皆さんこんにちは。
先週末はアメリカのLouisville(ルイビル)でレガシーのグランプリが開催されました。真冬の悪天候にも関わらず参加者1600人以上が集まり、日本からの遠征者も多数見られレガシーファンにとって大変有意義な週末でした。
さて、今回の連載では【グランプリ・ルイビル2017】の入賞デッキを見ていきたいと思います。
グランプリ・ルイビル2017 トップ8
~《トレストの使者、レオヴォルド》入りのSultai Controlが2017年初のレガシーの大会を制する~
※画像は【MGIC: THE GATHRING英語公式ウェブサイト】より引用させていただきました。 |
1位 Sultai Control
2位 BR Renimator
3位 Miracles
4位 Grixis Delver
5位 Grixis Delver
6位 Sultai Delver
7位 Sneak and Show
8位 Death and Taxes
トップ8のデッキリストは【こちら】
今大会でも上位には今大会見事に優勝を収めたトップランカーのReid Duke、世界チャンピオンのBrian Braun-Duin、プロツアー優勝経験もあるCraig Wescoeといった濃いメンツで、プロの地力の高さが目立ちました。
環境最強のデッキとされているMiraclesは今大会でも【最高の2日目進出率】を記録するなど安定したパフォーマンスを見せましたが、プレイオフにまで勝ち進んだのはわずか1名と【グランプリ・千葉2016】や【グランプリ・コロンバス2016】の結果と比べるとやや控えめです。
今大会の決勝戦は《トレストの使者、レオヴォルド》を採用したSultai Controlと、昨年ヨーロッパで開催されたEternal Weekendを制したBR Reanimatorという比較的新しいデッキ同士のマッチアップとなり、レガシーはMiraclesやDelverだけではないことが証明されました。
グランプリ・ルイビル2017 トップ8 デッキ紹介
「Sultai Control」「BR Reanimator」「Sultai Delver」「Death and Taxes」
1 《森》 1 《島》 3 《Underground Sea》 2 《Tropical Island》 1 《Bayou》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 2 《新緑の地下墓地》 3 《不毛の大地》 -土地 (21)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《貴族の教主》 1 《タルモゴイフ》 4 《真の名の宿敵》 2 《トレストの使者、レオヴォルド》 -クリーチャー (15)- |
4 《渦まく知識》 2 《思案》 2 《思考囲い》 3 《突然の衰微》 3 《目くらまし》 4 《意志の力》 1 《残忍な切断》 1 《森の知恵》 1 《梅澤の十手》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (24)- |
2 《狼狽の嵐》 2 《精神壊しの罠》 2 《水没》 2 《夜の戦慄》 2 《真髄の針》 1 《外科的摘出》 1 《思考囲い》 1 《苦い真理》 1 《梅澤の十手》 1 《虚無の呪文爆弾》 -サイドボード (15)- |
Miracles、Elves、Sultai、Bantなどレガシーでも多くの異なるデッキを使いこなすアメリカのトッププロであるReid Dukeは、今大会で話題の《トレストの使者、レオヴォルド》を採用したSultaiカラーのコントロールを使用していました。
Sultaiと言えばDelver系やShardlessが挙げられますが、Reidのデッキはそのどちらにも属さない新しいタイプのSultaiです。Shardlessと異なり「続唱」による構築の制限がないためカウンターなど妨害スペルが多く入り、コンボデッキとの相性が改善されています。また、Delverとも異なり3マナ域に脅威が寄せられていたり《突然の衰微》も採用されているのでMiraclesにも強いデッキと言えます。
☆注目ポイント
『コンスピラシー:王位争奪』から加入した《トレストの使者、レオヴォルド》は今大会で最も注目を集めたカードで、「各ターン、各対戦相手はそれぞれカードを2枚以上引くことができない。」というテキストは《渦まく知識》や《思案》といった1マナのドロースペルを使用するデッキにとってマストカウンター、マスト除去です。
過剰なドローを禁止にする能力は《グリセルブランド》のドローも妨害するのでSneak and ShowやReanimatorといったコンボデッキに対しても強く、ANTに《苦悶の触手》をキャストされても2つ目の能力により《狼狽の嵐》や《精神壊しの罠》を引き当てることでコンボを妨害することが可能で、たとえ除去されたとしてもカードを引けるのでアドバンテージを得ることができます。
《死儀礼のシャーマン》と《貴族の教主》のマナクリーチャー8枚体制で《トレストの使者、レオヴォルド》や《真の名の宿敵》といった脅威を2ターン目に展開することも容易になっており、テンポ面で先んじることで《目くらまし》や《不毛の大地》を活用しやすくなります。
クリーチャーを並べるということは《終末》のようなスイーパーに対して弱くなりますが、《森の知恵》や《精神を刻む者、ジェイス》で失ったアドバンテージを取り戻すことができるのでそこまで問題にならず、ほぼマスト除去のクリーチャー、エンチャント、プレインズウォーカーと異なる脅威を展開することでMiraclesにとっても対処が困難になります。
サイドは《狼狽の嵐》、《精神壊しの罠》、《外科的摘出》,《虚無の呪文爆弾》、《真髄の針》といったコンボ対策に多くのスペースが割かれており、特に《真髄の針》は【グランプリ・千葉2016】でも優勝を収めたSneak and ShowやトップメタのMiraclesにも有効なこともあり、このデッキ以外にもDelverやMiraclesなど多くのデッキで採用されていました。
《夜の戦慄》は1マナと軽く、Death and Taxesや《僧院の導師》対策になります。
DelverともShardlessとも異なる新しいスタイルのSultai。MiraclesやDelver系以外の青いフェアデッキを使おうと考えている方には特におすすめです。《真の名の宿敵》やメイン、サイドに1枚ずつ採られている《梅澤の十手》もあり、特にクリーチャーデッキ全般に有利です。
2 《沼》 2 《Badlands》 1 《Bayou》 4 《血染めのぬかるみ》 3 《汚染された三角州》 -土地 (12)- 4 《グリセルブランド》 4 《別館の大長》 1 《狂気の種父》 1 《潮吹きの暴君》 -クリーチャー (10)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《納墓》 4 《信仰無き物あさり》 4 《再活性》 4 《思考囲い》 4 《死体発掘》 4 《暴露》 4 《動く死体》 4 《水蓮の花びら》 2 《金属モックス》 -呪文 (38)- |
4 《集団的蛮行》 4 《恭しき沈黙》 3 《突然の衰微》 1 《墓所のタイタン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 1 《墨溜まりのリバイアサン》 1 《エメリアの盾、イオナ》 -サイドボード (15)- |
惜しくも優勝は逃しましたが、準優勝という好成績を残した赤黒のReanimator。ヨーロッパのEternal Weekendを制して以来レガシーの大きな大会やマジックオンラインでコンスタントに結果を残し続けているデッキで、青を切ったことでキャントリップやドロースペルやカウンターにアクセスができなくなっていますが、代わりに妨害スペルとしてハンデスが多めに採用され、マナ加速によりコンボスピードが増しています。
☆注目ポイント
《再活性》スペルの対象の一つである《別館の大長》はゲームの開始時に手札から公開することで相手の最初のスペルに対して《魔力の乱れ》と同様の効果が誘発し、カウンターを採用していないこのデッキにとって相手の妨害からコンボを保護する手段となります。
《意志の力》や《目くらまし》、《呪文貫き》など優秀な妨害スペルが存在するレガシーでは1、2ターン目にゲームを決めるオールインコンボはマイナーですが、このBR Reanimatorは現環境で結果を残し続けているオールインコンボに部類するデッキで、《別館の大長》でバックアップされた先手1ターン目のマナ加速を利用したコンボには《意志の力》も無力です。
戦場に出た場合も対戦相手がスペルをキャストする度に《魔力の乱れ》が誘発します。最速1ターン目に展開されるオート《魔力の乱れ》付きの5/6飛行を相手にするのは容易ではありません。
カウンターが不採用な分メインでは《思考囲い》と《暴露》、サイドには《集団的蛮行》といったハンデスが各種4枚ずつ採用されており、相手のプランを妨害しつつコンボを保護する手段が豊富です。
《思考囲い》と《暴露》は自分を対象にすることで手札のクリーチャーを墓地に落として《再活性》プランのセットアップをすることも可能で、特に《暴露》は代替コストを使うことでマナを支払うことなくキャストできるので1ターン目にコンボを決められる確率も上がります。
サイドに落とされた《集団的蛮行》の「増呪」のコストは手札を捨てることなので、このデッキではメリットとなり得ます。相手のカウンターなどを落としたり、《死儀礼のシャーマン》のような墓地対策を内蔵したクリーチャーや各種ヘイトベアーを除去することができる優秀なスペルです。
マナ加速を多数採用したこのデッキでは《グリセルブランド》を墓地から釣ってターンエンドとなることは少なく、ドローを進めていってマナ加速から《思考囲い》や代替コストを使って《暴露》をキャストし、相手の手札を丸裸にすることで優位を維持していきます。
このタイプのデッキにはサイド後の墓地対策に備えて《騙し討ち》や《実物提示教育》といったカードを投入することで軸をずらしていく変形サイドボードプランが主流でしたが、Andrew Sullanoはサイド後も《再活性》プランを維持しつつ《突然の衰微》や《恭しき沈黙》で《安らかなる眠り》など置物を対処していきます。
4 《Underground Sea》 2 《Bayou》 1 《Tropical Island》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 1 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 -土地 (20)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《タルモゴイフ》 1 《墓忍び》 -クリーチャー (13)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《突然の衰微》 4 《目くらまし》 4 《トーラックへの賛歌》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 2 《ヴェールのリリアナ》 -呪文 (27)- |
2 《思考囲い》 2 《外科的摘出》 2 《ゴルガリの魔除け》 2 《死の重み》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《侵襲手術》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 1 《冬の宝珠》 -サイドボード (15)- |
今大会Grixis Delverを抑えて2日目最大勢力となったSultai Delver。Grixis Delverなど赤いDelver系と異なり、一度着地した《精神を刻む者、ジェイス》に対処する手段に貧しいという弱点を抱えているものの、《相殺》に対処できる《突然の衰微》が使えるのがGrixis Delverなどとの違いで、4C Delverよりもマナ基盤が安定しています。
ハンデスとカウンターによりコンボデッキに対して最も強い型ですが、軽い除去が少ないのでクリーチャーデッキとのマッチアップはやや不安が残ります。
☆注目ポイント
《トーラックへの賛歌》、《目くらまし》、《意志の力》と豊富な妨害スペルに軽いクロックである《タルモゴイフ》が採られているSultai DelverはDelver系の中でもSneak and Showなどコンボデッキに強く、《突然の衰微》のおかげで《相殺》ロックに対しても耐性があります。
飛行持ちでクリーチャーデッキとのマッチアップにおいて優秀なクロックとなる《墓忍び》が採用されています。《精神を刻む者、ジェイス》には弱いものの、ビートダウン性能が高くコンボに対しても早い段階から展開できるクロックとして活躍します。
《ヴェールのリリアナ》は色拘束が強くコストも少し重くなりますが、着地してしまった《真の名の宿敵》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》に対する回答になります。
サイドの追加の除去の《死の重み》は《タルモゴイフ》を強化することが可能で、1ターン目にフェッチから《死の重み》で相手のクリーチャーを除去すれば2ターン目から3/4の《タルモゴイフ》を展開できます。
ロングゲームになりやすいサイド後のゲームに備えて《精神を刻む者、ジェイス》が採用されています。
10 《平地》 1 《魂の洞窟》 1 《地平線の梢》 3 《カラカス》 4 《リシャーダの港》 4 《不毛の大地》 -土地 (23)- 4 《ルーンの母》 4 《石鍛冶の神秘家》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 3 《ファイレクシアの破棄者》 1 《セラの報復者》 1 《迷宮の霊魂》 4 《ちらつき鬼火》 2 《護衛募集員》 1 《ミラディンの十字軍》 1 《聖域の僧院長》 1 《宮殿の看守》 -クリーチャー (26)- |
4 《剣を鍬に》 4 《霊気の薬瓶》 1 《梅澤の十手》 1 《火と氷の剣》 1 《殴打頭蓋》 -呪文 (11)- |
2 《封じ込める僧侶》 2 《エーテル宣誓会の法学者》 2 《フェアリーの忌み者》 2 《流刑への道》 2 《議会の採決》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《安らかなる眠り》 1 《真髄の針》 1 《大祖始の遺産》 -サイドボード (15)- |
プロツアー優勝経験もある強豪プレイヤーのCraig Wescoeは生粋の白ウィニー使いとして知られており、レガシーでも得意のDeath and Taxesを操り見事にプレイオフ入賞を果たしました。『コンスピラシー:王位争奪』から加入した《聖域の僧院長》、《護衛募集員》、《宮殿の看守》によって大幅に強化されたデッキです。
【グランプリ・千葉2016】でも結果を残しており、現環境のベストな非青デッキの一つとされています。
☆注目ポイント
Miraclesは決して楽なマッチアップではありませんが、《霊気の薬瓶》と《護衛募集員》を駆使することで《終末》による被害を最小限に抑えられます。
《聖域の僧院長》はコンボデッキのキーカードのコストを指定することで機能不全に陥らせることが可能で、Miraclesに対しても6を指定することで《終末》をシャットアウトすることができます。
《宮殿の看守》はカードアドバンテージが得られる除去として機能します。このクリーチャー自身が除去されてもプレイヤーが「統治者」で居続ける限り追放されたクリーチャーは戻らず、《ちらつき鬼火》でちらつかせることでクリーチャーを追放するETB能力を使い回すことが可能です。
サイドは速度を重視したBR Reanimatorに対して間に合わないことが多い《安らかなる眠り》の枚数が削られ《フェアリーの忌み者》が優先されています。インスタントスピードでマナを支払わずに相手の墓地に干渉できることはBR Reanimatorとのマッチアップでは特に重要となります。
サイドに2枚採用されている《封じ込める僧侶》はReanimator、Sneak and Show、Elvesと多くのマッチアップで有効なヘイトベアーで、Sneak and Showが結果を残し続けている現在では枚数が減量されることはなさそうです。
環境的に《トレストの使者、レオヴォルド》や《真の名の宿敵》を搭載したSultaiが流行るようなら《ミラディンの十字軍》や《議会の採決》を追加していきたいところです。
総括
『コンスピラシー:王位争奪』がレガシーに与えた影響は大きく、特に《トレストの使者、レオヴォルド》はレガシーの一線級のクリーチャーであることが今大会で確認できました。
Miraclesのあまりの強さゆえに環境の停滞が懸念されていましたが、今大会のトップ8はMiracles以外にもSultai Delver、Sneak and Show、Death and Taxes、BR Reanimator、そして見事に優勝を飾ったSultai Controlと多数の異なるデッキが見られました。
Reid Dukeの使用していた《トレストの使者、レオヴォルド》入りのSultaiはMiraclesに強い構成で、他のデッキに対してもフェアデッキを中心に互角以上の勝負ができるデッキのようなので、今後どのように進化していくのか楽しみです。
以上USA Legacy Express vol.120でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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