週刊デッキウォッチング vol.181 -カンブリア紀が無限ターンで破滅を囁くフェニックス-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「ローグ」

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リッチの熟達栄光の好機ミラーリ予想

 ローテーション後のスタンダードというものは誰もが手探りで環境を解明しようと模索の日々を過ごすものですが、それにしても『ラヴニカのギルド』リリースからおよそ1カ月が経過しようとしている今になっても未だメタゲームは「これ!」と言えるような形を成してはいません。アグロからミッドレンジ、コントロール、あるいは若干コンボ的なギミックのあるデッキまで多種多様なデッキが活躍しており、現環境はいわばスタンダードのカンブリア紀と言えるでしょう。

 さて、今回ご紹介するのはそんなスタンダード環境でも際立って奇抜なこちらのデッキ。すでにTwitterなどでも話題になっていますが、《リッチの熟達》を使用した無限ターンデッキです。《リッチの熟達》の「あなたはこのゲームに敗北できない。」という能力によって《栄光の好機》のデメリットを打ち消し、《栄光の好機》《ミラーリ予想》で回収。さらに《ミラーリ予想》《自然のらせん》で使い回すことでコンボが成立します。

 これらのコンボを成立させるために活躍するのが各種ドロー呪文と《アズカンタの探索》そして《首謀者の収得》です。いかにコンボパーツとはいえ墓地に落ちるようなパーマネントがメインボードにほとんど採用されていないこのデッキで《自然のらせん》を採用するのは躊躇われますが、サイドボードからカードを探せる《首謀者の収得》があれば《自然のらせん》も無理なくコンボに組み込むことができます。これらのコンボに必要な膨大なマナは……《楽園の贈り物》で頑張って捻出しましょう。

 また、サイドボード後の戦略の幅広さも5色デッキならではの魅力です。《殺戮の暴君》は緑系デッキのサイド後のフィニッシャーとして定番ですが、メインボードがノンクリーチャーなので《正気泥棒》でも相手の意表を突けるはず! もちろんこれらは《首謀者の収得》でサーチも可能なので、サイドボードを練るのも楽しそうですね。

「ローグ」でデッキを検索

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モダン: 「ウーズコンボ」

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破滅を囁くもの壊死のウーズ黄金牙、タシグル

 初めて《破滅を囁くもの》を見たときからずっと考えていたことがありました。それが「何とかしてこの起動型能力で人をシバけないかな?」ということ。だって能力の起動にタップもマナもかからないんですよ? 1ターンに10枚以上も墓地を肥やすことができる能力というのは、それだけでヤバいコンボのキーカードとして活躍できるだけのポテンシャルを秘めています。そして、それを実現したデッキがついに登場しました!

 「ウーズコンボ」というアーキタイプ自体はこのコラムでも何回か(※1)(※2)取り上げていますし、マイナーなデッキではありますがご存知の方も多いでしょう。しかしながらこのデッキで《破滅を囁くもの》を採用するというのは盲点でした。たしかに「2点のライフを支払う:諜報2を行う。」という起動型能力と《壊死のウーズ》との相性は抜群で、コンボパーツをバシバシ墓地に落とすことに貢献してくれます。

 また、《破滅を囁くもの》は素出しも狙えるマナコストで、単体でも墓地を肥やしながら《壊死のウーズ》を探すことに貢献してくれます。デッキ全体の墓地肥やし性能が上がったためか《黄金牙、タシグル》も採用されており、ビートダウン性能が高まっていることで《壊死のウーズ》の一枚岩ではなくなっています。

 しかし固定パーツが多くなりがちな「ウーズコンボ」で《破滅を囁くもの》に目をつけたのはさすがですね。どうしても5マナ6/6飛行・トランプルという高いスペックに目を取られがちですが、冒頭でも述べた通りその起動型能力もいろいろと悪さをしてくれそうです。いつか「ウーズコンボ」以外のデッキでも見かけることがあるかもしれませんね。

「ウーズコンボ」でデッキを検索

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レガシー: 「黒赤リアニメイト」

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弧光のフェニックス生き埋めグリセルブランド

 みなさん、お元気ですか? 僕は「《弧光のフェニックス》か~!! 強いとは思ってたけどここまで使われるとは思ってなかったんだよな~~!!! あのとき4枚集めておけばな~~~!!!!11」というセリフをあちこちで通算100回くらいは耳にしています。ちなみに僕も持ってません。強いとは思ってたけど(略)

 さて、先週お伝えした通り《弧光のフェニックス》は「その性質上より軽い呪文が多く、墓地を肥やす手段も多彩なモダン以下の環境ではより凶悪性を増す」カードなわけで、ましてレガシーには《生き埋め》という相性最高の1枚もあります。今回ご紹介するのはまさにそんなシナジーを詰め込んだ「赤黒リアニメイト」です!

 「赤黒リアニメイト」は従来《グリセルブランド》を一本釣りして勝利するデッキでしたが、ネタが割れれば《真髄の針》などでコンボを阻害されることもありました。しかし《弧光のフェニックス》の加入によって強固なサブプランを無理なくデッキに積むことができるようになり、《暗黒の儀式》から《生き埋め》で3体の《弧光のフェニックス》を墓地に落とし、《水蓮の花びら》か何かからもう一つ呪文を唱えれば1ターン目に3体の《弧光のフェニックス》を並べることも可能になっています。

 おまけに《弧光のフェニックス》《陰謀団式療法》との相性も最高で、ただでさえ強力だった赤黒リアニメイトがさらに一段階上のステージに上がったと言えそうです。今後「赤黒リアニメイト」を相手にするときは、《グリセルブランド》だけでなく《弧光のフェニックス》の群れを対処することも考えなくてはいけませんね。

「黒赤リアニメイト」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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