皆さんこんにちは。
いよいよ待ちに待った新セット『ドミナリア』のプレリリースが今週末に開催されます。リリース前に新しいカードに触れるチャンスです。『ドミナリア』の世界を体験してみてはいかがでしょうか。チャレンジャーデッキもリリースされスタンダードは今が一番楽しい時期です。
今回の連載ではグランプリ・シアトル2018の入賞デッキと『ドミナリア』の注目のカードをご紹介していきたいと思います。
グランプリ・シアトル2018
歴史的なスタンダードチャンピオンが生まれる
2018年04月07-08日
- 1位 Mono-Red Aggro
- 2位 UR God-Pharaoh’s Gift
- 3位 UR God-Pharaoh’s Gift
- 4位 RB Aggro
- 5位 UR God-Pharaoh’s Gift
- 6位 Sultai Constrictor
- 7位 RB Aggro
- 8位 Mardu Vehicles
Gan Yan
トップ8のデッキリストはこちら
青黒系が中心の結果が続き既に解明されたと思われていたスタンダードでしたが、環境終盤の今大会で大きな動きがありました。
プレイオフには環境を定義するカードの一枚である《スカラベの神》が一枚も見られず、今大会で一気に浮上したのは青赤の《王神の贈り物》コンボ。なんとプレイオフに3名送り込むパフォーマンスを見せました。
そんな中優勝を果たしたのは赤単を駆るGan Yanで、彼はなんと18勝0敗とスイスラウンドと決勝ラウンドを無敗で駆け抜けました。競技マジック史上初の快挙です。
グランプリ・シアトル2018 デッキ紹介
「Mono-Red Aggro」「UR God-Pharaoh’s Gift」「Mardu Vehicles」
Mono-Red Aggro
3 《絡みつく砂丘》
3 《屍肉あさりの地》
-土地 (24)- 4 《狂信的扇動者》
4 《ボーマットの急使》
4 《地揺すりのケンラ》
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《アン一門の壊し屋》
1 《ピア・ナラー》
4 《熱烈の神ハゾレト》
4 《再燃するフェニックス》
-クリーチャー (27)-
2 《栄光をもたらすもの》
2 《マグマのしぶき》
2 《削剥》
2 《霊気圏の収集艇》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《ピア・ナラー》
1 《カーリ・ゼヴの巧技》
1 《街の鍵》
-サイドボード (15)-
GPのように予選ラウンドだけでも15回戦にも及ぶ長丁場では全勝というスコアを残すのは難しく、また好調でも多くの場合13-14連勝後に合意による引き分け(ID)によってプレイオフへの進出が確定するので全勝というのは中々見られません。しかし今大会でGan Yanはスイスラウンドを15連勝し、その勢いのままプレイオフも勝ち進み優勝を果たしました。
彼の使用していたデッキは赤単で、1マナの速攻クリーチャーで数ターン以内に処理されなければアドバンテージが得られる可能性のある《ボーマットの急使》からスタートする極めてオーソドックスなリストです。
☆注目ポイント
最近赤いデッキでよく見かけるようになった《狂信的扇動者》は速攻持ちのアタッカーというだけでなく、1マナの1点火力としても扱えるので相手の《ボーマットの急使》や《光袖会の収集者》といったクリーチャーを処理する手段にもなります。《地揺すりのケンラ》も速攻持ちで中盤以降も「永遠」を起動することによって6マナの4/4速攻という無視できない脅威となります。ブロッカーを制限する能力も地味ながらクロックを通すことに貢献するので2マナ域の要となります。
《熱烈の神ハゾレト》は赤単ではお馴染みのフィニッシャーで相手に速やかな対処を迫り中盤以降の余ったマナを使う手段にもなります。もちろん現環境には《ヴラスカの侮辱》のような対処方法も存在しますが、コストも重く枚数も限られており、メインからフル搭載されている《再燃するフェニックス》にも対処をしなければならないので相手にする側にとっては依然として脅威となります。
メインから採用された《削剥》は今大会で上位に多数送り込んだ《王神の贈り物》やMardu Vehiclesなど対象に困ることは少なく、それらのマッチアップで有利になるので今後もメインからマストとなりそうです。《屍肉あさりの地》はメインから無理なく採用できる墓地対策で《王神の贈り物》や《スカラベの神》への対抗手段となります。《絡みつく砂丘》は序盤は土地としても機能し、中盤以降はソーサリースピードながら除去としても機能するため、相手の《再燃するフェニックス》から生成された0/1トークンも対処できて便利です。
サイドの《凶兆艦隊の向こう見ず》は同型、Marduのように除去を採用したクリーチャーデッキとのマッチでアドバンテージが取れるクリーチャーとして活躍し、《栄光をもたらすもの》や《反逆の先導者、チャンドラ》をサイドインすることでBig Red寄りにシフトしていく選択肢もあります。追加のアーティファクト除去の《削剥》も採用されており、しっかりと構築されたサイドボードも今大会のパフォーマンスの原動力になったことが予想されます。
赤単はチャレンジャーデッキの「ハゾレトアグロ」にも多くのパーツが含まれていることもあり、現在では組みやすくなっているのでお勧めです。
UR God-Pharaoh’s Gift
今大会でブレイクを果たした青赤の《王神の贈り物》デッキ。《王神の贈り物》は重く赤単を始めとした多くのデッキのメインから採用されている《削剥》に弱くなりますが、毎ターン墓地に落ちたクリーチャーを4/4速攻持ちで復活させる能力は強力なアドバンテージエンジンです。
軽く能動的に墓地に送れるクリーチャーを多数採用できることが青赤バージョンの強みで、《来世への門》の能力を誘発させやすく《王神の贈り物》のサーチもスムーズになり、《王神の贈り物》で復活させるクリーチャーも墓地に溜まります。
☆注目ポイント
《ボーマットの急使》は速い段階から手札のクリーチャーを墓地に落とすことで墓地を肥やし《来世への門》から《王神の贈り物》をサーチすることを可能にします。《狂信的扇動者》も能動的に墓地に送ることができるので《来世への門》と相性が良く、序盤からダメージを与えたり《光袖会の収集者》などを除去しつつ《来世への門》を発動させることによってライフゲインしつつルーター能力により墓地を肥やせるので《王神の贈り物》を早い段階から出すことに貢献します。
《戦闘の祝賀者》はこのデッキが活躍したことで一気に株を上げたカードです。タフネス1と脆いクリーチャーですが《王神の贈り物》によって墓地から復活させた後に「督励」させることでもう一度戦闘フェイズに入れるので、再度《王神の贈り物》を誘発させて一気に畳みかけることができます。
《戦凧の匪賊》は素でも2マナ2/1飛行と悪くないスペックで、攻撃するたびに《羊術》を誘発するので相手はクリーチャーをブロッカーとして活用しづらくなり、《歩行バリスタ》や《狂信的扇動者》で即除去することができるようになります。《歩行バリスタ》は0マナでキャストすることで《来世への門》を誘発させることもできるので覚えておきたいテクです。
《多面相の侍臣》は「不朽」持ちなので《来世への門》のルーター能力や《機知の勇者》、《ボーマットの急使》、《査問長官》などで墓地に送り、マナの余る中盤以降に一番強いクリーチャーをコピーすることでアドバンテージを得られます。
サイドの《沈黙の墓石》は《奔流の機械巨人》、《スカラベの神》、《再燃するフェニックス》など墓地を利用する能力を対策しつつ対象を取らない《王神の贈り物》には影響がないのでこのデッキにとって使いやすい墓地対策カードになります。《スカラベの神》デッキが勝ち残らなかったのもこのカードの影響もあったと考えられます。
Mardu Vehicles
2 《平地》
1 《沼》
3 《泥濘の峡谷》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》
4 《産業の塔》
3 《竜髑髏の山頂》
-土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》
4 《模範的な造り手》
4 《ボーマットの急使》
4 《屑鉄場のたかり屋》
2 《ピア・ナラー》
3 《熱烈の神ハゾレト》
1 《再燃するフェニックス》
-クリーチャー (22)-
2 《致命的な一押し》
2 《残骸の漂着》
2 《領事の権限》
1 《チャンドラの敗北》
1 《アルゲールの断血》
1 《不敬の行進》
1 《排斥》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《炎鎖のアングラス》
-サイドボード (15)-
Mardu Vehiclesは赤単よりスピードは落ちますが、除去の種類が多く、墓地から復活してくる《屑鉄場のたかり屋》や飛行持ちの機体である《キランの真意号》によって環境のアグロデッキの中ではロングゲームにも強い部類に入ります。
Mardu Vehiclesにも弱点はあり、このデッキよりも速い赤単は《キランの真意号》に対するアンサーとなる《削剥》がメインから採用されていることも多いので苦手なマッチアップとなります。《産業の塔》や《感動的な眺望所》など土地に恵まれているとは言っても3色のアグロなのでやや事故りやすいのも難点となりますが、先程も説明したように多彩な除去と《強迫》や《残骸の漂着》、プレインズウォーカーなどサイドボードの選択肢の多さは魅力です。
☆注目ポイント
除去の種類の多さはこのデッキを使う理由の一つで、確定除去の《無許可の分解》は《キランの真意号》や《屑鉄場のたかり屋》があるのでほぼ確実に追加のダメージも入ります。今大会で多くの入賞者を出していた《王神の贈り物》デッキに対して有効な《削剥》もメインからしっかり採用されています。
《屑鉄場のたかり屋》と《熱烈の神ハゾレト》によって息切れしづらく、《歩行バリスタ》のように除去にも本体火力にもなるクリーチャーや《反逆の先導者、チャンドラ》、《無許可の分解》のダメージなどクリーチャーによる戦闘以外からのダメージソースが豊富なのもこのデッキの強みです。
SultaiやGrixis Midrangeなどにロングゲームを挑む際も追加のプレインズウォーカーや《残骸の漂着》といったスイーパー、コントロールに対しても《強迫》や《炎鎖のアングラス》、赤単に対しては追加の除去や《領事の権限》とサイドボードの豊富な選択肢もこのデッキが選択される理由となります。特に《残骸の漂着》は《熱烈の神ハゾレト》や《再燃するフェニックス》、《スカラベの神》などにも効くので最近は《燻蒸》よりも優先的に採用されているようです。
このデッキのパーツの多くもチャレンジャーデッキ「機体ラッシュ」に含まれているので以前よりも組みやすくなっており、『ドミナリア』からも《ウェザーライト》という強力な機体が加入するのでお勧めデッキの1つです。
ボーナストピック:『ドミナリア』の注目カード
『ドミナリア』のカードリストも公開されたので、おまけとしてまだ取り挙げていなかった新環境で活躍しそうなカードを予想していきたいと思います。
《光袖会の収集者》やチャンプブロッカーとなる小型のクリーチャーを除去しつつ戦場に出るパワー3のクリーチャー。赤単の新たな3マナ域の戦力となりそうです。
わずか1点ながら本体にもプレインズウォーカーにもダメージが入るので、ゲーム中盤以降に引いてきても相手にとっては十分な脅威となりえます。
軽いインスタントスピードの除去は環境に大きな影響を与えます。今後のメタ次第ですが、伝説のクリーチャー以外を対象に取れるので赤単などアグロデッキの多くのクリーチャーを対処できるスペルで、特に青黒系にとっては大きな収穫となりそうです。
あの《悪斬の天使》を彷彿させるクリーチャー。除去耐性はありませんがタフネス5と固く、環境の主要な除去の1枚である《致命的な一押し》が効かず、伝説のクリーチャーなので多くの黒いデッキの新たな除去候補とされている《喪心》にも耐性があるので白いデッキの新たなフィニッシャーとなりそうなクリーチャーです。
セットの中でも特に注目を集めているプレインズウォーカー。コストもプレインズウォーカーの中では軽い方な上に、無色なためデッキを選びません。
「+1」能力によるカードアドバンテージを活かせるのは主にミッドレンジやコントロールで、現環境のスタンダードでも青黒系やGrixisといったデッキがポピュラーなので多くのデッキで採用されそうです。《解放された者、カーン》や 《精霊龍、ウギン》のように活躍できるのか要注目です。
『ドミナリア』には複数のカウンター呪文が収録される予定ですが、その中でも再録される《中略》は密かに注目株です。現在のスタンダードには《王神の贈り物》デッキや《スカラベの神》など墓地に落ちたクリーチャーを再利用する戦略や手段が多いので追放は大きな意味を持ちます。
《ナントゥーコの影》を彷彿させるクリーチャーで、黒単アグロは少数ながら存在するので、新環境でも見られそうです。
《未達への旅》と 《停滞の罠》を組み合わせたようなクリーチャー除去エンチャント。対象に取れるのはタップ状態のクリーチャーのみと制限が加えられている代わりに瞬速が付いているので使いやすく、白いデッキの主要な除去となりそうです。
《ニッサの誓い》ではありませんが、1マナで土地かクリーチャーをサーチできるので序盤は必要な土地を探し出し、中盤以降はフィニッシャーとなるクリーチャーを探したりできるので腐りづらく、緑系のミッドレンジの必須カードになりそうです。
一通り見ていきましたが、『ドミナリア』は全体的に軽い優秀なスペルが多く、《ウルザの後継、カーン》のようなパワーカードも多数見られます。また《ラノワールのエルフ》を始めとした懐かしい顔ぶれも多いので、新環境のスタンダードが楽しみですね。
総括
予定より早く開始されたこともあり、いつもよりもプレビュー期間が緩やかに感じられた『ドミナリア』でしたが、今週末にはいよいよプレリリースが開催され、来週末にはセットがリリースされスタンダードでも使えるようになります。歴代でもかなり上位に位置する程の良セットと噂なのでとても楽しみです。
来週末にはチーム構築戦であるSCGO Atlantaが開催されます。新環境スタンダードの最初の大規模なイベントなのでお見逃しなく。
以上USA Standard Express vol.120でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフ、そして良い週末を!