皆さんこんにちは。
今月はアメリカ、ラスベガスでレガシーのGPが開催されます。アメリカでレガシーのGPが開催されるのは昨年のグランプリ・コロンバス2016以来で、禁止改定後の新環境初のGPでもあるので楽しみです。
さて、今回の連載ではSCGO LouisvilleとSCG Classics Louisville、そしてMagic Onlineで毎週末に開催されるLegacy Challengeで入賞していたデッキを見ていきたいと思います。
SCGO Louisville
~新環境最高の1マナ域のカードは《死儀礼のシャーマン》~
5月20日
※画像はStarCityGames.comより引用させていただきました。 |
1位 Grixis Delver
2位 Sultai Control
3位 Lands
4位 Mono Red Sneak Attack
5位 Grixis Delver
6位 4C Delver
7位 Omni-tell
8位 Eldrazi
トップ8のデッキリストはこちら
スタンダード、モダン、レガシーの三つの異なる構築フォーマットで行われるチーム戦という特殊な形式でしたが、多くのプレイヤーは《師範の占い独楽》禁止後の環境における最高のデッキとしてGrixis Delverを選択していました。MOでは《もみ消し》型と《陰謀団式療法》型が見られますが、今大会では《陰謀団式療法》型が多数派だったようです。
またトップ8には残らなかったものの、ANTもMiraclesが弱体化したことにより以前よりも有利なポジションにあり、Grixis Delverの次に高い二日目進出率でした。またANTなどのコンボデッキに対しては不利なものの、Grixis Delverを始めとした青いフェアデッキ全般に強いLandsも少数ながら勝ち残っています(メタゲームブレイクダウン、参照)。
SCGO Louisville デッキ紹介
「Lands」
1 《森》 3 《Taiga》 1 《吹きさらしの荒野》 1 《樹木茂る山麓》 4 《燃え柳の木立ち》 1 《地平線の梢》 1 《ボジューカの沼》 1 《平穏な茂み》 4 《リシャーダの港》 4 《演劇の舞台》 4 《不毛の大地》 3 《暗黒の深部》 2 《イス卿の迷路》 1 《幽霊街》 1 《Glacial Chasm》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -土地 (33)- -クリーチャー (0)- |
4 《輪作》 4 《罰する火》 4 《ギャンブル》 4 《壌土からの生命》 4 《踏査》 2 《マナ結合》 1 《溶鉄の渦》 4 《モックス・ダイアモンド》 -呪文 (27)- |
4 《抵抗の宝球》 3 《クローサの掌握》 2 《外科的摘出》 2 《漸増爆弾》 2 《アメジストのとげ》 1 《蛮族のリング》 1 《カラカス》 -サイドボード (15)- |
今大会で最大勢力であったDelver系に有利なLandsもまた、Miraclesが弱体化したことにより相対的に強さを増したデッキの一つです。
《踏査》や《マナ結合》といった1ターンに複数の土地を置くことを可能にするエンチャントを設置し、《リシャーダの港》や《不毛の大地》で相手の行動を制限しながら《壌土からの生命》によって《不毛の大地》などを使い回していきます。必要なカードは《ギャンブル》にでサーチ可能で、《壌土からの生命》や土地はたとえ墓地に落ちても回収可能です。
《罰する火》エンジンが搭載されているのもクリーチャーを主力とするデッキに強い理由の一つです。
主な勝ち手段は《暗黒の深部》+《演劇の舞台》によるコンボです。《輪作》を利用することによりインスタントスピードで破壊されない20/20を展開することも可能で、《致命的な一押し》などで触れないのが強みです。
☆注目ポイント
Jeffのリストは《暗黒の深部》+《演劇の舞台》以外にも、《溶鉄の渦》が追加の勝ち手段としてメインから採用されています。1マナと軽く、赤マナを支払って土地を捨てるたびに2ダメージを与えるエンチャントで、《壌土からの生命》を利用することで、最低でも毎ターン6点のダメージを与えることが可能となり、強力なクロックとなります。対戦相手に《血染めの月》を置かれてしまった際にも機能する有効なバックアップ手段です。サイドの《漸増爆弾》も同様に《血染めの月》対策となり、墓地をリソースとするこのデッキにとって厄介な《安らかなる眠り》などの置物対策にもなります。
Miraclesの弱体化によりサイドのスペースにも余裕ができたので、《抵抗の宝球》や《アメジストのとげ》といった苦手なコンボ対策も難なく採用することができます。
墓地対策には《外科的摘出》が採用されていますが、これはコンボやミラーマッチで役立ちます。
SCG Classics Louisville
~Delver系が多数、Landstillなど懐かしいデッキも~
5月20日
※画像はStarCityGames.comより引用させていただきました。 |
1位 Jund Depths
2位 Infect
3位 Food Chain
4位 UB Landstill
5位 Grixis Delver
6位 Belcher
7位 Sultai Delver
8位 Grixis Delver
トップ8のデッキリストはこちら
Openと比べると、Classicの方ではDelver系が多数勝ち残っている点、そしてFood ChainなどのローグデッキやLandstillのような懐かしいコントロールなど、入賞アーキタイプがばらけている点に注目です。
SCG Classics Louisville デッキ紹介
「Jund Depths」「UB Landstill」「Grixis Delver」
1 《沼》 2 《Badlands》 2 《Bayou》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《燃え柳の木立ち》 1 《新緑の地下墓地》 1 《裂け岩の扉》 1 《ボジューカの沼》 4 《不毛の大地》 3 《演劇の舞台》 2 《イス卿の迷路》 2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 2 《暗黒の深部》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -土地 (30)- 1 《冥界のスピリット》 -クリーチャー (1)- |
4 《納墓》 3 《輪作》 1 《カラスの罪》 4 《壌土からの生命》 4 《小悪疫》 2 《突然の衰微》 2 《罰する火》 3 《ミリーの悪知恵》 4 《モックス・ダイアモンド》 2 《ヴェールのリリアナ》 -呪文 (29)- |
3 《思考囲い》 1 《カラカス》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 1 《輪作》 1 《自然の要求》 1 《古えの遺恨》 1 《カラスの罪》 1 《棺の追放》 1 《炎の突き》 1 《無垢の血》 1 《天啓の光》 1 《虐殺》 1 《溶鉄の渦》 -サイドボード (15)- |
今大会で見事に優勝を飾ったKennen Haasは、過去のオープンでもJund Depthsで優勝経験があります。Lands以外のデッキで《暗黒の深部》を使ったデッキは、当時ではかなり珍しい部類に入りました。《小悪疫》と《ヴェールのリリアナ》で相手を縛るPox、《壌土からの生命》で《不毛の大地》などを使い回すLoam、《罰する火》エンジンなどのLands戦略をハイブリットさせた、オリジナリティの高いデッキです。
《輪作》や《納墓》といったサーチスペルを利用することにより、ツールボックスデッキのように状況に応じて様々なカードを手に入れることが可能です。
☆注目ポイント
《小悪疫》と《ヴェールのリリアナ》により、青いフェアデッキの主力クリーチャーである《真の名の宿敵》を容易に処理することが可能です。
サーチスペルである《輪作》と《納墓》により土地ツールボックスの要素もあり、《罰する火》《カラスの罪》《冥界のスピリット》《壌土からの生命》が主なターゲットとなります。
《カラスの罪》は《壌土からの生命》との組み合わせが強力で、ANTをはじめとするコンボデッキに対して有効な妨害手段となります。
Landsと同様にフェアデッキに対して強さを発揮するデッキで、コンボに対しては分が悪くなりますが《カラスの罪》と《ヴェールのリリアナ》によるハンデスによる妨害があるので、Lands程の絶望的なマッチアップにはならないようです。
3 《島》 1 《沼》 4 《Underground Sea》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《忍び寄るタール坑》 4 《ミシュラの工廠》 3 《不毛の大地》 -土地 (24)- 4 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー (4)- |
4 《渦まく知識》 4 《致命的な一押し》 3 《思考囲い》 3 《呪文貫き》 1 《呪文嵌め》 1 《無垢の血》 4 《行き詰まり》 2 《対抗呪文》 2 《悪魔の布告》 1 《毒の濁流》 4 《意志の力》 1 《仕組まれた爆薬》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (32)- |
3 《狼狽の嵐》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《侵襲手術》 2 《毒の濁流》 1 《水流破》 1 《漂流》 1 《世界のるつぼ》 1 《罠の橋》 -サイドボード (15)- |
Miraclesの弱体化により、他のコントロールも見られるようになりました。《行き詰まり》で相手の行動を抑えている間に土地を並べ、手札を整えてじっくりとコントロールしていくデッキで、アーキタイプ自体はレガシー初期の頃から存在します。
デッキの性質上クリーチャーが少なく、主な勝ち手段は《行き詰まり》を誘発させないミシュラランドになります。これにより相手側からアクションを起こさらざる得ないことが多く、結果《行き詰まり》は2マナ3ドローという破格のドロースペルとして機能します。
☆注目ポイント
《思考囲い》で《霊気の薬瓶》《死儀礼のシャーマン》《秘密を掘り下げる者》《石鍛冶の神秘家》といった軽いコストの脅威を妨害し、《行き詰まり》へと繋げる動きはデッキを選ばず強力です。ハンデスとカウンターによる妨害によって、このタイプのデッキが苦手としていたコンボデッキとの相性も、他の色の組み合わせと比べると改善されているようです。
今までは軽いインスタント除去にアクセス可能な白や赤を入れた型が主流でしたが、《致命的な一押し》の恩恵で青黒という組み合わせも実現にいたりました。
青黒にしたことにより《忍び寄るタール坑》という回避能力持ちのミシュラランドも使えるようになりました。
《仕組まれた爆薬》、《悪魔の布告》、《毒の濁流》など、《真の名の宿敵》を含めて環境の多くのクリーチャーに対応可能な構成です。
《侵襲手術》や《狼狽の嵐》などのコンボ対策に追加のカウンターがサイドに積まれています。
気になる点は墓地対策を完全に切っているところで、《外科的摘出》辺りを数枚入れても良いかもしれません。
プレイヤーインタビュー: Donivan Abraham
今回の連載のために、筆者の友人でGrixis Delver使いのDonivan Abrahamにお話を聞くことができました。
今大会が彼にとってSCGのイベントでは初のトップ8入賞ですが、過去にもオープンでマネーフィニッシュやIQで入賞している実力者です。
3 《Volcanic Island》 2 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《霧深い雨林》 2 《汚染された三角州》 2 《沸騰する小湖》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《若き紅蓮術士》 1 《真の名の宿敵》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー (14)- |
4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 4 《思案》 3 《もみ消し》 3 《ギタクシア派の調査》 1 《呪文貫き》 4 《目くらまし》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 -呪文 (28)- |
3 《陰謀団式療法》 2 《紅蓮破》 1 《渋面の溶岩使い》 1 《電謀》 1 《致命的な一押し》 1 《外科的摘出》 1 《狼狽の嵐》 1 《古えの遺恨》 1 《悪魔の布告》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《墓掘りの檻》 1 《無のロッド》 -サイドボード (15)- |
――「普段からDelver系を使っているけど、なぜDelverを使っているのか教えてくれる?」
Donivan「長い間Delverを使っていて使い慣れているのが一番の理由で、好きなデッキが環境で強いデッキなのはとてもラッキーだね。Grixis Delverはクロックと、そのクロックを守るための軽い妨害スペルが揃っていて、幅広いマッチアップに対応ができるから環境最高クラスのデッキだと思う」
――「《師範の占い独楽》が禁止になったことによる影響はある?」
Donivan「MiraclesはDelverのリソースを速やかに処理することができて、ロックされるとほぼ勝てなくなるから、非常に骨が折れるマッチだった。今はMiraclesがいなくなって、Grixis Delverはサイドのスペースにも余裕ができて選択肢も増えたね」
――「なるほど。《師範の占い独楽》と《相殺》による致命的なロックの心配もなくなって、元から強かったGrixis Delverは新環境では確かに優位なポジションと言えそうだね。現在は《もみ消し》バージョンと《陰謀団式療法》バージョンが活躍しているけど、今回《もみ消し》バージョンを選択した理由を教えてもらえるかな?」
Donivan「今大会に参加する前に、MOで結果を残しているデッキを念入りにリサーチした。Delver(Grixis、Sultai、UR, 4C)、ANT、Sneak and Show、Elves、True-Nameデッキ(Stoneblade, Sultai True-Name)が中心で、多色のデッキが多くなるのなら《もみ消し》で相手のフェッチランドの起動を妨害するのが有効な戦略だと思った。僕の直感は当たって、《もみ消し》は今大会で大活躍だった。それでも《ギタクシア派の調査》や《若き紅蓮術士》とのシナジーが強力な《陰謀団式療法》は多くのマッチアップでサイドインしたけど、メインは《もみ消し》が新環境で有効な戦略だと思う」
――「サイドボードについても教えてもらえる?」
Donivan「《不毛の大地》を採用していないデッキとのマッチアップでは、土地を1枚サイドアウトしている。サイドアウトされる土地は《Tropical Island》で、《死儀礼のシャーマン》で墓地のクリーチャーを追放する必要があるマッチアップでは《Volcanic Island》をサイドアウトする」
ミラーマッチ
VS ミラーマッチ(先手)
Out
In
Donivan「先手のときは基本的にアグロデッキで、《意志の力》はサイドアウトし、クロックを守る手段として《目くらまし》を使っていく。運が良ければ《不毛の大地》+《もみ消し》でマウントを取れることもある。相手に主導権を握られてもこのマッチアップは接戦になることが多いから、辛抱強くプレイすることが大切だ」
VS ミラーマッチ(後手)
Out
In
Donivan「多くのマッチアップと同様に、後手では《目くらまし》がサイドアウトされる。1ターン遅れた状態で土地を手札に戻すことは得策ではなくて、相手のソフトカウンターや土地破壊によって展開がさらに遅れるリスクが増すからね。《もみ消し》は相手の《不毛の大地》の起動を妨害するのに使うことが多くて、《意志の力》は主に《グルマグのアンコウ》や《真の名の宿敵》など対処が難しい脅威をカウンターするのに使う」
Donivan「《陰謀団式療法》を使わないこのマッチでは《ギタクシア派の調査》の必要性はほとんどない。ライフロスも痛いから、代わりに相手の展開する脅威に直接対処する手段をサイドインしていくことになるね」
ANT
VS ANT
Out
In
Donivan「このマッチアップではサイドアウトするカードを見つけるのが難しい。相手は《稲妻》をケアしてくるし《真の名の宿敵》と《グルマグのアンコウ》は少し遅い。相手のキャントリップに対して《紅蓮破》を積極的に使っていく。クロックとなるクリーチャーをサイドアウトするのは反直感的に見えるかもしれないけど、キャストするのに時間がかかるクリーチャーを手札に抱えるよりも、妨害スペルを増やす方が良い」
Sneak and Show
VS Sneak and Show
Out
In
Donivan「《目くらまし》を1枚サイドアウトしていることを除けば、オーソドックスなサイドプランだと思う。《渋面の溶岩使い》をサイドインしてくることがあるから《四肢切断》は残す」
Sultai delver
VS Sultai Delver(先手)
Out
In
VS Sultai Delver(後手)
Out
In
Donivan「Grixis Delverミラーと似ているけれど、《真の名の宿敵》が採用されていないことが多いから《紅蓮破》はサイドインしない」
Elves
VS Elves
Out
In
Donivan「《グルマグのアンコウ》はチャンプブロックで凌がれやすいから一枚減らす。《もみ消し》する対象は意外と多いから数枚は残すようにしている。《ワイアウッドの共生虫》は積極的に除去しよう」
Esper Stoneblade
VS Esper Stoneblade(先手)
Out
In
VS Esper Stoneblade(後手)
Out
In