USA Standard Express vol.129 -おや!?メタゲームのようすが-

Kenta Hiroki

 みなさんこんにちは。

 ここ2週間の間、各国でスタンダードのGPが開催され環境の研究も進んできました。

 今回の連載ではグランプリ・ブリュッセル2018グランプリ・オーランド2018グランプリ・プロビデンス2018グランプリ・ロサンゼルス2018の結果をみていきたいと思います。

グランプリ・ブリュッセル2018
コントロールの隆盛

2018年8月12日

  • 1位 Esper Control
  • 2位 RB Aggro
  • 3位 Turbo Fog
  • 4位 Sultai Midrange
  • 5位 Esper Control
  • 6位 Sultai Gift
  • 7位 Esper Control
  • 8位 RB Aggro

トップ8のデッキリストはこちら

 優勝こそ逃したものの、現環境でダントツの人気を誇るRB Aggroは今大会でも安定した成績を残していました。

 また、今大会ではRB Aggroに強く、プロツアーでブレイクしたTurbo Fogが増加することを想定したプレイヤーも多かったようで、Turbo Fogに強いEsper Controlなど青いコントロールが勝ち組でした。

グランプリ・ブリュッセル2018 デッキ紹介

「Esper Control」

Esper Control

 Hareruya ProsのメンバーであるJeremy Dezaniは今大会Esper Controlをプレイして見事に優勝トロフィーを持ち帰りました。

 Esper Controlは一躍人気のアーキタイプとなったTurbo Fogに強く、プレインズウォーカーにも触れる《ヴラスカの侮辱》やハンデスの《強迫》にもアクセスできるので他のコントロールに対しても有利が取れます。

☆注目ポイント

 旧環境から完成されていたデッキなので『基本セット2019』のカードはメインには採用されていませんが、サイドには興味深い選択がいくつか見られます。追加の土地として採用されている《探知の塔》は主に《蔦草牝馬》のような緑系のアグロの呪禁クリーチャー対策として使われます。

探知の塔

 現環境には緑系のアグロデッキ以外にも《善意の騎士》のような呪禁持ちのクリーチャーもおり、コントロール対策としてTurbo Fogのサイドボードにも採用されていることが多い《殺戮の暴君》も対策できるのは大きく、こういったカードをきちんと見つけてくるのはさすがです。

 追加の勝ち手段として『基本セット2019』のエルダードラゴンである《変遷の龍、クロミウム》がサイドに採用されています。瞬速持ちで打ち消されず除去耐性もあるというコントロールミラーで活躍できる要素が全て含まれています。

変遷の龍、クロミウム光袖会の収集者

 青白と異なり、ハンデスの《強迫》が使えるのでTurbo Fogに対してさらに有利になり、サイド後は《光袖会の収集者》のようなクリーチャーでアドバンテージを取りつつ序盤からプレッシャーをかけることも可能です。特にクリーチャーを多数サイドインする戦略は勝つのに時間がかかってしまうコントロールにとっては重要です。

グランプリ・オーランド2018
ミッドレンジとコントロールの支配する環境

2018年8月12日

  • 1位 UW Approach
  • 2位 Mono Red Flame of Keld
  • 3位 Grixis Midrange
  • 4位 Esper Control
  • 5位 RB Aggro
  • 6位 GB Constrictor
  • 7位 UB Midrange
  • 8位 Grixis Midrange

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 グランプリ・オーランド2018でも青いコントロールの活躍が目立ちました。

 RB AggroとTurbo Fogはプレイオフでは少数だったもののデッキ選択としては間違った選択ではなく、共に高い2日目進出率を誇っており、トップ32以内に多数勝ち残っていました。

グランプリ・オーランド2018 デッキ紹介

「UB Midrange」

UB Midrange

 コントロールを得意とするCorey Burkhartですが、今大会ではアグロ寄りのUB Midrangeで入賞を果たしました。

 『基本セット2019』がリリースされてからは《破滅の龍、ニコル・ボーラス》のために赤をタッチしたGrixis Midrangeも見られるようになりましたが、RB Aggroなど赤いアグロデッキが依然として多数を占める現環境ではマナ基盤が安定する青黒の2色の方が好まれる傾向にあります。

 《ゴブリンの鎖回し》で流れてしまうクリーチャーを採用している分、RB Aggroとのマッチアップはメインは少し難しいマッチアップとなりますが、サイド後は軽い除去も多くなるので少し有利になり、総合的にはほぼイーブンです。Turbo Fogとの相性は他の青いデッキと同様に有利で、Mono Blue Outcomeとのマッチアップは苦戦を強いられます。

☆注目ポイント

 《致命的な一押し》など低コストの除去に加えてアドバンテージが取れる《人質取り》《貪欲なチュパカブラ》といったクリーチャーを採用しているため、サイド後はRB AggroやMono Green Aggroとのマッチアップは互角以上に渡り合えます。また、青黒はインスタントスピードのスペルが使えるので《奔流の機械巨人》も活かしやすくなります。

致命的な一押し人質取り貪欲なチュパカブラ

 《光袖会の収集者》《機知の勇者》といったクリーチャーはデッキの安定性の向上に貢献し、特に《機知の勇者》のETB能力によってコントロールとのマッチアップで無駄になりやすい除去などを有効碑に変換できるのも苦手なマッチアップが少ない理由の一つです。

機知の勇者魔術遠眼鏡

 サイドの《魔術遠眼鏡》はUW ControlやTurbo Fogの《ドミナリアの英雄、テフェリー》など追加のプレインズウォーカー対策として機能します。今回は採用が見送られていますが、他のリストのサイドボードで見られる《冥府の報い》《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》といった脅威にわずか1マナで対処することが可能で、RB Aggroとのマッチアップではライフゲインも嬉しいボーナスなのでおすすめです。

グランプリ・プロビデンス2018
The Flame of Keld が大活躍

2018年8月19日

  • 1位 Mono Red Flame of Keld
  • 2位 UW Control
  • 3位 UW Control
  • 4位 UB Control
  • 5位 UB Midrange
  • 6位 RB Aggro
  • 7位 Mono Red Flame of Keld
  • 8位 Mono Red Flame of Keld

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 先週末に開催されたグランプリ・プロビデンス2018のプレイオフは青黒や青白といったコントロール、ミッドレンジと赤いアグロデッキが半々という結果になり、特に速さに特化した《ケルドの炎》型の赤単が優勝を果たしました。

グランプリ・プロビデンス2018 デッキ紹介

「Mono Red Flame of Keld」

 《ケルドの炎》をフルに活用するために手札を使い切りやすくした構成で、土地はわずか19枚でクリーチャーが26枚、内1マナクリーチャーが12枚という速さに特化したバージョンの赤いアグロデッキです。本体にプレイできる火力も12枚採用されています。

ケルドの炎

 遅めの構成のRB Midrangeと相性が良く、プロツアー以来高い人気を維持しているTurbo Fogにも強く、Esper Controlなどのコントロールに対しても速さで押し切ることができます。このデッキにとって相性の悪いマッチアップとなる緑系のアグロがTurbo Fogなどに淘汰されていたのもこのタイプのデッキにとっては追い風でした。

☆注目ポイント

 《ケルドの炎》との相性を考慮して、可能な限り手札を使いきれるように構築されています。《ケルドの炎》のⅡ章の能力はアドバンテージを得ることができ、軽いスペルが多いこのデッキならそのアドバンテージを活かしやすく、ダメージを増加させるⅢ章の能力はゲームを終わらせるのに十分です。エンチャントなのでクリーチャー除去に耐性があるのもこの戦略の強みです。

ギトゥの溶岩走り魔術師の稲妻嘲笑+負傷

 《ギトゥの溶岩走り》など12枚のWizardを採用しているので、このデッキの《魔術師の稲妻》はほぼ《稲妻》として機能します。RB Aggroと異なり軽い構成なので《熱烈の神ハゾレト》も攻撃に参加しやすく、サイド後のフィニッシャーとしてRB Aggroなど赤いアグロミラーで活躍します。

 サイドの《嘲笑+負傷》はダメージ増加と軽減不可の効果を持つためTurbo Fogに有効で、Turbo Fog側はカウンター以外に有効な対処法がありません。

グランプリ・ロサンゼルス2018
やはり強い鎖回し

2018年8月19日

  • 1位 RB Aggro
  • 2位 UB Midrange
  • 3位 UW Gift
  • 4位 Turbo Fog
  • 5位 UW Approach
  • 6位 RB Aggro
  • 7位 GB Constrictor
  • 8位 Grixis Midrange

トップ8のデッキリストはこちら

 青白や青黒、Grixisといった青いデッキやGB Constrictor 、UW Gift といった多種多様なデッキが勝ち残る中、優勝トロフィーを手にしたのはJaberwockiというアカウント名で知られるMOの強豪プレイヤー、Logan Nettlesの操るRB Aggroでした。

グランプリ・ロサンゼルス2018 デッキ紹介

「GU Aggro」

GU Aggro

 緑単は最近結果を残している《ケルドの炎》型の赤単に対して強いデッキですが、流行りのTurbo Fogとの相性が悪く、現環境で勝ち残るのは難しいとされていました。

 惜しくもプレイオフ進出は逃したものの9位入賞という好成績を残していたAndrew Baeckstromは、緑単のアグロデッキにカウンターのための青を足すというアプローチを施していました。これにより、従来のリストよりもTurbo Fogに対する勝率は上がったようです。

☆注目ポイント

 除去耐性が皆無でRB Aggro、UB Midrangeの擁する単体除去に弱い《原初の飢え、ガルタ》が抜け、代わりに《新緑の機械巨人》と、《新緑の機械巨人》と相性のいい《歩行バリスタ》が採用されています。

新緑の機械巨人歩行バリスタ

 また、青を足したことでメインの《暗記+記憶》やサイドの《否認》《呪文貫き》といったカウンターが使えるようになり、Turbo Fogとの相性がいくらか改善されています。《変態変異》はおもしろいカードで、相手のクリーチャーに付けて《歩行バリスタ》を指定すれば除去のようにも使えます。破壊されないクリーチャーにも使うことができるのもポイントです。

暗記+記憶変態変異蔦草牝馬

 Esper Controlからスイーパーが減ってきていることも追い風で、単体除去に耐性のある《蔦草牝馬》やプレインズウォーカーの《ビビアン・リード》はコントロールにとっては対処の困難な脅威となります。

総括

 スタンダード環境は変化をし続けており、RB Aggro一強状態かと思われた環境も現在ではTurbo Fog、Esper Control、UB Midrange、赤単、UW Controlなど多数の異なるタイプのデッキが活躍しています。

 マナクリーチャーである《ラノワールのエルフ》《ゴブリンの鎖回し》によって流れてしまうリスクがあるため、緑単は上位では少なめでしたが、緑単にとって相性が良い《ケルドの炎》デッキが勝ち残っているので、ここからさらにメタが変化する可能性もあります。

 USA Standard Express vol.129は以上です。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

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