皆さんこんにちは。
新環境に入って以来、MO以外ではあまり大きなイベントが開催されず、環境に大きな動きは見られませんでしたが、先々週末にスタンダードのグランプリがアメリカで開催され、環境の全貌が明らかになりつつあります。
今回の連載では、そのグランプリ・メンフィス2018の入賞デッキを見ていきます。
グランプリ・メンフィス2018
新環境のスタンダードの王者はRG Monsters
2018年02月24-25日
- 1位 RG Monsters
- 2位 Sultai Constrictor
- 3位 Grixis Energy
- 4位 Grixis Energy
- 5位 Mardu Vehicles
- 6位 Grixis Energy
- 7位 UB Control
- 8位 UB Control
Tyler Schroeder
トップ8のデッキリストはこちら
グランプリ・メンフィス2018が開催されるまで、スタンダードのプレミア規模のイベントはリアルでは開催されなかったのもあり、環境の変化するスピードは緩やかでしたが、それも過去の話となりました。
『イクサランの相克』の加入と禁止改定により、環境は多様性を取り戻し、トップ32にまで見渡してみるとUB Midrange、Naya Monsters、UW Cycling、Jund、Abzan Tokens、「昇殿」など多種多様なアーキタイプが見られます。
今大会以前に、コンスタントに結果を残していた赤単は流石に対策が厳しかったようで、母数に反して上位にまで残ったのはわずかでした。旧環境と異なり強いデッキではあるものの、対策し切れないほどではないようです。
グランプリ・メンフィス2018 デッキ紹介
「RG Monsters」「Grixis Energy」「UB Control」「UW Cycling」
RG Monsters
7 《森》
4 《隠れた茂み》
4 《根縛りの岩山》
2 《ハシェプのオアシス》
-土地 (25)- 4 《マーフォークの枝渡り》
4 《地揺すりのケンラ》
3 《立て直しのケンラ》
4 《翡翠光のレインジャー》
2 《不屈の神ロナス》
1 《ピア・ナラー》
4 《再燃するフェニックス》
4 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (26)-
2 《貪る死肉あさり》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《殺戮の暴君》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《顕在的防御》
1 《チャンドラの敗北》
1 《マグマのしぶき》
1 《帰化》
1 《捲土+重来》
-サイドボード (15)-
Standard MOCSでも結果を出していたデッキで、《マーフォークの枝渡り》など「探検」持ちのクリーチャーによるアドバンテージを活かしつつ、《立て直しのケンラ》や《地揺すりのケンラ》といった低マナ域のクリーチャーを多数採用するなど、アグロ寄りに調整されたRG Monstersです。
「永遠」持ちのクリーチャーは「探検」とのシナジーもあり、2色で動きも安定しているため、今大会のようにコントロールが勝ち組のメタではミッドレンジよりもTyler Schroederのリストのように軽い構成の方が良さそうです。
☆注目ポイント
《立て直しのケンラ》や《地揺すりのケンラ》は、序盤は軽いクロックとして活躍し、「永遠」により除去を多数採用したコントロールに対してもアドバンテージが取れます。《マーフォークの枝渡り》など「探検」クリーチャーとのシナジーもあり、このバージョンを使用する理由の一つとなります。
環境の赤いデッキの定番クリーチャーとして定着している《再燃するフェニックス》は、《不屈の神ロナス》や各種「永遠」クリーチャーなど、追放系除去の避雷針となる対象が多いので、このデッキでは特に対処されにくいクリーチャーでしょう。
優秀な飛行クロック兼除去である《栄光をもたらすもの》もしっかり採用されています。《栄光をもたらすもの》を展開した後に《立て直しのケンラ》で強化したり、《地揺すりのケンラ》でブロッカーをどかすことで相手に息付く暇を与えません。
《不屈の神ロナス》は、《再燃するフェニックス》や「永遠」クリーチャーと相性が良く、追放系の除去でしか触れないため処理されにくく、相手にとって脅威となります。《再燃するフェニックス》など飛行クリーチャーで攻めつつ、地上は5/5破壊不能クリーチャーで守るという動きが、赤単などアグロデッキに対して特に有効です。
除去としてメインから採用されている《削剥》は、《キランの真意号》や《王神の贈り物》といったアーティファクトも対策もできるフレキシブルなスペルです。《捲土+重来》は、クリーチャー除去&墓地対策にもなります。《スカラベの神》や「永遠」対策になるため価値を上げたスペルです。
サイドの《殺戮の暴君》は、全体除去以外では処理されにくく、このデッキに対して有効とされている《ヴラスカの侮辱》 などに耐性があるので、SCG Classicsや今大会でも結果を残していたUB ControlやGrixis Energyに対する切り札になります。《アゾカンの射手》は一見するとリミテッドで使われるシステムクリーチャーですが、タフネス4と固く赤単など速いデッキに対して地上を守り、《地揺すりのケンラ》や《ボーマットの急使》などのタフネス1を除去してくれます。
Grixis Energy
1 《島》
1 《沼》
4 《泥濘の峡谷》
3 《異臭の池》
4 《霊気拠点》
4 《竜髑髏の山頂》
4 《水没した地下墓地》
3 《尖塔断の運河》
-土地 (26)- 4 《光袖会の収集者》
2 《凶兆艦隊の向こう見ず》
4 《つむじ風の巨匠》
1 《豪華の王、ゴンティ》
3 《スカラベの神》
1 《奔流の機械巨人》
-クリーチャー (15)-
4 《蓄霊稲妻》
1 《削剥》
1 《至高の意志》
4 《ヴラスカの侮辱》
2 《慮外な押収》
1 《暗記+記憶》
1 《アズカンタの探索》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
-呪文 (19)-
3 《否認》
2 《強迫》
2 《焼けつく双陽》
1 《巧射艦隊の追跡者》
1 《豪華の王、ゴンティ》
1 《奔流の機械巨人》
1 《削剥》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
-サイドボード (15)-
環境が変化しても強力なエネルギークリーチャーである《つむじ風の巨匠》は健在です。《霊気との調和》と《ならず者の精製屋》の退場にともない、緑の代わりに《光袖会の収集者》と環境屈指のパワーカードである《スカラベの神》にアクセスできる黒に注目が集まり、禁止改定後のエネルギー系のデッキは、TemurカラーからGrixisカラーにシフトしていきました。
Temur Energyほどではありませんが、エネルギーというメカニックは依然として強力で、安定した成績を残しています。今回入賞を果たしたMatthew Klingは、スイスラウンドを12-0という好スタートを切って最終的にトップ4という好成績を残しています。
☆注目ポイント
Matthew Klingのリストで目を引くのは、メインから採用されている《凶兆艦隊の向こう見ず》です。相手の墓地からスペルを疑似フラッシュバックすることでアドバンテージを得られ、地味に墓地対策にもなるなど序盤から後半まで活躍の機会があります。
現環境に存在するほとんどのデッキに何かしら使えるスペルが採用されており、赤単とのマッチアップでは《稲妻の一撃》などの軽量火力を、青黒のコントロールやミッドレンジ、同型とのマッチアップでは、《ヴラスカの侮辱》など追放除去を使い回すことで《スカラベの神》などを対策することが可能になります。《瞬唱の魔道士》と同様に選択肢を広げてくれる優秀なクリーチャーです。
旧環境のTemur Energyでも同型対策に採用されていた《慮外な押収》が、Grixis Energyでもメインから採用され始めています。《スカラベの神》、《再燃するフェニックス》、《熱烈の神ハゾレト》など、環境に存在する対処が困難なクリーチャーにも有効なスペルなので、今後もGrixis Energyを使うのならメインから1~2枚採用していきたい所です。
UB Controlのフィニッシャーとして採用されている《奔流の機械巨人》も、メインから採用されています。このデッキでも《ヴラスカの侮辱》や《蓄霊稲妻》といった除去、《暗記+記憶》や《至高の意志》といったカウンターを再利用することでアドバンテージを取ることが可能です。
UB Control
3 《本質の散乱》
3 《渇望の時》
4 《不許可》
4 《ヴラスカの侮辱》
3 《天才の片鱗》
2 《ヒエログリフの輝き》
2 《暗記+記憶》
3 《アズカンタの探索》
-呪文 (28)-
3 《否認》
2 《強迫》
2 《アルゲールの断血》
1 《巧射艦隊の追跡者》
1 《原初の潮流、ネザール》
1 《渇望の時》
1 《バントゥ最後の算段》
1 《黄金の死》
-サイドボード (15)-
直前に開催されたSCG Classics Indianapolisを制したUB Controlは、予想通り今大会でも赤単に次いで高い二日目進出率を誇り、プレイオフにも2名の進出者を輩出する活躍を見せます。
Grixis Energyなどミッドレンジとのマッチアップは、多数採用されたカウンターやカードアドバンテージを稼ぐカードが多く、メイン戦で相手の除去が無駄になりやすくなるため相性が良いでしょう。赤単など速いアグロデッキを苦手としますが、軽い除去スペルの《渇望の時》の加入によってある程度までは緩和されています。
☆注目ポイント
《宝物の地図》や《検閲》といったカードが、追加の《暗記+記憶》と《アズカンタの探索》に差し替えられていますが、基本的にTodd StevensがSCG Classics Indianapolisで使用し、優勝を収めたリストと同様です。
《暗記+記憶》は、アーティファクト対策に貧しい青黒にとって数少ない《王神の贈り物》に対する解答となり、《スカラベの神》や《再燃するフェニックス》、《熱烈の神ハゾレト》などに対する追加の対抗手段となります。相手にシャッフルさせる《廃墟の地》との組み合わせで、パーマネント除去のように扱うことも可能です。
《暴れ回るフェロキドン》が禁止になり、赤単のタフネス3の主要なクリーチャーは《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》ぐらいなので、色拘束が弱く軽い《渇望の時》 が《本質の摘出》よりも優先して採用されています。 メイン、サイドに合計4枚採用されている《渇望の時》の恩恵で赤単との相性が改善されています。
赤単対策にブロッカーとして《才気ある霊基体》がサイドに採用されていましたが、タフネス3なので 《稲妻の一撃》 や《削剥》といった除去に引っかかりやすく信頼性に欠けました。《禁制品の黒幕》は、ライフの回復量は少なくなる代わりにタフネスが4と固く、《屑鉄場のたかり屋》、《地揺すりのケンラ》、 《ボーマットの急使》などをきっちり止めてくれます。アグロデッキに対してコントロールするまでの時間を稼ぎ、《スカラベの神》でリアニメイトすることでアタッカーとしても活躍が期待できます。
UW Cycling
4 《相殺の風》
4 《新たな信仰》
4 《ヒエログリフの輝き》
4 《残骸の漂着》
3 《燻蒸》
2 《不可解な終焉》
2 《アズカンタの探索》
3 《ドレイクの安息地》
4 《排斥》
1 《見捨てられた石棺》
-呪文 (35)-
最後は惜しくもプレイオフ進出は成らなかったものの、トップ32と好成績を残していたUW Cyclingを。
『アモンケット』から登場した《ドレイクの安息地》を軸にした青白のコントロールで、代表的な青白コントロールにはよく《副陽の接近》が挙げられますが、《ドレイクの安息地》は3マナと軽くエンチャントなのでメインからは対策されにくいことも強みです。
☆注目ポイント
『イクサランの相克』から加入した《不可解な終焉》は、アグロデッキに対して序盤を凌ぐ手段で、今まで軽い除去に貧しかったこのデッキにとって嬉しい追加です。
《ドレイクの安息地》と《残骸の漂着》の組み合わせは、攻撃をすれば《残骸の漂着》で追放される恐れがあり、それをケアしてターンを返せば「サイクリング」からトークンを生み出す猶予を与えてしまうので、相手にとっては厄介な2択を迫られることになります。
《見捨てられた石棺》は、20枚もの「サイクリング」を採用しているこのデッキにおいて、ゲーム後半では墓地に大量の「サイクリング」スペルが落ちているはずなので、中盤以降に多大なアドバンテージを稼ぎだします。
スイーパーを多数採用しているとは言っても《致命的な一押し》のような軽い除去は少なく、《新たな信仰》などでライフゲインしても、速いアグロに対しては時間を稼ぐのが難しいでしょう。なのでサイドには赤単対策に、《領事の権限》がフル搭載されています。速攻クリーチャー対策になり、スイーパーも活きてきます。追加のフィニッシャーとして《奔流の機械巨人》も採用されています。《相殺の風》や《ヒエログリフの輝き》といったインスタントを多数採用しているので、対象に困ることは少なく手軽にアドバンテージを取れます。
総括
環境初期に猛威を振るった赤単は、今大会でも一番人気のあったデッキでしたが、しっかりと対策をすることで、勝てないデッキではないことが証明されました。環境の様々な脅威に対処できる《ヴラスカの侮辱》は、現環境では最高の除去で今後も黒いデッキにとってはマストになるスペルになります。
今回の結果からスタンダードは『イクサランの相克』と禁止改定により、健全さを取り戻したことが分かります。上位入賞を果たしたアーキタイプ以外にも、今後の調整次第で伸びる可能性のあるデッキも多数見られるので、色々と試してみてはいかがでしょうか。
以上USA Standard Express vol.117でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!