USA Standard Express vol.131 -迫る『ラヴニカのギルド』! 新環境への船出!-

Kenta Hiroki

 皆さんこんにちは。

 いよいよ待ちに待った『ラヴニカのギルド』のリリースが、今週末に迫っています。MOではリアルよりも先駆けて使用できるようになっており、すでに新スタンダードの結果も出ています。

 今回の連載では、MOスタンダードのリーグで結果を残していたデッキを見ていきたいと思います。

MO Competitive Standard League デッキ紹介

「Boros Aggro」「Azorius Control」「Selesnya Tokens」「Golgari Midrange」「Mono Red」

Boros Aggro

 『ラヴニカのギルド』でサポートされているギルドだけあり、新セットからの収穫も多く、旧環境から残った一部の強力な赤いカードもあるので、環境のアグロデッキの代表格としてよく見かけることになりそうです。

 新メカニズムの「教導」は、攻撃的なBorosとマッチしており、デッキに爆発力を与えます。

☆注目ポイント

正義の模範、オレリアボロスの挑戦者ゴブリンの旗持ち

 《正義の模範、オレリア》は「教導」持ちで、戦闘開始時に自軍のクリーチャーを強化できます。《正義の模範、オレリア》自身も対象にできるので、実質4/5飛行警戒となり、「教導」で他のクリーチャーも強化しやすくなります。《ボロスの挑戦者》は、序盤は2マナ2/3「教導」というスペックで、自身を強化する起動能力によって中盤以降も十分に活躍できます。《正義の模範、オレリア》《ゴブリンの旗持ち》と同様に、自身を強化する能力は「教導」との相性も良好です。

軍勢の戦親分軍勢の切先、タージク完全+間隙

 《ゴブリンの熟練扇動者》を彷彿させる《軍勢の戦親分》は「教導」持ちなので、共に戦闘に参加しているゴブリントークンを強化します。トークンを生み出す能力によるアドバンテージは、《ゴブリンの熟練扇動者》がそうだったように、このデッキだけでなく赤を使用する多くのデッキで活躍できるポテンシャルを秘めています。

 《軍勢の切先、タージク》は「教導」、速攻、自軍のクリーチャーを守る能力、そして起動型能力で自身に先制攻撃を付与できるなど、様々な能力を持った優秀なクリーチャーです。Borosカラーのスプリットカードである《完全+間隙》は、強化スペルとコストが重くなった《稲妻のらせん》で、このデッキではどちらのモードも有効に使っていくことが可能で、特に低マナのコンバットトリックは「教導」を使ったアグレッシブな戦略にマッチしています。

ベナリア史戦場の詩人、ファートリ黎明をもたらす者ライラ

 サイド後は《ベナリア史》《戦場の詩人、ファートリ》《黎明をもたらす者ライラ》といったカードが投入され、コントロール寄りにシフトしていくようです。《戦場の詩人、ファートリ》は、『イクサラン』がリリースされた当初はあまり注目されておらず、不遇な一年を過ごしてきたプレインズウォーカーですが、Borosカラーが大幅に強化されたことで活躍の機会も増えてくることが予想されます。特にブロッカーを排除する「-X」能力は、クリーチャーを大量に採用したこのデッキではエンドカードになり得る強さです。

Azorius Control

 《不許可》《奔流の機械巨人》《天才の片鱗》など、落ちてしまったカードが多いことは確かですが、《ボーマットの急使》《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》《反逆の先導者、チャンドラ》など、旧環境のコントロールにとって厄介なカードの多くがローテーション落ちしており、旧環境でも猛威を振るっていた《ドミナリアの英雄、テフェリー》はいまだ健在です。『ラヴニカのギルド』からも新戦力を獲得し、早速オンラインのリーグでも結果を残していました。

 旧環境では、黒をタッチしたEsperカラーのバージョンが主流でしたが、《スカラベの神》がローテーション落ちし、環境序盤では赤単やBorosなどアグレッシブな戦略が人気が出る傾向にあるので、マナ基盤に負担のかからない2色の方が安定しそうです。《神聖なる泉》がまだ再録されていないので完璧とは言えないものの、2色なので特に問題になることは無さそうです。

☆注目ポイント

薬術師の眼識悪意ある妨害

 《天才の片鱗》の後釜として注目されていたドロースペルの《薬術師の眼識》「再活」はメイン戦で手札に溜まった不要牌を有効碑に変換することができるメカニズムで、これによりフラッドの心配もすることなく土地も多めに採用することができます。

 《不許可》の代わりとなるのが《悪意ある妨害》です。カウンターしつつドローの質を向上させる効果は、かつての《解消》と同様に地味ながら中々高性能です。墓地も肥やせるので《アズカンタの探索》ともシナジーがあります。

任務説明軽蔑的な一撃

 《任務説明》は興味深いカードです。「諜報2」によって墓地を肥やす効果は、「再活」スペルや《アズカンタの探索》ともシナジーがあります。再録カードの《軽蔑的な一撃》は、現環境でも《ドミナリアの英雄、テフェリー》《破滅の龍、ニコル・ボーラス》《正義の模範、オレリア》など、フィニッシャー級の脅威を2マナでカウンターすることができるのでテンポ面でも有利で、メタによってはメインからでも十分に使える優秀なスペルです。サイド後は《ベナリア史》などが投入されるなど積極的に攻める手段も用意されています。

Selesnya Tokens

 『ラヴニカのギルド』では、Selesnyaカラーの強力なカードが多数加入し、新しいデッキも生み出されました。

 緑白の弱点として相手に干渉する手段に貧しいという欠点がありますが、トークンを大量に生み出すことで横に並ぶ戦略を得意とし、お馴染みのキーワード能力である「召集」 を活用し数で圧倒していきます。

☆注目ポイント

議事会の騎兵協約の魂、イマーラ

 《議事会の騎兵》は単体でも4マナ4/4警戒持ちとまずまずの性能で、破壊系の除去やスイーパーに対して強いカードです。また、本体だけでなく、死亡後に生成されるトークンも騎士なので《ベナリア史》と相性が良いのもポイントです。《協約の魂、イマーラ》は、タップする度にトークンを生み出すので「召集」 とも相性が良く、《敬慕されるロクソドン》《大集団の行進》といったスペルを早い段階でキャストすることを可能にします。

大集団の行進議事会の裁き秋の騎士

 《大集団の行進》は、Selesnyaを選択する理由の一つであり、相手のエンド時にトークンを並べて全体強化によって一気にゲームを決めてしまうことが可能です。このデッキを相手にする際は、このカードのことを留意しておく必要が出てきそうです。

 《議事会の裁き》《排斥》に代わる汎用除去で、インスタントタイミングでキャストはできなくなりましたが、「召集」 が付いているのでキャストしやすく、効率的な除去として機能します。

 《秋の騎士》は下の環境でも通用するスペックで、エンチャントやアーティファクトを使用しないデッキに対しても、ライフゲインや自身を強化する能力がある非常にフレキシブルなクリーチャーです。このリストではサイドに採用されていますが、メインからでも十分戦力になる強さです。旧環境から高いポテンシャルを持ちながら、やや環境に合っていなかった感があった《ベナリア史》《軍団の上陸》にもようやく活躍の機会が与えられることになり、新環境の要注目デッキの一つです。

Golgari Midrange

 Selesnyaと同様にGolgariにも多数のカードが収録されており、緑と黒の強力なカードを多数採用したミッドレンジも見られます。

 『ラヴニカのギルド』で登場したメカニズムである「宿根」は、Golgariらしく墓地に関連した能力です。自分の墓地にあるクリーチャーの数に応じてメリットを得られるので、モダンでも活躍している《縫い師への供給者》など、ライブラリーを削る能力や効果を持つカードが多数採用されています。

☆注目ポイント

ゴルガリの女王、ヴラスカ採取+最終

 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》の「+2」能力は、《縫い師への供給者》などをサクリファイスすることで、墓地を肥やしつつドローを進めることでアドバンテージを稼ぎます。「-3」能力は、アグロデッキに対するクリーチャー除去として使用できますが、フィニッシャー級の脅威を除去することができないので自身を守る能力はやや低めです。分割カードの《採取+最終》は、どちらのモードでもアドバンテージが取れる使い勝手の良いカードです。

破滅を囁くもの千の目、アイゾーニ

 《破滅を囁くもの》は除去耐性が皆無な点が気になりますが、「諜報」を活用することによって墓地を肥やし、《採取+最終》で墓地に落ちたクリーチャーを回収したり、「宿根」スペルを強化することでアドバンテージを稼げるので、欠点を補って余りある活躍をします。マナクリーチャーを利用して早い段階で展開していきたいところです。

 《千の目、アイゾーニ》は、6マナ2/3とマナコストに対して本体のスペックはそれほどでもありませんが、墓地に落ちたクリーチャーの数に応じてトークンを生み出すので、「諜報」 や《縫い師への供給者》《光胞子のシャーマン》などで墓地を肥やすことでエンドカード級のクリーチャーとなります。起動能力によってカードをドローしつつ、《破滅を囁くもの》の「諜報」 で失ったライフを回復します。

暗殺者の戦利品

 《暗殺者の戦利品》は、モダンやレガシーでも使われている万能除去で、基本地形を与えてしまうというデメリットはあるものの、《ドミナリアの英雄、テフェリー》など、フィニッシャー級のパーマネントをわずか2マナで対処できるのでスタンダードでも十分に強力です。

Mono Red

 メタが固まり切っていない環境序盤では、プロアクティブな戦略が比較的勝ちやすく、アグレッシブに相手のライフを攻めていける赤単は無難なチョイスとなり得ます。

 ローテーションにより《ボーマットの急使》《熱烈の神ハゾレト》《反逆の先導者、チャンドラ》など、赤いデッキの主力の多くを失いましたが、《ゴブリンの鎖回し》は健在で、旧環境でも活躍していた《ケルドの炎》を採用した高速アグロバージョンになっています。《軍勢の戦親分》などの新戦力も加わりました。

☆注目ポイント

遁走する蒸気族危険因子

 《遁走する蒸気族》は、赤いスペルをキャストする度に強化されるクリーチャーで、最大でパワーを4にまで成長させることができます。軽く赤いスペルを多用するこのデッキでは、ほぼ2マナパワー4として扱えます。

 《危険因子》は、あの《怒鳴りつけ》をアレンジしたスペルで、与えるダメージが4に減った代わりにインスタントになり、「再活」が付きました。相手に選択権を与えてしまうカードはあまり強くないとされていましたが、「再活」 が付いたことで相手に嫌な2択を多く迫れます。火力スペルを多数採用したこのデッキ相手に、4ダメージを選択することは、文字通りリスクを伴います。

溶岩コイル火による戦い

 メインを本体火力に寄せている分、サイドには《溶岩コイル》《火による戦い》といった高タフネスのクリーチャーを処理する手段が用意されています。《溶岩コイル》はクリーチャーを追放するので、墓地のクリーチャーの数が重要となるGolgariや《再燃するフェニックス》などに対して特に有効に機能します。

総括

正義の模範、オレリア不和のトロスターニ千の目、アイゾーニ

 新環境のスタンダードを一通り見ていきましたが、新しいデッキの中ではBorosSelesnyaGolgariが強そうです。

 ローテーション落ちしたカードも多かったものの、《ゴブリンの鎖回し》《ドミナリアの英雄、テフェリー》といったカードは健在で、『ラヴニカのギルド』から登場したカードにより戦力も補充されAzorius ControlやMono Redなども旧環境から引き続き安定した強さを見せます。

 今週末にはチーム戦ですが、新環境のスタンダードの大規模なイベントであるSCGO Columbusがアメリカで開催されます。日本国内でも、全国の晴れる屋で『ラヴニカのギルド』環境初陣戦が開催されるので、スタンダード好きな方はお見逃しなく。

 USA Standard Express vol.131は以上となります。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

この記事内で掲載されたカード

関連記事

このシリーズの過去記事