皆さんこんにちは。
ご存知の方も多いと思いますが、《師範の占い独楽》がレガシーで禁止カードに指定されました。ここ何回かの禁止改定の告知ではレガシーのことは特に説明もなくノーチェンジが続いていたので、いつの間にかレガシープレイヤーにとっては禁止改定告知は一応目を通しておくぐらいの出来事でしたが、ここ2年ほどGPやSCGOといったレガシーの大きな大会では上位でMiraclesを見ない大会はなく、最近は正直環境が停滞気味だったので、最後の手段として遂に禁止になったようです。
《師範の占い独楽》が禁止になった詳しい経緯については公式のページで挙げられています。レガシーで禁止カードが出るのは《時を越えた探索》以来ですが、今回のように既存のデッキが消滅するのは暫くぶりです。Miraclesを愛用していたプレイヤーの一人であった筆者にとっては複雑な思いではありますが、同時にいつかこのときが来ることは少なからず予期していました。今回の変更により、今までMiraclesのデッキパワーに押さえつけられていたデッキが復権してくることで環境に多様性が戻りそうです。
今回の連載では復権してくるデッキ、前環境から引き続き活躍するデッキを見ていきたいと思います。
新環境のレガシー
まず以下のデッキが新環境でも変わりなく活躍しそうなデッキになりそうです。
・Delver系
・Death and Taxes
・Lands
・ANT
・Reanimator
・Sneak and Show
続いて復権してきそうなデッキはElves, Marverick, Stoneblade系などが挙げられます。特にMiraclesと絶望的な相性であったElvesは、旧環境から引き続いて活躍が予想されるDelver系やDeath and Taxesなどのクリーチャーデッキに強いことから、今後はよく見られそうです。
逆にMiraclesの退場により勢力を弱めることが予想されそうなデッキは、Miraclesと相性が良かった12PostやEldraziが挙げられます。12Postは相性の良かったMiraclesの退場と《師範の占い独楽》の不在により安定性の面で不安が残るため、新環境では数を減らしそうです。
Eldraziは相性の悪いElvesや今後基本地形を多数搭載したMiraclesが姿を消すことにより相対的な強さを増したマナ否定戦略によって苦戦を強いられそうです。また《血染めの月》は相対的な強さは増したものの、代表的な《血染めの月》デッキの一つとされていたPainter Stoneは、《師範の占い独楽》の禁止によって安定性の面で弱体化しそうです。
《死儀礼のシャーマン》は多くのデッキで使われている非常に強力なクリーチャーで、マナクリーチャーとしても墓地対策にもなり直接火力にもなることから1マナのプレインズウォーカーとも呼ばれており、今後多くのフェアデッキのリストは《死儀礼のシャーマン》から始まるといっても過言ではないでしょう。
数ある《死儀礼のシャーマン》デッキの中で最も有力なのがGrixis Delverで、LandsやElvesなど一部を除いて特に苦手とするマッチアップが少なくプロアクティブな戦略なため、新環境では人気が出そうです。一方、Shardless Sultai、Food Chain、Alurenは比較的相性が良いとされていたMiraclesの退場と相性の悪いコンボの増加により数を減らすことが予想されます。
Delver系
3 《Volcanic Island》 2 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《霧深い雨林》 2 《汚染された三角州》 2 《沸騰する小湖》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《若き紅蓮術士》 1 《真の名の宿敵》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー (14)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 2 《陰謀団式療法》 1 《呪文貫き》 4 《目くらまし》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 -呪文 (28)- |
2 《悪意の大梟》 2 《外科的摘出》 1 《真の名の宿敵》 1 《致命的な一押し》 1 《狼狽の嵐》 1 《紅蓮破》 1 《陰謀団式療法》 1 《古えの遺恨》 1 《夜の戦慄》 1 《硫黄の渦》 1 《真髄の針》 1 《無のロッド》 1 《冬の宝珠》 -サイドボード (15)- |
Miraclesと並んで環境のTier1として活躍していたDelver系は前環境から変わらず人気が出そうです。復権してくると思われるコンボにも強く《終末》される心配がなくなるので、《真の名の宿敵》や《若き紅蓮術士》といったクリーチャーの支配力が増しそうです。
《相殺》対策として使われていた《突然の衰微》の必要性も減るので、マナベースに難があるSultai系や4CよりもGrixisが主流になると思います。また、今後《剣を鍬に》を使うデッキが少なくなるのなら、《突然の衰微》や《致命的な一押し》などが効かない《グルマグのアンコウ》は対処され難いフィニッシャーとして期待できそうです。
このリストは禁止改定前のものになりますので、主にサイドボードを新環境に合わせて調整していく必要がありそうです。《無のロッド》といったMiracles対策にスペースを割く必要がなくなるので、これから増加しそうなElvesに効く《二股の稲妻》や《電謀》、LandsやReanimatorとのマッチアップ用の追加の墓地対策が候補になるでしょう。
Death and Taxes
10 《平地》 3 《カラカス》 2 《魂の洞窟》 4 《リシャーダの港》 4 《不毛の大地》 -土地 (23)- 4 《ルーンの母》 4 《石鍛冶の神秘家》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 3 《ファイレクシアの破棄者》 2 《セラの報復者》 4 《ちらつき鬼火》 2 《ミラディンの十字軍》 2 《護衛募集員》 2 《聖域の僧院長》 -クリーチャー (27)- |
4 《剣を鍬に》 4 《霊気の薬瓶》 1 《梅澤の十手》 1 《火と氷の剣》 1 《殴打頭蓋》 -呪文 (11)- |
2 《エーテル宣誓会の法学者》 2 《流刑への道》 2 《議会の採決》 2 《安らかなる眠り》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《レオニンの遺物囲い》 1 《フェアリーの忌み者》 1 《外科的摘出》 1 《真髄の針》 1 《戦争と平和の剣》 -サイドボード (15)- |
Miraclesがトップメタの環境でもよく上位で見られた白単色のアグロコントロールであるDeath and Taxesでしたが、《ルーンの母》に守られたクリーチャーも《終末》の前では無力で、得意のマナ否定も基本土地が多くライブラリー操作によって土地を毎ターン引き当てられるMiraclesにはそこまでの効果も望めず、環境末期でポピュラーな型であったカードアドバンテージ重視の《予報》型Miraclesに対しては一枚辺りのカードパワーが低めのDeath and Taxesは苦戦を強いられました。
ですが新環境では元々Delver系と増加が予想されるコンボと相性が良く、相性が悪かったElvesの復権や《真の名の宿敵》+《梅澤の十手》の存在を考慮しても、
トータル面では良いポジション
です。再び単体除去が中心の環境になるようなら、《ルーンの母》はほぼマスト除去になるので相手からしたら厄介です。《封じ込める僧侶》はReanimator、Sneak and ShowそしてElvesと多くのマッチアップで役に立つので、今後はサイドの必須カードとなりそうです。その他の青いミッドレンジ
Miraclesに苦戦を強いられていたStonebladeなどの青いミッドレンジも早速結果を残し始めているようです。
4 《島》 3 《平地》 3 《Tundra》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《湿地の干潟》 1 《沸騰する小湖》 1 《カラカス》 1 《不毛の大地》 -土地 (22)- 4 《瞬唱の魔道士》 4 《石鍛冶の神秘家》 2 《真の名の宿敵》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー (11)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 2 《思案》 2 《呪文貫き》 2 《対抗呪文》 2 《議会の採決》 1 《至高の評決》 4 《意志の力》 1 《基本に帰れ》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (27)- |
3 《安らかなる眠り》 2 《翻弄する魔道士》 2 《狼狽の嵐》 1 《封じ込める僧侶》 1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《青霊破》 1 《解呪》 1 《至高の評決》 1 《基本に帰れ》 1 《Moat》 1 《石術師、ナヒリ》 -サイドボード (15)- |
4 《島》 2 《平地》 1 《山》 3 《Tundra》 2 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《乾燥台地》 -土地 (21)- 4 《瞬唱の魔道士》 2 《石鍛冶の神秘家》 -クリーチャー (6)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 3 《定業》 2 《呪文嵌め》 3 《対抗呪文》 2 《至高の評決》 4 《意志の力》 2 《仕組まれた爆薬》 1 《殴打頭蓋》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (33)- |
3 《エーテル宣誓会の法学者》 3 《外科的摘出》 3 《紅蓮破》 3 《狼狽の嵐》 1 《解呪》 1 《紅蓮地獄》 1 《コジレックの帰還》 -サイドボード (15)- |
Miraclesとの相性の悪さから環境から締め出されていた、代表的な青いフェアデッキであるStoneblade。コンボデッキに対しては中途半端なスピードなのでメインでは苦戦しそうですが、基本地形の多さからマナ否定戦略に対して耐性があるのが強みで、メインから《基本に帰れ》を採ることで《死儀礼のシャーマン》デッキやLandsなどに対抗します。
主にMOで《予報》型のMiraclesで勝ちまくっていたANZID (Anuraag Das) もJeskaiカラーのStonebladeで5-0しており、カード資産の関係で旧環境でMiraclesを使っていたプレイヤーの受け皿にもなることを考慮すると、新環境ではそれなりの数を見かけることになりそうです。
Elves
2 《森》 2 《Bayou》 2 《ドライアドの東屋》 4 《新緑の地下墓地》 4 《霧深い雨林》 1 《魂の洞窟》 1 《ペンデルヘイヴン》 4 《ガイアの揺籃の地》 -土地 (20)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《遺産のドルイド》 4 《イラクサの歩哨》 4 《ワイアウッドの共生虫》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 1 《樺の知識のレインジャー》 4 《エルフの幻想家》 1 《再利用の賢者》 1 《漁る軟泥》 2 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー (29)- |
4 《垣間見る自然》 4 《緑の太陽の頂点》 4 《自然の秩序》 -呪文 (12)- |
3 《陰謀団式療法》 3 《突然の衰微》 3 《外科的摘出》 3 《思考囲い》 2 《真髄の針》 1 《大祖始》 -サイドボード (15)- |
ヨーロッパのElvesのエキスパートであるJulian Knabも新環境のMOのリーグ戦で5-0していました。Miracles不在の新環境では《生命の力、ニッサ》の必要性は薄れているので《自然の秩序》の4枚目に戻しています。《相殺》を対策する必要がなくなったので《突然の衰微》の価値も下がったと思われますが、装備品や《虚空の杯》などの厄介な置物を割る手段なので引き続き採用されています。
《終末》のない環境では《大祖始》はフェアデッキに対して対処されにくいクリーチャーで、《自然の秩序》のサーチ先のフィニッシャーとしての信頼性も増しています。
ボーナストピック
アメリカのレガシープレイヤーやレガシーの大会で入賞経験のあるプロに、《師範の占い独楽》の禁止についての意見と今後の環境についてお話を聞くことができました。
1. 《師範の占い独楽》禁止についての意見
2. 今後のレガシーの環境について
Brian DeMars (SCGO Indianapolis 2015 優勝、GP Worcester 2012優勝、GP Indianapolis2012 トップ4、 GP Seattle 2015 トップ4など)
1. 《師範の占い独楽》を禁止にしたのは正しい判断だったと言えるね。歴代のレガシーのデッキの中でも単純に強すぎたし、もっと前に禁止になっていてもおかしくなかった。
2. 《終末》がなくなったことでDelver系をはじめとするクリーチャーデッキが強くなりそうだね。また、LandsやElvesはポジション的に良さそうだ。Elvesは元々強いデッキだったけどMiraclesとのマッチアップだけは勝ち目が薄かったからね。Landsはこれから人気の出そうな代表的な青いデッキであるDelverに強い。
Ben Friedman (SCG Invitational、SCGO入賞多数、GP Orlando2012 , Minneapolis2012-13 ,Richmond 2012-13 トップ8、New Jersey2017 準優勝など)
1. 最近プロツアーの練習で忙しくてレガシーはプレイできていないけど、今回の変更によって色々なデッキや戦略の幅が広がりそうだね。
2. Elves、ANT、Lands、Stoneblade、Deathbladeが強くなりそうだね。あと僕がひそかに強いと考えているデッキはMerfolkだ。まだあまり話題になっていないけどね。
Merfolkも《終末》の被害を被っていたクリーチャーデッキの一つで、Miraclesを始めとした青いデッキ対策に《紅蓮破》/《赤霊破》がメインから入ることもあったために環境から姿を消していましたが、今回の変更により復権してくる可能性もあるかもしれません。
11 《島》 4 《魂の洞窟》 3 《変わり谷》 2 《不毛の大地》 -土地 (20)- 4 《呪い捕らえ》 4 《銀エラの達人》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 2 《幻影の像》 4 《真の名の宿敵》 -クリーチャー (22)- |
3 《目くらまし》 2 《四肢切断》 4 《意志の力》 4 《虚空の杯》 4 《霊気の薬瓶》 1 《梅澤の十手》 -呪文 (19)- |
このように《師範の占い独楽》の禁止についてはポジティブな意見が多く見られますが、なかにはこんな意見も。
Joseph Alane (SCGO Milwaukee 2013 トップ4 Reanimatorを得意とするレガシープレイヤー)
1. 正直言うとMiraclesが勝ってたのはここ1年半以上あまり変わってないし、運営上の問題についても今に始まったことではなくて、《師範の占い独楽》がと言うよりも一部のスロープレイヤーが問題なだけであって、何故今になって禁止なのか分からない。
2. Miraclesのように基本地形の多いデッキが減って《死儀礼のシャーマン》を使った多色のデッキが増えそうだから、《血染めの月》を使ったデッキが強くなりそうだね。《相殺》がなくなってReanimatorにとっては良くなったように見えるけど、実際は他のデッキがサイドに数枚割いていたMiracles用のスロットが空いて墓地対策用のスペースに余裕ができたのと、《死儀礼のシャーマン》の多さから結構きつそうだね。《血染めの月》メインのSneak and Showとその《血染めの月》に耐性があって、最悪の相性のデッキがいなくなったElves辺りがベストになりそうだね。
今回の変更による勝ち組はやはりElvesのようです。確かに環境の多くのマッチアップに強く、これまでもMiraclesさえいなければ最強を狙えたかもしれなかっただけに、今回の変更は世界中のElvesプレイヤーにとっては良い知らせだったと思います。
総括
わずか一枚の禁止カードでしたが、レガシーの歴史上稀に見る大きな変更となりそうです。禁止カード出すことによって一つの支配的なアーキタイプ自体を追放するのは筆者がレガシーを始めて間もなかった《適者生存》以来のような気もします。
何故このタイミングで禁止?という意見も見られますが、R&Dも《トレストの使者、レオヴォルド》などの環境の対抗馬となり得るデッキを強化するカードや、EldraziのようにMiraclesに強い要素を持った新デッキを生み出すことで改善を図ろうとするも、Miraclesを王座から引きずり下ろすことは叶わず環境が停滞し、最後の手段を取らざるを得なかったと認識しています。
愛用のデッキであったMiraclesが使えなくなることは残念ですが、競技大会に参加するプレイヤーとしてベストデッキを使うリスクでもあると思います。ようやく動き出したレガシーではどのようなデッキが活躍するのか楽しみです。
以上USA Legacy Express vol.127でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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