皆さんこんにちは。
『ドミナリア』がリリースされてしばらく経ち、トップレアとされている《ウルザの後継、カーン》の高騰が話題になっています。必要なカードならば、必要だと思った時点で買うべきかもしれません。筆者も2枚は購入してあるのですが、現在もう1枚を購入するか検討中です。
さて、今回の連載ではSCGO Baltimoreとグランプリ・バーミンガム2018(スタンダード)の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Baltimore
白黒機体の隆盛
2018年05月05-6日
- 1位 GB Constrictor
- 2位 UW Midrange
- 3位 WB Aggro
- 4位 WB Aggro
- 5位 WB Aggro
- 6位 WB Aggro
- 7位 UW Historic
- 8位 Mono-Green Aggro
James Lu, Roshen Eapen, Alexander Ferzola
トップ8のデッキリストはこちら
UW Controlが優勝したSCGO Atlantaの次週に開催されたSCGO Baltimoreは、Atlantaと同様にチーム構築戦で、それぞれのチームが前大会の結果を元に無難な選択をしてくることが予想されました。
SCGO Atlantaについては前回の連載で触れましたが、併せてご紹介したMOPTQの結果も影響を与えたようです。予想以上にメタが進み、UW Controlは対策が厳しくなって上位では少数でした。そして、MOPTQでも結果を残していたWB Aggroが多数のチームを上位に送り込んでいます。
《ウルザの後継、カーン》、《ベナリア史》、《黎明をもたらす者ライラ》といった『ドミナリア』のパワーカードを多数採用しています。マナ基盤も再録された対抗色チェックランドの《孤立した礼拝堂》、白いデッキに強い《悪意の騎士》の恩恵もあり、2日目進出率が最も高く、今大会の勝ち組でした。
SCGO Baltimore デッキ紹介
「WB Aggro」「GB Constrictor」
3 《沼》
4 《秘密の中庭》
4 《孤立した礼拝堂》
4 《イフニルの死界》
1 《シェフェトの砂丘》
1 《屍肉あさりの地》
-土地 (24)- 2 《歩行バリスタ》
4 《模範的な造り手》
4 《悪意の騎士》
4 《屑鉄場のたかり屋》
2 《黎明をもたらす者ライラ》
-クリーチャー (16)-
4月29日に開催されたMOPTQでも準優勝という好成績を残していたWB Aggroは今大会トップの2日目進出率で、プレイオフにも4チームを送り込むことに成功していました。
併催して開催されていた個人戦のClassicsでも優勝しています。Mardu Vehiclesがそうであったように、このデッキも機体やプレインズウォーカーによる多角的な攻めが強力で、前週のSCGO Atlantaを制したUW Controlに強い構成なのも勝因だと思われます。
☆注目ポイント
《キランの真意号》 と《悪意の騎士》はUW Controlの主力の除去である《封じ込め》に耐性があり、UW側はこれらの脅威を対処するために後手に回らざるを得ない状況に追い込まれます。
《ベナリア史》はクロックを生成しつつアドバンテージも取ることができるので、コントロールにとっては対処が難しく、《悪意の騎士》も騎士・クリーチャーなので全体強化能力によって打点が高くなります。
このデッキでは、《ウルザの後継、カーン》 の3つの忠誠度能力を余すことなく有効活用することが可能です。フィニッシャーとしてもロングゲームにおけるアドバンテージエンジンとしても活躍します。《キランの真意号》 や《屑鉄場のたかり屋》、《歩行バリスタ》といったアーテイファクトを採用しているので、「-2」能力によって生成された構築物・トークンが3/3以上のサイズになることもあります。
《試練に臨むギデオン》は再び評価されているプレインズウォーカーです。《悪意の騎士》の存在は気になりますが、多くの脅威を無力化することで時間を稼ぎます。自身もクリーチャーとなって攻撃に参加できるので、UW Controlに対しても悪くないカードです。3マナと軽いのもこのプレインズウォーカーの強みで、3ターン目に場に出しておけば相手も対処するために動くことを余儀なくされ、《ウルザの後継、カーン》のような後続の脅威を通す隙が作れます。
サイドの《賞罰の天使》は《黎明をもたらす者ライラ》ともシナジーがある追加のクロック兼除去で、「不朽」を持つので《ヴラスカの侮辱》のような追放系以外の除去で処理されづらいクリーチャーです。青黒よりも青白系のコントロールやミッドレンジが増えている点も追い風です。
2 《沼》
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
4 《森林の墓地》
2 《イフニルの死界》
-土地 (23)- 4 《歩行バリスタ》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《光袖会の収集者》
4 《巻きつき蛇》
4 《翡翠光のレインジャー》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
1 《打ち壊すブロントドン》
3 《貪欲なチュパカブラ》
3 《新緑の機械巨人》
-クリーチャー (29)-
3 《打ち壊すブロントドン》
2 《貪る死肉あさり》
2 《造命師の動物記》
1 《致命的な一押し》
1 《喪心》
1 《霊気圏の収集艇》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-サイドボード (15)-
Vehiclesと同様、環境初期に活躍する傾向にあるGB。定番の《巻きつき蛇》によってエネルギー・カウンターや+1/+1カウンターを増強し、「探検」クリーチャーによってアドバンテージを稼ぎます。質の高いクリーチャーによって他のクリーチャーデッキを圧倒する戦略が、『ドミナリア』で再録されたマナクリーチャーの《ラノワールのエルフ》と、新カードの《冒険の衝動》によってさらに強化されました。
マナ加速によって《ピーマの改革派、リシュカー》や《新緑の機械巨人》を1ターン早くキャストすることができるようになり、テンポ面でも有利が取れるようになりました。
☆注目ポイント
《冒険の衝動》は《霊気との調和》に代わる緑のミッドレンジのサーチスペルとして、デッキの安定性を支えます。
《黎明をもたらす者ライラ》を処理できる《貪欲なチュパカブラ》や《ヴラスカの侮辱》にアクセスできるのも、GBの魅力です。小型クリーチャーの処理はメインから4枚採用されている《歩行バリスタ》に任せられるため、メインから採用する除去は《致命的な一押し》よりも《ヴラスカの侮辱》の方が優先されそうです。
《秘宝探究者、ヴラスカ》は《キランの真意号》 、《黎明をもたらす者ライラ》、《封じ込め》といった環境の様々なパーマネントを処理することが可能です。トークンの生成もできるので、UW Controlを始めとした多くのマッチで活躍するプレインズウォーカーです。
グランプリ・バーミンガム2018
RB Vehiclesの支配する環境
2018年05月12-13日
- 1位 RB Vehicles
- 2位 UW Control
- 3位 RB Vehicles
- 4位 RB Vehicles
- 5位 GB Constrictor
- 6位 RB Vehicles
- 7位 RB Vehicles
- 8位 RB Vehicles
Simon Nielsen
トップ8のデッキリストはこちら
『ドミナリア』リリース後初の個人戦のスタンダードのプレミアイベントであるグランプリ・バーミンガム2018は、SCGO AtlantaとSCGO Baltimoreからメタがさらに加速し、RB Vehiclesが優勝者も含めてトップ8に6名入賞しました。さらに、プレイオフだけでなく9-32位まで見渡しても10名と、今大会の勝ち組でした。
冒頭で挙げた『ドミナリア』の《ウルザの後継、カーン》の使用率も高く、今大会で猛威を振るったRB VehiclesやWB Aggroと相性が良く、無色なので採用しようと思えばどんなデッキにも入る可能性のあるカードなので、今後もスタンダードの必須カードとして活躍し続けることが予想されます。
グランプリ・バーミンガム2018 デッキ紹介
「RB Vehicles」「UW Control」
1 《沼》
4 《泥濘の峡谷》
4 《竜髑髏の山頂》
2 《燃え殻の痩せ地》
2 《産業の塔》
1 《霊気拠点》
-土地 (25)- 2 《歩行バリスタ》
3 《損魂魔道士》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《ピア・ナラー》
2 《再燃するフェニックス》
2 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (19)-
2 《チャンドラの敗北》
1 《栄光をもたらすもの》
1 《グレムリン解放》
1 《大災厄》
1 《焦熱の連続砲撃》
1 《ヴラスカの侮辱》
1 《無情な略奪》
1 《木端+微塵》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《ウルザの後継、カーン》
1 《炎鎖のアングラス》
-サイドボード (15)-
RB Vehiclesは、機体を採用したアグロ特有の多角的な攻めを戦略として持っています。UW Controlなどに相性が良く、『ドミナリア』リリース直後に開催されたSCGO Atlantaでも結果を残していました。
登場当初は《ボーマットの急使》や《発明者の見習い》のような1マナ域のクリーチャーが多数採用された軽い構成でしたが、WB Aggroや、GB Constrictorの増加に伴って《ゴブリンの鎖回し》が加えられ、構成が中速寄りにシフトしています。
☆注目ポイント
《ゴブリンの鎖回し》は赤いアグロデッキの3マナ域の新戦力として、プレビューの段階から話題に挙がっていました。3マナで3/3というスペックを持ち、戦場に出たときの能力はControlに対して有効ではありませんが、アグロデッキ相手ならば相手のブロッカーである小型クリーチャーや、トークンを一掃することが可能で、アドバンテージを得られます。GBの《光袖会の収集者》と《ラノワールのエルフ》、Mono-Redの《ボーマットの急使》と《地揺すりのケンラ》をまとめて除去しつつ、こちらは3/3が戦場に残る、という展開は相手からすれば非常に厄介です。
デッキがミッドレンジ寄りになった結果、早い段階で生け贄に捧げてアドバンテージを取りづらくなったこと、そして同型の《ゴブリンの鎖回し》よる被害を最小限に抑えるため、《ボーマットの急使》の採用は見送られているようです。
除去されても墓地から復活してくる《屑鉄場のたかり屋》や《再燃するフェニックス》、《反逆の先導者、チャンドラ》、《ウルザの後継、カーン》といったプレインズウォーカー、機体である《キランの真意号》など、対処しなければならない脅威の種類が多いこともUW Controlに強い理由の1つです。
赤いアグロの天敵である 《黎明をもたらす者ライラ》に対して解答になる《無許可の分解》が使える点も含めて、Mono-RedよりもRBの方が現環境では有利な選択だと言えます。同型も意識していたようで《削剥》がメインから4枚フルに採用されているほか、サイドには《グレムリン解放》も忍ばせてあります。《グレムリン解放》をキャストすることで一気に形勢を逆転させることも可能なので、今後はサイドには必ず1-2枚採用しておきたいカードです。
3 《一瞬》
3 《本質の散乱》
2 《明日からの引き寄せ》
4 《不許可》
3 《残骸の漂着》
2 《燻蒸》
1 《暗記+記憶》
3 《封じ込め》
2 《アズカンタの探索》
3 《排斥》
1 《試練に臨むギデオン》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (33)-
UW Controlの中でも勝ち手段を最小限にまで絞った真のコントロールデッキです。《不死の霊薬》で墓地のカードをライブラリーに戻して《スフィンクスの啓示》で延々とアドバンテージを取り続けることが勝ち手段となっていた、『テーロス』と『ラヴニカへの回帰』のスタンダードで活躍していたコントロールデッキを彷彿とさせます。
《奔流の機械巨人》のような勝ち手段を削り、その枠を除去やカウンターといった妨害要素に割いているため、フィニッシャーを序盤に引くリスクが減っています。反面、フィニッシャーを減らしたことによってゲームをコントロールしたとしても時間以内にゲームを終わらせることが難しくなっているので、引き分けないように気を付けたいところです。
☆注目ポイント
《試練に臨むギデオン》以外に能動的に勝ちに行く手段は皆無で、《明日からの引き寄せ》や《アズカンタの探索》でアドバンテージを取りつつ、カウンターと除去でゲームをコントロールし、最終的にデッキに4枚採用されている《ドミナリアの英雄、テフェリー》の奥義で相手のパーマネントを全て追放して、反撃の芽を摘みます。
大抵の場合、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の奥義が発動された時点でほぼ決着はついていますが、相手が投了せずに粘って来た場合は、ライブラリーアウトを狙うことになります。《不死の霊薬》のように自分の墓地のカードをライブラリーに戻す手段はないので、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の「-3」能力によって《ドミナリアの英雄、テフェリー》自身をライブラリートップにバウンスさせ続けて相手よりも先にライブラリーアウトすることを防ぎます。また、《試練に臨むギデオン》の紋章で敗北そのものを回避することも可能です。
《明日からの引き寄せ》ではライフゲインできないので、かつての《スフィンクスの啓示》のようにアドバンテージを稼ぎつつ時間を稼ぐ、という使い方はできません。しかしながら、スイーパーやキーカードである《ドミナリアの英雄、テフェリー》を引き当てる助けになります。
サイドには追加の勝ち手段として《ベナリア史》が忍ばせてあります。UW Control同型で特に有効な勝ち手段で、カードアドバンテージを確保できます。サイドボード後、このデッキと対戦する相手は除去を減らしてくるので、トークンを生み出してそれらを強化することで、ゲームを速やかに終わらせることが可能です。
ボーナストピック -Interview With Aiden Brier-
SCG Classics Philadelphiaで優勝の経験もあるAiden Brierは、惜しくも優勝こそ逃しましたが、SCG Classics Baltimoreでトップ4入賞という好成績を残していました。今回、彼が使っていたRB Vehiclesについてお話を伺うことができました。
2 《沼》
2 《泥濘の峡谷》
4 《産業の塔》
4 《竜髑髏の山頂》
1 《イフニルの死界》
1 《屍肉あさりの地》
-土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》
4 《ボーマットの急使》
4 《発明者の見習い》
4 《屑鉄場のたかり屋》
3 《ピア・ナラー》
2 《再燃するフェニックス》
-クリーチャー (21)-
2 《削剥》
2 《焼けつく双陽》
2 《アルゲールの断血》
2 《ファイレクシア教典》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《栄光をもたらすもの》
1 《チャンドラの敗北》
-サイドボード (15)-
――「まず最初になぜRB Vehiclesを使うことにしたのか聞かせてくれる?」
Aiden「Atlantaでも優勝していたUW Controlに強かったことが、RBを使うことにした理由だ。オンラインのプレイテストでも、UWに対してはほとんど負けなかった。メインでの相性はほぼ50:50だけど、サイド後はかなり有利になる。サイドの《アルゲールの断血》が特に強かったね」
――「他のマッチアップについても教えてくれる?」
Aiden「WB Aggroとのマッチアップは、ほぼ互角だと思うよ。WB側の方がアグロデッキとしてはクリーチャーの質が高いから、こちらはコントロールとして振る舞うことが多くなる。GBはかなりきついマッチだ。メイン戦ではかなり不利だけど、サイド後は《大災厄》のように追加の妨害要素があるから、良い勝負になるよ。サイドにある除去を全て入れるんだ。Mono-Greenはクリーチャーのサイズで不利で、《無許可の分解》も《顕在的防御》で弾かれてしまう。トップ8で当たったときは幸運にも勝てたけど、少なくとも僕が今回使っていたリストでは一番不利なマッチだ」
Aiden「あと、今回使ったリストは”UW Controlに勝つことにフォーカスしたリスト”で、今は多分あまり強いリストではないと思う。今RBを使うならPetr Sochurekがグランプリ・バーミンガム2018で10位に入賞したリストが良さそうだね」
Aiden「僕のリストはメインから《ウルザの後継、カーン》が4枚入っていて、これはUWには強いけど今後増えそうな同型ではそこまで強くない。特に、《キランの真意号》のような飛行クリーチャーが結構厳しいんだ。《ゴブリンの鎖回し》はUWが減るならとても強いクリーチャーだから、タフネス1のクリーチャーや《発明者の見習い》を不採用にしたことにも賛成だね。UW Controlが流行るメタではSCG Classicsのリストのように軽いクリーチャーや《ウルザの後継、カーン》をメインから採用したバージョンで、グランプリ・バーミンガム2018のようにアグロが多くなりそうなメタでは《ゴブリンの鎖回し》を採用したバージョンが良いと思うよ」
――「なるほど。インタビューに協力してくれてありがとう!」
総括
《キランの真意号》を採用したデッキの隆盛の理由の1つに、《ウルザの後継、カーン》の存在があります。両カード共に無色なので色の組み合わせを問わずに採用することが可能で、《キランの真意号》はプレインズウォーカーの忠誠度を「搭乗」コストに充てられるので《ウルザの後継、カーン》のような初期忠誠度の高いプレインズウォーカーと相性が良いことも、人気を一押ししています。
《ウルザの後継、カーン》は先ほども説明したように《キランの真意号》との相性や、《屑鉄場のたかり屋》や《歩行バリスタ》といったアーテイファクト・クリーチャーを主力にしているアグロデッキで特に強さを発揮するプレインズウォーカーです。今後《ヴラスカの侮辱》のような除去が増えたとしても、「-2」能力によってクロックを展開できますし、除去を唱えられたとしても「+1」能力によって既にアドバンテージを取れていることが多いので、大きな損害にはならなそうです。
また、各Vehiclesに対しては《グレムリン解放》や、緑マナが出せるデッキなら《自然廃退》も有力な選択肢として挙げられるので、採用を検討してみてはいかがでしょうか?
予想以上に、『ドミナリア』加入後のスタンダードは面白い環境です。プロツアー『ドミナリア』や、その直後に開催されるSCG Invitational Season Oneではどのように進化していくのか今から楽しみです。
以上、USA Standard Express vol.122でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!