USA Standard Express vol.119 -大地を踏み鳴らす恐竜たち-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。

ラノワールのエルフ包囲攻撃の司令官

 新セット『ドミナリア』のカードも続々公開されており、《ラノワールのエルフ》《包囲攻撃の司令官》など、懐かしいカードも多数再録される予定です。新カードも英雄譚エンチャントなど面白そうなカードが多数見られ、発売が楽しみです。

 今回の連載では、グランプリ・京都2018MOCSの予選を通過したデッキをご紹介していきたいと思います。

グランプリ・京都2018
スカラベの神がチームを優勝に導く

2018年3月24-25日

  • 1位 UB Midrange
  • 2位 RG Monsters
  • 3位 BR Aggro
  • 4位 Big Red
髙村 和貴、松原 雄介、山本 涼一

髙村 和貴、松原 雄介、山本 涼一

マジック:ザ・ギャザリング

トップ4のデッキリストはこちら

 デッキ分布によれば、2日目に最も多くの進出チームを出したのは、RG Monstersを使用していたチームでした。ただしコントロールとミッドレンジを合わせると青黒系が1番多く、デッキ分布でも挙げられていましたが、やはり環境を定義する《スカラベの神》《ヴラスカの侮辱》にアクセスできる青黒系は安定したチョイスとされるようです。

スカラベの神ヴラスカの侮辱

 ほかには赤単に黒をタッチしたバージョンのアグロも見られ、プレイオフにも進出していました。環境初期と比べると対策が厚く、最近は勝ち切れなかった赤単ですが、今大会ではタッチ黒も含めると2チームをプレイオフに送り込むなど、少数ながら健闘していました。

グランプリ・京都2018 デッキ紹介

「RB Aggro」「Mono Red」

RB Aggro

 環境初期では圧倒的な強さを見せていた赤単は、環境の研究が進むにつれて徐々に対策が厳しくなり、今大会でも数は少なめでした。結果としては赤単タッチ黒バージョンを使用したプレイヤーが多く、プレイオフにも勝ち残っていました。

 黒をタッチしたことで除去の種類も増え、《屑鉄場のたかり屋》も使えるようになったためコントロールにも強く戦えます。

 旧環境のRamnup Redのように息切れしにくい構成で、現環境のように青黒やGrixis Midrangeといったコントロールやミッドレンジが主流のメタでも渡り合えるように調整されています。

☆注目ポイント

屑鉄場のたかり屋再燃するフェニックス霊気圏の収集艇

 墓地から復活してくる《屑鉄場のたかり屋》は、青黒コントロールなど除去やカウンターを多用するデッキにとっては厄介なクリーチャーです。《再燃するフェニックス》と共にロングゲームにおいて息切れ防止になります。

 青黒系も《ヴラスカの侮辱》という解答を持ち合わせていますが、《再燃するフェニックス》《熱烈の神ハゾレト》といった脅威に使っていきたいスペルなので厳しい選択を強いられます。《狂信的扇動者》のように能動的に墓地に落とせるクリーチャーとも相性が良く、相手にダメージを与えつつ《屑鉄場のたかり屋》を復活させることも可能です。

 メインから採用されている《霊気圏の収集艇》は、同型に強くアグロデッキとのマッチアップ以外でも十分に戦力になる機体です。

無許可の分解栄光の刻

 黒をタッチしたことで確定除去の《無許可の分解》も使えるようになり、《ボーマットの急使》《屑鉄場のたかり屋》、メイン搭載の《霊気圏の収集艇》などのアーティファクトのおかげで追加の3点ダメージも入りやすく、かなりお得なスペルとなります。サイドの《栄光の刻》はインスタントスピードの追放系の除去で、《熱烈の神ハゾレト》《スカラベの神》対する解答になり色拘束が薄い優秀な除去です。

Big Red

 赤単と言っても速攻デッキの一般的な赤単よりも重い構成のBig Red。

 ミッドレンジプランにシフトすることで《栄光をもたらすもの》《再燃するフェニックス》《反逆の先導者、チャンドラ》といった赤いパワーカードを活かしやすくなっており、速攻型の赤単ほどではないもののクロックによるプレッシャーもあるので対戦難易度は高くなります。

☆注目ポイント

 速攻型の赤単と異なり《ボーマットの急使》など、1マナ域のクリーチャーが不採用で、手札を早い段階で消費するスタイルではないため、赤単のキーカードの1枚とされている《熱烈の神ハゾレト》もメインにわずか1枚のみの採用となっています。

削剥マグマのしぶき歩行バリスタ

 《削剥》《マグマのしぶき》などの軽量除去で相手のクリーチャーを除去しつつ、4ターン目以降から赤いパワーカードを展開していくミッドレンジスタイルです。特に《歩行バリスタ》は序盤は小型クリーチャーに対する除去として機能し、中盤以降はフィニッシャー級になるフレキシブルさが魅力です。

凶兆艦隊の向こう見ず穿刺の一撃

 《凶兆艦隊の向こう見ず》も序盤は2マナ2/1先制攻撃と悪くないスペックで、中盤以降は同型では相手の《稲妻の一撃》などの除去を疑似「フラッシュバック」することでアドバンテージを獲得できます。青黒系に対しても《ヴラスカの侮辱》を再利用できれば《スカラベの神》を追放でき、《奔流の機械巨人》の対策にもなります。

 サイドの1番の注目のカードは《穿刺の一撃》です。クリーチャー限定の5点火力で4マナソーサリーとやや重めの除去ですが、追放することができるので赤単色で《スカラベの神》を処理できる貴重なスペルです。

Standard MOCS #11275289

2018年03月30日

  • 1位 RG Dinosaurs
  • 2位 UW Gift
  • 3位 Sultai Energy
  • 4位 UB Midrange
  • 5位 Sultai Energy
  • 6位 BG Midrange
  • 7位 RG Monster
  • 8位 Sultai Energy

トップ8のデッキリストはこちら

 MOの大規模なイベントであるMOCSの予選を通過したデッキもご紹介していきたいと思います。オンラインの大会ですが8回戦と長丁場で、プロも参加しているレベルの高い大会です。Grixis EnergyやUB Midrange、赤単以外のデッキも6-2以上の成績を残していました。

Standard MOCS #11275289

「RG Dinosaurs」「WR Aggro」

RG Dinosaur

 RG Monstersではなく、恐竜クリーチャーを多数採用したRG Dinosaursが8-0という成績で予選を突破しました。

 《原初の飢え、ガルタ》《レギサウルスの頭目》といった恐竜クリーチャーをフィニッシャーとしたミッドレンジで、RG Monstersと同様に《マーフォークの枝渡り》でアドバンテージを取りつつ、対策の困難な《再燃するフェニックス》でプレッシャーをかけていきます。

 『ドミナリア』 から再録される《ラノワールのエルフ》によって強化されそうなデッキの一つでもあり、今後の活躍にも期待が持てます。

☆注目ポイント

原初の飢え、ガルタレギサウルスの頭目

 《原初の飢え、ガルタ》は現環境で最も高いパワーを持つクリーチャーで、トランプル持ちなのでチャンプブロックも許しません。《レギサウルスの頭目》によって速攻が付けば、この怪物を止められるのは《残骸の漂着》《ヴラスカの侮辱》といったインスタント除去ぐらいで、単体除去なら《顕在的防御》で弾けます。《レギサウルスの頭目》は、ETB能力によって3/3の恐竜トークンを生み出すので《原初の飢え、ガルタ》にも繋がりやすくなるなどシナジーがあり、隙あらば《原初の飢え、ガルタ》+《レギサウルスの頭目》のコンボでゲームを決めるというミッドレンジコンボ的な側面もあります。

打ち壊すブロントドン恐竜との融和キランの真意号

 《打ち壊すブロントドン》はタフネス4と固く、最近よく見られるようになった《王神の贈り物》デッキに対しても強く、機体や《イクサランの束縛》など、現環境には厄介な置物が多数存在するのでメインから無理なく入る置物対策です。緑を使うなら恐竜デッキでなくても積極的に採用していきたいクリーチャーですね。

 《恐竜との融和》は土地またはフィニッシャーとなる恐竜クリーチャーを探し出します。《王神の贈り物》の流行に伴い、《削剥》もメインからしっかりフルに採用されています。《キランの真意号》は、このデッキなら《貪る死肉あさり》《打ち壊すブロントドン》を3ターン目に出すことで即座に攻撃できそうですが、《削剥》などアーティファクト対策がメインから入ることが多い現環境では、クロックとしての信頼性は少し下がりそうです。

殺戮の暴君

 サイドの《殺戮の暴君》は打ち消されず、《レギサウルスの頭目》の能力によって速攻が付けばコントロールにとっては悪夢となります。

WR Aggro

 《アダントの先兵》を始めとした白い軽量クリーチャーと、《軍団の上陸》などのトークンを生み出すスペルで横に並べてビートダウンしていくデッキです。横に並ぶ戦略は単体除去が中心の環境で強く、軽いクリーチャーは打ち消し呪文を掻い潜りやすいので現環境のトップメタである青黒系に強いデッキです。

 『ドミナリア』からも《ベナリア史》《不屈の護衛》など、このデッキにとって新戦力となりそうなカードも多数見られ、新環境での活躍が期待できるデッキの一つです。

☆注目ポイント

軍団の上陸空渡りの野心家征服者の誇り

 緑白や白黒など多色トークンデッキで採用されている《軍団の上陸》は、このデッキにもフィットしています。変身させることも横に並ぶこのデッキでは容易で、変身後はフラッド防止になり息切れすることなく攻めを継続させることが可能になります。

 《空渡りの野心家》《征服者の誇り》は、このデッキのように横に並ぶ戦略では「承殿」の達成も現実的です。現環境では、メインからスイーパーを採用しているデッキが少ないのもこのデッキにとっては追い風です。

残骸の漂着黄昏+払暁領事の旗艦、スカイソブリン

 サイド後は《残骸の漂着》《黄昏+払暁》《排斥》などのスイーパーや除去、追加のフィニッシャーの機体である《領事の旗艦、スカイソブリン》がサイドインされ、ミッドレンジ寄りにシフトしていきます。デッキ内の多くのクリーチャーのパワーが2以下なので、中盤以降は《黄昏+払暁》で墓地から回収することでアドバンテージを得ることができます。

ボーナストピック

ベナリア史不屈の護衛善意の騎士

 先ほどご紹介した白いアグロデッキは、『ドミナリア』からの新戦力により大幅に強化されそうです。『ドミナリア』に収録予定の《ベナリア史》は、カードの強さを最大限に活かすためにクリーチャータイプをKnightに寄せる必要が出てきそうですが、このタイプのデッキには4枚フルに採用されてもおかしくない強力な3マナ域のスペルです。《Benalish Marshal》(※)《不屈の護衛》《善意の騎士》といったKnightクリーチャーが数種類登場予定なので、新環境では白単色のVampire Knightアグロのようなデッキも見られそうです。

※編注: 《Benalish Marshal》『ドミナリア』リリースノートで情報が公開されています。

《Benalish Marshal》
(白)(白)(白)
クリーチャー ― 人間・騎士 3/3
あなたがコントロールしている他のクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。

総括

スカラベの神栄光をもたらすもの発明の天使新緑の機械巨人

 青黒系のデッキが多数勝ち残っていますが、RG Monstersや赤系のアグロ、《王神の贈り物》、Sultai、白系のアグロなど、前環境のTemur Energyと赤単の2強環境とはほど遠く、多種多様なデッキが見られます。

 今月末にリリースされる新セットの『ドミナリア』 は、マジック25周年という節目に相応しく思い出深いカードの再録や歴代のプレインズウォーカーのテフェリーやレガシーの一部であるウェザーライトといった懐かしい名前が並んでいます。

 現在のスタンダードで活躍するカードが『ドミナリア』の世界観とどのような化学反応を見せるのか今から楽しみですね。

 以上USA Standard vol.119でした。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

この記事内で掲載されたカード


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