USA Legacy Express vol.141 -Grixis Delverの倒し方-

Kenta Hiroki

 みなさんこんにちは。

 今年8月には日本国内でもエターナルフォーマットの祭典であるEternal Weekendが開催されます。ヨーロッパとアメリカでは毎年開催されていますが、日本で開催されるのは初めてなので楽しみですね。

 今回もリアル、MOの両方のレガシーのイベントで入賞したデッキをご紹介していきたいと思います。先月に開催されたチーム戦のグランプリ・トロント2018とここ2週間で開催されたMOのLegacy Challengeの結果を追っていきます。

グランプリ・トロント2018
~勝ち続けるDeathrite Shaman~

2018年5月20日

  • 1位 4C Leovold
  • 2位 4C Leovold
  • 3位 Elves
  • 4位 Grixis Delver
Morgan McLaughlin/Chris Harabas/Lucas Siow

Morgan McLaughlin/Chris Harabas/Lucas Siow

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 チーム構築戦で競われたグランプリ・トロント2018。残念ながらカバレージにはデッキ分布など詳しいデータが載っておらず、詳細なメタは不明ですが、チーム戦らしく4C LeovoldやGrixis Delverといった安定した成績が期待できるデッキを選択したプレイヤーが多かったようです。

グランプリ・トロント2018 デッキ紹介

「4C Leovold」

4C Leovold (Lucas Siow)

 安定した成績を残し続けている4C Leovold。現環境のトップメタであるGrixis Delverを主な仮想敵としたコントロールデッキで、《悪意の大梟》を始めとした軽い2対1交換が取れるカードが多数採用されているのが特徴です。

 今大会でチームを優勝に導いたLucas Siowのリストは他と異なるアプローチがいくつか見られました。

☆注目ポイント

意志の力

 まず目に引くのはわずか1枚にまで減量された《意志の力》です。コンボデッキに対する保険として大抵の青いデッキには最低でも3枚はメインから採用されていますが、フェアデッキが多く勝ち残る傾向にあるチーム戦特有のメタを考慮したようで、思い切った選択です。

 メインの《集団的蛮行》のスペースを確保するために《トーラックへの賛歌》の枚数が減量されていますが、コンボやコントロール相手には《強迫》として使っていけるだけでなく、相手の《死儀礼のシャーマン》など小型のクリーチャーを除去する手段にもなり、腐りにくく使いやすいスペルです。

集団的蛮行餌食

 《餌食》は普段は1マナ重くなった《悪魔の布告》ですが、同型やMiraclesとのマッチアップにおいてメインから《精神を刻む者、ジェイス》などのプレインズウォーカーを対策でき、「昂揚」も比較的容易に達成できるので高確率で2対1交換によるアドバンテージが取れます。

4C Leovold (Brian Braun-Duin)

 BBD(Brian Braun-Duin)のリストはメインはオーソドックスですが、サイド後は《タルモゴイフ》を加えることでテンポアグロ寄りにシフトしていきます。

タルモゴイフ

 軽いクロックを採用することで、高タフネスのクリーチャー対策が少なめのGrixis Delver、コンボやプリズン系とのマッチアップの改善を図っています。

☆注目ポイント

 サイドの《タルモゴイフ》はGrixis Delverをはじめ、現環境に存在する多数の《虚空の杯》 を使ったプリズン系のデッキに対して効率的なクロックとして機能します。

 また、ドロースペルもLucasが《定業》を優先しているのに対してBBDは《思案》を選択しています。

定業思案

 同じ1マナの青いドローサポートですが、両スペルは似て非なるもので、《定業》は占術によってライブラリーをシャッフルすることなくドローの質を向上させることができる長期戦向けのカードで、フェアデッキとのマッチアップに向いています。

 対して《思案》は見れるカードの枚数が多く、特にGrixis Delverとのマッチアップでは《不毛の大地》をケアするために土地を探しやすくなります。ただし、不要牌がライブラリートップに残ってしまうこともあるのでフェッチランドなどシャッフルする手段が必要になります。

毒の濁流

 《若き紅蓮術士》《真の名の宿敵》を対策する必要があるので、全体除去も必要です。BBDのリストでは、このデッキにとっては処理しにくい《グルマグのアンコウ》など高タフネスのクリーチャーも流せる《毒の濁流》がメインから採用されています。このように、トップメタのGrixis Delverとのマッチアップに備えた調整がされており、その甲斐もあってチームを準優勝にまで導いていました。

Legacy Challenge – #11393343
~Dark Depthsにも1マナのプレインズウォーカーが~

2018年5月28日

  • 1位 Dark Depths
  • 2位 Eldrazi Post
  • 3位 Reanimate
  • 4位 Elves
  • 5位 Grixis Delver
  • 6位 4C Leovold
  • 7位 Sultai Delver
  • 8位 Elves

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 Legacy ChallengeはMOで毎週末に開催されるレガシーのイベントで、世界中のレガシープレイヤーが参加しています。

死儀礼のシャーマン

 4C LeovoldやGrixis Delverなど多くのフェアデッキで採用されている《死儀礼のシャーマン》はDark Depths でも見られるようになりました。

Legacy Challenge – #11393343 デッキ紹介

「Dark Depths」「Grixis Delver」

Dark Depths

 先月にヨーロッパで開催されたEternal Weekend Europe 2018を制したリストで、他のTurbo Depthsと異なり《闇の腹心》《死儀礼のシャーマン》といったクリーチャーも投入されているなど、《暗黒の深部》を対策されてもミッドレンジプランに移行することができます。

闇の腹心死儀礼のシャーマン

 クリーチャーを並べることで必然的に布告系の除去にも耐性ができました。その分《Elvish Spirit Guide》《水蓮の花びら》といったマナ加速は抜けているので、コンボとしての爆発力は少し落ちるようです。

☆注目ポイント

 《死儀礼のシャーマン》《闇の腹心》を採用することによりコンボ以外の勝ち手段を確保すると同時に、《悪魔の布告》などもケアしやすくなりました。《闇の腹心》の提供してくれるカードアドバンテージにより、コンボを対策されても緑黒ミッドレンジとしても振舞うことができます。また、相手の単体除去も《森を護る者》で対策可能です。

苦花

 サイドの《苦花》はMiraclesなどコントロールとのマッチアップで活躍する追加の勝ち手段です。《剣を鍬に》《マリット・レイジ》を追放されても20点ライフゲインできるので《闇の腹心》《森の知恵》と共にアドバンテージを稼ぎ出します。

最後の望み、リリアナ夜の戦慄

 《最後の望み、リリアナ》《夜の戦慄》はこのデッキにとっては苦手なマッチアップとなるDeath and Taxesとのマッチアップで強く、特に《最後の望み、リリアナ》はコントロールにとっては対策が困難なので《苦花》と同様にサイドインされます。

Grixis Delver

 アメリカのレガシーエキスパートであるGriselpuffことBob Huangも参加していました。現環境のGrixis Delverのリストの製作者としても知られています。

 今大会ではメインに《陰謀団式療法》《苦花》、サイドに追加の土地である《幽霊街》《島》が採用されているなど、今までのGrixis Delverと大きく異なるリストで入賞していました。

☆注目ポイント

 4C Leovoldなど多くのデッキで《悪魔の布告》が採用され始めており、スイーパーを搭載したMiraclesも常に一定数存在するので、以前と比べると《真の名の宿敵》はクロックとしての信頼性が落ちています。そんな《真の名の宿敵》に代わって採用されているのが《苦花》です。

真の名の宿敵苦花

 毎ターントークンを生み出すので布告系の除去に耐性が付き、スイーパーに対するリカバーも容易になり、飛行を持ったブロッカーを用意できるので、このデッキにとっては数少ないメインからの《マリット・レイジ》対策にもなります。《陰謀団式療法》とも相性が良く《紅蓮破》されないのも重要なファクターとなります。

島幽霊街

 サイドには基本地形の《島》が追加の土地として採用されています。《基本に帰れ》《血染めの月》などのアンチ特殊地形や、《幽霊街》《流刑への道》のようなカードの被害を軽くしてくれます。Mono Red Prisonや《基本に帰れ》をメインから採用したMiraclesが増えてきており、特殊地形18枚のGrixis Delverにとっては風当たりが厳しくなってきたので妥当な選択です。

 《幽霊街》も追加の《不毛の大地》として同型やLands、Turbo Depthsなどとのマッチアップでサイドインされます。

渋面の溶岩使い

 サイドに2枚採られている《渋面の溶岩使い》は主に同型やDeath and Taxesとのマッチアップでサイドインされますが、《血染めの月》が着地してしまってもキャストできる勝ち手段として、Mono Red Prisonなど《血染めの月》を使ってくるデッキに対しても使えます。《硫黄の渦》はMiraclesにとって対策しにくいクロックとなります。

Legacy Challenge – #11407044
~フェアデッキを罰する火~

2018年6月4日

  • 1位 Grixis Control
  • 2位 Aggro Loam
  • 3位 Reanimate
  • 4位 Sneak and Show
  • 5位 Grixis Delver
  • 6位 Grixis Delver
  • 7位 Maverick
  • 8位 Grixis Delver

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 先週末に開催されたLegacy ChallengeもGrixis Delverを始めとした《死儀礼のシャーマン》デッキがプレイオフの半数を占めました。

罰する火

 《死儀礼のシャーマン》を採用したフェアデッキが多く、ストームなど高速コンボが少ないメタでは《罰する火》エンジンが強く、決勝戦はAggro Loam対Grixis Controlというスタイルは異なるものの両デッキ共に《罰する火》エンジンを搭載したデッキでした。

Legacy Challenge – #11407044 デッキ紹介

「Grixis Control」「Aggro Loam」

Grixis Control

 デッキ名はGrixisコントロールとされていますが、実際は《死儀礼のシャーマン》の起動型能力と《突然の衰微》、サイドボードの数種類のカードのために緑をタッチした4色コントロールです。

死儀礼のシャーマン突然の衰微破滅的な行為

 4C Leovoldと似ていますが、《トレストの使者、レオヴォルド》が抜けて《罰する火》エンジンが搭載され、プレインズウォーカーを多めのに採用しているなど、フェアデッキとのマッチアップを意識した構成です。

 メインの妨害要素が少なくなった分コンボデッキには弱くなりましたが、Grixis Delverや4C Leovoldといった他の《死儀礼のシャーマン》デッキに強く、現環境はコンボよりも《死儀礼のシャーマン》を採用したフェアデッキが多数派なので《罰する火》エンジンを搭載したコントロールは有力な選択肢となり得ます。

☆注目ポイント

 《罰する火》《死儀礼のシャーマン》《若き紅蓮術士》《秘密を掘り下げる者》などを処理しつつ《燃え柳の木立ち》で回収できるのでアドバンテージも取れます。

罰する火

 Grixis Delver側も《不毛の大地》《死儀礼のシャーマン》の墓地のスペルを追放する起動型能力があるのでタイミングに注意する必要がありますが、有効に働くことには変わりありません。4C Leovoldに対しても《死儀礼のシャーマン》《悪意の大梟》《瞬唱の魔道士》といったクリーチャーをはじめプレインズウォーカーも対策可能で、Grixis Delverと異なり《不毛の大地》を採用していないリストも多いので対策されにくく、活躍が期待できます。

隆盛+下落瞬唱の魔道士

 《トーラックへの賛歌》の枠に採用されている《隆盛+下落》は(黒)(黒)のダブルシンボルを要求しない分キャストしやすく、《トーラックへの賛歌》と異なりゲーム後半に引いてきても《隆盛》によってアドバンテージが得られるので腐りにくいのもこのカードの強みです。墓地に落ちた《悪意の大梟》を回収しつつ自分の《瞬唱の魔道士》をバウンスするという使い方が強力です。

ダク・フェイデン概念泥棒

 《ダク・フェイデン》の「+1」能力は《罰する火》エンジンとのシナジーもあり、手札を入れ替えるだけでなくアドバンテージも得られます。サイドに1枚だけ忍ばせてある《概念泥棒》との組み合わせも強力で、相手を対象に取ることによって4枚ドローしつつ相手にカードを2枚捨てさせることで大きく突き放します。

破滅的な行為

 サイドの《破滅的な行為》はプレインズウォーカーを対策できないこともあり最近はあまり見かけなくなりましたが、プレインズウォーカーを多数搭載したこのデッキではそれを利用して自分のプレインズウォーカーを残しつつ相手のクリーチャーや置物を一掃することができるので、小型のクリーチャーを並べるDeath and TaxesやElves、単体除去に耐性のある《真の名の宿敵》《虚空の杯》を使うデッキに対して有効なスイーパーとなります。

Aggro Loam

 今大会で準優勝という好成績を残していたAggro Loamは《罰する火》エンジンの他にも《壌土からの生命》エンジンによってカードアドバンテージを稼ぐ手段が豊富で、4C LeovoldやGrixis Delverなどフェアデッキとのマッチアップに強いデッキです。

罰する火壌土からの生命聖遺の騎士

 現環境ではコンボよりも《死儀礼のシャーマン》を採用したフェアデッキが幅を利かせており、今回《罰する火》エンジンを搭載したデッキが決勝戦にまで勝ち残っていたのもただの偶然ではなさそうです。

 《罰する火》で相手の小型のクリーチャーを処理しつつ《壌土からの生命》によってアドバンテージを稼いでいき、《不毛の大地》を使い回すことで相手をロックし、墓地を肥やして強化された《聖遺の騎士》がゲームを決めます。

☆注目ポイント

 《虚空の杯》をメインから採用している関係で《死儀礼のシャーマン》や各種1マナのハンデスは不採用となっています。「X=1」で置くことによりGrixis Delverや4C Leovoldの《死儀礼のシャーマン》や、その他多くのコンボデッキでも使用されている《渦まく知識》《思案》などをシャットアウトできるので著しく減速させることができます。

虚空の杯ガドック・ティーグ緑の太陽の頂点

 《ガドック・ティーグ》はメインに1枚の採用ですが、コンボ対策になり《緑の太陽の頂点》によってサーチすることができます。《虚空の杯》《ガドック・ティーグ》を設置することに成功すれば苦手なコンボが相手にもフィニッシャーを展開するまでにかなりの時間を稼げます。

ラムナプの採掘者

 《ラムナプの採掘者》《不毛の大地》によるロックも採用されています。《世界のるつぼ》と異なり除去されやすいのが弱点ですが、代わりに《緑の太陽の頂点》でサーチできるのが魅力です。環境に青いデッキが多いので《窒息》も刺さります。

総括

 リアル、MO問わずに《死儀礼のシャーマン》デッキが多数を占めています。逆にその他のデッキは《虚空の杯》とアンチ特殊地形を積んだプリズン系などが多く、ANTなど高速コンボは少なめです。

死儀礼のシャーマン虚空の杯

 GP Torontoを制したLucas Siowのようにメインから《意志の力》を減らすことでフェアデッキとのマッチアップに差を付けようとするアプローチも見られるようになってきましたが、コンボデッキや《虚空の杯》デッキとのマッチアップが不利になってしまうので、基本的にはメイン採用をお勧めします。

 USA Legacy Express vol. 141は以上です。それでは次回の連載でまた会いましょう。

 楽しいレガシーライフを!

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