みなさんこんにちは。今週は禁止改定のアナウンスがありましたが、今回はモダンのプロツアー後の再検討的な意味合いが強かったのもありノーチェンジでした。
さて、今回の連載ではSCGO Dallas、SCGO Philadelphia、Legacy Challengeの入賞デッキをご紹介していきたいと思います。
SCGO Dallas
新セットのあのカードを使ったデッキが早くもトップ8に
2018年1月20日
- 1位 Lands
- 2位 Turbo Depths
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Mono-Red Sneak Attack
- 5位 ANT
- 6位 Death and Taxes
- 7位 Mardu Death and Taxes
- 8位 Sultai Delver
Chris Dunn
トップ8のデッキリストはこちら
Grixis Delverはトップ32入賞デッキの中では最多でしたが、プレイオフに進出したのはわずか1名で、多色のDeath and Taxesなど赤をタッチしたバージョンも勝ち残っていました。
今大会優勝のLandsや安定した成績を残し続けているDelver系に混じってMono-Red Sneak Attackなど珍しいデッキも結果を残していたのも印象的です。
SCGO Dallas デッキ紹介
「Mardu Death and Taxes」「Mono-Red Sneak Attack」
Mardu Death and Taxes
2 《Plateau》
1 《Scrubland》
3 《乾燥台地》
4 《魂の洞窟》
1 《地平線の梢》
3 《カラカス》
4 《不毛の大地》
2 《リシャーダの港》
-土地(23)- 4 《ルーンの母》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《ファイレクシアの破棄者》
1 《迷宮の霊魂》
3 《護衛募集員》
2 《ちらつき鬼火》
2 《月の大魔術師》
2 《聖域の僧院長》
1 《宮殿の看守》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
-クリーチャー(26)-
2 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《オルゾフの司教》
2 《外科的摘出》
2 《精神壊しの罠》
1 《フェアリーの忌み者》
1 《真髄の針》
1 《万力鎖》
1 《漸増爆弾》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード(15)-
普段見かけるDeath and Taxesは白単色ですが、最近は赤をタッチしたバージョンも見られるようになりました。Mickey Humphriesのリストはサイドの《オルゾフの司教》のために黒もタッチしています。
色を足したことにより《リシャーダの港》の枚数も減らされており、Death and Taxes本来の戦略である「序盤にマナを縛りつつヘイトベアーでクロックをかけていく」というよりも《護衛募集員》のアドバンテージによるロングゲームを想定しているようで、よりコントロール寄りの構成になっています。
☆注目ポイント
多色になっても、メインからフル搭載された《魂の洞窟》のおかげでクリーチャーをキャストするにはそれほど負担にならなそうです。特殊地形を増やしたことで相手の《不毛の大地》に少し弱くなるので、《霊気の薬瓶》の重要性は増しています。
《月の大魔術師》はDeath and Taxesにとって赤をタッチする主な理由の一つで、4C Leovold、Grixis Delver、Sultai Delver、Landsといった特殊地形に大きく依存したデッキが主流となっている現在では、相手のマナをシャットアウトする手段は非常に強力です。
このデッキのトップカーブは《ピア・ナラーとキラン・ナラー》です。《魂の洞窟》からキャストすることでカウンターを気にせずに展開することが可能で、伝説なので《カラカス》でバウンスして再キャストすることでアドバンテージも得られます。
黒をタッチした理由であるサイドの《オルゾフの司教》は《悪意の大梟》やこのデッキにとって処理するのが困難であった《真の名の宿敵》も対処可能にします。このリストには採用が見送られていますが『イクサランの相克』からの新カードである《凶兆艦隊の向こう見ず》を採用したタッチ赤のリストも見られました。
相手の使用済みのドロースペルや除去を再利用することはもちろんのこと、相手の《瞬唱の魔道士》の能力にレスポンスして《霊気の薬瓶》からインスタントスピードで出すことにより「フラッシュバック」を妨害する、といった動きもできそうです。様々なマッチで意表を突ける1枚と言えるでしょう。
Mono-Red Sneak Attack
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
1 《水晶鉱脈》
-土地(19)- 4 《猿人の指導霊》
3 《業火のタイタン》
1 《焼却の機械巨人》
3 《グリセルブランド》
2 《世界棘のワーム》
2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
-クリーチャー(15)-
2 《フェアリーの忌み者》
2 《月の大魔術師》
2 《コジレックの帰還》
2 《焦熱の合流点》
1 《削剥》
1 《沸騰》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
-サイドボード(15)-
時折見かけるレガシー版のBig Redで、《水蓮の花びら》や 《猿人の指導霊》といったマナ加速と《古えの墳墓》など2マナランドによって1ターン目から《虚空の杯》と《血染めの月》によるプリズン要素と、《煮えたぎる歌》から《騙し討ち》や《裂け目の突破》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》などのファッティを戦場に出すコンボの要素がハイブリットされたデッキです。
ドロースペルを採用していないので安定性には難があり、このデッキよりもコンボスピードで勝るANTやTESといったストーム系のコンボや、コンボに対する軽い妨害要素とクロックを持ち合わせたGrixis Delverといったマッチアップは厳しいです。しかしながらマナ加速を利用した爆発力はどんな相手にも勝てる可能性があり、カウンターを採用した青いデッキにも相性が良いです。
☆注目ポイント
『イクサランの相克』からの新カードである《血染めの太陽》が早速採用されています。土地のマナ能力以外の能力をすべて失わせるのでフェッチランドを始めとした能力持ちの特殊地形をシャットアウトすることが可能な上、キャントリップがついているためこのカードがそれほど有効でないマッチアップでも無駄になりにくく、自身の《裏切り者の都》のデメリット能力を失わせることもできたりと見た目以上に器用なカードです。今後このタイプのデッキでは《月の大魔術師》よりも優先して採用されそうです。
《焼却の機械巨人》は《怒鳴りつけ》と似たETB能力を持ったクリーチャーですが、《引き裂かれし永劫、エムラクール》などの高CMCカードが多数入ったこのデッキ相手では安易にダメージを選ぶとその場で敗北する可能性が高いため、多くの場合アドバンテージが得られるでしょう。
《魔術遠眼鏡》は『イクサラン』から加入した比較的新しいカードですが、相手の手札を見られるのでスペルをキャストする順序などプラン立てがしやすくなり、《真髄の針》と同様に土地の起動も指定できるので相手の手札のフェッチランドの起動を禁止することで土地破壊のようにも使えます。
《焦熱の合流点》は本体火力、スイーパー、アーティファクト除去としても使えるフレキシブルなスペルで、ヘイトベアーなどをまとめて除去することが可能です。Delver系、4Cなどクリーチャーを採用した多くのデッキ相手にサイドインされます。軽い妨害要素が多いGrixis Delverはやや不利が付きますが、4C Leovold、Miracles、Landsなど現環境のポピュラーなデッキに強いので、LandsやDeath and Taxes以外で《渦まく知識》を使ったデッキ以外の戦略もトライしてみたいという方にお勧めです。
SCGO Philadelphia
Turbo Depthsがチームを優勝に導く
2018年1月28日
- 1位 Turbo Depths
- 2位 Grixis Delver
- 3位 Colorless Eldrazi
- 4位 Miracles
- 5位 Miracles
- 6位 Grixis Delver
- 7位 Grixis Delver
- 8位 Eldrazi Post
Lo/Michaels/Henry
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SCGO Dallasと同様にチーム戦で競われたSCGO Philadelphiaのレガシー部門は優勝こそ逃したもののGrixis Delverが最大勢力で、Miraclesがそれを追う形となり、両デッキ共安定したパフォーマンスを発揮していました。
アンチフェアデッキの代表格であるLandsを選択したチームも多かったようです。Grixis Delverなどを選択していたチームが多かったことを考慮すると、本大会の最高の選択肢の一つだったと言えます。
SCGO Philadelphia デッキ紹介
「Turbo Depths」
Turbo Depths
1 《沼》
3 《Bayou》
1 《ドライアドの東屋》
4 《新緑の地下墓地》
1 《ボジューカの沼》
1 《セジーリのステップ》
4 《演劇の舞台》
4 《暗黒の深部》
1 《幽霊街》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地(24)- 2 《森を護る者》
4 《吸血鬼の呪詛術士》
4 《Elvish Spirit Guide》
-クリーチャー(10)-
最近よく見られるようになった緑黒の《暗黒の深部》コンボ。メインから20/20トークンに対抗する手段を持ち合わせていないGrixis Delverに強く、Landsに対しても《輪作》から《演劇の舞台》で相手の《暗黒の深部》をコピーすることも可能で、コンボの速度でも勝るので相性が良い相手です。
レガシーのデッキの中では比較的デッキを組むコストも安めで現環境のトップメタとされるデッキに強く、デッキの性質上マッチも速く終わることが多いです。これはチームメイトへの助言が許されているチーム戦では無視できない要素となります。
☆注目ポイント
《ドライアドの東屋》は布告系の除去から《マリット・レイジ》を守る役割を果たし、《新緑の地下墓地》や《輪作》でサーチすることもできるのでこのデッキを使うなら1枚は採用しておきたいところです。特に最近の4C Leovoldは《悪魔の布告》をメインから採用していることが多いので重要です。
他にも《森を護る者》や《輪作》+《セジーリのステップ》など《マリット・レイジ》を保護できるカードが採用されています。特に《森を護る者》は自身がクリーチャーであることから前述の《悪魔の布告》の盾にもなってくれます。
サイドのカードで面白いのは《頑強な決意》です。クリーチャータイプをアバターに指定することで《剣を鍬に》や《カラカス》、《ちらつき鬼火》などで《マリット・レイジ》を除去されなくなり、このデッキが苦手とするDeath and Taxesなど白いデッキとの相性の改善に一役買っています。
LEGACY CHALLENGE #11145577
《死儀礼のシャーマン》デッキが安定したパフォーマンスを見せる
2018年2月5日
- 1位 Sultai Delver
- 2位 TES
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Grixis Delver
- 5位 Omni-tell
- 6位 Grixis Delver
- 7位 Food Chain
- 8位 Eldrazi Post
トップ8のデッキリストはこちら
MOで毎週末に開催される大規模なレガシーのイベントであるLegacy Challengeは筆者もよく参加するイベントです。
MOでもリアルと同様にGrixis Delverが一番人気です。Omni-tellやTESといったコンボデッキやFood Chainなど比較的珍しいデッキも見られます。
優勝はSultai Delverで、プレイオフに入賞していた半数以上が《死儀礼のシャーマン》を使用するデッキでした。“1マナプレインズウォーカー”と形容されているこのクリーチャーの強さが遺憾なく発揮されている結果と言えるでしょう。
LEGACY CHALLENGE #11145577
「Sultai Delver」「Grixis Delver」
Sultai Delver
2 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
1 《新緑の地下墓地》
4 《不毛の大地》
-土地(20)- 4 《死儀礼のシャーマン》
4 《秘密を掘り下げる者》
3 《タルモゴイフ》
1 《トレストの使者、レオヴォルド》
2 《墓忍び》
-クリーチャー(14)-
2 《ゴルガリの魔除け》
2 《狼狽の嵐》
2 《外科的摘出》
2 《思考囲い》
1 《四肢切断》
1 《毒の濁流》
1 《森の知恵》
1 《最後の望み、リリアナ》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-サイドボード(15)-
JPA93はMOでよくSneak and Showを使っているプレイヤーですが、今回はSultai Delverを選択して見事に優勝を果たしました。Miracles/Stonebladeといった青白系のエキスパートであるMzfrosteも最近Grixis Delverを使い始めていることから、《死儀礼のシャーマン》の強さは「対策するよりも使ってしまおう」というレベルのようです。Grixis Delverよりもミッドレンジ寄りのバージョンのSultai Delverは《致命的な一押し》や《突然の衰微》など除去の種類が豊富で、《トーラックへの賛歌》など妨害能力も強く、よりロングゲーム向けの構成です。
Grixis Delverと比較するとカード単体の強さではSultaiに軍配が上がりますが、《トーラックへの賛歌》、《突然の衰微》、《最後の望み、リリアナ》など色拘束が強い2-3マナのスペルが多くなるため、《死儀礼のシャーマン》が生き残らないと挙動がもっさりしてしまうことがあります。
《トーラックへの賛歌》や《森の知恵》などアドバンテージを稼ぐ手段も用意されているので、少し遅めのコンボや4C Leovold、Miraclesといったミッドレンジやコントロールが多い環境で強さを発揮します。
☆注目ポイント
メインから採用されている《最後の望み、リリアナ》は環境の様々なフェアデッキに有効なプレインズウォーカーです。JPA93のリストでは2枚目の《最後の望み、リリアナ》が《トレストの使者、レオヴォルド》に差し替えられており、より4C LeovoldやGrixis Delverに対して強い構成になっています。
「探査」クリーチャーは《墓忍び》が採用されています。《グルマグのアンコウ》よりも色拘束が強くコストが重くなりますが、5/5飛行はエレメンタルトークンや《真の名の宿敵》で止まることがなく、頼りになるフィニッシャーです。相手の《悪意の大梟》は厄介ですが、《最後の望み、リリアナ》や単体除去で処理していきます。
サイドの《ゴルガリの魔除け》は《毒の濁流》と同様に《真の名の宿敵》やエレメンタルトークンの群れを纏めて処理することが可能で、Grixis Delverをはじめ、あまり相性の良くないマッチとされているDeath and TaxesやElvesなど多くのマッチで活躍が期待できます。エンチャント破壊も《相殺》、《血染めの月》、《基本に帰れ》などを対策できるので重宝しますし、3つ目の能力もMiraclesなどが使ってくる《至高の評決》から自軍のクリーチャーを守れるので、全ての能力に使い道がある優秀なスペルです。
Grixis Delver ~Legacy Challenge レポート~
3 《Volcanic Island》
1 《Tropical Island》
4 《沸騰する小湖》
3 《溢れかえる岸辺》
4 《不毛の大地》
-土地(18)- 4 《死儀礼のシャーマン》
4 《秘密を掘り下げる者》
3 《若き紅蓮術士》
2 《真の名の宿敵》
2 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー(15)-
今大会でもGrixis Delverを使用し、惜しくも優勝はできなかったもののトップ4にまで勝ち残ることができました。
ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
Round | ANT | 勝 |
Round | Lands | 勝 |
Round | Miracles | 勝 |
Round | Grixis Delver | 負 |
Round | TES | 勝 |
Round | Eldrazi Post | 勝 |
Round | Sultai Delver | 負 |
最終戦はリアルならIDによってトップ8でしたが、IDという選択肢がない(というよりも引き分けがない)MOではプレイしなくてはならず、悔しくも負けてしまいました。
しかしオポが高く、プレイオフに滑り込むことに成功。
ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
準々決勝 | Show and Tell | 勝 |
準決勝 | TES | 負 |
デッキの方は《呪文貫き》をメインから採用したオーソドックスなリストを使用しました。またこのリストの製作者であるBob Huang(GRISELPUFF)自身も今大会でトップ8に入賞していました。メインは3枚目の《Underground Sea》以外は変化が無く、サイドにマイナーチェンジが施されています。
Sultai Delverでも採用されている《最後の望み、リリアナ》はこのデッキにとって厄介な《悪意の大梟》など小型のクリーチャーを処理することが可能で、ミラーマッチでも相手の《若き紅蓮術士》を除去するなど多くのマッチで活躍が期待できます。Miraclesとのマッチアップなど、これ1枚で勝てたゲームもありました。また、黒いスペル/パーマネントなので《紅蓮破》に引っかからないのも強みです。
今大会で初めて採用したもう一種類のカードが《湿地での被災》です。色拘束は強いものの、ミラーマッチでは相手の《若き紅蓮術士》とトークン、《真の名の宿敵》をまとめて処理できるスイーパーで、Death and TaxesやElvesとのマッチアップでも使えます。追加の小型クリーチャー対策ということで役割が被る《渋面の溶岩使い》と《イゼットの静電術師》と差し替えられています。サイドボードの黒いスペルの増加に伴い3枚目の《Underground Sea》も採用することになりました。
ボーナストピック
プレイヤーインタビュー Anuraag Das(AnziD)
今回のボーナストピックでは、MOでAnziDとしても活動しているMiraclesのエキスパート・Anuraag DasにMiraclesについてお話を聞くことができました。
--「まず最初に何故Miraclesを使っているのか、デッキを使い始めてどれぐらいになるのか聞かせてくれる?」
Anuraag: 「Miraclesを使い始めたのはマジックのスキルを向上させようと決心した2014年ごろで、元々はShonw And Tellを使っていたんだ。だけどあまり勝てなくて、不利な状況を打開するのは自分のプレイングスタイルでは難しいと思った。デッキも何回か変えたけど、なかなか上手くいかなくてね。そんな中、Reid Dukeの記事を読んだんだ。そこには『レガシーの大会で成功するには一つのデッキをマスターすることが重要だ』と書かれていて、僕は彼のアドバイスの通りデッキを一つに絞り、Miraclesを練習を続けることに決めた。Brian-Braun DuinやJoe Lossettといった強豪プレイヤーのプレイングを観察して学んだよ。最初はプレイングの勝手が分からなくてミスが多かったけど、回し続けている内に慣れてきて、大会でも勝てるようになってきたんだ」
--「なるほど。選択肢が多い戦略が好きみたいだね」
Anuraag: 「そうだね。ドロースペルを多用するから、マッチ毎に生まれる選択肢の数は半端じゃないよ」
--「Miraclesは確かに自分も使っていたけど、選択肢が多すぎて、検証しようとしても結局どれが正しいプレイなのか分からなかったことが結構あって……特に《師範の占い独楽》が使えた頃は選択肢がありすぎたから分かるよ。ところで《師範の占い独楽》が禁止になってからしばらく経つけど、どう変わったのか教えてくれる?」
Anuraag: 「《師範の占い独楽》禁止はデッキにとっても僕個人としても非常に痛烈だったね。デッキにとってはやっぱり《師範の占い独楽》+《相殺》によるソフトロックを失ったことが痛かった。ゲーム後半に相手をロックする手段がなくなったのも痛いけど、一番痛いのはコンボやDelverのキャントリップの連打から《陰謀団式療法》を対策するのが難しくなったことだね。《師範の占い独楽》+《相殺》はコンボをスローダウンさせることにも長けていたから、それらのマッチアップで苦戦することも多くなった」
Anuraag: 「Delverが相手でもゲーム後半に《稲妻》で負けることが多くなって、《終末》の”仕込み”も難しくなったからライフを守るのも厳しくなった。除去を積極的に使っていったり、クリーチャーを《意志の力》をしたりすることも多くなってプレイング自体を大きく変える必要も出てきた。《師範の占い独楽》禁止直後に試したバージョンはとても見れたものではなかったね」
Anuraag: 「《終末》は相変わらず強かったけど、《先触れ》は《師範の占い独楽》の代わりにはならないということにはすぐに気づかされたよ。友人であるCallum SmithとNicklas Lalloの協力もあって《予報》とキャントリップによるアドバンテージを最大限に活かした青白コントロールを調整してそれなりに上手くいったけど、やっぱり《陰謀団式療法》《トーラックへの賛歌》《罰する火》のようなカードを使ったデッキは厳しくて、《師範の占い独楽》+《相殺》があった時代とは勝手が違うことを思い知らされたよ」
Anuraag: 「ただ、日本のレガシーの大会で結果を残していたリストや調整仲間のDan Millerは今でも《相殺》を採用していて、僕も試してみたところまだまだ強いカードであることが分かったから、《エーテル宣誓会の法学者》や《神聖の力線》など他のカードよりも採用したいカードだと思ったよ」
Anuraag: 「あと、『イクサラン』から《アズカンタの探索》が加わったね。以前とは違った戦略やプレイングが求められるけど、今でも環境の強いデッキの一つと言えると思うね」
--「たしかに《アズカンタの探索》が採用されるようになって、上位でもまたよく見られるようになったし、大収穫だったみたいだね。とはいえDelver系に《稲妻》で削られやすくなったり、ANTのようなコンボを止めるのが難しくなっていると」
Anuraag: 「その通りだね」
--「MTG Firstで開催された40 Dual Land Shootoutで入賞していたリストについても教えてくれる? 具体的には、メインの《基本に帰れ》、多めに採用されている《アズカンタの探索》、《狼狽の嵐》、《至高の評決》と《終末》のスプリットなどについて」
Anuraag: 「3-4枚目の《狼狽の嵐》を採用しているのは、《エーテル宣誓会の法学者》のようにコンボだけに強いカードよりも、Delver系にも4C Leovoldとのマッチアップでも使える軽いスペルが欲しかったのと、プレイングによって期待値も上がるカードの方が僕のプレイングにも合うからだ。《狼狽の嵐》は4C相手にハンデスをカウンターしたり、カウンター合戦で優位に立ったりと攻守に渡って活躍する。ゲーム後半になると弱くなるスペルだけど、このデッキは《アズカンタの探索》や《精神を刻む者、ジェイス》といったパワーカードを活かすために序盤を凌ぐのに集中することが重要だからね」
Anuraag: 「追加の《至高の評決》も同様に、《イゼットの静電術師》などDeath and TaxesやElves、Infectなど特定のデッキに対して刺さるカードよりもDelver系などより多くのマッチアップで使えるスペルを優先した結果だよ。メインボードで《終末》3枚、《至高の評決》1枚と枚数を散らしているのは、《終末》と《Azcanta, the Sunken Ruin》の相性があまり良くないこともある。対してカウンターされないスイーパーは序盤に弱い以外はそれなりのメリットがあるし、《Azcanta, the Sunken Ruin》からサーチできるのも嬉しいカードだ」
Anuraag: 「3枚採用されている《アズカンタの探索》はこのデッキのエンジンで、序盤は不要牌を墓地に落としつつ必要なカードを見つける役割を果たし、中盤以降は土地に変身することでマナ加速になって、カードアドバンテージも得られる。《予報》のように瞬間的なアドバンテージは得られないけど、カードパワーよりも安定性を重視したんだ」
Anuraag: 「相手の行動を制限するプリズン要素が欲しかったから、メインから《基本に帰れ》を採用している。最初はあまり好きなカードではなかったけど、最近は環境の多くのデッキに刺さるから採用することにしたんだ。このデッキに対しては《不毛の大地》を気にする必要がないから相手は特殊地形をサーチしてくることが多いし、《リシャーダの港》などの多くの厄介な特殊地形を対策できることも強みだ。他にも《渦まく知識》で有効碑に変換するために余分な土地を手札に溜めておくのがレガシーのセオリーの一つだけど、《基本に帰れ》にがあれば相手に追加の土地をプレイさせ続けることができる。このカードの隠れた強さだね。このカードの欠点は《水没遺跡、アズカンタ》と相性が悪いところだけど、それほど問題になることはなかった」
Anuraag: 「《僧院の導師》と《天使への願い》のどちらが優れた勝ち手段かはよく挙がる質問だけど、これは単純に好みの問題もあって、このデッキをどういう風にプレイしたいかにもよる。僕は勝ちに行くよりも負けないプレイングを心がけていて、対戦相手のエンドステップにドロースペルからパワー20-28のクロックを展開できる《天使への願い》はうってつけのフィニッシャーだ。対して《僧院の導師》は除去に弱くて守り切るのも難しく、採用するとなると2枚以上採用することになるから自分のプレイングには合わない」
--「なるほど。詳しく解説してくれてありがとう」
Miraclesはキーカードであった《師範の占い独楽》を失った後も研究が続けられ、以前のように環境のベストデッキとまでいかなくとも大きなトーナメントの上位では必ずと言っていいほど見かけるようになっています。コントロールが好きな方にお勧めのデッキです。
総括
《死儀礼のシャーマン》デッキが安定した成績を残して言う一方で復権を果たしたMiraclesやアンチフェアデッキのLands、ANT、Sneak and Showなどコンボデッキも見られチーム戦ではTurbo Depthsも結果を残しています。
『イクサランの相克』からの新カードも見られ特に《血染めの太陽》はフェッチランドなど能力持ちの特殊地形を多用するデッキが多いレガシーでもよく見られるカードになりそうです。
以上USA Legacy Express vol.137でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!