USA Standard Express vol.133 -多種多様な環境初期-

Kenta Hiroki

 みなさんこんにちは。

 『ラヴニカのギルド』がリリースされて早くも一ヶ月が経ち、先週末にスタンダードのグランプリがアメリカとヨーロッパで開催されました。来週末にはプロツアー『ラヴニカのギルド』も開催されるので、スタンダードの熱も高まっている時期だと思われます。

 今回の連載では先週末に開催されたグランプリ・リール2018グランプリ・ニュージャージー2018の入賞デッキを見ていきたいと思います。

グランプリ・リール2018
鎖回しが再びトップに

2018年10月27-28日

  • 1位 Mono Red
  • 2位 Mono Blue Tempo
  • 3位 Golgari Midrange
  • 4位 Golgari Midrange
  • 5位 Jeskai Control
  • 6位 Izzet Phoenix
  • 7位 Jeskai Control
  • 8位 Selesnya Tokens
Etienne Busson

Etienne Busson

MAGIC: THE GATHERING

トップ8のデッキリストはこちら

 グランプリ・リール2018は、今大会の直前に開催されたMOPTQを中心に結果を残していたGolgari Midrangeをいかに対策するかに焦点が当てられていました。

 《翡翠光のレインジャー》《マーフォークの枝渡り》《ビビアン・リード》《秘宝探究者、ヴラスカ》など緑黒の強力なカードに、『ラヴニカのギルド』からも《ゴルガリの女王、ヴラスカ》《暗殺者の戦利品》《採取+最終》などが追加され、一気にトップメタにまで上り詰めました。Izzet Phoenixなど、このデッキにとって相性があまりよくないとされるデッキが勝ち残る中、プレイオフにも2名送り込むという地力の高さを見せました。

 そんな中優勝を果たしたのは、前環境でも猛威を振るった《ゴブリンの鎖回し》がフル搭載されたMono Redでした。

グランプリ・リール2018 デッキ紹介

「Mono Red」「Izzet Phoenix」

Mono Red

 ローテーションにより多くのキーパーツを失い弱体化したと思われていましたが、『ラヴニカのギルド』からも《実験の狂乱》を始めとした新戦力を獲得し、新環境でもトップメタのデッキと渡り合えるほどの強さであることが証明されました。

 《反逆の先導者、チャンドラ》《栄光をもたらすもの》といったカードが退場したことにより、《ギトゥの溶岩走り》《ヴィーアシーノの紅蓮術師》といった軽いクリーチャーと火力スペルによって速攻でライフを攻めるスライ寄りの戦略にシフトしていきました。

☆注目ポイント

ギトゥの溶岩走りヴィーアシーノの紅蓮術師魔術師の稲妻

 このデッキの主力のクリーチャーである《ギトゥの溶岩走り》《ヴィーアシーノの紅蓮術師》はWizardなので、《魔術師の稲妻》は多くの場合《稲妻》となります。

実験の狂乱

 スライ寄りの構成のこのデッキは、メインからフル搭載された《実験の狂乱》を活用しやすく、今大会でも活躍していたJeskai Controlなどに対しても有利に立ち回れそうです。

宝物の地図苦悩火火による戦い

 今大会見事に優勝を果たしたEtienne Bussonのリストで最も特徴的なのは、追加のクリーチャーが全く採用されていないサイドボードです。特に《宝物の地図》は、今大会でも最大勢力だったGolgari Midrangeとのマッチアップで追加のアドバンテージ源として重宝します。サイド後は《苦悩火》《火による戦い》《溶岩コイル》といった火力スペルも追加され、Big Redに変形します。

Izzet Phoenix

 今大会で一気にブレイクを果たした《弧光のフェニックス》を軸に、青赤の軽いスペルを多数搭載したデッキで、「再活」や《航路の作成》《苦しめる声》によって《弧光のフェニックス》を墓地に落とし、軽いスペルを複数キャストすることで《弧光のフェニックス》を墓地から復活させます。

 デッキの方向性にマッチしている《弾けるドレイク》《奇怪なドレイク》も採用されており、ドローが噛み合えばスタンダードのデッキとは思えないほどの爆発力を見せます。

弧光のフェニックス

 リストの方もカスタマイズが利くので、プレイヤーによって差異があるなどまだまだ研究の余地がありそうです。《弧光のフェニックス》は、モダンでも通用するほどのカードパワーなのでプロツアーでも要注目のデッキとなるかもしれません。

☆注目ポイント

ゴブリンの電術師航路の作成軽蔑的な一撃

 Arne Huschenbethは《ゴブリンの電術師》を採用することで、デッキの回転率を上げています。《ゴブリンの電術師》を2ターン目から展開することで、3ターン目以降から《航路の作成》《苦しめる声》といったドロースペルを連打することが可能になり、爆発力の向上に期待できます。サイド後は《軽蔑的な一撃》《否認》といったカウンターのマナコストも下がるので、より構えやすくなります。

奇怪なドレイク最大速度弾けるドレイク

 《最大速度》によって《弾けるドレイク》《奇怪なドレイク》を強化して一撃必殺を狙うことも可能で、軽いスペルを連打することにより、《弧光のフェニックス》で攻め続けるアグロコントロールとコンボデッキの要素を持つこのデッキとの対戦難易度は高く、そういったところも今大会の勝因だったと思われます。

アズカンタの探索パルン、ニヴ=ミゼット焦熱の連続砲撃

 サイド後は《アズカンタの探索》や、追加のフィニッシャーとして《パルン、ニヴ=ミゼット》も投入され、スイーパーの《焦熱の連続砲撃》や火力除去の《標の稲妻》《溶岩コイル》もサイドインされてIzzet Controlに変形します。

突破大将軍の憤怒

 ほかのリストを見てみると、低コストのキャントリップスペルである《突破》《大将軍の憤怒》を採用したリストや、メインから《アズカンタの探索》やカウンターを採用しているリストも見られるなど、使用者によってカードの選択の違いが見られたりとまだ調整段階のようで、現環境の中では伸びしろがあるデッキの一つです。

グランプリ・ニュージャージー2018
青いコントロールの促進

2018年10月27-28日

  • 1位 Jeskai Control
  • 2位 Boros Angels
  • 3位 Boros Angels
  • 4位 Selesnya Angels
  • 5位 Selesnya Tokens
  • 6位 Izzet Phoenix
  • 7位 Jeskai Control
  • 8位 Jeskai Control

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 グランプリ・ニュージャージー2018では、事前に結果を残していたGolgari Midrangeが多数の初日全勝者を出していましたが、プレイオフには一人も残らずIzzet PhoenixJeskai Controlといった青いデッキや、Boros Angelsなどが多数上位に残るという結果になりました。

弾けるドレイク最大速度詐欺師の総督欠片の双子

 同週末に開催されていたグランプリ・リール2018でも結果を残していたIzzet Phoenixは、グランプリ・ニュージャージー2018でもプレイオフ進出を果たしており、公式のカバレッジでも《弾けるドレイク》《奇怪なドレイク》)+《最大速度》によるコンボはあの《欠片の双子》のようだとも形容されていました。

 今大会で優勝を果たし、トップメタのGolgari Midrangeとともにトップ32に多くの入賞者がいたJeskai Controlは、マナ基盤にも恵まれて安定しており、新カードの《轟音のクラリオン》や、前環境から最高のカードである《ドミナリアの英雄、テフェリー》など強力なスペルやフィニッシャーと揃っているので、プロツアーでも人気が出そうなアーキタイプです。

グランプリ・ニュージャージー2018 デッキ紹介

「Jeskai Control」「Boros Angels」

Jeskai Control

 グランプリ・リール2018とグランプリ・ニュージャージー2018の2つの異なる大会で結果を残していたJeskai Control。MOでも結果を残していたことから、Golgari Midrangeと並んで注目を集めていたデッキでした。

 3色ですが、ショックランドとM10ランドの恩恵で色拘束が強いスペルが多めの構成ながら動きも安定しています。

 フィニッシャーの《弾けるドレイク》や、プレインズウォーカーの《イゼット副長、ラル》の有無、除去やカウンターのカード選択など使用者によってバラつきが見られ、まだまだ研究の余地があるデッキでもあり、来週末に開催されるプロツアーで世界のトッププレイヤーがどのような形に完成させるのかが楽しみなデッキの一つです。

☆注目ポイント

残骸の漂着ドミナリアの英雄、テフェリー浄化の輝き

 今大会を制したEli Kassisはほかのプレイヤーと異なり、《弾けるドレイク》などクリーチャーをメインに採用しておらず、前環境のUW Controlのように《ドミナリアの英雄、テフェリー》4枚というヘビーコントロールです。

 《弾けるドレイク》はコントロールにとって有力なフィニッシャーとなりますが、マナ基盤に負担がかかるというのがネックとなります。《弾けるドレイク》を解雇することでマナ基盤に《平地》を無理なく加えることが可能になり、安定して白マナが供給できるため《残骸の漂着》《浄化の輝き》《封じ込め》《轟音のクラリオン》などの白い除去やスイーパーをより確実にキャストできるようになりました。

イオン化苦悩火発展+発破

 《イオン化》《悪意ある妨害》よりもキャストしやすい確定カウンターとなり、追加効果も《苦悩火》《発展+発破》といった直接火力によるフィニッシュも狙えるでので無視できない要素です。

轟音のクラリオン絶滅の星

 スイーパーの《轟音のクラリオン》は序盤の猛攻を凌ぐためのキーカードで、特にこのデッキはクリーチャーを採用していないので相手側だけ一方的にスイープします。《絶滅の星》は、《ヴラスカの侮辱》のようなカードが不在なため、プレインズウォーカーを対策する手段に貧しいJeskai Controlにとっては数少ないプレインズウォーカーを処理する手段となります。

アゾールの門口

 Eli Kassisのリストの一番の特徴は、メインにフル搭載された《アゾールの門口》です。《アズカンタの探索》よりも優先して採用されているこのカードは、ルーター能力なのでカードアドバンテージは稼げないものの、コントロールとのマッチアップで除去など不要牌を有効札に変換することができるのでドローの質を高められます。一度変身すれば大量のマナが得られるので《苦悩火》《発展+発破》 によってゲームを決めます。

再燃するフェニックス黎明をもたらす者ライラパルン、ニヴ=ミゼット原初の潮流、ネザール

 サイド後は《再燃するフェニックス》《黎明をもたらす者ライラ》《パルン、ニヴ=ミゼット》《原初の潮流、ネザール》といった多種類のクリーチャーが投入されます。どのクリーチャーも異なる対策が必要となるので相手にとっては非常に厄介となります。

Boros Angels

 構築、特にスタンダードの環境解析においては世界トップレベルといっても過言でないBrad Nelsonは、今大会ではSCG Classics Columbusでも優勝を果たしたBoros Angelsのリストをより洗練されたものへと昇華させ、優勝こそ逃したものの準優勝という好成績を残していました。

 《トカートリの儀仗兵》や多数の飛行クリーチャーなどGolgari Midrangeに強い要素が多数搭載されており、今大会では有効な選択肢の一つでした。

☆注目ポイント

 デッキの基本的な動きは、前回の連載で解説済みなので、今回は前回のリストでは採用されていないカードを中心に見ていきたいと思います。

トカートリの儀仗兵

 《トカートリの儀仗兵》は、《貪欲なチュパカブラ》などのETB能力を持つクリーチャーをシャットアウトし、《貪欲なチュパカブラ》以外にも各種「探検」クリーチャー、《ゴルガリの拾売人》などGolgari Midrangeがトップメタの現環境ではメイン採用も納得です。

溶岩コイル凶兆艦隊の向こう見ず不滅の太陽

 《溶岩コイル》は、《再燃するフェニックス》や今回ブレイクを果たした《弧光のフェニックス》などをわずか2マナで処理できることからメインから採用されています。Jeskai Controlが増えそうな今後はまた変わってきそうですが、青いコントロール以外のマッチアップでは優秀な除去として活躍します。

 《凶兆艦隊の向こう見ず》はコントロールの《薬術師の眼識》など「再活」スペル対策になり、Izzet Phoenixとのマッチアップでは《奇怪なドレイク》のサイズダウンにも貢献し、アドバンテージも得られるのでマナコスト、能力の点から主に《トカートリの儀仗兵》の入れ替えでサイドインされそうです。

 サイドの《不滅の太陽》は、プレインズウォーカーを多用するGolgari MidrangeやJeskai Controlとのマッチアップで輝く置物で、今大会のデッキの中で最も印象に残ったテクでした。

総括

ゴルガリの女王、ヴラスカ弧光のフェニックス正義の模範、オレリア

 グランプリ・リール2018グランプリ・ニュージャージー2018の両大会ともに、直前の大会で結果を残していたGolgari Midrangeがトップメタでしたが、Izzet PhoenixBoros AngelsMono Blue Tempoといった飛行クリーチャーを多数採用した厳しいマッチアップも上位では多く、安定した成績を残していましたが勝ち切るまでには至らなかったようです。

 両大会で結果を残していたIzzet PhoenixとJeskai Control、特に《弧光のフェニックス》は、モダンでも活躍しているほどのポテンシャルなのでプロツアーでも人気が出そうな要注目のデッキです。

 USA Standard Express vol.133は以上です。

 それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

この記事内で掲載されたカード

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