皆さんこんにちは。
先週末にグランプリ・シアトル2018が開催され、日本人プレイヤーも多数参加していました。残念ながら筆者は不参加でしたが、ライブカバレージのほうで普段あまり目にする機会が少ないトッププレイヤーによるレガシーを観戦することができて楽しめました。
チーム戦のレガシーグランプリは今年に入ってからすでに3回開催されていますが、個人戦では去年のグランプリ・ラスベガス2017以来の開催となりました。今回の連載では、グランプリ・京都2018とグランプリ・シアトル2018の入賞デッキをご紹介していきます。
グランプリ・京都2018
Delverが不在のプレイオフ
2018年3月24-25日
- 1位 Sneak and Show
- 2位 4C Leovold
- 3位 Aluren
- 4位 Miracles
髙村 和貴、松原 雄介、山本 涼一
トップ4のデッキリストはこちら
日本のグランプリでレガシーがプレイされるのはグランプリ・千葉2016以来でしたが、奇しくも前回と同様にSneak and Showの優勝で幕を閉じました。
大規模な大会では、ほとんどと言って良いほど入賞者がいたGrixis Delverですが、今回は母数の多さに反して結果は振るわなかったようです。やはり、グランプリ2日目レベルにもなると対策が厳しくなり、勝ち切るのが難しくなるのでしょうか。そのほかには、4C LeovoldやMiraclesといったコントロールデッキやAlurenといった少し珍しいデッキも結果を残していました。
グランプリ・京都2018
「Aluren」
Aluren
1 《島》
1 《沼》
2 《Bayou》
2 《Underground Sea》
1 《Savannah》
1 《Tropical Island》
4 《霧深い雨林》
4 《新緑の地下墓地》
2 《汚染された三角州》
-土地(19)- 4 《死儀礼のシャーマン》
4 《悪意の大梟》
1 《洞窟のハーピー》
1 《とぐろ巻きの巫女》
4 《護衛募集員》
3 《トレストの使者、レオヴォルド》
2 《断片無き工作員》
1 《大クラゲ》
1 《寄生的な大梟》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー(22)-
時折見かける《魔の魅惑》を使ったコンボデッキ。今大会入賞を果たしたShibata Masataka選手のリストは、Sultaiカラーに《護衛募集員》のために白をタッチしたバージョンで、コンボによる瞬殺だけでなくミッドレンジとしても振舞うことができそうです。
《悪意の大梟》もしっかりフルに採用されており、《突然の衰微》のような除去もあるのでSultaiミッドレンジと同様にDelver系に強い構成になっています。
☆注目ポイント
キーカードである《魔の魅惑》は3枚のみの採用で、メインから《トーラックへの賛歌》など妨害スペルが多めに採られています。このことからも、コンボによる瞬殺より《断片無き工作員》からのアドバンテージを活かした消耗戦を挑むことが多くなりそうです。Shardless Sultaiに《魔の魅惑》のコンボをハイブリットしたような構成になっています。
コンボに焦点を置いていない、かつ《護衛募集員》でもサーチ可能なこともあり、コンボパーツである《洞窟のハーピー》もわずか1枚の採用となっています。コンボ以外にも《断片無き工作員》や《悪意の大梟》をバウンスすることでアドバンテージを稼ぐことが可能なのもこのクリーチャーの強みです。
サイドの《花の絨毯》は、青いデッキ相手には優れたマナ加速となり、Delver系などが使うソフトカウンター対策にもなります。コンボデッキとの相性が悪いので《思考囲い》や《精神壊しの罠》といった追加の妨害スペルは欠かせません。フェアデッキとして振舞いつつ、隙あらば《魔の魅惑》コンボで相手のライフをゼロにできるので対戦難易度の高いデッキになります。
グランプリ・シアトル2018
最後に勝ち残ったのは秘密を掘り下げる者
2018年4月6-7日
- 1位 Grixis Delver
- 2位 Sultai Control
- 3位 Lands
- 4位 Miracles
- 5位 Grixis Delver
- 6位 4C Leovold
- 7位 Miracles
- 8位 Maverick
Daniel Duterte
トップ8のデッキリストはこちら
プレイオフの半数以上が、現環境を定義する1マナのクリーチャーを採用したデッキでした。決勝戦にまで勝ち残ったシアトルのローカルプレイヤー、Daniel DuterteとHareruya ProsのメンバーであるJeremy Dezaniは、Grixis、Sultaiと形は違えど《死儀礼のシャーマン》を採用した多色デッキを選択していました。
コンボデッキの姿はプレイオフには見られず、Grixis Delver、4C Leovold、Sultai、Miraclesといった青いフェアデッキとアンチフェアデッキのLandsが入賞し、現在のレガシーらしい結果になりました。
チーム戦のグランプリでは振るわなかったDelverでしたが、個人戦ではMOやSCG Tour同様に高い勝率を出しています。
グランプリ・シアトル2018 デッキ紹介
「Sultai Control」「Maverick」「Miracles」「Soldier Stompy」
Sultai Control
1 《沼》
3 《Underground Sea》
2 《Tropical Island》
1 《Bayou》
4 《汚染された三角州》
3 《霧深い雨林》
3 《新緑の地下墓地》
3 《不毛の大地》
-土地(21)- 4 《死儀礼のシャーマン》
4 《悪意の大梟》
1 《瞬唱の魔道士》
2 《トレストの使者、レオヴォルド》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー(13)-
3 《致命的な一押し》
3 《思案》
2 《思考囲い》
1 《狼狽の嵐》
3 《突然の衰微》
2 《トーラックへの賛歌》
1 《悪魔の布告》
4 《意志の力》
1 《最後の望み、リリアナ》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文(26)-
Delverless Sultaiとも呼ばれているデッキで、Sultai Delverから《秘密を掘り下げる者》を《悪意の大梟》に差し替えつつ、《不毛の大地》や《トーラックへの賛歌》といったカードはそのまま採用されており、ロングゲーム向けに特化した構成になっています。
4C Leovoldとの違いは、3色なのでマナ基盤に若干の余裕があり、《不毛の大地》を無理なく採用できるところです。《暗黒の深部》 や《燃え柳の木立ち》といった厄介な特殊地形にも耐性があり、《狼狽の嵐》のようなソフトカウンターも活きてきます。
☆注目ポイント
《不毛の大地》の役割がDelver系とは異なり、相手を事故らせるというよりは《暗黒の深部》などを対策するために採用されています。このタイプのデッキには、クロックとして《タルモゴイフ》が採用されていましたが、除去耐性を考慮したようで《真の名の宿敵》と《トレストの使者、レオヴォルド》が優先されています。
メインに1枚だけ採用されている《瞬唱の魔道士》は、基本的にどのマッチでも強いクリーチャーです。《狼狽の嵐》や《思考囲い》、《外科的摘出》を再利用でき、クロックにもなるのでコンボに対して特に有効です。Delver系デッキよりもクロックが遅いSultaiでは重要なカードとなります。
《悪魔の布告》は、《真の名の宿敵》やMarit Lage Tokenを対策できるためメインからの採用となっています。《思考囲い》は、このデッキにとって《死儀礼のシャーマン》以外の貴重な1ターン目のアクションで、カウンター以外の妨害手段としてコンボデッキとのマッチアップで特に重宝します。ゲーム後半に腐りやすいというデメリットも、《精神を刻む者、ジェイス》の能力で有効碑に変換できます。
《湿地での被災》は、自軍のクリーチャーを巻き込まずに相手の《真の名の宿敵》やElvesなど、横に並ぶデッキを対策できるので黒いデッキの主力スイーパーとして定着しています。《毒の濁流》は3マナと重く少なめの採用となっていますが、タフネスの高いクリーチャーを処理する必要がでてくる場面もあるので、最低でもサイドには採用しておきたいスペルです。
《青霊破》は、対となるスペルの《赤霊破》/《紅蓮破》と比べると比較的地味な印象ですが、現環境ではMono Red Prisonやグランプリ・京都2018でも優勝を果たしたSneak and Showといった赤いスペルを多用するデッキも多く、《血染めの月》、《騙し討ち》、《コラガンの命令》、《若き紅蓮術士》、《発展の代価》など様々な脅威を対策可能です。さきほどの《赤霊破》/《紅蓮破》もわずか1マナでカウンターできる優秀なスペルです。
Maverick
1 《平地》
2 《Bayou》
2 《Savannah》
1 《Scrubland》
1 《ドライアドの東屋》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《樹木茂る山麓》
1 《湿地の干潟》
1 《新緑の地下墓地》
1 《地平線の梢》
1 《ガイアの揺籃の地》
1 《カラカス》
4 《不毛の大地》
1 《イス卿の迷路》
-土地(24)- 4 《死儀礼のシャーマン》
4 《ルーンの母》
1 《貴族の教主》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《石鍛冶の神秘家》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
1 《漁る軟泥》
1 《スクリブのレインジャー》
4 《聖遺の騎士》
1 《ラムナプの採掘者》
1 《不屈の追跡者》
-クリーチャー(25)-
2 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《外科的摘出》
2 《突然の衰微》
2 《盲信的迫害》
2 《窒息》
1 《鷺群れのシガルダ》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード(15)-
Maverickはもともと、緑白の優秀なクリーチャーをランデスや単体除去による妨害でサポートしていくミッドレンジアグロです。緑の優秀なクリーチャーをサーチできる《緑の太陽の頂点》によってデッキの回りも安定しており、Death and Taxesのように《スレイベンの守護者、サリア》を始めとした各種白いヘイトベアーや装備品も充実しています。
現在は、環境のベストクリーチャーである《死儀礼のシャーマン》が存在するので必然的に黒が足されており、受けが広い単体除去の《突然の衰微》、スイーパーの《盲信的迫害》、ハンデスの《思考囲い》といったスペルにもアクセスできるようになっています。
《聖遺の騎士》などの高タフネスクリーチャーに加えて、自軍を除去から保護する《ルーンの母》と優秀なクリーチャーが揃っているのでDelver系にも強い構成です。
☆注目ポイント
《緑の太陽の頂点》を採用しているので、《クァーサルの群れ魔道士》、《漁る軟泥》、《ガドック・ティーグ》などを状況に応じてサーチするツールボックス的な側面もあります。《地平線の梢》や《不毛の大地》を使い回せる《ラムナプの採掘者》や、フェッチランドと相性の良い《不屈の追跡者》といったアドバンテージエンジンもサーチ可能です。《森の知恵》や《石鍛冶の神秘家》パッケージなど、アドバンテージを取れる手段が豊富なのでロングゲームに強いデッキです。
《盲信的迫害》は、《若き紅蓮術士》、《真の名の宿敵》、《悪意の大梟》、《ルーンの母》など厄介なクリーチャー対策になります。特にトップメタのGrixis Delverに採用されている《真の名の宿敵》を処理することができるのは大変重要で、単色のDeath and Taxesにはない要素です。
《鷺群れのシガルダ》は単体除去と布告系の除去の両方に耐性があるので、一度戦場に出てしまえばスイーパー以外では除去されなくなり、4C Leovoldなどフェアデッキに対して有効なフィニッシャーとなります。
Miracles
2 《平地》
2 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》
-土地(20)- 2 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー(3)-
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
3 《先触れ》
2 《定業》
1 《狼狽の嵐》
2 《対抗呪文》
1 《天使への願い》
1 《予報》
1 《議会の採決》
1 《至高の評決》
4 《意志の力》
3 《終末》
2 《相殺》
1 《基本に帰れ》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-呪文(38)-
2 《紅蓮破》
2 《外科的摘出》
2 《解呪》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《赤霊破》
1 《議会の採決》
1 《至高の評決》
1 《アズカンタの探索》
1 《基本に帰れ》
-サイドボード(15)-
Jim DavisがSCGO Worcesterで使用し結果を残していた青白のバージョンは、《基本に帰れ》を活かしやすく、《不毛の大地》にも耐性があるということで主流になっていました。しかし、同型や4C Leovoldとのマッチアップを考慮すると《紅蓮破》が恋しくなることがあります。
Luke Purcellは、青白バージョンと同様に基本地形を多めに採用しつつ、《紅蓮破》のためだけに赤をタッチしており、フェッチランド2枚を《Volcanic Island》に差し替えています。特殊地形を採用することは、《不毛の大地》や自分のプレイする《基本に帰れ》に弱くなるリスクがありますが、基本地形を多めに採っているので青白の時と大きな変化はなく、他の多色デッキと比べるとアンチ特殊地形に耐性があります。
☆注目ポイント
最近はメインから《僧院の導師》を採用したバージョンがよく見られましたが、Lukeのリストはプレインズウォーカーが多めで、《相殺》やフィニッシャーにも《天使への願い》が採用されているなど、過去のMiraclesを彷彿させる重コントロール寄りの構成です。メインから採用されている《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は、《紅蓮破》が効かないフィニッシャーとして青いフェアデッキとのマッチアップで強さを発揮します。
《基本に帰れ》との相性の悪さから採用が見送られていた《アズカンタの探索》でしたが、《基本に帰れ》の効果が薄い同型では、メインの《基本に帰れ》と入れ替わりでサイドインされます。テンポ寄りの《僧院の導師》バージョンよりもロングゲームを想定した構成のこのバージョンでは、長期的なアドバンテージ獲得手段として重宝します。
追加のライブラリー操作の《定業》は、「奇跡」や《相殺》の仕込みに使うことが可能です。《相殺》を採用しているとは言っても《師範の占い独楽》が使えた頃と異なり、相手をロックするのは厳しくなっているので、コンボ対策にメイン、サイドと合わせて4枚の《狼狽の嵐》が採用されているなど対策が徹底しています。
ボーナストピック
惜しくもトップ16以内には残らなかったものの、面白いデッキが注目されていたのでおまけとしてご紹介させていただきます。
Mono White Soldiers
2マナランドや《金属モックス》を駆使し、1ターン目から《虚空の杯》や《抑制の場》で相手の行動を制限し、《秀でた隊長》など兵士クリーチャーでビートダウンしていく白単色のプリズンアグロ。
他の部族クリーチャーデッキ同様に、《魂の洞窟》を採用しているのでカウンターに耐性があり、横に並ぶ戦略は単体除去が中心の環境で強さを発揮しやすく、プレイングも比較的簡単です。単色なので《裏切り者の都》など一部を除いて比較的安価で組めるのもこのタイプのデッキの魅力です。
☆注目ポイント
1ターン目から展開される《抑制の場》は、フェッチランドや《死儀礼のシャーマン》などをシャットアウトするのでGrixis Delverや4C Leovoldなど環境のトップメタデッキに刺さります。
兵士クリーチャーの中にもプリズン要素を持ったクリーチャーが存在します。《スレイベンの守護者、サリア》と《異端聖戦士、サリア》は、相手を著しく減速させつつクロックをかけていきます。
Death and Taxesでもお馴染みの《護衛募集員》は、このデッキでも《警備隊長》など一部を除いた多くのクリーチャーをサーチできます。攻撃するたびに兵士クリーチャーを手札から出せる《秀でた隊長》は、このデッキのキーカードの1枚で、《ダールの戦長》、《警備隊長》といった兵士クリーチャーを早い段階から展開してプレッシャーをかけていきます。
《募兵官》は、Goblinsの《ゴブリンの首謀者》と同様にアドバンテージを得ることが可能で、トップデッキして嬉しいカードの1枚です。《宮殿の看守》もクリーチャーが並ぶこのデッキでは能力を活かしやすく《秀でた隊長》から出すことでブロッカーを除外する動きが強力です。
相手の行動を縛ることに長けたデッキですが、Miracles、4C Leovold、Landsなどに対してサイド後は《ハルマゲドン》も加わります。フィーチャーマッチでもEldraziに対して《ハルマゲドン》をキャスト後に《抑制の場》で《漸増爆弾》の起動を制限し、勝利していました。
《Holy Light》は、白以外のクリーチャーをターン終了まで弱体化させるスペルです。《若き紅蓮術士》、《真の名の宿敵》、《悪意の大梟》などをまとめて除去することができます。自軍のクリーチャーは全て白いクリーチャーなので影響を受けず、一方的なスイーパーとして機能するのです。
《無私の従者》は珍しいカードですが、ETB能力によってこのターン受けるダメージを軽減し、そのダメージの分だけ強化する瞬速持ちのクリーチャーで、Sneak and ShowのファッテイやMarit Lage Tokenによる一撃を防ぎ、反撃することでそのまま勝つことも可能です。
総括
グランプリ・京都2018では振るわなかったGrixis Delverでしたが、グランプリ・シアトル2018では前評判を覆し、見事に優勝を飾りました。人気があるデッキで母数も多く、ブン回りがあり雑多なデッキやコンボに強いのがこのデッキの魅力です。相性が悪いとされているMiraclesや4C Leovoldに対しても絶望的な相性というわけではなく、土地を攻めたり《若き紅蓮術士》や《グルマグのアンコウ》、《真の名の宿敵》といったそれぞれ異なる驚異を展開できたりすれば十分戦えるようです。
プレイオフに合計20枚という採用率を誇る《死儀礼のシャーマン》は、明らかに強すぎるカードだと認識されています。ただ、トップ16まで見渡せばLands、Infect、Tin Fin、Turbo Depthsといったコンボも多く見られ、オープンな環境なので筆者の予想ではグランプリ・バーミンガム2018まではノーチェンジだと思います。
以上USA Legacy Express vol.138でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!