週刊デッキウォッチング vol.176 -最後の別れエムラシュート-

大久保 寛

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

モダン: 「白単エメリア」

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空の遺跡、エメリア迫撃鞘真面目な身代わり

 みなさんには「〇〇については誰にも負けない」と自信を持って言えるようなものはありますか? 僕自身は……お恥ずかしながら、ちょっと思いつきません。もちろんマジックは好きですが、これといって目立った戦績があるわけでもありませんし、特定のデッキやカードに対して強い愛情や深い知識があるわけでもありません。これで「マジック愛は誰にも負けない」なんて言ってしまうのはいくらなんでも大言壮語というものでしょう。

 さて。前置きが長くなってしまいましたが、今回ご紹介するこちらの白単デッキはそんな誰にも負けない愛の結晶と言えそうです。デッキ製作者であるYamaguchi Koutarou氏は、これまでにも本デッキのキーカード《空の遺跡、エメリア》を使った独創的な「エメリアポッド」を使用し、グランプリ・神戸2012のレガシーのサイドイベントで優勝した経験をお持ちです。

 モダンの「白単エメリア」といえば《砂の殉教者》《空の遺跡、エメリア》で何度も使い回して膨大なライフを回復し、《セラの高位僧》でド突き回すというのが一般的な形ですが、このデッキでは《砂の殉教者》がまさかの不採用。代わりに目を引くのは3種9枚の防御エンチャントと《迫撃鞘》で、あくまでも《空の遺跡、エメリア》をアドバンテージエンジンとして運用しているのが特徴的です。

 《迫撃鞘》は勝ち手段でありながら親和や感染デッキをナチュラルに対策でき、《真面目な身代わり》《台所の嫌がらせ屋》を生け贄に捧げて能動的に死亡誘発型能力を誘発させることもできます。定番の《戦隊の鷹》《霧覆いの平地》エンジンも《迫撃鞘》が絡めば鷹マシンガンに早変わり。サイドボードのカードチョイスもなかなか独創的で、やり込みの感じられる愛の溢れるデッキリストですね。

「白単エメリア」でデッキを検索

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モダン: 「ローグ」

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最後の別れ御霊の復讐引き裂かれし永劫、エムラクール

 『ドミナリア』のアンコモン、《最後の別れ》を覚えていらっしゃるでしょうか? これはリリアナが実の兄である《リッチの騎士、ジョス・ヴェス》を眠りに就かせるという(ストーリー的に)重要なシーンを描いたカードなのですが、その性能は正直……イマイチパッとしません。いや、書いてあることや点数で見たマナ・コストは《納墓》《魔性の教示者》ですし、1枚で釣り竿と大型クリーチャーを用意できるということでいかにもリアニメイト向きのカードではあるのですが、逆に言えば5マナも払ってお膳立てしかできないカードでもあるんですよね。

 そんな《最後の別れ》ですが、もしもこれをプレイしたターンにそのままリアニメイト呪文を唱えることができたら? その場合は、一切の前触れなく突然リアニメイトができる凶悪なコンボパーツへと変貌します。そんな夢のようなコンボを可能にするキーカードは……ちょっと意外(?)な《遵法長、バラル》です。そう、彼さえ戦場に出ていれば《最後の別れ》《御霊の復讐》コンボもわずか5マナで達成できるようになり、虚空から突然《引き裂かれし永劫、エムラクール》を投げつけることができるのです!

 その奇襲性の高さもさることながら、このデッキの素晴らしい点はもう一つあります。本来の「《御霊の復讐》シュート」デッキならば墓地肥やしやルーター+《御霊の復讐》《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》……とデッキの半分以上をコンボパーツで埋めないと機能しませんが、こちらのリストでは《最後の別れ》1枚でゲームを決めることができるようになっているので、デッキのスロットを大幅に圧縮できているのです。代わりの枠にはこれでもかというほど妨害呪文が詰め込まれており、基本的にはコントロールデッキとして振る舞いながら突然死を狙う恐怖のデッキになっています。

 追加の《遵法長、バラル》として《詮索好きのホムンクルス》が採用されている点も渋いですね。色を足して《ゴブリンの電術師》を採用するというプランもあり得たかもしれませんが、ここを2色でまとめたことでパッと見は完全にコントロールデッキに擬態できています。一体この不意打ちに何人のプレイヤーが沈められたことか……まさに分からん殺しここに極まれりです。

「ローグ」でデッキを検索

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レガシー: 「人間ビートダウン」

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サリアの副官幻影の像ルーンの母

 地上40メートル以上の高層ビルに、いつも自動車が行き来している首都高の高架橋、10面以上のホームが存在する巨大ターミナル……そんな光景に囲まれて過ごしていると、たまにふと「これ全部人間が作ったんだなぁ、人間ってすごいなぁ」などと200年ぶりに人里に降りてきた森に住むもののけのようなことを考えてしまうことがあります。まぁこの話は今回ご紹介するデッキとはあまり関係ないのですが、要するに人間ってすごいんですよね。

 モダンで「5色人間」がトップメタに躍り出て久しいですが、最近ではレガシーでも同様のコンセプトのデッキが研究されているようです。まだまだ手探りで構築されているようで、モダン同様《カマキリの乗り手》《帆凧の掠め盗り》を採用した5色のデッキも少なくないですが、こちらはシンプルに白青の2色で構築されており、《幻影の像》が4枚フルに採用されています。

 「デス&タックス」と異なり、説明不要の強力クリーチャーである《石鍛冶の神秘家》は採用されていないものの、《ルーンの母》《聖域の僧院長》《護衛募集員》といったお馴染みのクリーチャーも見られます。ただし、装備品がない分《教区の勇者》《サリアの副官》といった部族シナジーを支援するクリーチャーたちで打点を補っていくことになるため、こちらの方がビートダウン色が強めと言えそうです。

 最近では《死の影》がレガシーでも使われるようになったり、モダンのデッキコンセプトがレガシーでも通用する域まで到達することも増えてきました。「人間ビートダウン」はまだまだレガシーでは新参者ですが、これからさらに研究が進んで強化されるにつれ、じきにモダンに続いてレガシーでもトップメタと呼ばれるようになる日がくるかもしれませんね。

「人間ビートダウン」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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