皆さんこんにちは。
先月、アメリカではEternal WeekendにSCGOなどレガシーのイベントが充実していました。日本国内でもThe Last Sun2017など年末に向けてレガシーが盛り上がりそうです。
今回の連載ではEternal Weekend 2017とSCGO Washington DCの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Washington DC
~《石鍛冶の神秘家》の復権~
2017年10月28日
- 1位 4C Deathblade
- 2位 Punishing Abzan
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Eldrazi
- 5位 ANT
- 6位 Temur Delver
- 7位 Grixis Delver
- 8位 Miracles
Jon Goss
トップ8のデッキリストはこちら
今回のSCGO Washington DCでは、前週開催されたEternal Weekend 2017と同様に、環境最強の1マナクリーチャーである《死儀礼のシャーマン》デッキが幅を利かせており、4CとGrixis Delverが高い2日目進出率を誇っていました。状況によってマナクリーチャーや墓地対策として機能し、終盤にはフィニッシャーにもなる《死儀礼のシャーマン》は、環境の多くのミッドレンジが黒緑を使う理由になっており、今大会優勝を果たしたDeathbladeもEsper Stonebladeに《死儀礼のシャーマン》をタッチしたバージョンでした。
母数に反して4Cは2日目で振るわず、Grixis Delverはコンボデッキとのマッチアップの強さとその高い安定性を武器にプレイオフに2名、トップ32以内に多数の入賞者を出し、優勝こそ逃したものの環境のベストデッキの一つとして間違いありません。
他にはどんな環境でも常に一定数存在するANT、レガシーの中では比較的新しい部類に入るプリズンアグロのEldrazi、『イクサラン』からの新カードである《アズカンタの探索》をフィーチャーしたMiracles、元祖DelverデッキであるTemur Delver、Punishing Abzanなどカードプールが広大なレガシーらしく様々なタイプのデッキが見られます。
SCGO Washington DC デッキ紹介
「4C Deathblade」「Punishing Abzan」「Miracles」
4C Deathblade
1 《島》 3 《Underground Sea》 2 《Tundra》 1 《Savannah》 1 《Scrubland》 1 《Tropical Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 2 《霧深い雨林》 2 《不毛の大地》 -土地 (21)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《石鍛冶の神秘家》 4 《真の名の宿敵》 2 《悪意の大梟》 1 《瞬唱の魔道士》 2 《トレストの使者、レオヴォルド》 -クリーチャー (17)- |
4 《思考囲い》 4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 3 《思案》 4 《意志の力》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (22)- |
3 《外科的摘出》 3 《盲信的迫害》 2 《狼狽の嵐》 2 《翻弄する魔道士》 2 《議会の採決》 1 《トレストの使者、レオヴォルド》 1 《森の知恵》 1 《火と氷の剣》 -サイドボード (15)- |
《貴族の教主》も含めたマナクリーチャー8体体制で《目くらまし》も採用したテンポ寄りのDark Bant Bladeでなく、《瞬唱の魔道士》、《悪意の大梟》《思考囲い》などが採用されているコントロール寄りの4C Deathbladeとなっています。《真の名の宿敵》や《トレストの使者、レオヴォルド》といったカードパワーの高い3マナ域が多数採用されています。
Grixis Delverを始めとしたフェアデッキとのマッチアップに強く、《思考囲い》など妨害スペルも多数採られていますが、クロックがやや遅いのでコンボ対策にサイドのスペースの多くが割かれています。
基本地形が《島》1枚なのでマナベースに不安が残ります。《血染めの月》などを採用したデッキやLandsとのマッチアップについてはある程度までは割り切っているようです。
☆注目ポイント
4C Leovoldに赤の代わりに白を足した構成で、白は《石鍛冶の神秘家》パッケージや《剣を鍬に》、《議会の採決》といった除去、《翻弄する魔道士》などヘイトベアーにアクセスできるのが魅力です。《剣を鍬に》は《突然の衰微》が効かない《グルマグのアンコウ》などにも触ることが可能で、1マナと軽いので便利です。《議会の採決》は色拘束が強く少し重いのが難点ですが、《真の名の宿敵》や《トレストの使者、レオヴォルド》、プレインズウォーカーに対する解答になります。
サイドの《盲信的迫害》は、《毒の濁流》よりも軽い《真の名の宿敵》やエレメンタルトークンの群れ対策になり、ElvesやDeath and Taxesとのマッチアップでも活躍します。
《精神を刻む者、ジェイス》や《ヴェールのリリアナ》といったプレインズウォーカーが少なめな代わりに、クリーチャースペルがメインになっており《呪文貫き》の影響を受け難く、Grixis Delverとのマッチアップを意識していたことが分かる構成です。
4枚採用された《真の名の宿敵》のおかげでBlade系にとっては厳しいマッチとなる《罰する火》エンジンにも耐性があり、決勝戦でもAbzan Loamに勝利しています。コンボよりもフェアデッキとのマッチアップ向けの構成なので、Grixis Delverなどが多い環境ではお勧めのデッキです。
Punishing Abzan
1 《森》 2 《Bayou》 1 《Badlands》 1 《Savannah》 1 《Scrubland》 1 《Taiga》 4 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 2 《吹きさらしの荒野》 3 《燃え柳の木立ち》 1 《やせた原野》 1 《陰謀団のピット》 1 《ドライアドの東屋》 1 《カラカス》 1 《イス卿の迷路》 1 《平穏な茂み》 -土地 (26)- 4 《闇の腹心》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《漁る軟泥》 4 《聖遺の騎士》 1 《ラムナプの採掘者》 -クリーチャー (11)- |
2 《緑の太陽の頂点》 4 《突然の衰微》 3 《罰する火》 2 《壌土からの生命》 1 《森の知恵》 4 《虚空の杯》 4 《モックス・ダイアモンド》 3 《ヴェールのリリアナ》 -呪文 (23)- |
3 《虚空の力線》 2 《封じ込める僧侶》 2 《エーテル宣誓会の法学者》 2 《スレイベンの守護者、サリア》 2 《ゴルガリの魔除け》 2 《剣を鍬に》 1 《再利用の賢者》 1 《情け知らずのガラク》 -サイドボード (15)- |
《罰する火》と《壌土からの生命》エンジンを搭載したAbzanミッドレンジで、《緑の太陽の頂点》によって異なる緑のクリーチャーを状況に応じてサーチしてくることが可能です。最近のレガシーの環境では珍しく、《突然の衰微》がメインからフルに採用されているのが印象的です。
Landsでも見られる《罰する火》と《壌土からの生命》エンジン、1マナキャントリップをシャットアウトする《虚空の杯》などを採用しているのでDelver系に強いデッキです。
コンボデッキとのマッチアップは流石に厳しくなりますが、サイドには《スレイベンの守護者、サリア》などヘイトベアーが多数採用されています。墓地対策には《虚空の力線》が採用されておりReanimatorやLandsなどに備えます。
☆注目ポイント
比較的最近のカードである《ラムナプの採掘者》は、《壌土からの生命》以外の《不毛の大地》などを再利用する手段になり、クリーチャーなので除去されやすくなりますが《緑の太陽の頂点》でサーチできる《世界のるつぼ》は中々優秀です。
《聖遺の騎士》 は《稲妻》で除去され難いクリーチャーです。フェッチランドや「発掘」により墓地が肥えるので強化しやすく、《不毛の大地》をサーチできるので相手の《罰する火》エンジンに有効で、Landsとのマッチアップにも強くなります。
サイドの《ゴルガリの魔除け》は《安らかなる眠り》や《虚空の力線》などの墓地対策エンチャントや、このデッキの苦手とする《真の名の宿敵》対策にもなります。《虚空の杯》がメインに採用されているとは言っても、コンボデッキは相性の悪いマッチとなるのでサイドにはヘイトベアーが多数採用されています。
《封じ込める僧侶》はReanimatorやSneak and Show、Elvesなど幅広いマッチアップで活躍が期待できますが、自分の《緑の太陽の頂点》も使えなくなるので注意が必要です。《エーテル宣誓会の法学者》と《スレイベンの守護者、サリア》も相手のコンボを減速しつつクロックとなり、特に《スレイベンの守護者、サリア》は軽いキャントリップを多用するDelver系にも有効なクリーチャーです。《死儀礼のシャーマン》を活用した青いフェアデッキが幅を利かせる現環境では有利な立ち位置にあります。
Miracles
5 《島》 2 《平地》 3 《Tundra》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《乾燥台地》 1 《カラカス》 -土地 (20)- 3 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー (3)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 3 《先触れ》 3 《対抗呪文》 3 《予報》 2 《予期せぬ不在》 1 《天使への願い》 1 《至高の評決》 3 《終末》 4 《意志の力》 2 《アズカンタの探索》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (37)- |
3 《エーテル宣誓会の法学者》 3 《僧院の導師》 2 《封じ込める僧侶》 2 《狼狽の嵐》 2 《外科的摘出》 1 《解呪》 1 《議会の採決》 1 《基本に帰れ》 -サイドボード (15)- |
《師範の占い独楽》禁止後の環境でも健在のMiracles。よく見られるタッチ赤ではなく、青白の2色で『イクサラン』からの新カードである《アズカンタの探索》が採用されています。
2色にすることで《不毛の大地》などに耐性が付くと同時に、サイドに忍ばせてある《基本に帰れ》で4C LeovoldやGrixis Delverなど特殊地形に頼ったデッキをシャットアウトすることができます。
☆注目ポイント
スタンダードでは既にお馴染みの《アズカンタの探索》はレガシーでも通用する逸材のようです。流石に《師範の占い独楽》には敵わないものの、ドローの質を高めると同時に《瞬唱の魔道士》、《予報》、《渦まく知識》、「奇跡」スペルなど、デッキの多くのカードとのシナジーがあります。さらに変身させることでマナ加速になると同時に、フィニッシャーや妨害をサーチすることが可能になるなど、毎ターン土地を置いてカウンターや妨害を構える戦略にフィットしています。
《渦まく知識》、《先触れ》、《思案》、《予報》、《アズカンタの探索》といったドロースペルやライブラリー操作を多数採用しており、基本地形も多いので《不毛の大地》によってマナ基盤が崩されることも少なく、コントロールデッキとしては珍しく土地が20枚と少なめになっています。
メインは《アズカンタの探索》からのアドバンテージによってゆっくりとゲームをコントロールしていきますが、サイド後は《僧院の導師》が投入され、往年のMiraclesのように多数採用された軽いスペルによりモンクトークンを並べて強化し、速やかにゲームを終わらせることが可能です。このタイプのデッキにありがちな時間切れによるドローもケアされています。
《師範の占い独楽》がフォーマットを去り、以前Miraclesを使っていたプレイヤーも一部を除いて他のデッキに移っていってしまいましたが、まだまだ十分に第一線で活躍できるポテンシャルを持っているので是非トライしてみてはいかがでしょうか。
Eternal Weekend 2017
レガシーを支配する1マナクリーチャー
2017年10月19日
- 1位 Sultai Delver
- 2位 Temur Delver
- 3位 Grixis Delver
- 4位 EsperDeathblade
- 5位 4C Leovold
- 6位 Grixis Delver
- 7位 Eldrazi
- 8位 Grixis Delver
Hans Jacob Goddik
トップ8のデッキリストはこちら
Eternal Weekendはアメリカで毎年開催されるエターナルフォーマットの祭典で、今大会も700名を超える参加者が募り大盛況の内に幕を閉じました。
《師範の占い独楽》なき後の環境を支配するのは、最高の1マナクリーチャーであり、モダンではその強さ故に禁止カードの指定されている《死儀礼のシャーマン》でした。その予想通りに4C LeovoldとGrixis Delverが両方合わせて全体の16パーセント以上を占めました。
プレイオフ進出は成らなかったものの、Sneak and ShowとReanimatorといった《グリセルブランド》デッキがコンボデッキの中で最も人気があり、青くないデッキの中ではDeath and TaxesとLandsを選択したプレイヤーが多かったようです。Delver系が多かったトップ8を見る限りLandsは良いチョイスでしたが、マッチアップに恵まれなかったのか上位では見られませんでした。 プレイオフに進出したデッキはほとんどがフェアデッキにカテゴライズされるデッキで、最もアンフェアな戦略に近いデッキはEldraziだったようです。
Eternal Weekend 2017 デッキ紹介
「Sultai Delver」「Temur Delver」「4C Leovold」
Sultai Delver
4 《Underground Sea》 2 《Bayou》 1 《Tropical Island》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 1 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 -土地 (20)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《タルモゴイフ》 2 《墓忍び》 -クリーチャー (13)- |
4 《渦まく知識》 3 《思案》 3 《致命的な一押し》 4 《目くらまし》 4 《トーラックへの賛歌》 2 《突然の衰微》 4 《意志の力》 2 《最後の望み、リリアナ》 1 《森の知恵》 -呪文 (27)- |
3 《外科的摘出》 2 《思考囲い》 2 《毒の濁流》 2 《虐殺》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 1 《呪文貫き》 1 《突然の衰微》 1 《壌土からの生命》 1 《四肢切断》 -サイドボード (15)- |
《墓忍び》、《トーラックへの賛歌》、《タルモゴイフ》など、青緑黒から軽い効率的なスペルやクロックを積んだクロックパーミッションであるTeam Americaを現在のレガシー向けに調整したDelver系デッキ。
《致命的な一押し》という軽い優秀な除去の加入により強化されたデッキの一つで、フレキシブルな除去である《突然の衰微》と使い分けられています。
プレインズウォーカーの《最後の望み、リリアナ》やハンデス、除去のバリエーションが豊富でGrixis Delverよりもコントロール寄りの構成になっていますね。《精神を刻む者、ジェイス》や全体除去の《毒の濁流》、土地回収スペルの《壌土からの生命》などが投入されるサイド後は本格的なコントロールにシフトするようです。
☆注目ポイント
《最後の望み、リリアナ》は忠誠値を上げつつ《悪意の大梟》など小型のクリーチャーを除去したり、「-2」能力で墓地を肥やしながらアドバンテージを提供するなど、4C Leovoldとのマッチアップで活躍が期待できるため、最近は《ヴェールのリリアナ》 よりも優先される傾向にあるようです。
《ヴェールのリリアナ》 のハンデス能力はコンボとのマッチアップに強く、「-2」能力も《真の名の宿敵》のように除去耐性を持つ脅威を処理するのに役に立ちますが、4C LeovoldやGrixis Delverが多くなることを見越し、《若き紅蓮術士》など横並びする戦略に対しても強い《最後の望み、リリアナ》を優先したHans Jacob Goddikの判断は間違いではなかったようです。
「探査」クリーチャーは最近では《グルマグのアンコウ》が主力ですが、《墓忍び》は色拘束は強いものの飛行持ちなので《真の名の宿敵》で止まらず、《悪意の大梟》も先ほどの《最後の望み、リリアナ》で処理できるので頼れるフィニッシャーになっています。
4枚目の《思案》よりも優先して採用されている《森の知恵》によるアドバンテージは、4C LeovoldやStonebladeなどミッドレンジやコントロールとのマッチアップで息切れを防止になり多くのデッキはエンチャントに触る手段をあまり持ち合わせていないのでコストも軽く非常に優秀なカードです。
単体除去が中心であるこのデッキはDeath and TaxesやElvesなど、横に並べるタイプのデッキとのマッチアップを苦手としましたが、《虐殺》や《毒の濁流》といったスイーパーを活用することである程度までは克服しているようです。スイーパーと《精神を刻む者、ジェイス》を投入することでサイド後はSultaiコントロールに変形する選択肢もあり、《壌土からの生命》で《不毛の大地》で毎ターン相手の土地を破壊していく戦略も強力です。
Temur Delver
3 《Tropical Island》 3 《Volcanic Island》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《敏捷なマングース》 4 《秘密を掘り下げる者》 1 《真の名の宿敵》 2 《わめき騒ぐマンドリル》 -クリーチャー (11)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《もみ消し》 4 《稲妻》 2 《呪文貫き》 2 《呪文嵌め》 1 《二股の稲妻》 1 《ギタクシア派の調査》 4 《目くらまし》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 -呪文 (31)- |
3 《紅蓮破》 2 《水没》 1 《真の名の宿敵》 1 《狼狽の嵐》 1 《呪文貫き》 1 《外科的摘出》 1 《削剥》 1 《古えの遺恨》 1 《乱暴+転落》 1 《森の知恵》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 -サイドボード (15)- |
Delver系のバリエーションの中では最も長くレガシー環境に存在するTemur Delver。古くからレガシーをプレイしているプレイヤーの間ではCanadian Thresholdと呼ばれており、「スレッショルド」クリーチャーが《敏捷なマングース》のみとなった現在でもそう呼ぶプレイヤーも少なくありません。
「スレッショルド」達成を妨害する《死儀礼のシャーマン》の登場以来、Sultai DelverやGrixisなどに人気が集まり、最近はあまり見かけませんでした。
《タルモゴイフ》に代わる新たなフィニッシャーとして《わめき騒ぐマンドリル》が採用されるなど、環境の変化に合わせて調整が施されて復権を果たしました。
☆注目ポイント
《敏捷なマングース》と相性が悪いところが気になる《わめき騒ぐマンドリル》ですが、《タルモゴイフ》に代わるデッキの新たなフィニッシャーで、《タルモゴイフ》と異なり環境の多くのデッキの主要な除去である《致命的な一押し》や《突然の衰微》で処理されないのが強みです。トランプルも無視できないファクターで、《真の名の宿敵》や《ルーンの母》のプロテクションでブロックされても完全に止まらず、横に並ぶElvesとのマッチアップにも強くなります。
《タルモゴイフ》が抜けて《わめき騒ぐマンドリル》と《真の名の宿敵》がフィニッシャーとして採用されたことにより、テンポデッキとしての特色が薄れた代わりにロングゲームにも対応できるようになりました。4C Leovoldなどフェアデッキが多かった今大会のようなメタでは有効なカード選択だったようです。
《削剥》は非常にフレキシブルなスペルで《梅澤の十手》や《殴打頭蓋》、《虚空の杯》といった厄介なアーテイファクトを処理でき、クリーチャーを除去する手段にもなります。Grixis Delverなどのサイドボードで2枚目以降の《古えの遺恨》として採用されているようです。
《死儀礼のシャーマン》、《真の名の宿敵》や《悪意の大梟》など強力なクリーチャーや《致命的な一押し》、《突然の衰微》など効率的な除去の登場でしばらく上位では見られなくなっていたTemur Delverでしたが、調整次第ではまだまだ第一線で勝負できることが証明されました。
4C Leovold
4 《Underground Sea》 2 《Tropical Island》 1 《Badlands》 1 《Volcanic Island》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 2 《新緑の地下墓地》 2 《不毛の大地》 -土地 (20)- 4 《死儀礼のシャーマン》 3 《悪意の大梟》 2 《ヴリンの神童、ジェイス》 2 《瞬唱の魔道士》 2 《トレストの使者、レオヴォルド》 -クリーチャー (13)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 3 《コジレックの審問》 1 《思考囲い》 1 《致命的な一押し》 1 《稲妻》 2 《突然の衰微》 1 《悪魔の布告》 1 《トーラックへの賛歌》 1 《夜の囁き》 2 《コラガンの命令》 4 《意志の力》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文 (27)- |
2 《狼狽の嵐》 2 《二股の稲妻》 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《紅蓮破》 2 《森の知恵》 1 《青霊破》 1 《赤霊破》 1 《水流破》 1 《悪魔の布告》 1 《トーラックへの賛歌》 -サイドボード (15)- |
プロツアーのスケジュールの関係でアメリカに滞在していたチェコのプロ、Ondrej Straskyも参戦し見事にプレイオフ進出を果たしていました。彼が使用したのはもちろんCzech Pile(4C Leovold)で基本地形0枚、《ヴリンの神童、ジェイス》などが特徴です。
4C Leovoldは今大会でも最も使用率が高かったデッキで、マナベースに難はあるものの各色から優秀なスペルにアクセスできるデッキパワーの高さが特徴です。フェアデッキ全般には強いですが、クロックが遅く《意志の力》以外のカウンターを採用していないため、コンボとのマッチアップはやや不利が付きます。
☆注目ポイント
多くのリストは、《血染めの月》でシャットアウトされるリスクを少しでも軽減させようと基本地形を数枚採用していますが、Ondrejは割り切りその枠に《不毛の大地》を採用することでミラーマッチやEldraziなど特殊地形を多用するデッキとのマッチアップで有利を得ることを優先しています。
《瞬唱の魔道士》の枚数が削られ《ヴリンの神童、ジェイス》が採用されています。除去耐性が皆無で《カラカス》でバウンスされてしまいますが、《トレストの使者、レオヴォルド》や《死儀礼のシャーマン》など除去の的となるクリーチャーが多く、《カラカス》も《不毛の大地》であらかじめ破壊しておくことができます。
カードアドバンテージよりも効率性を優先したようで《トーラックへの賛歌》の枠に《コジレックの審問》が採用されています。相手の除去をあらかじめ落としておくことで、《ヴリンの神童、ジェイス》が生き残りやすくなります。変身してもプレインズウォーカールールの変更により《精神を刻む者、ジェイス》との共存も可能で、軽い優秀なスペルの多いこのデッキでは疑似フラッシュバック能力も活かしやすくなります。
サイドに2枚採用されている《森の知恵》は、ミラーマッチなどで消耗戦を制するためのキーとなるカードとなります。今大会のように4C Leovoldがトップメタの環境では是非採用しておきたいカードです。Grixis Delverと並んで環境のTier1として活躍している4C Leovoldはアドバンテージを取れる手段が豊富で軽い優秀な除去、クリーチャーが多数採用されているグッドスタッフでコントロールが好きな方にお勧めのデッキです。
プレイヤーインタビュー Luke Blum
今大会見事に入賞を果たしたLukeは普段からレガシーの練習を一緒にしている友人で、筆者がミシガンから東海岸に活動拠点を移した現在でもオンラインでプレイテストをしています。レガシーを始めてわずか1年という短いキャリアでEternal Weekendというレガシーの大規模なイベントで入賞する快挙を成し遂げました。そんな彼に今回の連載のため、お話を聞くことができました。
--「まずはトップ8入賞おめでとう!」
Luke「ありがとう!レガシーの大きな大会でプレイオフに入賞したのは初めてだから、すごくエキサイティングな気分だね。」
--「では最初に数あるレガシーのデッキの中でなぜGrixis Delverを選んだのか理由を教えてくれる?」
3 《Volcanic Island》 2 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《若き紅蓮術士》 2 《真の名の宿敵》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー (15)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《稲妻》 2 《呪文貫き》 1 《二股の稲妻》 4 《目くらまし》 4 《意志の力》 -呪文 (27)- |
3 《陰謀団式療法》 2 《狼狽の嵐》 2 《外科的摘出》 2 《紅蓮破》 1 《渋面の溶岩使い》 1 《古えの遺恨》 1 《悪魔の布告》 1 《四肢切断》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 -サイドボード (15)- |
Luke「レガシーを始める前はモダンでJundをよく使っていたこともあって、レガシーを始めるならShardless Sultaiを使おうと考えていたんだ。モダンのJundとよく似てたからね。でも使い始めて2週間ぐらいでGrixis Delverに変えたよ。コンボに強いし、プロアクティブでプレイングによって強さが変動するデッキを探してたんだけど、土地を縛ったり、ハンデスや軽く優秀なクロック、そして多角的な攻めができたりなど、Grixis Delverは正にその条件を満たしたデッキだったね。」
--「なるほど、プロアクティブで選択肢の多いデッキが好きみたいだね。」
Luke「その通り!ゲームによって毎回選択肢が異なっていて、プレッシャーを展開しつつも相手との対話がある。《死儀礼のシャーマン》のようにマナクリーチャーにもフィニッシャーにもなる色の役割を無視した強力なカードにも恵まれていて、ハンデスもカウンターもあるし、簡単に言ってオールラウンドなデッキだよね。」
--「メインに《呪文貫き》が多めで《もみ消し》も不採用、《陰謀団式療法》がサイドに落とされていたりと、今までのGrixis Delverと少し違った構成だけど今回のリストを選択した経緯を教えてもらえる?」
Luke「とても良い質問だね。Delver系のエキスパートであるBob Huangが使用し、結果を残していたリストを試してみた結果、4Cも含めた現在のメタに強そうだったから今回のリストを使うことに決めたんだ。4C Leovoldなどフェアデッキがトップメタの現環境では、《陰謀団式療法》はメインから必要だとは思わなかった。《もみ消し》を使ったバージョンも試してみたけどイマイチしっくりこなかったんだ。プレイヤーのスタイルにもよるけど(LewisCBRは《もみ消し》を採用したバージョンでリーグで結果を残している)Grixis Delverの本来の持ち味を出し切れていないと思った(《若き紅蓮術士》や《ギタクシア派の調査》の枚数を減らしたり)。」
Luke「そんな中、追加の《真の名の宿敵》や《呪文貫き》、《二股の稲妻》、サイドに3枚の《陰謀団式療法》を採用したBobのリストを見つけた。Grixis Delverは《若き紅蓮術士》と《ギタクシア派の調査》によってTemur Delverよりも盤面を重視したバージョンで、《呪文貫き》は4C Leovoldに強くて多くのフェアデッキに対しては《もみ消し》はそこまで強くないと感じたよ。このデッキにとって最初の2-3ターン目は特に重要で、《若き紅蓮術士》を展開するのに費やすことが多くて《もみ消し》を構えている余裕があまりなかったんだ。」
Luke「《呪文貫き》は《若き紅蓮術士》を展開した後にも構えることができて、スイーパーやプレインズウォーカーのように重いスペルを牽制することができる。相手からしてみれば《目くらまし》と《呪文貫き》を同時にケアするのは難しいしね。こんな感じで横に展開しつつ、ソフトカウンターを構える方が《もみ消し》で相手を妨害して事故らせるよりもインパクトがあると思ったんだ。」
Luke「《若き紅蓮術士》はコントロール相手の全体除去に対して、事実上の1対1交換を強いることができるし、コンボに対しても相手を妨害しながらクロックを速めることができる。そういったことからも《若き紅蓮術士》3枚、《ギタクシア派の調査》4枚のこのリストは最高のGrixis Delverだと思う。」
--「確かに翌週に開催されたSCGOでもBob Huangはプレイオフに進出していて、彼とレシピをシェアしたプレイヤーもトップ32以内に多数入賞しているから、明らかに現在のメタに合ったリストみたいだね。マッチアップについてだけど今大会で最も人気があった4C Leovoldとの相性についてはどう思う?」
Luke「相性は言われているほど悪くないと思うよ。4Cのマナベースはとても欲張りで《毒の濁流》や《トレストの使者、レオヴォルド》、《コラガンの命令》のように3マナのスペルを多用するから《不毛の大地》が刺さる。そして、《呪文貫き》が大活躍するマッチだね。」
--「サイドボードについても教えてもらえる?」
Luke「Bobのリストと異なる点は2枚の《狼狽の嵐》、《墓掘りの檻》と《四肢切断》で、《狼狽の嵐》は《呪文貫き》のような妨害スペルが追加で欲しいと思って採用することにしたんだ。コンボからフェアまで幅広いマッチアップで活躍したよ。《墓掘りの檻》はReanimator以外にもElvesのように《緑の太陽の頂点》を使うデッキ全般に有効で役に立った。」
Luke「《四肢切断》は《グルマグのアンコウ》や《聖域の僧院長》、《タルモゴイフ》などを対策するために採用していたんだけど、結局あまり活躍した場面がなかったから、今その枠は《削剥》になっているんだ。」Luke「Bobとも話してみて良いアイディアだと思った(実際にBob Huangはその翌週に開催されたSCGOでサイドに忍ばせていた)。《悪魔の布告》は主にReanimator、Sneak and Show、Dark Depthsコンボ用で《グルマグのアンコウ》や《真の名の宿敵》対策になることもあるけど《悪意の大梟》や《若き紅蓮術士》が隣にいることが多いから、4C Leovoldやミラーマッチではサイドインしないね。ReanimatorはDelverよりも速いスピードでコンボを発動してくることが多いからカウンターやハンデス、墓地対策以外にも対抗策がある事は重要なので最低でも1枚はサイドに入れておきたいね。」
Luke「採用されなかったカードについてだけど、《発展の代価》は意外と効果のあるマッチアップが少なくてLandsに対しては刺さるけど、元々相性が最悪だから他のマッチアップに集中することにして、今回は採用は見送った。《不毛の大地》と《目くらまし》を使うデッキで《真の名の宿敵》以外の3マナのカードはなるべくなら採用したくないと思ったから《イゼットの静電術師》も採用を見送ったけど、このクリーチャーの立ち位置は今そんなに悪くないと思うから試してみる価値はあると思う。個人的に今回採用していないカードの中でいいと思ったカードは《削剥》だ。除去であり《虚空の杯》や《梅澤の十手》対策にもなるこのスペルは、Grixis Delverにとって最も欲しかったカードの1枚だね。」
--「デッキについてのトピックから少し離れるけどLukeは現在のレガシーの環境についてどう思う?」
Luke「《死儀礼のシャーマン》は確かに強いと思うけど、まだ環境の健全性を破壊するほどの強さだとは思わないかな。もちろん僕自身が使っているから多少バイアスも含まれると思うけど。強力なスペルやコンボが存在するレガシーでは、《死儀礼のシャーマン》のように低コストで強力な能力を多数持ったクリーチャーも必要だと思う。ただそれに賛同しないプレイヤーもいることももちろんわかっているけどね。」
Luke「もし《死儀礼のシャーマン》が禁止になったとしたらTemur DelverやUR Delver辺りを使うと思う。マナクリーチャーにもなった墓地対策にもなる《死儀礼のシャーマン》のいない世界では《もみ消し》や《敏捷なマングース》の価値も上がりそうだし、《若き紅蓮術士》と《ギタクシア派の調査》と「探査」クリーチャーが強力なことは変わりないからね。特定のリストを挙げるとしたら今大会でも入賞していた《わめき騒ぐマンドリル》を採用したTemur Delverが良さそうだね。」
--「今回はインタビューに協力してくれてありがとう。Eternal Weekendというレガシーのイベントの中でも特別な大会で入賞という快挙を成し遂げた後だけど、次の大会の目標があったら聞かせてくれるかい?」
Luke「そうだね。日々プレイしている中で成長していければそれでハッピーだけど、次もトップ8に入れたら今度は優勝したいね。次の大きなレガシーのイベントはGP Seattleかな。」
Grixis Delverは現在のレガシーのトップメタです。特に今回Lukeも使用していたBob Huangのリストはアメリカ、特に東海岸では最もポピュラーなスタイルでEternal Weekend2017やSCGO Washington DCで結果を残したこともあり、今後もよく見ることになりそうです。
総括
Eternal Weekend 2017は久々に開催されたレガシーのハイレベルな大会で、予想通り《死儀礼のシャーマン》を採用したフェアデッキが多数入賞するという結果で幕を閉じました。
SCGO Washington DCも《死儀礼のシャーマン》デッキが多数を占めましたが、優勝を果たしたのは4C LeovoldでもGrixis Delverでもなく《石鍛冶の神秘家》を採用したDeathbladeでした。また前環境を支配したMiraclesも形を変えて生き残っており新戦力として《アズカンタの探索》が採用されており、レガシーでも通用するカードパワーを持っていることが証明されました。
以上USA Legacy Express vol.134でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!