週刊デッキウォッチング vol.175 -マルチェッサ・ファミリー-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「青単」

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排斥する魔道士大嵐のジン魔術師の反駁

 先週と同じような導入になってしまいますが、いよいよ2週間後にはスタンダードのローテーションが行われます。慣れ親しんだ『カラデシュ』~『アモンケット』ブロックのカードがローテーション落ちし、スタンダードで使用できるカードプールは約半数になってしまいます。しかし、逆に言えば“今が一番カードプールが広い”タイミング! プロツアーやグランプリの結果も明らかになっており、メタゲームの大部分が解明された今の時期は、デッキビルダーにとって様々なカードの組み合わせやデッキタイプを試すことのできる絶好の機会のようです。

 今回ご紹介するデッキは、日本選手権で行弘 賢選手が使用していた青単のテンポデッキをより攻撃的に調整したものです。《大嵐のジン》をフィニッシャーに据え、《排斥する魔道士》《一瞬》といったバウンスでテンポを取り、すれ違いのダメージレースを挑みます。《マーフォークのペテン師》など対戦相手の計算を狂わせることができるクリーチャーが採用されているところも興味深いです。

 やや細めのクロックを支えるのは《執着的探訪》《知識のカルトーシュ》のようなオーラ呪文。特に《執着的探訪》はカードアドバンテージを得ることも可能なので、このデッキのキーカードです。また、《セイレーンの嵐鎮め》《マーフォークのペテン師》《呪文織りの永遠衆》のようなウィザードクリーチャーが多数採用されており、《魔術師の反駁》はさながら《対抗呪文》のように機能します。

 攻撃と防御を紙一重のバランスで切り替えて戦うテンポデッキは、回していてとても楽しいものです。とはいえスタンダードでこれだけ完成度の高いテンポデッキを組むことができるものなんですね……。しかも採用されているほとんどのカードが『イクサラン』以降のものとなっているので、次環境でも姿を見ることがあるかもしれませんよ!

「青単」でデッキを検索

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モダン: 「トリコトラフト」

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運命の大立者聖トラフトの霊ゼンディカーの同盟者、ギデオン

 先週末にはグランプリ・香港2018が開催されました。歴史的な台風の中で開催されたようですが、大きな事故もなく無事に終わったようで何より……。大会結果に目を移すとそのトップ8には『ジョニーのお店』スポンサードプレイヤーである高尾 翔太選手が入賞されていました。

 リストを見ると、《聖トラフトの霊》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》といった個々のカードには見覚えがあるし、モダンでよく使われている(もしくは使われていてもおかしくない)パワーカードが並んでいるのですが、それらが同時に存在していることによって情報量が指数関数的に増えていて脳がバグりました。特に《運命の大立者》は一体どうやって辿り着いたんだろう。たとえるなら『カレー寿司』とか『チャーハンうどん』とか言われてる気分です。

 採用されているカードはどれも一級品ですし、結果から明らかなとおり実際に強いデッキ……みたいですが、具体的にどういう強みがあって、どんな挙動をするのかイマイチ想像がつきません。一体どうしたらこのデッキが生まれるのでしょうか? もしも高尾選手がこのデッキの調整録をどこかでご執筆されるなら、ぜひとも読んでみたいところです。

 ちなみにこちらのデッキについてはHareruya Prosのジェレミー・デザーニからも一言コメントが寄せられていました。

 「(訳)キューブドラフトかと思ったわw」うーん、たしかに言い得て妙?

「トリコトラフト」でデッキを検索

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レガシー: 「チームイタリア」

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マルチェッサ女王石鍛冶の神秘家トーラックへの賛歌

 モダンのマルドゥ・パイロマンサーなどが活躍し、今でこそ赤白黒というカラーリングは一定の市民権を獲得しましたが、この色の組み合わせは古くから「器用貧乏」だとか「3色にするメリットが薄い」だとか散々言われがちなカラーリングでした。私個人としてはこのマルドゥの異端っぽさというか、ちょっと偽悪的で中二心をくすぐられる感じがすごく好きなんですけどね。それはともかくとして、なかなかメジャーとは言い難いこの色の組み合わせのミッドレンジデッキはレガシーでは「チームイタリア」と呼ばれます(※由来はこちらをご覧ください)

 このデッキの基本的な挙動は、除去と手札破壊で対戦相手のリソースを削り、《闇の腹心》《石鍛冶の神秘家》といった優秀な軽量クリーチャーで押し込んでいくというものです。デッキ内の大部分が1:1、あるいは1:2交換が可能なカードで構成されており、《未練ある魂》という強力なフェアデッキ殺しの呪文が採用されていることからも、総じてフェアデッキに強いフェアデッキと言えるでしょう。

 また、《マルチェッサ女王》の採用が目を引きます。『コンスピラシー:王位争奪』に収録されたカードで、ETB能力でプレイヤーを「統治者」にしたり、自身が速攻を持っていて打点を稼げたりと(書いてあることは)非常に強力なクリーチャーです。大量の除去を擁し、《未練ある魂》によってブロッカーを生成できるこのデッキであれば「統治者」を奪われることもそうそうないでしょうし、一度戦場に出てしまえば以降のゲーム展開を有利に進めることができそうです。

 現在のレガシー環境はグリクシス系のデルバーとコントロールデッキ、あるいは「デス&タックス」のようなウィニーデッキが大きく勢力を伸ばしています。ともすれば、フェアデッキの戦略に対して有効な手段を多く持つ「チームイタリア」はこれから見かける機会が増えるかもしれませんね。

「チームイタリア」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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