週刊デッキウォッチング vol.178 -ドキッ☆クリーチャーだらけのゴルガリデッキ ~宿根もあるよ~-

大久保 寛

 『マジックの華は、デッキリストだ』

 これはある人の言葉ですが、『デッキリストに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる』のだと。

 であればデッキリストを見るという行為は。

 単なる”知識の探求”を超えて、より深い意味合いを伴った行いと言えるのかもしれません。

 この連載は晴れる屋のデッキ検索から毎週おもしろそうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものです。

 気になるデッキがあれば実際に組んで遊んでみるもよし。Magic Online用のtxtフォーマットもダウンロードしていただけます。

 さっそく、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介していきましょう。

スタンダード: 「黒緑ビートダウン」

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千の目、アイゾーニ孵卵場の蜘蛛ロッテスの巨人

 『ラヴニカのギルド』がリリースされ、スタンダードでは実に6年ぶりにラヴニカの地へと戻ってきました。10の個性的なギルドたちは色の違いもさることながら、それぞれに得意とする戦略やバックグラウンドにあるフレイバーも異なっていて、どんなプレイヤーにも一つくらい気に入るギルドがあるものです。今回ご紹介するのはそんなラヴニカに存在する数々の魅力的なギルドの中でも最も墓地利用を得意とする地底街の住人たち「ゴルガリ団」から奇怪なクリーチャー単デッキ、俗称「アニマルハウス」をご紹介します!

 75枚のどこにもインスタントやソーサリーといった類の呪文はなく、代わりに土地以外の全てのカードがクリーチャーで構築されているこのデッキ。そんな尖った構成になっている理由は、新たなメカニズム「宿根」を活かすためです。墓地にあるクリーチャーの数だけ威力が増すその能力はこのデッキであれば効果絶大で、《千の目、アイゾーニ》はお手軽に大量トークンを展開する手段となり、《腐れ巨人》は非常にマナレシオに優れたファッティとなります。

 墓地を肥やす手段も豊富で、《縫い師への供給者》《光胞子のシャーマン》といったクリーチャーや、『イクサラン』から継投している《翡翠光のレインジャー》の「探検」能力で墓地を肥やすことが可能です。速いデッキに対してはチャンプブロックで時間を稼ぎながら墓地と盤面を整えたり、遅いデッキに対しては《ゴルガリの拾売人》《孵卵場の蜘蛛》といったアドバンテージカードで差をつけることができます。

 サイドボードに控える《ロッテスの巨人》が個人的な一押しカード。このデッキならば10点以上のダメージを叩き出すことも容易でしょう。《暗殺者の戦利品》のような強力な呪文が注目されていますが、こうした新メカニズムを味わい尽くせるクリーチャーレスのデッキにも可能性が感じられます。

「黒緑ビートダウン」でデッキを検索

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スタンダード: 「青赤スペル」

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弾けるドレイクパルン、ニヴ=ミゼット重力殴打

 『ラヴニカのギルド』の中でフィーチャーされたギルドは「ゴルガリ団」だけではありません。なぜかやたらと狂信者の多い(ような気がする)天才肌のマッドサイエンティスト集団であり、呪文を多用する戦略を得意とする「イゼット団」もまた、強力カードを多数得て新たなデッキが生まれました。

 デッキ製作者は過去に「ダークドラゴンティムール」のような禍々しいテンポデッキを生み出したデッキビルダーであり競技プレイヤーでもある岡田 卓也さん。こちらのデッキでも効率的に対戦相手のライフを削り、自らのクロックを守るテンポデッキらしい要素が随所に散りばめられています。特に新カードの《弾けるドレイク》はこの手のデッキにとってぴったりの1枚で、類似の能力を持ったクリーチャーである《奇怪なドレイク》とともに呪文を多用する戦略のキーとなります。

 また、《悪意ある妨害》《軽蔑的な一撃》といった優秀なカウンター呪文に加えて《薬術師の眼識》のようなアドバンテージカードもあるため、クロックパーミッションとしてだけでなくコントロールデッキとして振る舞うことも可能です。《パルン、ニヴ=ミゼット》は長引いたゲームを一瞬で終わらせるインパクトがありますし、「打ち消されない」の一文があるため青いデッキと相対した場合でも有用なことでしょう。

 また、1枚挿しの《重力殴打》もオシャレですね。単体では役に立たないカードではありますが、ライフ計算を大きく狂わせる呪文で、しかも「再活」がついているため1枚で10点以上のダメージを稼ぎ出すこともありそうです。こうした一見リミテッドカードに見えるカードにも目を向ける発想力こそが、デッキビルダーには重要なのかもしれません。

「青赤スペル」でデッキを検索

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レガシー: 「ドラゴンストンピィ」

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軍勢の戦親分ゴブリンのクレーター掘りゴブリンの損壊名手

 『ラヴニカのギルド』リリースの余波はスタンダードのみならず、レガシーにも波及していました。今回ご紹介するのは関西で活躍(?)する謎多きレガシー集団、「柳澤流」(@Yanagisawa_MTG)の門下生の方が構築された「ドラゴンストンピィ」です。

 採用されているのは《軍勢の戦親分》《ゴブリンのクレーター掘り》の2枚。前者は《ゴブリンの熟練扇動者》と合わせての採用となっており、トークン生成による面の攻撃力が大幅に増しています。《ゴブリンのクレーター掘り》強力なアーティファクトやエルドラージをメインからメタることができるとあって下馬評も高かったカードで、さっそく「ドラゴンストンピィ」に居場所を見つけたようです。

 4マナ域には《熱烈の神ハゾレト》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》などが採用されることもありますが、このデッキでは『基本セット2019』のゴブリンロードである《ゴブリンの損壊名手》が採られています。『ラヴニカのギルド』によってデッキに入っているゴブリンの数が増えているので、アーティファクト対策になりながら自身もロードとして機能する《ゴブリンの損壊名手》の採用は納得ですね。

 それにしても、「ドラゴンストンピィ」というデッキは上で挙げたカードのほかにも《焦熱の合流点》《反逆の先導者、チャンドラ》《ウルザの後継、カーン》など、ここ数年で印刷されたカードが多数採用されていて見た目も楽しいですね。他デッキと比べて重めのカードも採用しやすいので、新しいセットのカードを試しやすいのかもしれません。そう考えると、単色デッキながら拡張性も高くて意外と長く遊べるデッキなのかもしれませんね。

「ドラゴンストンピィ」でデッキを検索

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 いかがだったでしょうか。

 ある人は「すべてのデッキリストには意思が込められている」と言いました。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つことでしょう。

 読者の皆さんも、ぜひいろいろとおもしろいデッキを探してみてください。

 また来週!

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