みなさんこんにちは。
時が経つのは早いもので今年も残りわずかです。日本国内ではEternal Festivalが今週末に開催されるので、年末までレガシー熱が冷めることはなさそうです。
今年の【The Last Sun】はスタンダードとモダンで競われたため我々レガシープレイヤーにとっては少し残念でしたが、アメリカではSCGの年内最後のお祭り的なイベントである【Players' Championship】が開催されていたので、今回の連載ではレガシー部門で好成績を残していたデッキを中心に見ていきたいと思います。
SCG Players' Championship 2016
~アメリカのMiraclesマスターがラストチャンピオンに
2016年12月17日
※画像は【StarCityGames.comのTwitter】より引用させていただきました。 |
1位 Miracles
2位 ANT
3位 Sneak and Show
4位 Lands
トップ8デッキリストは【こちら】
残念ながら今年で最後となる年末の招待制イベント、SCG Players' Championship。SCG Invitationalの優勝者とSCG Tourで優秀な成績を収めた合計16名のみが招待されるスペシャルなイベントです。事前にデッキリストが公開、4プレイヤーずつの4つのブロックに分けられ初日のグループステージ(レガシー)では各ポッドにそれぞれ2015年チャンピオンやSCG Invitational チャンピオンが配置されるワイルドカードマッチなど、アメリカンフットボールのプレイオフをオマージュし、他のイベントとは形式が大きく異なるイベントでした。決勝戦は順位の高いプレイヤーにフォーマットの選択権が与えられます。
優勝は、SCG Tourやグランプリで安定した成績を収めていたJoe Lossettでした。
SCG Players' Championship 2016 デッキ紹介
「4C Delver」「Sneak and Show」「Lands」「Miracles」「ANT」
3 《Underground Sea》 2 《Tropical Island》 2 《Volcanic Island》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《霧深い雨林》 2 《汚染された三角州》 2 《沸騰する小湖》 4 《不毛の大地》 -土地 (19)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《瞬唱の魔道士》 2 《真の名の宿敵》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー (15)- |
4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 4 《思案》 2 《呪文貫き》 1 《思考囲い》 3 《突然の衰微》 3 《目くらまし》 1 《対抗呪文》 4 《意志の力》 -呪文 (26)- |
3 《外科的摘出》 2 《狼狽の嵐》 2 《真髄の針》 1 《思考囲い》 1 《悪魔の布告》 1 《壌土からの生命》 1 《梅澤の十手》 1 《クローサの掌握》 1 《トレストの使者、レオヴォルド》 1 《苦い真理》 1 《残忍な切断》 -サイドボード (15)- |
Kevin Jones、Andrew Tenjum、Brad Carpenter、Sultaiバージョンを選択していたJim Davisも含めると合計4名のプレイヤーがDelver系を選択していました。
Delver系はレガシーにおける、青いフェアデッキの代表格です。競技志向で、コンボやMiraclesを選択しなかったプレイヤーが選択する傾向にあります。今大会では人気が出るアーキタイプだと予想されていたようで、Infectマスターとして知られているTom Rossもこのデッキに強いLandsを選択したほどです。バージョンによって差はあるものの基本的にコンボデッキに強く、4CはMiraclesにも他のバージョンほど不利が付かないため、使用率が上昇傾向にあります。
☆注目ポイント
《呪文貫き》と《目くらまし》の枚数が減らされ《対抗呪文》と《思考囲い》が採用されており、メインからコントロール寄りの構成になっています。
4C Delverは従来のテンポベースのDelver系と異なり《瞬唱の魔道士》や《突然の衰微》などが採用され、重めの構成でカードアドバンテージや汎用性が重視されています。《突然の衰微》は《相殺》や《虚空の杯》といった置物に対処できるので、MiraclesやEldraziとの相性が若干改善されています。
サイドにはShardless SultaiやElvesなどでも採用されている《トレストの使者、レオヴォルド》が見られます。相手の《渦まく知識》や《グリセルブランド》といった過剰なカードドローを禁止にし、除去されてもドローによってアドバンテージを得られるので、MiraclesやSneak and Showなど、コントロールやコンボとのマッチアップで活躍します。
サイド後は 《梅澤の十手》《トレストの使者、レオヴォルド》《壌土からの生命》《苦い真理》といったカードが加わりロングゲームに備えます。
3 《島》 3 《Volcanic Island》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《霧深い雨林》 2 《汚染された三角州》 2 《沸騰する小湖》 3 《古えの墳墓》 2 《裏切り者の都》 -土地 (19)- 4 《グリセルブランド》 4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー (8)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 3 《ギタクシア派の調査》 3 《呪文貫き》 2 《定業》 1 《狼狽の嵐》 4 《実物提示教育》 4 《意志の力》 4 《水蓮の花びら》 4 《騙し討ち》 -呪文 (33)- |
3 《神聖の力線》 2 《墓掘りの檻》 2 《紅蓮地獄》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 2 《水没》 1 《すべてを護るもの、母聖樹》 1 《狼狽の嵐》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 -サイドボード (15)- |
SCG Tourの強豪のBrad NelsonとTodd Andersonが選択したのは、【グランプリ・千葉2016】で山本 賢太郎選手が使用し、優勝したことも記憶に新しいSneak and Showでした。特にBrad Nelsonはレガシー部門で3-0と好調なスタートを切りました。
☆注目ポイント
グランプリ・千葉2016で山本選手が使用していたリストとは少し異なり、メインは《精神を刻む者、ジェイス》が不採用で、コンボによって勝つことに重点が置かれています。また、ドロースペルの《定業》が減量され《ギタクシア派の調査》を採用、《狼狽の嵐》がメインに採用されている点が特徴です。
《ギタクシア派の調査》はドローを進めつつ安全確認も可能なため、より速くコンボを決めることを可能にします。「占術2」のある《定業》も《騙し討ち》などのキーカードを引き易くするので、ドロースペルとして信頼性があり、デッキの安定性が向上します。
参加するプレイヤーが少数のPlayers' Championshipは極めて特殊な環境で、サイドも完全に割り切った構成となっています。ShardlessやLandsといった特殊地形を多用するデッキよりも、Miraclesなどの基本地形が多めのデッキが多くなることを予想していたのか、Sneak and Showのサイドで採用されていることが多い《血染めの月》は不採用です。そのかわりに《神聖の力線》が採られており、メインの《狼狽の嵐》からも分かるようにこのデッキよりも速いコンボを意識していたようです。
《神聖の力線》はハンデス対策にもなり《狼狽の嵐》はMiraclesにも強いので悪くないチョイスです。"ANTマスター"のCaleb Schererが参戦していたので対策は必須で、その影響でANTに不利なLandsなどは少ないとの判断だと思われます。しかしこういったメタからさらに上のレベルに辿り着いたプレイヤーも存在したのも事実です。
1 《森》 2 《Taiga》 1 《霧深い雨林》 1 《樹木茂る山麓》 1 《新緑の地下墓地》 1 《吹きさらしの荒野》 4 《燃え柳の木立ち》 1 《蛮族のリング》 1 《ボジューカの沼》 1 《平穏な茂み》 4 《暗黒の深部》 4 《幽霊街》 4 《演劇の舞台》 4 《不毛の大地》 3 《イス卿の迷路》 1 《すべてを護るもの、母聖樹》 1 《Glacial Chasm》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -土地 (36)- -クリーチャー (0)- |
4 《輪作》 4 《ギャンブル》 4 《壌土からの生命》 3 《罰する火》 4 《モックス・ダイアモンド》 4 《踏査》 1 《溶鉄の渦》 -呪文 (24)- |
4 《虚空の杯》 4 《クローサの掌握》 4 《不屈の追跡者》 1 《カラカス》 1 《真髄の針》 1 《三なる宝球》 -サイドボード (15)- |
【SCG Invitational Atlanta】を制し、見事に今大会の出場権を獲得したJacob Baughと、Infect マスターで知られているTom Rossは共にLandsを選択しました。
コンボに対しては不利なものの、フェアデッキとのマッチアップでは無類の強さを誇ります。特に多くの強豪プレイヤーが無難な選択として持ち込むと予想されていたDelver系に有利なことは、多少不利なマッチが存在する可能性を考慮しても選択するだけの価値があり、「ハイリスク、ハイリターン」なチョイスだったと言えます。
Tom RossがInfectを諦めたのは大きなサプライズでした。Players’ Championshipということでアンチ特殊地形や墓地対策などが他のレガシーのイベントよりも少なくなる、という判断での選択だと思われます。Jacob BaughとTom Rossは共にレガシー部門を2-1という好成績で終えています。
☆注目ポイント
Jacob Baughはメインから《すべてを護るもの、母聖樹》や《蛮族のリング》といった土地を採用しており、Miraclesとの対戦に備えています。
《蛮族のリング》はマリットレイジが対処された際のバックアップになります。《すべてを護るもの、母聖樹》からの《壌土からの生命》で《蛮族のリング》を使い回すアクションは《相殺》対策にもなり、メインのMiraclesに対する勝率向上に貢献します。
サイドには追加の勝ち手段になりカードアドバンテージを稼げる《不屈の追跡者》、《基本に帰れ》《血染めの月》《安らかなる眠り》といった決定的なヘイトカード対策としての《クローサの掌握》、コンボ対策の《虚空の杯》と、有利なマッチと不利なマッチがはっきりしているLandsらしく分かりやすい構成です。
《不屈の追跡者》は《壌土からの生命》が墓地対策などで封じられても、カードアドバンテージ獲得手段として機能します。置物対策の《クローサの掌握》や《暗黒の深部》など、キーとなるカードを引当やすくし、サイド後は大抵の場合相手も除去をサイドアウトしているので《不屈の追跡者》が生き残りやすく、そのまま殴り勝つことも可能です。
《虚空の杯》はドロースペル対策として青いフェアデッキ相手にもサイドインされます。《虚空の杯》があるとは言え、コンボは不利なマッチであることに変わりはありませんが、今大会では4C Delverなどのフェアデッキを選択したプレイヤーが多かったこと、そして今大会唯一のANT使いであったCaleb Schererが別ブロックだったのでデッキ選択としては正解だったと言えます。
また、無難にDelver系などのフェアデッキやデッキパワーが高いSneak and Show、フェアデッキと相性の良いLands、ローグデッキで我が道を突き進むプレイヤーもいる中、使い慣れたいつものデッキ、戦略で参加したプレイヤーも勿論存在しました。
4 《島》 2 《平地》 2 《Tundra》 2 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《乾燥台地》 1 《魂の洞窟》 2 《カラカス》 -土地 (22)- 3 《瞬唱の魔道士》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《造物の学者、ヴェンセール》 -クリーチャー (8)- |
4 《渦まく知識》 4 《剣を鍬に》 2 《思案》 2 《呪文貫き》 1 《天使への願い》 3 《意志の力》 4 《終末》 4 《師範の占い独楽》 4 《相殺》 -呪文 (28)- |
3 《狼狽の嵐》 2 《仕組まれた爆薬》 2 《外科的摘出》 2 《基本に帰れ》 2 《Moat》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 1 《摩耗+損耗》 1 《天使への願い》 -サイドボード (15)- |
今年は【グランプリ・コロンバス2016】や【SCGO Worcester】で準優勝と安定した成績を収めていたもののあと一歩タイトルまで届かなかったJoe Lossettでしたが、今大会で見事に優勝を収めました。
今大会で彼が選択したデッキは勿論Miraclesで、今大会の【デッキテク】でも紹介されています。
デッキリストは完成されているためほとんど変化がなく、他のMiraclesのリストと比べるとレジャンドクリーチャーが多めで、《僧院の導師》が不在な点が特徴的です。グランプリ・コロンバス2016で準優勝、レガシーのSCG Tourでもコンスタントに入賞を続け、グランプリ・千葉2016でも最終成績51位(スイスラウンド:12-3)という成績で終えています。
《魂の洞窟》とレジェンドクリーチャーの分、ミラーマッチに強い構成です。
☆注目ポイント
デッキテクでの本人による解説によれば、クリーチャーを多めに採用していることでプレインズウォーカーに対処しやすくなっています。このバージョンは《議会の採決》などスペルではなくクリーチャーによるアタックでプレインズウォーカーを処理していきます。
《造物の学者、ヴェンセール》は4マナと少し重くなりますが《虚空の杯》などの置物にインスタントスピードで対処可能で、Show and Tell系に対しても強いクリーチャーです。
《ヴェンディリオン三人衆》はコンボやミラーで特に強く相手のプレインズウォーカーを牽制します。
多くのMiraclesリストは土地が少な目で《思案》を3~4枚採用することで土地を探しやすい構成にしていますが、Joeは《天使への願い》をメイン、サイドも含めて2枚、そして2枚目の《カラカス》を採用している関係上、土地は22枚で《思案》2枚という構成に落ち着いています。
《意志の力》を3枚に減らす代わりに、《呪文嵌め》を2枚採用しています。これはBelcherやTin-finなど《意志の力》が必要になるコンボデッキが数を減らしていることと、《虚空の杯》X=1など2マナのキースペルが増えていたことが関係しているようです。
サイドは《狼狽の嵐》が3枚と多めに採用されており、メインのカウンターが少な目な分Sneak and Showなどのコンボデッキを意識しています。デッキテクの解説によれば《もみ消し》が採用されたDelver系とのマッチアップでもサイドインされるようです。
墓地対策にはBR Reanimatorなど墓地を使う速いコンボデッキに対抗するために効率性重視で、《外科的摘出》が《安らかなる眠り》よりも優先されています。
2 《島》 1 《沼》 2 《Underground Sea》 1 《Volcanic Island》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 -土地 (14)- -クリーチャー (0)- |
4 《渦まく知識》 4 《陰謀団式療法》 4 《暗黒の儀式》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 2 《強迫》 2 《定業》 4 《陰謀団の儀式》 4 《冥府の教示者》 2 《苦悶の触手》 1 《炎の中の過去》 1 《むかつき》 4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 2 《金属モックス》 -呪文 (24)- |
4 《突然の衰微》 3 《ザンティッドの大群》 2 《外科的摘出》的 2 《クローサの掌握》 1 《Bayou》 1 《金属モックス》 1 《Tropical Island》 1 《巣穴からの総出》 -サイドボード (15)- |
Miraclesや《虚空の杯》をメインから採用したEldraziなどがトップメタなためメタ的に厳しい立場にありますが、アメリカのANTマスターのCaleb Schererも使い慣れたデッキで参戦していました。今大会ではMiraclesを選択したのはJoe Lossett一人、Eldraziは不在、ほぼ五分のSneak and Show、相性の良いLandsやAlurenなどが存在していたので、メタ的にはそこまで不利ではなかったようです。
☆注目ポイント
ドロースペルや儀式スペルをシャットアウトする《虚空の杯》の存在もあり、速度を上げるために《金属モックス》が採用されています。 0マナのマナ加速は《むかつき》で大量にドローしたあとにコンボが決まりやすくなります。刻印が必要な《金属モックス》を採用している関係で《苦悶の触手》もメインから2枚採用されています。
サイドボードは特殊なメタのPlayers' Championshipのために、尖らせた構成です。《虚空の杯》や《相殺》といった致命的な置物への対策を重視しており《突然の衰微》4枚に加えて《クローサの掌握》も2枚と多めに積まれています。多くのプレイヤーが青いデッキを選択すると予想していたようで《ザンティッドの大群》も3枚採られています。
追加の土地は他のリストでは緑マナのために《Tropical Island》が一枚だけ採用されていますが、《不毛の大地》されたときのために《Bayou》も採られています。緑マナを確保しつつコンボに必要な黒マナにもアクセスが可能になります。
Death and Taxesを選択するプレイヤーはいないと見たのか《夜の戦慄》などは不採用です。彼の予想は的中しDeath and Taxesを選択したプレイヤーは皆無で、Delver系、Miracles、Sneak and Showと青いデッキが多く見られました。
Reanimatorやコンボミラーでサイドインされる《外科的摘出》ですが、デッキテクでの本人による解説によれば《瞬唱の魔道士》を使う4C Delverとのマッチアップでもサイドインされるそうで、多数の異なる妨害スペルを構えるデッキとのマッチアップでは安全確認も兼ねます。メインの《金属モックス》2枚と入れ替わることが多くなります。
総括
2016年は日本国内でもグランプリ・千葉2016があり、レガシー的にも充実した一年でした。今週末にはエタフェスが開催されるので忙しい時期になりますが、豪華な賞品と参加者300人以上というお祭りなのでレガシープレイヤーなら是非参加してみたいイベントの一つです。
来年2017年は年明け早々にアメリカで【グランプリ・ルイビル2017】が開催されます。アメリカで開催されるレガシーのグランプリは【グランプリ・コロンバス】以来なので楽しみです。
以上USA Legacy Express vol.119でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。皆さん良いお年を!
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