皆さんこんにちは。
今週末にはレガシーオープンがWorcesterでしばらくぶりに開催されます。筆者も参加予定で久々のオープンなので楽しみです。
さて、今回の連載ではグランプリ・静岡2017(春)のサイドイベントとして開催された「グレードアップ」争奪レガシーとイタリアで開催されたMKM Milan LEGACY EUROPEAN CHAMPIONSHIP 2017の入賞デッキを見ていきたいと思います。
「グレードアップ」争奪レガシー
日本のMiraclesマスターがレガシー選手権2016 Springに引き続き優勝
3月19日
※画像はBIG MAGICより引用させていただきました。 |
1位 Miracles
2位 Zombardment
3位 Show and Tell
4位 Miracles
5位 Miracles
6位 UR Delver
7位 Grixis Delver
8位 Painter
トップ8のデッキリストはこちら
参加者157名を出した「グレードアップ」争奪レガシーは環境のベストデッキであるMiraclesが3名、Grixis DelverやUR Delverといった青いデッキや環境の定番のコンボデッキであるShow and Tellの他にもZombardmentのようなレアなデッキも見られました。
「グレードアップ」争奪レガシートップ8 デッキ紹介「UR Delver」
2《島》 2《山》 3《Volcanic Island》 4《沸騰する小湖》 4《溢れかえる岸辺》 1《血染めのぬかるみ》 -土地 (16)- 4《秘密を掘り下げる者》 4《僧院の速槍》 3《嵐追いの魔道士》 2《真の名の宿敵》 -クリーチャー (13)- |
4《渦まく知識》 4《思案》 4《ギタクシア派の調査》 4《稲妻》 3《稲妻の連鎖》 4《目くらまし》 2《発展の代価》 1《火+氷》 4《意志の力》 1《火炎破》 -呪文 (31)- |
2《紅蓮破》 2《外科的摘出》 2《粉々》 1《渋面の溶岩使い》 1《ヴェンディリオン三人衆》 1《硫黄の精霊》 1《侵襲手術》 1《狼狽の嵐》 1《血染めの月》 1《無のロッド》 1《硫黄の渦》 1《罠の橋》 -サイドボード (15)- |
土地がわずか16枚と限界まで切り詰めたマナベースで、Delver系の中でも最もアグレッシブな構成のUR Delver。直接火力も多めのバーン寄りの構成で、果敢クリーチャーと軽いキャントリップやバーンの組み合わせによるスピードにミッドレンジやコントロールが付いていくのは難しいでしょう。
☆注目ポイント
カウンターや妨害要素がメインでは必要最低限に絞られ、火力呪文が11枚とバーンデッキのような構成で、《僧院の速槍》や《嵐追いの魔道士》など軽い速攻持ちの果敢クリーチャーで攻めていきます。
このタイプのデッキでよく見かける《騒乱の歓楽者》は不採用で、代わりに《真の名の宿敵》が採用されています。息切れ防止よりも、除去耐性が高く青いカードとしてもカウントできる《真の名の宿敵》は、このタイプのデッキが苦手とするロングゲームにも対応を可能にします。
バーンデッキの最後の一押しとして使われている《火炎破》はわずか1枚の採用となっていますが、ゲーム中に1枚引ければ良いカードなので、ドロースペルでアクセス可能な青赤では1枚で十分であり、青を使うメリットになります。このバージョンを使う一番のアドバンテージはなんといっても《発展の代価》です。
現在レガシーはSultaiなど多くのデッキが多色のミッドレンジ寄りで、相手は常に《目くらまし》を意識する必要があり、土地を3枚以上並べざる得ないため、多くの場合2マナ6点以上の火力です。
MKM Milan
スタンダードのオールスタークリーチャーがレガシーでもその強さを見せる
3月20日
※画像はMagicCardMarket Seriesより引用させていただきました。 |
1位Food Chain
2位 Sneak and Show
3位 Eldrazi
4位 12 Post Eldrazi
5位 Infect
6位 UR Delver
7位 ANT
8位 Sultai Delver
トップ8のデッキリストはこちら
最近のレガシーの大会の結果はMiraclesが多く勝ち残る傾向にありましたが、今大会ではMiraclesはプレイオフには不在で、6つの異なるアーキタイプが勝ち残るという多様性のある結果となりました。優勝トロフィーを獲得したのは《歩行バリスタ》を加えたSultaiカラーのFood Chainコンボでスタンダードを支配するアーテイファクトクリーチャーはレガシーでも通用する逸材だったようです。
MKM Milan トップ8 デッキ紹介「Food Chain」「ANT」
2 《島》 1 《沼》 1 《森》 2 《Underground Sea》 2 《Tropical Island》 1 《Bayou》 4 《新緑の地下墓地》 4 《霧深い雨林》 3 《汚染された三角州》 -土地 (20)- 4 《歩行バリスタ》 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《悪意の大梟》 2 《トレストの使者、レオヴォルド》 1 《永遠の災い魔》 3 《霧虚ろのグリフィン》 -クリーチャー (18)- |
4 《渦まく知識》 3 《思案》 4 《突然の衰微》 3 《運命の操作》 4 《意志の力》 4 《食物連鎖》 -呪文 (22)- |
3 《外科的摘出》 2 《思考囲い》 2 《水流破》 2 《悪魔の布告》 2 《精神壊しの罠》 2 《仕組まれた疫病》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《真髄の針》 -サイドボード (15)- |
消耗戦を得意とするSultaiカラーのFood Chainで、コンボというよりは《食物連鎖》コンボを搭載したSultaiミッドレンジとなります。コンボの動きは《食物連鎖》を展開し、《霧虚ろのグリフィン》または《永遠の災い魔》をキャストして必要な分のマナが出るまで追放、再キャストを続けていき、巨大な《歩行バリスタ》をキャストしてゲームを終わらせます。
《運命の操作》(《霧虚ろのグリフィン》と《永遠の災い魔》をサーチ)と《悪意の大梟》によってカードアドバンテージを稼いでいき、追放された《霧虚ろのグリフィン》と《永遠の災い魔》を展開していくだけでも、多くのフェアデッキにとっては十分にプレッシャーとなります。このように3枚コンボデッキであると同時に、コンボパーツ単体でも十分に戦力になるのがこのデッキの強みです。
☆注目ポイント
《霧虚ろのグリフィン》 と《永遠の災い魔》は《食物連鎖》によって無限マナを生み出すコンボパーツですが、《霧虚ろのグリフィン》は《意志の力》のコストになり、追放してもキャスト可能なのでアドバンテージを失わず、《突然の衰微》で処理されることもなく追放されてもキャスト可能な性質上、《剣を鍬に》にも耐性があります。
《永遠の災い魔》はコストが《霧虚ろのグリフィン》よりも1マナ軽く、無色なのでキャストしやすく、《食物連鎖》がある状態で《霧虚ろのグリフィン》をキャストするための4枚目の土地がない状態でもコンボを発動可能です。これによりこのデッキの《運命の操作》は、実質4ドローです。
《歩行バリスタ》はこのデッキの新戦力で、《引き裂かれし永劫、エムラクール》に代わるフィニッシャーです。《引き裂かれし永劫、エムラクール》と異なり戦闘する必要がないため、相手が《罠の橋》をコントロールしていてもゲームに勝つことが可能です。《歩行バリスタ》はそれ単体でも生きた除去としても使えるので《食物連鎖》を指定した《ファイレクシアの破棄者》も対策可能であり、無色なのでプロテクションにも強く、Death and Taxesとの相性が改善されています。
《運命の操作》によって《終末》にも耐性があり、他のSultaiと同様に《突然の衰微》や《トレストの使者、レオヴォルド》などMiraclesに強い要素が揃っているので、Miraclesとのマッチアップは有利です。Delver系やDeath and Taxesといったクリーチャーデッキにも強く、メインでの妨害要素が少ないためコンボ、特にANTには不利が付きます。そのためサイドには《精神壊しの罠》などの対策カードが多めに積まれています。
1 《島》 1 《沼》 2 《Underground Sea》 1 《Bayou》 1 《Tropical Island》 1 《Volcanic Island》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 -土地 (15)- -クリーチャー (0)- |
4 《渦まく知識》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《暗黒の儀式》 3 《陰謀団式療法》 3 《強迫》 4 《冥府の教示者》 4 《陰謀団の儀式》 2 《突然の衰微》 2 《炎の中の過去》 1 《苦悶の触手》 1 《むかつき》 4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 1 《師範の占い独楽》 -呪文 (45)- |
2 《狼狽の嵐》 2 《突然の衰微》 2 《クローサの掌握》 2 《苦悶の触手》 1 《ザンティッドの大群》 1 《燃え立つ願い》 1 《残響する真実》 1 《虐殺》 1 《巣穴からの総出》 1 《選別の秤》 1 《師範の占い独楽》 -サイドボード (15)- |
レガシーの代表的なコンボデッキ、ANTです。メイン戦は《相殺》に苦戦を強いられましたが、Rodrigoは《突然の衰微》をメインから採用することで、相性の改善を図っています。そのスペースの確保のために《定業》が抜けています。キープ基準になり、コンボパーツを探すドロースペルよりも優先されていることから現環境のMiraclesの存在の大きさが伺えます。
多くのデッキがMiraclesとのマッチアップに備えて構成を重めにしているため、現環境では実は良い立ち位置で、デッキを使い慣れているプレイヤーにはお勧めです。Sultai系の隆盛に一役買っている《トレストの使者、レオヴォルド》もコンボに強い能力を持っていますが3マナと遅く、現在はDelver系も採用しているフェアデッキとのマッチアップに強い《真の名の宿敵》もこのデッキにとってはそれほど脅威となりません。
☆注目ポイント
メインの《突然の衰微》はDelver系や『Death and Taxes』のクロックやヘイトベアー対策にもなりますが色拘束が強く、2マナなのでクリーチャー除去としては使いづらく、主なターゲットは《相殺》になります。
サイドの《狼狽の嵐》は他のコンボに対して有効な妨害スペルで、青いデッキ相手にもコンボを守る役割を果たします。カウンター呪文は《ライオンの瞳のダイアモンド》+《冥府の教示者》との相性の悪さが欠点ですが、妨害スペルのバリエーションはサイド後は特に重要となります。
《選別の秤》はあまり見かけないカードですが、追加の《相殺》対策になります。
《巣穴からの総出》の他にも追加の《苦悶の触手》が2枚サイドに採用されており、《狼狽の嵐》に気を付ける必要こそありますが、《ライオンの瞳のダイアモンド》+《冥府の教示者》のルートを狙いづらい青いデッキに対して、直接ストームによる勝利を目指すことや、2回以上仕掛けることも可能になります。SultaiなどMiracles以外の青いデッキに対しては《巣穴からの総出》によって、早い段階からゴブリントークンの群れを展開することができればほぼ勝ちです。
LEGACY EUROPEAN CHAMPIONSHIP 2017
Predict Miraclesが春のヨーロッパのレガシー選手権を制する
4月1日
※画像はBAZAAR of MOXENより引用させていただきました。 |
1位 Miracles
2位 Miracles
3位 Aggro Loam
4位 Elves
5位 Elves
6位 Elves
7位 Burn
8位 Dark Bant
トップ8のデッキリストはこちら
参加者400人以上と大盛況の内に幕を閉じたLEGACY EUROPEAN CHAMPIONSHIP 2017。決勝戦はEternal Extravaganza 6と同様に、環境のベストデッキとされているMiraclesの最新バージョン、Predict Miraclesでした。Miraclesが猛威を振るう環境ながら、ヨーロッパのElvesマスターのJulian Knabも含めてElvesがプレイオフに3名勝ち残っていたことが印象的でした。
《終末》がキツイElvesですが、逆に《終末》以外の半端な除去や妨害では対応しきるのは難しく、Sultaiなど他のフェアデッキに対して有利が付き、Miraclesに対しても新戦力が追加されているため、以前ほどの圧倒的不利ではなくなりました。
LEGACY EUROPEAN CHAMPIONSHIP 2017 デッキ紹介「Elves」
2 《森》 2 《Bayou》 2 《ドライアドの東屋》 2 《吹きさらしの荒野》 2 《霧深い雨林》 2 《新緑の地下墓地》 1 《樹木茂る山麓》 4 《ガイアの揺籃の地》 2 《魂の洞窟》 1 《ペンデルヘイヴン》 -土地 (20)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《ワイアウッドの共生虫》 4 《エルフの幻想家》 4 《イラクサの歩哨》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 3 《遺産のドルイド》 2 《樺の知識のレインジャー》 1 《再利用の賢者》 2 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー (28)- |
4 《垣間見る自然》 4 《緑の太陽の頂点》 3 《自然の秩序》 1 《生命の力、ニッサ》 -呪文 (12)- |
4 《突然の衰微》 3 《思考囲い》 3 《陰謀団式療法》 2 《外科的摘出》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《漁る軟泥》 1 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード (15)- |
相性の悪いMiraclesがトップメタの現環境ですが、プレイオフに3名送り込むという安定したパフォーマンスを見せたElves。Miraclesとのマッチアップは絶望的とも言える相性でしたが、《トレストの使者、レオヴォルド》や《生命の力、ニッサ》などの登場により、特にサイド後は勝てないマッチアップではなくなり、元々コンボ以外では有利なマッチアップが多く、復権の兆しを見せています。
Julian KnabはMiraclesが支配する環境でもElvesで結果を残し続けている強豪プレイヤーで、《生命の力、ニッサ》や《魂の洞窟》といったカードがメインから採用されており、環境に合わせた調整の跡が見られます。
☆注目ポイント
《生命の力、ニッサ》はプレインズウォーカー対策の少ないMiraclesに強く、Miraclesがトップメタの環境なのでメイン採用です。《生命の力、ニッサ》は4枚目の《自然の秩序》よりも優先されており、コンボによる瞬殺よりもロングゲームを想定した構成です。
《魂の洞窟》がメインから採用されており、《相殺》や《虚空の杯》といったカードに耐性を付けています。主力となるエルフクリーチャーは《遺産のドルイド》と《樺の知識のレインジャー》以外は4枚採用で、メインに1枚だけ採用されていることが多い《漁る軟泥》はサイドに移されており、最近採用され始めた《トレストの使者、レオヴォルド》も不在です。相性の悪いコンボデッキに対しては、サイドからの勝負のようです。
総括
アメリカやヨーロッパでは《予報》型のMiraclesが結果を残しており、《予報》によるカードアドバンテージは同型やSultai系において極めて重要で、実際に使用したプレイヤーもトップ8プロフィールで《予報》をデッキ内のベストカードとして挙げていました。Balista Food Chainなど新しいテクも出てきており、カードプールの広大なレガシーの可能性を感じさせます。
最後にもうひとつだけ、皆さんにお知らせしたいことがあります。今後のUSA Legacy Expressについてですが、新連載のUSA Modern Expressの開始に伴いUSA Legacy Expressは月に一度の連載になります。次回のUSA Legacy ExpressVol.127は5月になります。
近年レガシーの大会は減少傾向にあり、アメリカではSCGOやSCG Invitationalの採用フォーマットもモダンが多く、日本国内でもGP神戸が開催されることからも、レガシーとはまた少し違ったローテーションのないフォーマットの情報を皆さんにお届けしていきたいと思います。
毎回楽しみにされていた読者の皆さんには残念なニュースとなりましたが、その分内容を濃くしていく予定なので今後もよろしくお願いいたします。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
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