖、殺し爪》は除去されなければ圧倒的な速度を実現させてくれます。《刃の翼ヴェリックス》は2マナに、《栄光をもたらすもの》は3マナになりますし、「《サルカンの封印破り》を置きながらパワー4のクリーチャーを展開して隙なく動く」といったプレイもできることがあるかもしれません。

 《サルカンの封印破り》はどのくらい機能してくれるのか? 黒をタッチしてまで採用している《暴虐の龍、アスマディ》の使い心地はどうなのか? などリストをざっと見ただけではなかなか分からないところも多いので、一度組んで回してみたいリストです。

「ドラゴン」でデッキを検索

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モダン: 「壁カンパニー」

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策略の龍、アルカデス欺瞞の神、フィナックス突撃陣形

 『基本セット2019』で追加された新たな《ローリング・ストーンズ》亜種、《策略の龍、アルカデス》を使用した壁デッキが大阪で結果を残していました。3色の伝説のクリーチャーということで《ローリング・ストーンズ》+疑似《包囲の搭、ドラン》+ドローエンジンにもなれる能力付きとメリット能力がマシマシになっており、リリース当初から目を付けている人は多かったですよね。

 言わずもがな、《策略の龍、アルカデス》をプレイして防衛持ちクリーチャーで殴るこのデッキ。《策略の龍、アルカデス》自身が除去耐性を持っていないのでそこまで過信はできませんが、もしもコントロールしていれば《欠片の壁》《否定の壁》8/8・飛行という化け物(しかも《否定の壁》なら「被覆」まで付いている)に変貌します。もちろん、メインボードでは対処されにくい《突撃陣形》もあるので《策略の龍、アルカデス》のみに依存しているわけではありません!

 「戦場に出ないクリーチャー」(※参考)の一種である《幻の漂い》もこのデッキであれば3マナ5/5飛行として運用することもできますし、お得意の「変成」でシルバーバレット戦略を取ることも可能です。《罠の橋》にアクセスすれば相手の攻撃だけを一方的に止めることができますし、《草茂る胸壁》から大量にマナが出るような状況であれば《威圧の杖》をサーチすることで(緑)の無限マナ+無限ドロー+無限ライフも可能となっています。

 他にも《欠片の壁》の「累加アップキープ」で大量にライフを与えてしまった場合でも《欺瞞の神、フィナックス》が第二の勝ち手段になってくれるなど、意外とフレキシブルに戦うことができそうです。壁が対戦相手に牙を剥くのはなかなかにシュールな絵面ですが、ハマったときのパンチ力は想像するだけでも気持ちよさそうですね。

「壁カンパニー」でデッキを検索

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レガシー: 「忍者」

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虎の影、百合子呪文探求者深き刻の忍者

 『統率者2018』で最も注目されているカードといえば恐らく《虎の影、百合子》でしょう。「上忍術」は通常の構築戦では「忍術」と変わりませんが、2マナという「忍術」コストはレガシーでも十分にプレイアブルですし、攻撃が通った際の誘発型能力(逆《闇の腹心》?)も多くの場合《深き刻の忍者》の強化版のようなものです。

 さてこのデッキ、対戦すると一見グリクシスコントロールのようにも見えるかもしれません。もっぱら「忍術」の種になるであろうクリーチャーは《悪意の大梟》とレガシーでは非常によく見る顔なので警戒できませんし、たかが1点と思って攻撃を無視したら突然手札から《ユリコ=サン》が飛び出してカイシャクしてくるわけですからね。ゴボボーッ!!

 また「忍術」とのシナジーに期待してか、他にも《呪文探求者》《帝国の徴募兵》のように強力なETB能力を持ったクリーチャーが採用されていることも特徴的です。《呪文探求者》《渦まく知識》をサーチし、《虎の影、百合子》の誘発にスタックで《意志の力》を積み込めば一気に6点! 「アイエエエ! 《ウィル》!? 《ウィル》ナンデ!?」と慌てふためく対戦相手の姿を見ることができるかもしれません。

 また、見落としがちですが《虎の影、百合子》の能力は「あなたがコントロールしている忍者1体がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび」に誘発します。もしもあなたが忍者デッキを使うなら頭の片隅に入れておきたいポイントですね。もっとも、複数の忍者の攻撃が通っているような状況ならオーバーキルかもしれませんが……。

「忍者」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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