皆さんこんにちは。
少し前に禁止改定がありましたが、今回はモダンに焦点を当てた意味合いが強かったのもあり、スタンダード環境も安定してきているためノーチェンジでした。
前回の連載では、禁止改定後環境に多様性が戻って来た印象でしたが、果たして環境はどのように進化しているのか。MOの大規模なイベントのMOCSとSCG Classics Indianapolisの入賞デッキを見ていきたいと思います。
STANDARD MOCS #11160251
8つの異なるデッキが入賞
2017年2月11日
- 1位 Mono Red
- 2位 Sultai Midrange
- 3位 Grixis Energy
- 4位 Mardu Vehicles
- 5位 UW Approach
- 6位 BW Tokens
- 7位 RG Monsters
- 8位 BG Constrictor
トップ8のデッキリストはこちら
Magic Online Championship(MOCS)はMOの招待制のイベントで、予選を勝ち抜いたプレイヤーのみがプレイできるイベントです。なので必然的にハイレベルな大会となり、注目が集まります。
優勝は新環境になっても結果を残し続けているMono Redでしたが、プレイオフに進出を果たした8名がすべて異なるデッキでした。
STANDARD MOCS #11160251 デッキ紹介
「Sultai Midrange」「UW Approach」
Sultai Midrange
2 《島》
4 《異臭の池》
1 《進化する未開地》
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
4 《水没した地下墓地》
1 《植物の聖域》
1 《廃墟の地》
-土地(25)- 4 《才気ある霊基体》
4 《光袖会の収集者》
2 《帆凧の掠め盗り》
3 《機知の勇者》
2 《貪欲なチュパカブラ》
1 《豪華の王、ゴンティ》
1 《人質取り》
3 《スカラベの神》
1 《奔流の機械巨人》
-クリーチャー(21)-
2 《渇望の時》
2 《否認》
1 《巧射艦隊の追跡者》
1 《豪華の王、ゴンティ》
1 《大災厄》
1 《失われた遺産》
1 《至高の意志》
1 《栄光の刻》
1 《徙家+忘妻》
1 《アルゲールの断血》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-サイドボード(15)-
BIG MAGICのコンテンツでもお馴染みの村栄 龍司さんは、Sultai Midrangeを使用し見事に準優勝を果たしました。
環境屈指のパワーカードである《スカラベの神》と、相手の《スカラベの神》や《熱烈の神ハゾレト》に対する解答にもなる《ヴラスカの侮辱》を使える青黒のミッドレンジコントロールは、MOのリーグでも結果を残しています。
基本的には青黒ですが、置物対策になる《秘宝探究者、ヴラスカ》のために緑をタッチしています。赤単に対してはメインはほぼ互角で、《スカラベの神》を着地させるまで生き残ることにフォーカスしていきます。BG ConstrictorやGrixis Energyとのマッチアップは、カードアドバンテージにより有利なマッチアップになります。UW Approachなどコントロールは除去スペルなど不要碑が多くなるため、メインでは不利が付きます。
☆注目ポイント
《人質取り》や《貪欲なチュパカブラ》などETB能力を持つクリーチャーを多数採用しているので、《スカラベの神》を活かしやすく、特にその中でも《機知の勇者》は《スカラベの神》や土地、除去を引き当てやすくし、クリーチャーを墓地に落としこんでくれます。ゲーム後半に「永遠」することでアドバンテージを更に稼ぎます。
《帆凧の掠め盗り》は相手に干渉する手段と共に回避能力持ちで、《スカラベの神》でリアニメイトできれば飛行クロックとしても期待できます。BGやGrixis Energyなど、現環境の黒いアグロデッキやミッドレンジではほぼマストとなっている《光袖会の収集者》は、もちろんこのデッキでも採用されています。このクリーチャーの提供する追加のドローによって、序盤から必要なカードを引き当てやすくなります。
《才気ある霊基体》は《光袖会の収集者》で失ったライフを回復させる手段にもなり、赤単などアグロデッキ相手に序盤の猛攻を凌ぎます。接死持ちなので中盤以降も戦力になり、安定して相手の除去と交換が可能で2マナと軽いので総じて優秀なクリーチャーです。
《死の権威、リリアナ》は「+1」能力で2/2ゾンビトークンを生み出すので、自身を守ると共に墓地も肥やせます。そのため、《スカラベの神》とシナジーもあり、優秀なクリーチャー達を「-3」能力でリアニメイトし戦線を強化してくれます。《スカラベの神》対策として採用されている、《本質の散乱》に引っかからないのも嬉しいポイントです。墓地対策をされても「+1」能力で再構築することも可能なので、《スカラベの神》と上手く使分けていきたいところです。
そして緑をタッチする理由でもある《秘宝探究者、ヴラスカ》は、エンチャントやアーティファクトに対するアンサーであり、Mardu VehiclesやBW Tokensなどとのマッチアップで活躍します。クリーチャー除去としても機能し、トークンも生み出せるのでフィニッシャーとしても機能する、流石は6マナのプレインズウォーカーといったところです。
UW Approach
3 《検閲》
1 《明日からの引き寄せ》
3 《至高の意志》
2 《不許可》
3 《天才の片鱗》
3 《残骸の漂着》
1 《ヒエログリフの輝き》
3 《燻蒸》
1 《農場+市場》
3 《副陽の接近》
2 《アズカンタの探索》
4 《排斥》
-呪文(33)-
新環境になりコントロールの復権も期待されていました。今大会では青白の《副陽の接近》を軸にしたコントロールデッキが結果を残しました。
構成自体は禁止改定前と差ほど変化は見られないものの、ライフゲインをシャットアウトする《暴れ回るフェロキドン》に悩まされることも無くなったので、以前よりも有利な立ち位置です。
《排斥》、《燻蒸》、《残骸の漂着》と豊富な除去が揃っており、ドロースペルの《天才の片鱗》やカウンターの《至高の意志》などントロールに必要な要素は一通り揃っており、相手の動きをある程度捌いて《副陽の接近》でゲームを終わらせます。ただ7マナと重いため、3枚の採用となっています。
追加の勝ち手段として採用されているのが《奔流の機械巨人》で、普通の青白コントロールのように振舞うこともできます。《副陽の接近》オールインだとやはりハンデスやカウンターなどに弱くなり、勝ち手段を散らすことは《失われた遺産》も考慮すると理に適っていると言えます。
新環境になってもトップメタのMono Red対策に、サイドには《領事の権限》がフル搭載されています。速攻クリーチャー対策になり、軽減できるダメージを考慮するとかなりの時間を稼ぐことができます。
《原初の潮流、ネザール》はコントロールとのマッチアップで、処理が非常に難しい切り札として活躍します。
SCG Classics Indianapolis
コントロールの復権
2018年2月17-18日
- 1位 UB Control
- 2位 BW Tokens
- 3位 4C Control
- 4位 Mono Red
- 5位 GW Tokens
- 6位 Mono Red
- 7位 Mardu Vehicles
- 8位 Mardu Vehicles
Todd Stevens
トップ8のデッキリストはこちら
Mono Redなどのアグロデッキや、Grixis Energyといったデッキが幅を利かせているように見えたスタンダードでしたが、SCGO Indianapolisと併催して開催されたSCG Clacssicsでは、トークン戦略やコントロールが今大会の勝ち組だったようです。
トークン戦略は《暴れ回るフェロキドン》が退場したことにより、新環境で復権してくることが予想されていました。今大会ではBW TokensとWG Tokensが結果を残し、トークンデッキを含めてミッドレンジに強いUB Controlが優勝するという結果になりました。赤いアグロデッキもMOCSやMOのPTQで優勝するなど安定した成績を残しており、今大会でもトップ16に5名と多数の入賞者を出していました。
SCG Classics Indianapolis デッキ紹介
「UB Control」「4C Control」「GW Tokens」
UB Control
3 《本質の散乱》
3 《渇望の時》
1 《検閲》
4 《不許可》
4 《天才の片鱗》
4 《ヴラスカの侮辱》
1 《ヒエログリフの輝き》
1 《暗記+記憶》
2 《アズカンタの探索》
1 《宝物の地図》
-呪文(28)-
3 《強迫》
2 《巧射艦隊の追跡者》
2 《否認》
1 《原初の潮流、ネザール》
1 《渇望の時》
1 《黄金の死》
1 《暗記+記憶》
1 《アルゲールの断血》
-サイドボード(15)-
現環境の最高のカードを1枚挙げるとすれば間違いなく《スカラベの神》が挙げられます。SCGの強豪プレイヤーであるTodd Stevensもこの青黒の神を使ったコントロールを使用し、見事に優勝を果たしました。
最近よく見られるアドバンテージが取れるクリーチャーが多めのミッドレンジではなく、クラシックなスタイルの青黒コントロールです。青黒コントロール自体は前環境から存在していましたが、赤単とTemur Energyのデッキパワーに着いていけずに衰退していきました。禁止改定により環境が激変したことでTemur Energyは数を減らし、赤単は現環境でもTier1級の強さではありますが、《ラムナプの遺跡》によるゲーム後半の理不尽な強さが無くなったため復権を果たしました。
このタイプのデッキは、多数搭載されたカウンターと除去によってミッドレンジに対して相性が良く、特に《暴れ回るフェロキドン》が禁止になったことにより復権してきている《軍団の上陸》を使ったデッキにも強いので、今週末に開催されるグランプリ・メンフィス2018でも人気が出そうなデッキです。
☆注目ポイント
『イクサランの相克』から加入した軽量除去の《渇望の時》は、赤単のような速いデッキの序盤の猛攻を凌ぐことに貢献します。《暴れ回るフェロキドン》の退場もこのタイプのスペルにとって追い風です。
現環境の代表的な黒い除去である《ヴラスカの侮辱》は、4マナとコストは少し重くなりますがインスタントなのでカウンターを構えたいこのデッキにとって最適の除去スペルです。このデッキにとっても非常に厄介な《反逆の先導者、チャンドラ》、《熱烈の神ハゾレト》、《栄光をもたらすもの》、《再燃するフェニックス》などを追放します。コントロール同型でも相手の《スカラベの神》などを追放できるので腐りづらくメイン4枚の採用も頷けます。
このデッキでは「昇殿」はおまけみたいなものですが、サイドの《黄金の死》は速いデッキに対する追加の全体除去として使えます。《原初の潮流、ネザール》はコントロールミラーで決定的となるフィニッシャーですが、7マナと重いのでわずか1枚の採用となっています。
4C Control
1 《森》
4 《花盛りの湿地》
3 《泥濘の峡谷》
1 《大瀑布》
1 《竜髑髏の山頂》
4 《栄光の砂漠》
4 《イフニルの死界》
1 《ハシェプのオアシス》
1 《オラーズカの拱門》
1 《廃墟の地》
1 《屍肉あさりの地》
-土地(25)- 2 《豪華の王、ゴンティ》
1 《原初の死、テジマク》
-クリーチャー(3)-
2 《橋上の戦い》
2 《渇望の時》
4 《大災厄》
4 《ヴラスカの侮辱》
2 《首謀者の収得》
4 《約束の刻》
1 《不帰+回帰》
1 《アルゲールの断血》
4 《楽園の贈り物》
2 《魔学コンパス》
1 《炎鎖のアングラス》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-呪文(32)-
3 《帰化》
1 《原初の災厄、ザカマ》
1 《殺戮の暴君》
1 《途方もない夢》
1 《渇望の時》
1 《失われた遺産》
1 《ヤヘンニの巧技》
1 《沈黙の墓石》
1 《征服者のガレオン船》
1 《王神、ニコル・ボーラス》
-サイドボード(15)-
2011年に開催されたアメリカ選手権で優勝経験もあるAli Aintraziは5C Door ControlやUB Heartless Summoningなどユニークなデッキの製作者としても知られています。
今大会で彼が使用していたデッキも、4色のランプコントロールというオリジナル色の強いデッキでした。
《楽園の贈り物》や《約束の刻》といったスペルでマナを伸ばしていき、《秘宝探究者、ヴラスカ》《原初の死、テジマク》、《原初の災厄、ザカマ》などパワーカードで相手を圧倒していきます。《致命的な一押し》や《ヴラスカの侮辱》など黒は除去の種類にも恵まれているので、それらのスペルを有効に使って時間を稼いでいきコントロールしていきます。
☆注目ポイント
《首謀者の収得》はメイン、サイドから状況に応じてカードをサーチするチュータースペルで、最終的に《原初の災厄、ザカマ》や《王神、ニコル・ボーラス》といったエンドカードをサーチします。序盤では役に立たず、ゲームをコントロールするまで手札に来てほしくない重いフィニッシャーをメインから採用せずに済むのも大きく、《征服者のガレオン船》によって使い回し始めれば勝利は目前です。
《征服者のガレオン船》を変身させる主な手段は、《約束の刻》から出るゾンビトークンを生成することです。砂漠土地の《ハシェプのオアシス》はクリーチャーを強化できるのでより確実に「搭乗」させることを可能にします。
黒のエルダー・恐竜である《原初の死、テジマク》は、能力を起動する余裕があるミッドレンジに対しては、相手の戦場をスイープしつつ6/6接死が残るので有力なフィニッシャーとして活躍します。
《炎鎖のアングラス》は「+1」能力を使い続けているだけでもハンデスしつつクロックとなるので、コントロールにとっては脅威となるプレインズウォーカーです。《原初の災厄、ザカマ》は、除去耐性こそ無いものの実質フリースペルで戦場に出てすぐに能力を起動できるため、相手のクリーチャーを除去したり厄介な置物を割ったりとアドバンテージを獲得しやすく、伝説のクリーチャー – エルダー・恐竜の名に恥じないクリーチャーです。
Mono Redなど速いデッキに対しては、《橋上の戦い》や《渇望の時》といったライフゲインもできる除去を活用していきます。このタイプのデッキは、速いデッキに押し切られやすい傾向にありますが、他にも《楽園の贈り物》や《ヴラスカの侮辱》などマナ加速、除去しながらライフゲインする手段を多く備えているので、土地が伸びるまで生き残りやすくなっています。
《魔学コンパス》は土地を確実に置くことを可能にし、土地が揃えば《イス卿の迷路》に似た能力をもつ土地に変身し、《熱烈の神ハゾレト》など速攻持ちの対策の難しいクリーチャーの攻撃を止めることを可能にします。《大災厄》は3マナと少し重くなりますが、ハンデスにも除去にもなるので無駄になりにくく、追放なのも無視できない要素です。《熱烈の神ハゾレト》など神対策にもなります。
GW Tokens
5 《平地》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
1 《平穏なる広野》
4 《シェフェトの砂丘》
1 《ハシェプのオアシス》
-土地(24)- 1 《聖なる猫》
4 《アダントの先兵》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《典雅な襲撃者》
4 《翡翠光のレインジャー》
1 《陽光鞭の勇者》
1 《信義の神オケチラ》
-クリーチャー(19)-
2 《断片化》
2 《不可解な終焉》
1 《打ち壊すブロントドン》
1 《殺戮の暴君》
1 《黄昏+払暁》
1 《飛行機械による拘束》
1 《排斥》
1 《イクサランの束縛》
1 《霊気圏の収集艇》
2 《生命の力、ニッサ》
-サイドボード(15)-
《暴れ回るフェロキドン》の退場により、《軍団の上陸》を軸にしたトークン戦略も復権してきました。
現環境のトークン戦略は白黒が主流でしたが、Kazu Negriのリストは緑白で、《マーフォークの枝渡り》と《翡翠光のレインジャー》によるアドバンテージを活用したミッドレンジスタイルです。
☆注目ポイント
《アダントの先兵》は攻撃時にパワー3になり、破壊不能を得る起動能力を持つのでコントロールに対して強力なクロックとなります。《典雅な襲撃者》も2段攻撃持ちで「永遠」で復活すれば8点クロックとなり、フィニッシャーとしても申し分ない性能になります。二段攻撃は《旗幟+鮮明》や《顕在的防御》といったコンバットトリック、強化スペルとの相性も良く、特に相手の単体除去を弾きつつ強化する《顕在的防御》との組み合わせは強力です。
《霊気装置の展示》や《スラムの巧技》といった、トークン生成スペルの恩恵で《軍団の上陸》を変身させたり、《信義の神オケチラ》を攻撃に参加させやすく、《軍団の上陸》と《信義の神オケチラ》自身もトークンを生成する能力があるため、消耗戦に強い構成になっています。
サイドには《殺戮の暴君》、《生命の力、ニッサ》といったコントロールに強いカードが見られます。メインはトークン戦略を重視している分、相手に干渉する手段が少な目ですが、その分サイドには《不可解な終焉》や《排斥》、《飛行機械による拘束》、《黄昏+払暁》といった除去が多数見られ、サイド後は緑白ミッドレンジに変形します。置物対策にもなる《打ち壊すブロントドン》はタフネスが4と固く、《稲妻の一撃》、《削剥》、 《ショック》、《渇望の時》といった環境に存在する多くの除去に耐性がある優秀なクリーチャーです。
総括
新環境でも赤系アグロデッキは、MOCSで優勝など安定した成績を残しており、禁止改定によりキーカードを失い衰退していったTemur Energyとは対照的に第一線で活躍しています。
環境初期こそ赤単が圧倒的な強さを見せていたものの、先週末に開催されたSCG Classics Indianapolisではコントロールやトークン戦略が復権し、4色ランプなども見られアグロ、コントロール、ミッドレンジ、ビッグマナ系と多種多様なデッキが禁止改定により再び群雄割拠な環境を取り戻したと言えます。
今週末には久々にスタンダードのGPが開催されるので、スタンダードファンの方はお見逃しなく。
以上USA Standard Express vol.116でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!