みなさんこんにちは。
今週の月曜日に【禁止制限告知】の発表されました。一部ではここ数年トップメタに留まり続けているMiraclesのエンジンである《師範の占い独楽》が禁止カードに指定されるのではないかと囁かれていたものの、結局はノーチェンジでした。
GPでは上位を支配していたように見えたMiraclesでしたが、【GP Columbus】と【GP Prague】の2日目進出率ではDelver系がトップで、先々週に開催されたレガシーの2日制のイベントである【SCGO Worcester】でもGrixis Delverが優勝とMiraclesと並んで上位を支配しており、Miraclesに限らず青いフェアデッキが安定して高い勝率だったのが分かります。
《渦まく知識》や《意志の力》を使った青いデッキは使用者も多く、レシピも洗練されているため安定した結果を出し続けており、Eldraziなど比較的新しい戦略は追い付くまでに時間がかかりそうです。Landsや各種《虚空の杯》デッキなど非青デッキも上位で見られるため、しばらく様子をみるといったところでしょうか。
さて前置きが長くなりましたが、今回の連載ではSCGO Worcesterの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Worcester トップ8
~Delver系が安定した強さを見せる~
2016年7月9日
※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。 |
1位 Grixis Delver
2位 Lands
3位 Miracles
4位 Goblin Prison
5位 4C Delver
6位 Infect
7位 Mono Red Sneak Attack
8位 Reanimator
トップ8のデッキリストは【こちら】
久々に開催されたレガシーオープンは、参加者750人以上と大盛況の内に幕を閉じました。
【2日目】の最大勢力であったMiraclesは、GP Columbusと比べるとプレイオフにはわずかに1名(9位のSam Roukasはタイブレーカーによるもので、勝ち点はトップ8のボーダーである36点)と母数に反して少なめで、第2勢力のEldraziは上位には見当たりません。
今大会見事に優勝を飾ったGrixis Delverは2日目進出者はわずか3名でしたが、1人が優勝、残る2人もトップ16にまで勝ち残っており、亜種の4C Delverもトップ8入賞を収めていることからも今大会で最も成功を収めたアーキタイプだったようです。
SCGO Worcester デッキ紹介
「Grixis Delver」「4C Delver」「Goblin Prison」「Mono Red Sneak Attack」
3 《Volcanic Island》 2 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 1 《Badlands》 4 《沸騰する小湖》 3 《汚染された三角州》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《死儀礼のシャーマン》 1 《渋面の溶岩使い》 4 《若き紅蓮術士》 -クリーチャー (13)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《もみ消し》 4 《稲妻》 4 《目くらまし》 1 《火+氷》 4 《意志の力》 -呪文 (29)- |
4 《陰謀団式療法》 2 《グルマグのアンコウ》 2 《外科的摘出》 2 《紅蓮破》 1 《真髄の針》 1 《無のロッド》 1 《梅澤の十手》 1 《古えの遺恨》 1 《Fire Covenant》 -サイドボード (15)- |
Miraclesと並んで、環境最高の青いデッキと評されているGrixis Delver。「探査」ドロースペルがリーガルだったころからDelver系のバリエーションとして見られるようになりましたが、「探査」ドローが禁止になってしばらく経った現在でも最高のDelverとして上位に留まり続けています。
☆注目ポイント
まず他のGrixis Delverとの大きな違いは《グルマグのアンコウ》がメインでは不在なことです。
サイズに勝り軽いスペルを多用するこのデッキでは、比較的早い段階からキャストすることが可能でGrixisカラーのDelverの強さを支えていたクリーチャーでしたが、《もみ消し》や《目くらまし》といった受動的なスペルや《渋面の溶岩使い》との相性はお世辞にも良いとは言えないためサイドに落とされています。
Death and Taxesなどクリーチャーデッキを意識していたようで、メインから《渋面の溶岩使い》、《火+氷》、サイドには《Fire Covenant》、《梅澤の十手》が見られます。 《もみ消し》はMiraclesに対しても強く、全体的にフェアデッキとのマッチアップを想定した構成です。
逆にコンボ対策はメインでは少なめで、ハンデスの 《陰謀団式療法》はサイドに落とされています。このタイプの天敵である《虚空の杯》に対抗するために《古えの遺恨》が採用されており、フラッシュバックスペルはこのデッキにとって数少ないカードアドバンテージを得られるカードです。
■ Interview With Ben Friedman
Ben FriedmanはSCG Invitationalトップ8入賞回数3回、GPトップ8入賞回数3回、SCGOでもトップ8入賞を多数経験している強豪プレイヤーです。今大会では 《瞬唱の魔道士》を採用した特徴的な4色のDelverを持ち込み、見事にトップ8に入賞を収めています。今回の連載のためにインタビューをすることができました。
2 《Volcanic Island》 2 《Underground Sea》 2 《Tropical Island》 3 《沸騰する小湖》 3 《汚染された三角州》 3 《溢れかえる岸辺》 4 《不毛の大地》 -土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《死儀礼のシャーマン》 3 《瞬唱の魔道士》 2 《タルモゴイフ》 2 《真の名の宿敵》 -クリーチャー (15)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 3 《呪文貫き》 4 《目くらまし》 3 《突然の衰微》 4 《意志の力》 -呪文 (26)- |
4 《外科的摘出》 2 《真髄の針》 2 《思考囲い》 2 《狼狽の嵐》 2 《梅澤の十手》 2 《苦い真理》 1 《四肢切断》 -サイドボード (15)- |
――レガシーのDelverでは珍しい《瞬唱の魔道士》が採用されているけど、今回のリストを選択するにいたった経緯は?
Ben: 【GP Columbusで9位に入賞したDan Signoriniののリスト】が他のGrixis Delverよりも良いと思って参考にして調整を開始した。《瞬唱の魔道士》は無駄カードになりづらく、フレキシブルなので好きなカードだ。カードアドバンテージを得ることができて妨害や除去スペルの水増しにもなる。
Ben: 《もみ消し》のような用途の狭いスペルを解雇し、《瞬唱の魔道士》を採用することにして追加の軽い妨害要素の《呪文貫き》も加えた。《瞬唱の魔道士》も含めるとこのデッキはメインから除去を10枚取っていて、ElvesやDeath and Taxesを意識した構成になっている。他のデッキに対しても《渦まく知識》などを再利用しつつクロックを展開できる。
――他のカード選択についても教えてもらえる?
Ben: 《真の名の宿敵》は想像以上に大活躍だった。《タルモゴイフ》2枚と入れ替えて正解だったね。サイドの4枚の《外科的摘出》はLands対策で、最近はあまり見かけないマッチアップだけどDredgeやReanimator対策にもなる。墓地を活用するコンボは強いから対策はできるだけしておいた方が安全だね。
――Miraclesとのマッチアップはどうだった?
Ben: 今大会ではJoe Lossettと当たって勝つことができた。メインはやはりスイーパー以外の除去に耐性のある《真の名の宿敵》だったり、《相殺》を壊せる《突然の衰微》が強くて、サイド後は《真髄の針》で《師範の占い独楽》を止めた。全体的に見て少し有利かな。
――なるほど。《突然の衰微》がメインから採用されている分、他のGrixis Delverよりも《相殺》ロックに耐性があるのは大きいね。他のDelverとのマッチアップもどうだったか教えてもらえる?
Ben: Delver系は有利だと思う(もちろんマナトラブルさえ起きなければね)。今大会ではRUG Delverと2回、BUG、Grixisとそれぞれ1回ずつ当たってそのすべてのマッチで勝つことができた。他のDelverよりも除去を多く取っていて、なおかつほとんどのDelverデッキは《真の名の宿敵》に対する回答を持ち合わせていない。《瞬唱の魔道士》+《稲妻》 or 《突然の衰微》のおかげでロングゲームにも強い。
――なるほど。4C Delverを使っていて当たりたくないマッチアップがあったら教えてくれる?
Ben: 《血染めの月》がきついね(笑)
――基本地形を取っていないから確かに1ターン目から《血染めの月》を出してくるデッキ(今大会でも入賞していたMono Red Sneak AttackやGoblin Prison)は厳しそうだね。
Ben: そうだね。カウンターできなかったらほとんど動けなくなるからね。
――何か変更したいところはある?
Ben: 《悪意の大梟》を加えようと考えている。安定性を高めるために《稲妻》を抜いてSultaiに近い構成にすることも考えている。その場合は軽い除去に《見栄え損ない》や《四肢切断》を採用して、もちろん《瞬唱の魔道士》も引き続き採用していく。
――今回はインタビューに協力してくれてありがとう。
Ben: 日本語で読めないのが少し残念だけど、記事に挙がるのを楽しみにしてるよ。
10 《山》 2 《魂の洞窟》 4 《古えの墳墓》 4 《裏切り者の都》 -土地 (20)- 1 《棘鞭使い》 4 《猿人の指導霊》 4 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《月の大魔術師》 2 《帝国の徴募兵》 4 《モグ捕り人》 1 《Goblin Settler》 1 《残忍なレッドキャップ》 1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 1 《包囲攻撃の司令官》 1 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー (24)- |
4 《血染めの月》 4 《虚空の杯》 3 《金属モックス》 3 《三なる宝球》 2 《梅澤の十手》 -呪文 (16)- |
4 《虚空の力線》 3 《焦熱の合流点》 3 《罠の橋》 2 《突然のショック》 1 《ファイレクシアの破棄者》 1 《ゴブリンの名手》 1 《タクタクの潰し屋》 -サイドボード (15)- |
レガシーには特殊地形に頼ったデッキが多数存在しますが、《血染めの月》はそういったデッキをシャットアウトするエンチャントです。1ターン目に《血染めの月》を張られることは多くのデッキにとってゲームの敗北に等しく、このGoblin Prisonは《金属モックス》や《猿人の指導霊》を利用することによって「1ターン目の《血染めの月》」を実現可能にしています。
流行りのEldraziや各種Delver系を筆頭に、基本地形が不採用で特殊地形に頼り切ったデッキが多いレガシーでは脅威となります。相手の行動が大きく制限されるのでその間に各種ゴブリンクリーチャーでクロックをかけて一気に決着を付けていくのがこのデッキの基本的な戦略となります。
☆注目ポイント
このデッキのメインの勝ち手段は《血染めの月》によるロックで、それが効きづらいコンボや基本地形を多めに採用したMiraclesなどに対しては 《虚空の杯》や《三なる宝球》といったカードで行動を制限していきます。
《虚空の杯》X=1は《死儀礼のシャーマン》、《渦まく知識》、《思案》、《暗黒の儀式》、《師範の占い独楽》、《剣を鍬に》など各デッキの主要スペルをシャットアウトしてくれます。《三なる宝球》は《虚空の杯》ほどの拘束力はないものの、対戦相手をスローダウンさせることに変わりはなく、ANTなどにとっては死活問題となります。
《ゴブリンの熟練扇動者》はこのデッキの主力となるクリーチャーで、理想は1ターン目《血染めの月》or《虚空の杯》X=1、2ターン目《ゴブリンの熟練扇動者》でクロックをかけ始めることです。《血染めの月》や《虚空の杯》が張られた状態では相手も除去を打つことが難しくなるので、速やかに勝負を決めることができます。
《モグ捕り人》はプリズンを掻い潜って出てきた相手のクリーチャーにお帰り願う《棘鞭使い》や、《死儀礼のシャーマン》などを除去する《残忍なレッドキャップ》、《血染めの月》を警戒してサーチされた基本地形を破壊する《Goblin Settler》といったゴブリンクリーチャーを状況に応じてサーチしてくることができるこのデッキのキーとなるクリーチャーです。
9 《山》 1 《鋭き砂岩》 4 《古えの墳墓》 4 《裏切り者の都》 1 《水晶鉱脈》 -土地 (19)- 4 《猿人の指導霊》 2 《山賊の頭、伍堂》 2 《業火のタイタン》 3 《グリセルブランド》 2 《世界棘のワーム》 2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー (15)- |
4 《煮えたぎる歌》 4 《裂け目の突破》 4 《血染めの月》 4 《騙し討ち》 4 《水蓮の花びら》 4 《虚空の杯》 2 《殴打頭蓋》 -呪文 (26)- |
3 《三なる宝球》 2 《月の大魔術師》 2 《破壊放題》 2 《紅蓮光電の柱》 2 《突然のショック》 2 《紅蓮術》 1 《コジレックの帰還》 1 《沸騰》 -サイドボード (15)- |
SCG Tourの首位を走り続けるJeff Hooglandはスタンダード、モダンなどフォーマットを問わずに活躍しているプレイヤーで、トップメタデッキよりもローグデッキを持ち込むデッキビルダーでもあります。
今大会でも比較的珍しい赤単色のSneak Attackデッキで入賞を収めています。青赤のSneak and Showよりもよりコンボに特化したデッキで、《渦まく知識》や《意志の力》といったフォーマットを代表する青いカードがない分マナ加速やマストカウンター、マストアンサーで占められています。環境の多くのデッキに劇的に刺さる《血染めの月》や《虚空の杯》といったプリズン要素も採用されています。
☆注目ポイント
《煮えたぎる歌》などマナ加速によって、最初の1~2ターン目にゲームを決めてしまうことも可能です。《騙し討ち》や《裂け目の突破》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》などファッテイのコストを踏み倒す以外にも、《山賊の頭、伍堂》や《業火のタイタン》といった赤いクリーチャーはコスト的にも素でキャストすることが可能で、特に《山賊の頭、伍堂》は《殴打頭蓋》をサーチしマナさえあればバウンスして再キャストすることができるので、Miraclesのようなスイーパーを採用したコントロール相手にも息切れしづらくなります。
ハードキャスト可能なクリーチャーも採用されていることから、《騙し討ち》対策の代表的なヘイトベアーである《封じ込める僧侶》にもある程度の耐性があります。カウンターを採用していない分サイドには《三なる宝球》や《紅蓮光電の柱》といった対コンボ用のカードが多数積まれています。
《紅蓮術》はサイド後に《封じ込める僧侶》や《カラカス》などで対策を試みる相手に対する追加の勝ち手段で、特にMiraclesに対して有効なエンチャントです。高マナコストのカードが多数採用されたこのデッキでは、数回の起動で勝つことも可能です。カウンターを多数採用した青いデッキに対してマストカウンターの枚数を増加させるために、儀式スペルの《煮えたぎる歌》数枚と入れ替わります。
コンボ要素のあるプリズンデッキでパワフルなスペルを多数搭載した爽快感のあるデッキで、Eldraziを初めとした環境の多くの特殊地形を多用するデッキに対して有利が付くデッキなのでお勧めです。
■ 総括
DelverやMiraclesなど相変わらず青いデッキが結果を残し続けていますが、LandsやMono Red Sneak Attackなど《渦まく知識》や《意志の力》を採用していない戦略も勝ち残っており、多くのデッキは《渦まく知識》を初めとした軽い青いドロースペルをシャットアウトする《虚空の杯》を採用しています。
《虚空の杯》デッキの代表格であったEldraziよりもそのEldraziやLandsなど環境の様々なデッキをロックする《血染めの月》にアクセスできるMono Red Sneak AttackやGoblin Prisonといった赤いデッキが勝ち残る傾向にあるようです。
禁止改定がノーチェンジだったのでMiracles、Delver系やそれら青いフェアデッキを目の敵にした各種プリズンデッキ、そして置物以外ではカウンターなど妨害手段に乏しいそれらのデッキに強いコンボといった環境がしばらく続きそうです。
以上USA Legacy Express vol.108でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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